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こどもの人生に一生涯影響する、こども時代の有害体験(ACE)を知っていますか?

こどもの人生に一生涯影響する、こども時代の有害体験(ACE)を知っていますか?

#ソーシャルアクション

「こどもたちのために、日本を変える」。

フローレンスは、こどもの虐待や貧困問題、育児の孤立・孤独など、こども・子育て領域の社会課題の解決を目指し、病児保育、保育園、障害児保育、こども宅食、赤ちゃん縁組などの数々の福祉・支援事業を運営するとともに、政策提言や文化醸成などの活動を行う国内最大規模の認定NPO法人です。

フローレンスが取り組むさまざまな活動の中で、こどもたちが直面する深刻な問題の一つに「逆境体験」があります。この問題に目を向け、解決に向けた一歩を踏み出すために、わたしたちは「ACE」という概念に注目しています。こども期の逆境体験が、大人になってからも長期的な影響を及ぼすことは、国内外の研究で明らかにされていますが、日本ではまだ十分に認知されていません。

ACEって何?勉強会を開催しました

ACE(エース)はAdeverse Childhood Experiencesの略で、日本語で「こども期の逆境体験」と訳されることが多いです。わかりやすく言うと「こども期の有害体験」です。ACEにさらされたこどもは、大人になった後も生涯にわたって、健康面・社会経済面等でさまざまなリスクを背負うことになります。

「逆境体験」と聞くと、「人は逆境を乗り越えて強くなる」という意味での「逆境」を想起する人もいるかもしれません。しかし、ACEはこの意味での「逆境体験」とは全く異なり、虐待や家族の精神疾患・自殺など、心の傷(トラウマ)になるような体験を指します

「ACE」は、アメリカでは約40年前に注目されるようになり、さまざまな施策が行われています。しかし、日本では、「ACE」の研究は行われてはいるものの、認知度は低く、「ACE」に着目した政策もほぼ存在しません。フローレンスは、日本でも「ACE」の認知度を高め、取り組むべき政策課題として議論が進むように活動していこうと考えています。

その第一歩として、ACEの専門家である三谷はるよ先生(大阪大学准教授)をお招きし勉強会を開催しました。ここでは、その概要をご紹介します。

▼詳細はこちらの勉強会動画をご視聴ください

ACEが与える影響

ACEが着目されるようになったきっかけは、1980年代初頭、アメリカの肥満専門クリニックで、患者の過半数にこども期の性虐待被害があるとわかったことでした。

その後、日本でも2022年に、三谷先生が参画されたJACSIS(The Japan COVID-19 and Society Internet Survey)学術研究チームが行った全国調査において、18~82歳の男女3.2万人に対して、10のACE項目を使った調査を行いました。

18歳になるまでに経験したこと

この調査の結果、ACEスコアが高い人(10項目のうち当てはまる項目数が多い人)ほど、実にさまざまな疾患等を患う人が多いことがわかりました。

ACEスコアと疾患の関係

この原因としては、下記が挙げられます。
・慢性的なストレスの曝露がストレス反応への調整不全を引き起こす
・ストレスに敏感な脳領域での構造的・機能的な変化(前頭前野・海馬の萎縮など)が起こる
・環境要因によって海馬等一部の遺伝子の働きがオフになる

また健康問題のみならず、ACEスコアが高い人ほど社会経済的に厳しい状況にあり、未婚・離別の経験者が多く、社会的に孤立し、こどもに対して虐待やネグレクトを起こす傾向にあることもわかりました。

ACEスコアが高い人の状況

こども時代の慢性的なストレスは複雑性PTSD(慢性的な心の外傷体験が原因で発生する精神障害)を引き起こすこともあります。ACEを生き抜いた「ACEサバイバー」は、自分の意思とは無関係に多重困難を背負わされながら、日々を懸命に生きている人々と言えます。

わたしたちにできることは?

ACEサバイバーがこどもか、成人かで、わたしたちにできることは異なります。

こどもに対する支援

こどもの場合、PCE(ピース)=Positive Childhood Experiencesを作ることが大切です。これは文字通り「こども期の肯定的体験」で、こどもの帰属意識やつながりを構築できるポジティブな体験です。

上述の三谷先生が行った全国調査では、18歳になる前にPCEスコアが高い人ほど、様々な項目でリスクが軽減されることがわかっています。

PCE項目

こどもへのアプローチは、そのこども自身へのACEによる悪影響を軽減することに加え、次世代のACE予防にもつながります

親に対する支援

親に対しては、同じく三谷先生が行った全国調査において、ACEありの親の虐待率について、周囲の人々による情緒的な支えが多いグループではポイントが下がることがわかっています。親に対するソーシャルサポートが効果的です。

ここで重要なのは、ACEを経験した親を責めたり、追い込んで、孤立させたりしないことです。
繰り返しになりますが、「ACEサバイバー」は、自分の意思とは無関係に多重な困難を抱えながらも、日々を懸命に生きている人々です。

こども時代に不適切な子育てを受けていた親は、何が「不適切な子育て」なのかがわからない場合が多く、親になってからも我が子に対して不適切な子育てをしてしまうことがあります。

だからこそ、ACEサバイバーの親を突き放すのではなく、親子まるごとサポートし、親子全体を見守ることが重要です。それにより、虐待の連鎖を断ち切ることができるのです。

サポートのイメージ

再受傷を防ぐためのケア

実際には、ACEサバイバーが勇気を出して支援を求めたにもかかわらず、支援現場で心無い言葉を浴びて「再受傷」するケースも少なくありません。

このような状況を踏まえ、近年、支援の現場ではTIC(Trauma Informed Care)という「心の傷(トラウマ)に配慮するケア」の概念が生まれています。
再受傷を防ぐために、「すべての人が逆境体験・トラウマを抱えているかもしれない」という視点を持って支援にあたる考え方で、これは支援職のみならずわたしたち一人一人が、優しい社会を作るために意識できることだと思います。

さいごに

フローレンスはこれから、ACEに対してできることを考え、実行していきたいと思っています!
皆さんも、日々の生活でTICを心がけたり、PCEを提供したり、ACEについて広めたり、できることから取り組んでいただけると嬉しいです。

ACEのない社会を目指して、ぜひ一緒に取り組んでいきましょう!

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