2024年8月、イオンシネマ名取にて「医ケア児おやこ映画会」を行いました。
2回目となる今回は、もっと多くのご家族に楽しんでいただきたい!との思いから、仙台市だけでなく仙台市近郊の自治体にお住まいの方にも対象範囲を拡大し、多くの皆さんに楽しんでいただくことができました。
医療的ケアが必要なお子さん(以下医ケア児)は宮城県内で333人(※1) いるということが昨年度の調査でわかりました。このお子さんたちは医療的ケアが常時必要となるので、外出する際にも医療機器やケア用品が必要だったり、痰の吸引や栄養の注入など定時のケアが発生したりします。そもそもの外出が難しい中、さらにきょうだいもとなるとその大変さは想像に難しくないはずです。きょうだい児を含めた医療的ケア児を持つ家庭への支援もまだ社会には多くなく、家族総出でお出かけする機会はなかなか得られないのが現状です。
フローレンス仙台支社では、このようなハードルを少しでも低くするため、映画館を貸し切りにして映画会の上映会を行いました。
医ケア児家庭の家族全員が安心して楽しんでもらうためには環境面の工夫が必要です。場内は通常よりも少し明るめにし、吸引や注入といったケアを気軽にできるように手元がなるべく見えるようにしました。また、大スクリーンに映る迫力のある映像は、あまりの迫力にびっくりしすぎないよう音量も控えめにし、上映中の入退室も自由、声やケアの音出しOK、家族全員がマイペースに楽しめる環境づくりを行いました。また、席につくまでの時間も長めに確保し、上映時間に急かされることなくご家族がケアしやすいようにお子さんの姿勢を整えていざ上映開始です!
駐車場から施設へ、施設の受付から席への移動時にはスタッフもフォローに入り、また事前にあった案内の通り鑑賞中でも機械音や声を気にすることなく楽しんでいただきました。
あるスタッフは、「ケアの音だけでなく、小さいお子さんの声などもありましたが、それらがゆるされたやさしい空間でしたね」と。こういう時間が増えていくといいなと思います。
参加されたご家庭も「上映時間に急かされることなく、落ち着いて映画を鑑賞する体制が取れました」とうれしそうに話してくださるご家庭や、上映後には「本人だけでなく、きょうだい児も一緒に連れて出かけるということのハードルが下がり、親の気持ちの負担も軽く参加することができました。」と前向きな気持ちで会場を後にするご家族もいました。
ほんの少しの工夫と必要なサポートを整えることができれば、医療的ケアが必要なお子さんや障害を抱えるお子さん本人だけではなく、きょうだい児も含めたそのご家族も楽しく過ごせる環境を提供することができる!それを証明できるひとときとなりました。
医ケア児おやこ映画会を支えるボランティアの活躍
今回のボランティアにご参加いただいたのは小学生から大学生。おやこ映画会に初めて参加した方もいれば、前回に引き続き参加いただいた方もいました。
ボランティアの皆さんには駐車場から施設内への誘導、施設内受付から座席までのご案内などのお手伝いをしてもらいました。医ケア児やそのご家族と接する機会は滅多にないとのことで、今回の経験はボランティアの皆さんにとっても貴重な機会だと感じていただけたようです。
ボランティアさんからの感想では、「鑑賞後の親子の顔を見てやりがいを感じた」「昨年と同様、楽しくてとても勉強になりました」「普段出来ないことを経験することができとても楽しかったです!」と活動参加への価値の他、純粋に家族のサポートということで一緒に楽しんでくださった方もいらっしゃいました。
今後のイベントでも、さまざまな方々と一緒に多くの家庭を笑顔にしていきたいと思います。
“誰でもできるサポート”が誰でもおでかけできる環境をつくる
今回フローレンススタッフの中にも、初めて医ケア児家庭と接するスタッフもいました。事前に「医療的ケアシッター ナンシー」の活動の様子の記事などを通して、医ケア児家庭やきょうだい児に関する課題を見聞きし、どんなサポートができるだろうかと緊張のなか当日を迎えましたが、想像していたよりもできることはたくさんあると気付いたそうです。
「初めて医療ケア児や障害を抱えるお子さんのいるご家庭とお会いしてみて、想像以上の荷物の多さに衝撃を受けました。駐車場から会場入口までの移動さえ大移動だな、という印象でしたので『まずは自分にできることからお手伝いしよう!』と荷物持ちや、場内のエスコート、写真撮影のお手伝いなど気軽にできるサポートや声がけを行いました。無事にシアターへ着くと、きょうだい児やお友達とはしゃいでいるお子さんの姿や、楽しそうに写真撮影をするご家族を見て幸せな気分になりました。お見送りの際には保護者の方から『いつも見ないような表情が見れた』『わたし(保護者)もゆっくり楽しめました』との感想も直接聞けました。想像だけで自分のサポートに限界を感じていましたが、できる範囲のことをするだけでもこんなに幸せそうな雰囲気に包まれるなんて、ととても大きな気付きを得られました。」
今回直接的に行ったサポートは、多くの人が街中で目にするような ”電車で席を譲る” ”道案内をする” と同じような親切レベルのものです。おでかけが消極的になる要因の一つである”周囲への遠慮”も、今回のようなサポートがあれば乗り越えられること、あたりまえに家族や友達とでおでかけできる大きな一歩につながると学んだそうです。
また、それと同時に、段差や道幅といったハード面の課題解消や社会の受け入れ体制も不可欠だと感じ「人が行うサポートだけではなく、今回の映画会で取り入れた、出入り自由・声出しOK、貸し切りシアターといったような環境面や社会によるサポートは欠かせないと思います。”家族でおでかけ””お友達とおでかけ”があたりまえになるためには地域、社会全体を巻き込んだサポート体制をつくっていくことが大事だと感じました。」と話してくれました。
医ケア児もきょうだい児も、みんなが”あたりまえ”を経験できる社会のために
医療的ケア児の数は年々増えています(※2)。「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(以下、「医療的ケア児支援法」)が施行されてから2024年9月で3年が経ちますが、仙台の医療的ケア児家庭を取り巻く環境は、まだまだ厳しく支援が足りないのが現状です。今回の映画会を企画したのは、「医ケア児もいっしょにまざらいんキャンペーン」での取り組みの一つです。「まざらいん」とは、仙台弁で「いっしょにやりましょう」という意味です。人や社会とつながってみんなで医療的ケア児を育てよう。必要な支援が必要なときにすぐに使えて、医ケア児もきょうだい児も、みんな子どもらしくいられるようにという目的のもと、今後も様々なイベントを企画進行しています!
フローレンスでは、仙台市の抱える医ケア児家庭の課題解決事業の一つとして、医療的ケア児家庭に看護師が訪問し、児童発達支援を行う事業「医療的ケアシッター ナンシー」を開始し、今年で3年目を迎えます。
ベテランの看護師による個性を活かす医療的ケアで、お子さんの「やってみたい」を一緒に見つけてきました。また、訪問看護との同日利用や、保護者の方の外出などご家庭のニーズに合わせてナンシーでは多くの家庭の「やりたい、やってみたい」を実現中です!お子さんだけではなく家族と向き合うケアを行っています。
▼仙台の「医療的ケアシッター ナンシー」についてはこちら
https://nancy.florence.or.jp/information-sendai/
フローレンスがこのような活動を精力的に行えるのも寄付者の皆さまがいてこそです。今回のおやこ映画会も無事に開催できました。厚く感謝申し上げます。
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