もうすぐ暑い夏がやってきますね。毎年夏になると、海や川、プールなどは子連れの家族で賑わいます。また、遠くまで出かけなくても、小さなお子さんがいるご家庭では、近所のじゃぶじゃぶ池や家の庭でこども用のプールを広げて遊ばせることもあるのではないでしょうか。
そんな時、気になるのがこどもの着替え場所です。水遊びをしたあとで、更衣室を使わずに、小さいこどもを着替えさせている光景をしばしば目にしますが、SNSが発達した今、これはとても危険な行為です。
悪意のある大人に盗撮されてしまえば、デジタルタトゥーとして広く世界中に出回ってしまう可能性があります。また、公の場で着替えさせることで、こどもが「人前で裸になること」に違和感を持たなくなってしまうかもしれません。
危険なのは女の子だけではありません。男の子だから、まだ赤ちゃんだからといって、川岸やプールサイドで着替えさせるのは、絶対にやめましょう。男の子でも赤ちゃんでも小児性愛者の性的対象になります。実際、今年1月には乳児院で2歳以下の赤ちゃんに性的暴行を加えたとして元施設職員の男が逮捕されています。
こどもを守る、フローレンスの3つの取り組み
こどもを悪意ある大人から守ると同時に、性被害に遭わないようにこどもたち自身に意識付けるために、保育事業者のフローレンスが実践している取り組みを3つご紹介します。これから暑くなる季節、身近なこどもたちを守るためにぜひ役立ててください。
一方で、夏休みを利用してこどもキャンプの引率や学童の補助などをされる方もいるかも知れません。実は、こどもに関わる者として「疑われない」行動をすることも重要です。フローレンスの保育現場での取り組みを参考にしていただけたら嬉しいです。
1.こどもを「悪意ある目」から守る
フローレンスが東京と仙台に合わせて12園を運営する、0-2歳のこどもたちのための小規模保育所「おうち保育園」では、0歳からの意識付けを大切にして、こどもの人格を尊重した保育をしています。
着替えの時に全裸にならない工夫をしたり、おむつ替えの時についたてを利用したりして「見ない見せない意識」を伝えています。
赤ちゃんや幼児といえど、人前で全裸にしない。こども自身に、「見ない見せない意識」を早くからもたせるためにも、とても大事なことですね。
また、都内で2園を運営する「みんなのみらいをつくる保育園」(5歳までのこどもたちのための認可保育所)や、満1歳から未就学のお子さん対象の一時保育施設「一時保育室カムパネルラ経堂」でも、こどものプライバシーを尊重しつつ、保育士がお互いに声を掛け合いながら保育をしています。
・着替えや身体測定時にロールカーテンを閉めて外部から見えないように徹底しています。
・こどものプライバシーのためトイレや着替えを他児から見られない場所で実施しています。密室にいる時間を少なくするために、できるだけ素早く行って、他のスタッフがいる場所へ戻るようにしています。
・こどもとの1対1のやりとりで時間がかかる時は、こどもへの声掛けを多めにして、他のスタッフへ今何をしているのかわかるようにしています。
・必要以上のスキンシップはしないようにしています。
こどものプライバシーを守るためには1対1にならざるを得ないことも多いでしょう。そんな時でも、「素早く行動する」「何をしているかを周りに知らせる」ことで、こどもが安心しますし、大人もあらぬ疑念をかけられることを防げます。
「スキンシップ」自体はとても大切ですが、プライベートゾーンは絶対に触らない、年齢に応じたスキンシップをするといったことをしっかり意識してこどもに向き合う必要がありますね。
2.こどもの「尊厳」を守る ―こどもが自分の体を大切にする意識を養う
フローレンスでは、重症心身障害や医療的ケアのあるお子さんを長時間保育する障害児保育園ヘレンを都内に4園運営するほか、保育スタッフが障害のあるお子さんのお宅に伺い、1対1で保育(担任制)をする障害児訪問保育アニーを首都圏で展開しています。
フローレンスが実践している障害のあるお子さんのお世話にも、こどもの尊厳を守るためのヒントがたくさんあります。
・オムツ交換中の配慮として、布をかけ下半身を隠すようにしています。清拭の際には、室内の見守りカメラを横に向けて映らないようにしたり、パーテーションを使用するなどします。
・オムツ交換や入浴の実施の際は、環境面に考慮しながら閉鎖的な空間を作らないようにしています。導尿介助の時は一つ一つのケア手技に「次はこうするよ」と声をかけながら実施しています。
・オムツ交換でもトイレに行く時でも勝手にオムツを外したりせず、こどもに確認します。
・散歩先でオムツ替えなどある時は、どこで交換できるか予め下調べして他人に覗かれないように誰でもトイレなど利用しています。
こどもの意志を尊重する、こどもに何をしているかわかるように説明するというのは、基本的なことのようで意外とできていないかもしれません。どんなに小さくてもしっかりと伝えることで、こども自身が大切にされているという感覚を養えるものです。ぜひ実践してみてください。
3.こどもを「物理的に」守る ―こどもを犯罪者から守るために
フローレンスは、障害の有無に関わらず、すべてのこどもがわくわくするような遊びの場「インクルーシブひろば ベル」を品川区で運営しています。インクルーシブひろば ベルでは、品川区からの防犯に関する情報を利用者に発信しています。また、館内でもこどもを守るための工夫がされています。
・授乳やおむつ替えなどのお子さんのケアを、館内の鍵がかかるお部屋でできるようにするなど、プライバシーに配慮した対応を実施しています。
・「医療的ケア児地域生活促進事業」委託事業として運営しているため、いわゆる一般の保育園同様に、セキュリティ管理上、正面玄関に電子錠を設置し、インターフォンで利用登録者名・IDを確認の上、入館を許可しています。
・万一に備え、玄関入口に、丸椅子を設置し、靴の着脱やちょっと腰かけて休むようにも活用しつつ、不審者が入館した際の、「楯、さすまた代わり」として配置しています。
例えば、夏休みの公民館を利用して、こども会を開く時などには、インクルーシブひろば ベルで実践しているように、机や椅子を利用した防御法などを確認しておくのも良いかもしれませんね。
こどもを性被害から守るしくみ「日本版DBS」がついに創設!でも、まだ課題が残されています
2020年6月にベビーシッターのマッチングサービスに登録していたシッターが、小児わいせつの疑いで逮捕される事件が発生し、世の中を震撼させました。被害者は5〜11歳の男児計20人、被害があった期間は2015年からの4年4カ月間にわたっていたのです。
フローレンスではこの事件を受けて、こどもたちを性被害に遭わせない「しくみ」づくりが必要と訴えてきました。それが、「日本版DBS」です。
すべてのこどもたちを、卑劣な性被害から守りたい
フローレンスは「日本版DBS」の創設を目指し、活動を寄付や署名で応援してくださった方々の力を得て、記者会見や署名活動、90回にもおよぶ提言活動を通じて、国に訴え続けてきました。
そしてついに、2024年6月19日、「日本版DBS」の創設を含む、こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案)が参議院本会議を通過し、可決・成立したのです。
しかし、この法律では、制度の対象となる施設が限られていたり、小児性犯罪の前科がついている人しか排除の対象になっていなかったり、たとえ前科がついていたとしても犯罪歴を照会できる期間が決められていたりと、まだまだ改善すべき点があります。
フローレンスは、法案成立を歓迎しつつも同日に有識者と共に記者会見を実施し、課題を訴えました。
記者会見の内容について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「日本版DBS」の創設を含む「こども性暴力防止法」は、施行から3年後に制度が見直される機会があります。フローレンスはこの法律が、すべてのこどもたちを性被害から守れるものになるよう、引き続き政策提言を続けてまいります。
一方で、こどもたちを性被害から守るには、こどもと関わる組織の関係者が「こどもを守る意識」を持つこと、そして、こどもたち自身が「自分を守る意識」を持つことも重要です。そのためにも、「こどもにプライベートゾーンの大切さを教えるには?」「何歳から性についてこどもに伝える?」といった、性教育のあり方をしっかり議論していく必要があるでしょう。
ご紹介したように、フローレンスの保育の現場では、0歳児のこどもであっても人権尊重して接するとともに、こどもへのハラスメント研修を実施するなどして、こどもを性被害から守る取り組みをしています。
フローレンスの政策提言活動や、より良い保育を実践しそれを広める活動は、皆さんからのご寄付によって支えられています。フローレンスの応援をよろしくお願いします。