6月21日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2024」が閣議決定されました。
「骨太の方針」とは、予算編成や重要施策の方向性を示す方針であり、政府として重要視している施策がまとめられているものです。まさに政府の戦略を示す文書です。
さらに、こども政策については、5月31日に「こどもまんなか実行計画2024」が決定。
こちらは政府が毎年その1年間で取り組むこども・子育て政策の具体策をまとめた「こども版骨太」とも言われるもので、今回の2024年度が記念すべき第1回目です。
わたしたちフローレンスは「こどもたちのために、日本を変える」を掲げ、さまざまな政策提言を行っており、この「骨太の方針」と「こども版骨太」にどのような内容が示されるか非常に注目していました。
今年の骨太には、わたしたちが提言してきた項目がいくつも盛り込まれました。具体的には「保育園の多機能化」、「デジタルを活用した相談支援」、「子どものウェルビーイング指標」などです。その他、「保護者の負担軽減のための仕組みが必要」と提言してきた「入院付添いの環境改善」も含まれています。
昨年度も入っていた「日本版DBS」「こども誰でも通園制度」「こども宅食」「医療的ケア児」「男性育休の取得促進」も引き続き入りました。
わたしたちにリアルな声を伝えてくださった子育て当事者の皆さん
一緒に提言を行ってくださった関連団体の皆さん
わたしたちの提案や提言を真摯に受け止め、熱く必要性を訴えてくださった議員の皆さん
この場を借りて、御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
今回の骨太に盛り込まれた内容について、以下に詳しく紹介します。
保育園の多機能化
保育現場の負担軽減を図りつつ、人口減少地域における施設の多機能化等を通じた保育機能の維持も含め「新子育て安心プラン」後の保育提供体制の在り方を早急に示す。
骨太 p.46
フローレンスが長年提言してきた「保育園多機能化」が、ついに骨太に盛り込まれました。
保育園は、安全な環境、アクセスの良さ、そしてプロの保育士がいるという利点がありますが、夜間や日曜日には利用されていません。これを地域住民が多目的に利用できる包括的福祉拠点にすることで、地域のコミュニティのハブとして機能させることができます。
例えば、フローレンスが運営する保育園では「保育園こども食堂」を実施しており、全国に広げる取り組みも進めています。
その他にも、保育園の空き定員を活用し在園児以外の地域のお子さんが通園できるようにしたり、保育園という施設を、夜間や日曜日に地域のNPOや住民団体に貸し出したりするなど、活用機会はたくさんあるはずです。
保育園は、「こどもをお預かりする」だけでなく、そのポテンシャルを活かして新たな役割を果たすことが期待されています。
デジタルを活用した相談支援
出産・子育て応援交付金における伴走型相談支援において、アプリやSNSを活用した情報発信など、デジタル技術を積極的に活用するほか、面談等の相談記録や経済的支援の支給記録に係る地方公共団体間での情報連携について、デジタルを活用した情報連携システムの構築の検討を進める。
こどもまんなか実行計画(こども版骨太)2024 p.20
今回の骨太では、ついに「相談支援」のデジタル化も入りました。
妊婦・子育て家庭の孤立防止のため、妊娠期から産後の間に3回助産師さん等と子育てについて相談する「伴走型相談支援」。
伴走型相談支援におけるデジタル技術の活用は、これまでは「手続きの効率化」に限定されていました。
▼伴走型相談支援の詳細は過去記事参照
【祝】「骨太の方針2023」にフローレンスが提言した、こども誰でも通園制度、こどものウェルビーイング指標、男性育休の取得促進などが入りました!
もちろんそれも非常に重要なことですが、本当に困っている人たちへ支援を届けるためには、相談支援自体のデジタル化が欠かせません。
フローレンスは実際に現場でLINEを活用した伴走型相談支援をする中で、相談支援そのもののデジタル化の必要性を日々実感しています。
まず、デジタルを活用すれば、いつでも相談できる体制を構築できます。
不安や悩みが生じた時に、すぐに相談できる。
パートナーから暴力を受けた妊婦さんが、すぐにSOSを発することができる。
迅速な対応が鍵となるケースもあるため、この「リアルタイム性」はとても重要です。
さらに、デジタル化は地域の人材不足の壁も超えることができます。
相談支援はさまざまな専門職が連携して行っていますが、地域によっては人手不足が非常に深刻です。全ての地域で必要な専門職をリアル相談支援員として配置することは、非現実的と言えるでしょう。
しかしデジタルであれば、居住地を問わず専門職を採用可能です。
例えば、パートナーの転勤に帯同し海外在住しており、就業していない専門職の方を採用し、時差を活用し日本の深夜時間帯の相談を可能にすることも叶うかもしれません。
フローレンスは、自分たちの支援の現場での経験や知見をもとに、「手続きだけでなく相談支援部分もデジタル化を推進してほしい」と強く訴えてきました。
こどものウェルビーイング
こども施策の推進に当たって政府全体として収集すべきデータや指標を整備する観点も踏まえ、こども・若者に着目したウェルビーイング指標について、令和5年度において収集した諸外国や国際機関における先行事例を踏まえ、令和6年度は、関連するデータや指標の国内の整備状況を把握・整理するための調査研究を実施した上で、外部の専門家の知見を活用しながら、我が国における指標の在り方について具体的な検討を進める。【こども家庭庁】
こどもまんなか実行計画2024(こども版骨太) p.95
フローレンス、公益財団法⼈ Well-being for Planet Earth(代表理事:石川善樹氏)、東京大学 鈴木寛教授と提言してきた、「こどものウェルビーイング指標」が今年度も骨太に掲載されました。
▼こどものウェルビーイングに関する詳細は過去記事を参照ください
【祝】「骨太の方針2023」にフローレンスが提言した、こども誰でも通園制度、こどものウェルビーイング指標、男性育休の取得促進などが入りました!
昨年度から、この指標に関する検討が進み、今年度は国内の先行事例などの調査研究が行われる見込みです。
現在、こども家庭庁がこどものウェルビーイングを測るために使っている数値は、「15歳以上」ですが、「こどもまんなか社会」を目指すなら15歳未満の調査も必要です。小中学校に配備されたタブレットを活用し、こどもたち自身が回答するウェルビーイングのアンケートを実施することもできるかもしれません。それが叶えば、国や自治体でこどものウェルビーイングの数値を評価・分析し、施策を企画できるようになります。
入院付添いの環境改善
入院中のこどもやその家族等が安心して入院生活を送ることができるよう、入院付添いの環境を改善するための取組を推進する。【こども家庭庁、厚生労働省】
こどもまんなか実行計画2024(こども版骨太) p.52
現在の日本では、幼いこどもが入院すると、保護者が24時間付き添いで世話をする「付添い入院」が必要です。
そのため、多くの保護者は食事や睡眠も十分にとれず、こどもの見守りや排泄介助、食事介助、寝かしつけ、遊びなどをこなさなければなりません。長期の付き添いによって体調を崩したり、仕事を辞めざるを得なくなるケースも多いのです。
フローレンスや認定NPO法人キープ・ママ・スマイリングさんらの要望により、こども家庭庁が改善に取り組むことを明言しました。
日本版DBS(こども性暴力防止法)
こども性暴力防止法や「生命(いのち)の安全教育」、加害者更生に向けた取組、性嗜好障害に対する治療を含めたこども性暴力防止に向けた総合的な対策を始め、こどもの安全対策や、産後ケア事業、新生児マススクリーニング・新生児聴覚検査・乳幼児健診を推進する。
骨太p.46
こども関連施設・事業者に対し、就職希望者の性犯罪歴の有無の確認を義務付ける「日本版DBS」。
昨年に続き今回の骨太にも、こども家庭庁が中心となって制度を推進していく旨が記載されました。
実はこの制度、長年の提言がついに実を結び、つい先日2024年6月19日(水)に法案が成立したばかり。
より多くのこどもを守ることができる制度になるよう、引き続き注視していきます。
▼「日本版DBS」についての詳細は過去記事参照
こども誰でも通園制度
全てのこども・子育て世帯を対象とする支援の拡充(伴走型相談支援、保育士・幼稚園教諭等の処遇改善、保育士配置基準の改善、こども誰でも通園制度、放課後児童対策、多様な支援ニーズへの対応等)、共働き・共育ての推進(2025年度からの出生後休業支援給付や育児時短就業給付の創設等)に取り組む。
骨太 p.46
2024年6月5日、法案が成立した「こども誰でも通園制度」。
今回の骨太にも、「こども誰でも通園制度」の文言が入りました。
この制度により、これまで働く親とそのこどものみに開かれていた「保育園」が、「すべてのこどもたち」に開かれる場所となります。これは歴史的意義があるものです。
しかし、まだ課題も多く、継続的な議論と改善が必要です。
法律は植物のようなもの。
種を蒔いただけで終わりではなく、花開くまで育てていかなければなりません。
この「こども誰でも通園制度」がより良い制度となり、すべてのこどもが質の高い保育を受けることのできる社会になることを目指し、今後もフローレンスは、声を上げていきます。
▼こども誰でも通園制度の詳細は過去記事参照
こども宅食、アウトリーチ
貧困と格差の解消を図り、困難な状況にあるこども・若者や家庭に対するきめ細かい支援を行う。このため、こども食堂・こども宅食・アウトリーチ支援等への支援や学習支援や体験機会の提供などこどもの貧困解消や見守り強化を図る。
骨太 p.46
フローレンスが全国に拡大させてきた「こども宅食」が、その特徴である「アウトリーチ」(出前型福祉)の文言とともに、今年もしっかりと骨太の方針に入りました。
こども宅食推進議員連盟の皆さん、ありがとうございます。
▼こども宅食・アウトリーチに関する詳細は過去記事参照
医療的ケア児の保育所受入推進
医療的ケア児が保育所等の利用を希望する場合に、その受入れが可能となるよう、保育所等の体制を整備するとともに、医療的ケア児の育ちと生活の総合的な支援を行う。【こども家庭庁】
保育所等において医療的ケア児の受入れを可能とするための体制を整備し、医療的ケア児の地域生活支援の向上を図る。また、医療的ケアに関する技能及び経験を有する保育士・看護師を配置し、管内の保育所への支援・助言や喀痰吸引等研修の受講等を勧奨するほか、市区町村等において医療的ケア児の受入れ等に関するガイドラインを策定するなど、安定・継続した医療的ケア児への支援体制を構築する。【こども家庭庁】
こどもまんなか実行計画2024(こども版骨太) p.29, 55
2021年6月に医療的ケア児支援法が成立して以来、医療的ケアが必要なこどもへの支援が多く生まれました。
今年度は、医療的ケアに関する議員連盟(「超党派医療的ケア児者支援議員連盟」)も誕生。医療的ケア児者に関して、党派を超えた検討が進んでいます。
障害のあるこどもたちが自己肯定感を持ち、未来への希望を持てる社会、そしてその親たちが、子育てと仕事を楽しめる社会の実現に向けて、フローレンスは引き続き活動を続けます。
男性育休促進
・労働時間の実態を踏まえつつ、労働者の健康確保やライフイベントとキャリア形成の両立の観点から、更なる時間外労働の上限規制や勤務間インターバル制度を含め、時間外労働や割増賃金の在り方について検討を行い、必要な措置を講じる。【厚生労働省】
・男性の育児休業について、制度面と給付面の両面からの対応強化をすることで、男性の育児休業取得率の更なる向上を目指す。その際、男性の育児休業取得が実質を伴ったものとなるよう、男女が共に育児を担うことの重要性や「共働き・共育て」の意義が広く認識されるような取組を行う。【内閣府、こども家庭庁、厚生労働省】
女性版骨太 p.12, 13
会長の駒崎が座長を務める「厚生労働省イクメンプロジェクト」やフローレンスが提言を続けてきた「男性育休の促進」。
少しずつ制度が整い、今回の骨太でも育休取得率の更なる向上や、男性の育児休業が実質を伴ったものとなるような取り組みを行うことが示されました。
また、時間外労働の上限規制や割増賃金、勤務間インターバルについても検討を行うと記載されています。
▼これまでの取り組みや提言については過去記事参照
日本中のすべての親子が安全に、笑顔で過ごせる未来のために。
多岐にわたる国の施策の中で、「骨太の方針」に入っているものは、それだけ国として重要視している施策です。
その年の重要政策の方向性を示す「骨太の方針」に、こども・子育て支援に関する文言がたくさん入ったことを、心から嬉しく思っています。
フローレンスは、支援現場を自分たちの手で運営しながら、そこから日々得られる親子の生の声や、事業ノウハウを社会に広げ、国や地域の制度に具体的施策を提言をすることで、日本のこどもを取り巻く環境、綱渡りを強いられているハードな子育て環境を、アップデートしていきます。
こうした取り組みは、皆さんからご支援いただく寄付を原資に実施しています。
いつも応援してくださる寄付者の皆さん、参加・協働してくださっている多くの皆さんに心から御礼申し上げます。
日本中のすべての親子の笑顔のために、フローレンスはこれからも全力で取り組んでまいります。引き続きの応援、あたたかいご支援をよろしくお願いします。