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【11月は児童虐待防止推進月間】生まれたその日に失われる命を救う フローレンスの赤ちゃん縁組

【11月は児童虐待防止推進月間】生まれたその日に失われる命を救う フローレンスの赤ちゃん縁組

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2024年9月にこども家庭庁が発表したデータによれば、2022年度に虐待で命を落としたこどもは56人(心中以外)、そのうち約半数の25人が0歳児であり、15人が月齢0か月児。加害者の約40%が母親でした。

月齢0ヶ月児には、医療機関で出産できなかったために適切な処置がされず出産と同時に亡くなってしまった赤ちゃんや、自宅や公園のトイレなどで独りで出産し赤ちゃんをそのまま置き去りにしてしまったという事例も。

当然、母親は虐待による殺人または死体遺棄の罪に問われることになります。成人していれば名前も公表され、社会的な制裁も受ける事になるでしょう。

生まれてきたばかりの赤ちゃんが、約1ヶ月に1人の割合で虐待死する背景には何があるのか。

フローレンスでは、こどもの虐待死ゼロを目指して行う様々な取り組みに加え、2016年から運営している「赤ちゃん縁組事業」では特別養子縁組と並行して「にんしん相談」を実施しています。

「にんしん相談」は、妊娠出産にまつわる悩みや、予期せぬ妊娠を周囲に相談できず悩む方に、フローレンスの専門相談員が伴走する支援です。

今回は、この「にんしん相談」から見えてきたことをご紹介します。

※個人が特定されないように、にんしん相談に寄せられた複数のエピソードを元にして作成したストーリーです。


秋山裕子(仮名)さんのエピソード

秋山さんは3人のこどもを抱えるシングルマザーです。数年前に夫のひどいDVから逃れ、避難所生活を送ったのちに、離婚が成立し、今のアパートでこどもたちと暮らしています。

養育費がもらえず、頼れる親も親戚もありません。ひとり親手当とバイトの掛け持ちでどうにか生活していました。

子供達のイメージ

そんな秋山さんのもとに、子育てや生活の悩みを相談できる男性が現れます。やがて婚約し、新しい生活を思い描き始めた矢先に、妊娠が分かります。喜ばしいはずの新しい命でした。

ところが、妊娠を打ち明けた途端、男性は音信不通に。それでも、毎日の仕事とこどもたちの世話に追われていた秋山さんは、悲しみに暮れる暇もなく、自分の体を気遣う余裕もなかったといいます。さらに、家計が厳しく保険料の支払いが滞りがちだったため、病院へ足が向かないままに月日ばかりがすぎ、気づけば中絶できる期間を過ぎていました。

途方に暮れた秋山さんはインターネットで検索し、特別養子縁組という制度があることを知り、フローレンスへメールを送ります。

「こどもを寝かしつけたあと、夜中にメールをしたのに翌日には返事がきて。不安を受け止めてくれた、そう感じてすぐに電話をしました。」

悩んでいる女性のイメージ

電話でフローレンスの相談員にゆっくりと話を聞いてもらううちに「なんで自分だけがこんなに悩んで苦しまなければならいんだ」と、初めて相手の男性への怒りが湧いてきたといいます。

「忙しくて不安で、何も考えられなくなっていました。話を聞いてもらって、ようやく自分の気持を吐き出すことができたんです。

後日、フローレンスの相談員が同伴して病院を受診し、無事に役所で母子手帳を取得。分娩施設も決まり、安心して出産できる環境を整えることができました。

『お金の心配はしなくていいから、一緒に病院にいこう』といって、東京の事務所からこんなに遠い地方まで駆けつけてくれました。もう、ひとりで悩まなくていい、そう思ったら涙が止まらなくなりました。

その後、秋山さんはフローレンスの相談員と話し合いを重ね、自分自身と生まれてくる赤ちゃんのことを一番に考えて、養親に託すことを決めます。

「自分で育てたいという気持ちが無いわけではありませんでした。生まれてきた赤ちゃんは、本当に可愛かった。生まれてから最終的に決めたらいいから、と相談員さんに言われていたので、もう一度よく考えたけど。現実的に3人のこどもをしっかりと育てなくちゃいけないと思ったら、どうしても余裕がない。養親に育ててもらうのがやっぱりいいと思って、託すことにしました。相談員さんが言ってくれたんです。特別養子縁組はこどもを捨てることじゃない。養子縁組は、幸せになるためにあるんだよって。

入院期間中は赤ちゃんのお母さんとして心をこめてお世話をした秋山さん。

「抱っこもしたし、たくさんお世話ができたので、悔いはありません。」そういいながらも、お別れの時には涙を流しながら赤ちゃんに声をかけました。「たくさん愛されて育ってね」

新生児のイメージ

赤ちゃんは今、こどもを心待ちにしていた養親の家庭で、愛されてすくすくと元気に育っています。Aさんの想いは、きっと届いていることでしょう。

「あの時相談していなかったら、どうしたらいいかわからず家で産んでいたと思うし、そうなったら、自分もこどもたちも赤ちゃんも、どうなっていたか分からなかった」


妊娠を告げた途端、音信不通に。背景に性教育の不足や犯罪の事例も

妊娠を告げた途端に相手の男性が音信不通になるケースは、フローレンスの「にんしん相談」にもしばしば寄せられてきます。過去には、相手の男性の同意がなければ中絶できないと複数の病院で断られた末に、悲しい結末を迎えてしまった事件報道もありました。

この問題の背景には複雑で多様な課題があります。

日本の性教育の遅れや不足により、男女ともに正しい避妊や妊娠の知識が乏しく、出産育児がライフステージに大きく影響するという認識もできていない場合があります。また、女性側が若年であったり、経済的に困窮していたり、心身の不調や孤立など、社会的に弱い立場で予期せぬ妊娠が起こることが非常に多いこともわかっています。また、性犯罪によって妊娠し誰にも打ち明けられないまま悩んでいるケースもあります。

もちろん、予期せぬ妊娠がそのまま遺棄や虐待死につながるわけではありません。ご自身でこどもと生きていく道を見つけて、生活をしてる方もいれば、頼れる親や親戚がいて生活を支えてもらっている人もいます。

一方で、秋山さんのように頼れる人がなく途方に暮れてしまったり、性被害による妊娠や夫のDVから逃げているさなかの妊娠発覚など、身近な人に打ち明けて助けを求めることすら困難な人たちもいます。

妊娠は、女性単独によるものではありません。

それなのに、日に日に大きくなるお腹と向き合って不安を募らせ、苦しみ続けた結果の出来事に対して、社会的制裁が母親だけに向けられてしまうことは大きな課題であるとフローレンスは考えています。

「にんしん相談」で生みの親に寄り添う支援を実施

予期せぬ妊娠による虐待・遺棄から赤ちゃんを救いたいとの想いから、フローレンスは2016年に赤ちゃん縁組事業(にんしん相談・特別養子縁組あっせん事業)を開始しました。

2023年度までに、こどもを迎えることを希望する41組のご夫婦に新しい命を託すとともに、4,500件以上ものにんしん相談に相談員が対応してきました。「深夜・休日・時間帯を問わず、匿名で相談したい」というニーズの高さに応じるため、2020年5月にはLINEで24時間いつでもチャットボットが応答する相談窓口も開設し、2023年度までに11,070件の相談に対応しています。

予期せぬ妊娠に悩む女性が誰にも相談できないままに出産し、悲しい結末を迎えないためにも、フローレンスでは「にんしん相談」で全国の相談者さんに寄り添い、病院の受診に付き添ったり、役所での手続きをサポートしたり、安心して分娩できる病院を探したりといった支援をしています。

フローレンスが最後のセーフティーネットとなって、急を要する相談者さんに、「お金の心配は要らないから、とりあえず病院に行って」と伝え、赤ちゃんの命を救えるのは、多くの寄付者さんの支えがあるからこそできる支援なのです。


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