2024年7月16日~17日の2日間、市川高校の生徒10名にインターンプログラムを提供しました。
フローレンスの事業紹介や政策提言に関する講義、保育園での保育実習、社会課題に対する政策提言を考えるワークショップと、盛りだくさんの2日間となりました。
突然ですが皆さん、「自分は『社会を変えることができる』」と思いますか?
日本財団が2024年4月に発表した18歳意識調査の結果では、「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」とした若者は45.8%。
残念ながら、同時に調査を行った他の5カ国(アメリカ、イギリス、中国、韓国、インド)の中で最も低い値となっています。
※参照:日本財団18歳意識調査結果 第62回テーマ「国や社会に対する意識(6カ国調査)」
今回実施したこのインターンプログラムでは、参加した生徒の「自分は社会を変えることができる」という意識に、ポジティブな変化が見られました。
この記事では、インターンプログラムの様子や、このプログラムを通じて生徒の皆さんに感じていただいたことなどをご紹介していきます。
「社会を変えることは誰でもできる」と感じてほしい!
フローレンスは、社会課題の解決のために、国や自治体に対し、政策提言をしてきました。そして、小規模保育事業、日本版DBS制度、双子用ベビーカーのバス乗車など、多くの政策実現をしています。
フローレンスが特別なのではなく、声を上げれば、誰でも社会を変えられるのです。それを、日本のこども・若者に感じてもらうことで、将来、社会を良くするために行動する人が増えて、社会課題が次々と解決されていくと考えています。
市川高校からインターンの打診をいただき、
社会課題が身近にあることを感じ、フローレンスがこれまで行ってきた取り組みを知る中で「社会を変えることは誰でもできる」と感じてもらいたい。
という想いを込めて、2日間のインターンプログラムを企画しました。
「政策提言」って何?
1日目、まずはフローレンスのオフィス内を見学。フローレンスのスタッフ(特別支援学校の卒業生)が、オフィスツアーを行いました。
実際にフローレンスのスタッフが働いている姿を間近で見たり、フローレンス特有の温かでスタッフ間の交流を大切にしているオフィスの様子を感じていただきました。
オフィス見学のあとは、フローレンスの事業紹介と、政策提言に関する講義を実施。
「政策とは何か?」「政府とは何か?」といったことから、フローレンスが誰に対してどのように政策提言を行っているのか、その手法などをご紹介しました。「政策提言」は、高校生にとってはなかなか馴染みのないテーマで、少し難しい内容もあったかと思いますが、皆さん真剣な表情で聞いていました。
また、フローレンスが長年に渡って提言してきた「こども誰でも通園制度」(専業主婦家庭のこどもも保育園に定期通園できる制度)の実例をもとに、フローレンスがモデル事業や調査を行いながら、エビデンスをベースに政策提言を行ってきたことをご紹介。
さらには、こども誰でも通園制度の政策提言を担当したフローレンスのスタッフと、モデル事業としてこども誰でも通園制度を実施したフローレンスが運営する保育園の園長へのインタビューも実施しました。
インタビューは時間が足りなくなるくらい大盛りあがり。
「こども誰でも通園制度で受け入れたお子さんの様子は?」「社会課題について知るためには、普段からどうやって情報収集したら良いですか?」など、多数の質問が飛び交っていました!
講義だけでなく、現場も知ろう!
インターン2日目の午前中は、フローレンスが運営する保育園各園での保育実習。
「小さいこどもと触れ合ったことがほとんどない」という生徒も多かったようですが、一緒にお散歩に行って虫を探したり、絵本の読み聞かせに挑戦したりと、積極的に園児と関わることができたようです。
園長や保育スタッフと話す中で、保育園が抱える課題についても知ったり、フローレンスの園が大切にしている理念についても感じた様子。
保育園実習を終えた生徒からは、「保育士って本当にプロなんだなということを改めて感じました」「こどもたち、かわいかった!」などの感想が聞かれました。
「社会課題」について考えるワークショップを実施
インターンの最後は、身近な社会課題から政策提言を自分たちで考えるワークショップを実施。
グループの中で議論の進行を担う「ファシリテーター」、議事録を担当する「ロガー」、時間管理をする「タイムキーパー」などの役割を決め、生徒たち自身で議論を進めていきます。
事前に、生徒自身の保護者など身近な子育て経験者に「子育て中に大変だったこと」をインタビューしてきてもらいました。
まずはそのインタビュー内容を、グループごとにシェア。
「自分の体調が悪いときに、自宅でこどもの保育をしたり、保育園に送迎するのが大変だった」「託児所が予約制で、急な利用希望に対応してもらえなかった」「こどもがひとり病気になると、きょうだいみんなに病気がうつるのが大変だった」など、各自がインタビューしてきた内容をシェアしました。
その後は、シェアした課題を一つにしぼり、「どんな人の課題(困りごと)だったのか?」「背景や原因は?」など、その課題を深堀り。
深堀りしていく中で、意見が分かれたり、話がそれてしまったりなど、難しさもあるプロセスでしたが、フローレンスのスタッフが各グループに入り、サポートを行いながら議論を深めていきました。
課題を深堀りしたあとは、その課題を解決するための「政策提言」の内容を、さらに議論しながら考えていきます。
フローレンススタッフのフィードバックも受けながら内容をブラッシュアップし、最終的には提言書の形にまとめて、プレゼンを実施しました。
そして、最終的に政策提言した内容がこちら。
グループ1
・テーマ:未就学の障害児家庭の経済的負担を軽減してください
・課題:未就学の障害児を持つ家庭は、経済的・心理的・体力的に多大な負担を負っている。
・提言:未就学の障害児に対する家族負担1割の訪問医療を全国的に実現してください。
グループ2
・テーマ:育休制度を1日から ~病気のときでもこれで安心~
・課題:母親が病気になったときに保育園への送迎が大変で、さらに送ったあとの家事も大変であるため孤独感につながる。母が病院に行く時間がないことによって回復時間が取れず、自分の病気に気づくことができない。
・提言:こども、または親が病気の時には、もう片方の親が一日単位で休暇が与えられる制度を既存の育休制度に加えて整備してください。
グループ3
・テーマ:医療と保育の連携
・課題:入院が必要な0~6歳のこどもとその親が、小児病棟に入って医療を受けられるとは限らない。また、親にとって付き添いによる負担が大きい。
・提言:小児病棟を増やす、小児科医の細分化、病棟保育士設置の義務化をしてください。
わたしたちフローレンススタッフも「なるほどな」と思わせられるような、素晴らしい提言内容が出来上がりました。
議論しながらグループで一つの形にまとめあげるというプロセスは、難しい部分も多々あったと思いますが、身近な人が抱えている社会課題について真剣に考え、自分の意見と他者の意見の折り合いをつけながら形にしていく姿がとても素晴らしかったです。
インターンを通して感じたことや変化
「社会を変えることは誰でもできる」と感じてほしい!という思いで企画したこのインターン。
インターン前後で、参加生徒にアンケートを行い、このインターンを経てどのような意識の変化があったのかを確認しました。
まず、「あなたは『社会を変えることは誰でもできる』とどの程度思いますか?」という質問について、11段階で聞いたアンケートでは、実施前と実施後では+1.9ポイントの変化が。
事前アンケート平均:5.4
事後アンケート平均:7.3
「あなたは『自分は社会(学校や地域など身近な社会を含む)を変えることができる』とどの程度思いますか?」という質問についても同様に、+2.0ポイントの変化がありました。
事前アンケート平均:4.7
事後アンケート平均:6.7
また、インターンの満足度を聞いた質問では、11段階中平均9.5と、高い満足度であったこともわかりました。
生徒の皆さんからいただいたコメントも、一部ご紹介します。
「提言→フィードバック→改善の流れを何度も繰り返し、一歩ずつ着々と理想へ近づこうとする大変さを、2日目のワークショップを通して体感できました。どの問題も単一の理由ではなく、さまざまな背景があることに気づけました。」
「保育実習でこどもたちに実際に関わらせていただき、とても良い経験になりました。経験することで必要性に気づく事柄もあったので、新しい視点を得られました。」
「『社会』は沢山ある、という言葉が心に残っていて、小さなことからなら自分でもできるのかもしれないという自信につながりました。」
また、今回引率いただいた教員の方からも、嬉しいコメントをいただいています!
「公民の授業でも、社会課題を発見し、解決策を検討する、という学習は行ってはいるのですが、どうしても課題発見自体が漠然としたものになりがちです。フローレンスの取り組みや、事前のインタビューを通して具体的な社会課題を生徒が発見し、論じることができるようになった点に大きな成長を感じました」
「生徒からの質問などに真剣に答えてくださり、大変ありがたかったです。どのスタッフの方も生徒の発言を否定せずに聞いてくださり、思考をうながしてくださいました。日頃から、このような心理的安全性の確保されたミーティングをされているのではないかと思い、大変勉強になりました」
「特に印象的だったのは、ファーストステップである課題を考える段階においても、生徒たちが「誰が」「いつ」「どこで」「どのような課題があるのか」具体的な状況を想像するところから苦労していた点です。具体的に想像し、別の角度で意見する生徒たちと意見を交わす活動を通じて、多角的に物事をとらえること、具体的な状況をイメージすることの大切さを身に染みて感じたと思います」
若い世代に「社会を変える」という意識を手渡したい
フローレンスは、「こどもたちのために、日本を変える」をビジョンに掲げ、これまでこども・子育て分野において、民間の立場から多数の事業や政策提言を行いながら、「社会を変える」ことに挑戦してきました。
社会を作っているのは、年齢も職業も関係ない、わたしたち一人一人す。
「社会を変える」というととても大きなことに思えるかもしれませんが、大小さまざまな「社会課題」は実は身近にたくさん転がっていて、それを変えられるのは、小さなわたしたち一人一人の力だと信じています。
政治家じゃなくても、官僚じゃなくても、「社会を変える」ことはできる。
まずは身近な「社会」に目を向けてみませんか?社会を変えるのは、あなたかもしれません。
今回インターンプログラムにご参加いただいた市川高校の皆さん、ありがとうございました!
◆学生向けインターンを希望する学校関係者の方へ
今後のインターン受け入れについては未定ですが、ご興味のある方は下記メールアドレス宛にお問い合わせください。
認定NPO法人フローレンス 代表室
rr@florence.or.jp
※「学生向けインターンの問い合わせ」であることを明記の上ご連絡ください。
※ご希望の条件や時期などによって、受け入れができない場合がありますのでご了承ください。