障害児や医療的ケア児を受け入れる保育園は増えてきており、少しずつではありますが、親が働く環境は整い始めています。それでも就労を希望するすべての障害児の親が働けるわけではありません。預け先が見つからない、集団保育が難しいと判断されたなどの理由で、保育園にこどもを預けられないご家庭もあります。
そんな障害児家庭の課題を解決するのが、フローレンスの障害児保育サービスの一つ「障害児訪問保育アニー」。アニーでは、保育スタッフが利用者のご自宅に訪問し保育を行うことで、通園が難しいこどもがいる親の就労を支えています。
今回の記事では、障害児を育てている筆者がアニーの保育現場を見学した時のことをレポートし、アニーの魅力に迫ります。
障害児訪問保育アニーとは?
障害児訪問保育アニーは、利用者の自宅でマンツーマン保育をするサービスです。平日5日間、一日最大8時間、お子さんの保育を行います。
疾患や障害の影響で集団保育が難しいお子さんや外出が難しいお子さんも保育の機会を得ることができます。自宅での保育なので、当然送迎は必要ありません。送り迎えに時間を費やさなくてもいいことは利用メリットの一つです。
また、訪問する保育スタッフは、厚労省の定める特定行為(たんの吸引や経管栄養)について「喀痰吸引等研修」の認定を受けているため、これらの医療的ケアのあるお子さんの利用も可能です。
※上記以外の医ケアのあるお子さんも一定の条件のもと利用が可能な場合があります。
▼共同保育「アニーバディ」に関する記事はこちら
わが子が人工呼吸器でも「はたらく」をあきらめない! アニーバディご利用家庭へインタビュー(前編)
わが子が人工呼吸器でも「はたらく」をあきらめない! アニーバディご利用家庭へインタビュー(後編)
訪問可能エリアは東京都内の以下の区です。
千代田区、港区、新宿区、台東区、品川区、渋谷区、杉並区、豊島区、北区、板橋区、練馬区、文京区、中野区、目黒区、中央区、江東区、荒川区、墨田区
アニーのマンツーマン保育の1日の流れと特徴
訪問保育、といってもイメージがつかない方も多いかもしれません。そこで今回は、実際に利用されているお子さんの保育の様子をご紹介します。あわせて、利用している親御さんにインタビューし、アニーを利用してみての率直な感想もお聞きしました。
今回保育の様子を見せていただいたのは、東京都内に住む鈴木さんのご家庭。保育を利用するのは福山型筋ジストロフィーのお子さんで、通称:あちょくん(2024年7月現在4歳)です。重症心身障害児で、感染症にかかると重篤化する危険性があり、3年ほど前からアニーの利用を始めました。
アニーを利用した時の1日の流れ
あちょくんの保育の1日の流れは以下のようになっています。週に一度、自宅外での交流保育として近隣の保育園に行き、集団生活も体験します。
10:00 引き継ぎ、保育開始
10:15 朝の会(歌、呼名、出席シール貼りなど)
10:30-11:30 午前活動(公園や児童館に散歩、室内遊び、交流保育など)
12:00 昼食
13:30-15:00 昼寝
15:30 おやつ
16:00-17:30 午後活動
18:00 引き継ぎ、保育終了
アニーの特徴
ここからは、実際にあちょくんの保育を見学してきた様子をお伝えするとともに、筆者が素敵だなと感じたポイントをご紹介します。
アニーの特徴1. 個別だからこそできるその子にあった保育
「これ、あちょくん好きだよねー?」と担任の先生が持ってきたのはしかけ絵本。懐中電灯で照らすといろいろな形が浮かび上がります。
光の形や動きに興味津々のあちょくん。
この日は担任の先生の他に巡回の先生も来る日でした。アニーでは担任の保育スタッフは1名ですが、担任以外にも担任をサポートする保育スタッフ、児童発達支援を担当するスタッフ、訪問看護師などが保育中に定期的に巡回をしてチームでお子さんの安全な保育を行っています。巡回の先生がくることで、普段とは違う視点から遊びの提案を受けられます。
歌を歌いながら読む絵本を持ってきてくれていた巡回の先生。あちょくんも集中して見ています。
保育に使う遊びには、先生のアイデアや手作りグッズもたくさん!その子に合わせて工夫してくれているのがよくわかります。
アニーの特徴2. 食事やおやつもこどもにあった形態で、ペースも合わせて
アニーの保育は自宅で行うため、給食はありませんがいつも家で食べているものと同じものが食べられます。
先生の介助を受け、あちょくんも慣れた様子でおやつをパクパク食べていました。
アニーの特徴3. こどもが大好きな保育スタッフが担当し、チームで保育
鈴木さんの担任のこみちゃん先生は、お子さんのことを「本当にかわいい!」とおっしゃっていて、終始優しい笑顔で保育をされていました。この仕事につくまでは障害のあるお子さんに全く関わりがなかったという先生。最初は不安もあったと言いますが、今はすごく楽しく保育ができていると言います。
こみちゃん先生「アニーを利用しているお子さんには言葉でコミュニケーションが取れない子も多く、はじめは『しっかり気持ちが読み取れてるかな?』と不安に感じたり『何をしてあげたらいいんだろう』と思ったりすることもありました。でも毎日見ていると、こどもと関われる時間も長いし、その分こどもの成長が見えるようになってきて、すごくやりがいのある仕事だなと思うようになりました。マンツーマンでゆっくり関われるし、その子なりにいろんな気持ちをいろんな手段で表現してくれるのがかわいくて仕方ないです。だからこそこの子にどんなことをしてあげようかなと考えながら保育ができています。それも1人で考えるのではなく、巡回の先生や看護師にもアドバイスをもらいながらチームで考えられるので、心強いですね。私も医療の専門家ではないですが、看護師や他の事業所の療法士さんに聞きながら私ができることをいつも探しています。」
「アニーでよかった!」通園型保育園も利用した経験のある利用者にインタビュー
あちょくんのお母さんの鈴木さんは、このようなアニーの保育にとても満足しているそうです。鈴木さんは、アニーを利用する前は通園型の保育園を利用していたとのこと。両者の違いやアニーを利用している感想についてお聞きすると、一言目に返ってきた言葉は、「私はアニーで本当によかったと思っています!」という力強い回答でした。
鈴木さん「あちょが病気の確定診断を受ける前は通園型の保育園に通っていました。特に不満もなかったのですが、こどもの病気が発覚し、立て続けに誤嚥性肺炎になったり感染症にかかったりしたことで主治医に『今の保育園に通い続けるのは難しいのでは』と言われたことで退園することになりました。でも当時、私はフルタイムで仕事をしていたため、どうしてもこどもを預ける場所が必要だったんです。そこで知人にアニーを紹介され、迷う暇もなく利用を決めました。
実際に利用を始めてみると、『神なのかな?』と思うことばかりで(笑)、今はアニーで本当によかったと思っています。とにかく担任の先生が本当にいい人で。あちょのことをすごくかわいがってくれていますし、よく知ってくれて、あちょに合った保育をしてくれます。うちの子はたまに吸引が必要なのですが、そのために3号研修も取ってくれて、安心して預けることができています。」
鈴木さんは、あちょくんの病気がわかったことをきっかけに、疾患・障害児向けのサービスを展開するブランド「famicare」を立ち上げた起業家です。障害児育児をしていくうちに自分が感じた課題を解決すべく、情報サイトやアプリをリリースしました。
鈴木さん「アニーがあることで仕事に集中できるので、私も障害児や疾患児の生活をよくするサービスを提供できるよう、開発に打ち込むことができています。私がアニーに支えられてできた時間を、社会をよくするために使いたいと思っています。」
アニーがあることで親の就労機会が失われずに済み、そのことで障害児家庭の生活をよくするサービスを生み出す環境につながった、という障害児サービスの好循環が生まれたのです。
アニーがあることで親は安心して働ける
障害があり、集団保育が難しいこどもや何らかの理由で通園型の保育園に行けないこどもでも保育が受けられる障害児訪問保育アニー。鈴木さんのように、このサービスがあることで働くことを諦めなくてよくなった親御さんが今日も安心して仕事をすることができています。
こどもに障害があることで預け先がなく、働くことが難しい、と感じている方、ぜひ一度アニーの利用を検討してみてください。