フローレンスでは、2017年度より保育園の先生とソーシャルワーカーなどの専門職が一緒にご家庭をサポートする保育ソーシャルワークに取り組んでいます。
保育園の先生たちによる、ご家庭への支援を実際にサポートするだけでなく、関係機関との連携の流れや、支援記録のとりかたなど、支援のために必要な知識について、社内の保育現場を中心に研修も行ってきました。
こうした取り組みをより多くの保育士の皆さんに届けたいという想いから、この度、株式会社コドモンが運営する『コドモンカレッジ』に研修動画を掲載していただきました!
コドモンカレッジは、時節に合わせたライブ研修と好きな時間に視聴できる研修動画を通して職員の学びの機会を提供しており、全国の保育/学童施設12,000施設以上が利用(2024年11月時点)している保育士向けのオンライン研修サービスです。
今回掲載した動画を通じて、安心してこどもたちやご家庭と向き合えるきっかけになれば幸いです。
保育ソーシャルワークについてはこちらでも紹介しています。
親子支援における保育園の「困りごと」
保育園では、発達がゆっくりなお子さんへの個別対応や、困りごとのある保護者への対応など、親子にまつわるさまざまなサポートが必要とされる場面が日常的にありますが、「この対応で良いのだろうか」と現場で先生方が悩むことも少なくありません。
加えて、保育園の多機能化が進む中で、保育園には、子育て支援の期待が一層高まっています。
ただ、保育士資格取得時点では、実習などで実践的に学ぶのは「保育」が中心となるため、いざ現場に立った際には、保護者支援のためのスキル・知識の不足に直面したり、研修を受けようとしても受ける機会がない、人手不足で研修のために時間を割くことも難しい、という実態があります。
フローレンスが実施した全国の認可保育所、認定こども園、地域型保育事業、幼稚園を対象にした調査では、以下のような声がよせられました。
明らかに困窮しているご家庭への支援をどのようにしていくか絶えず迷いがある。
専門職からアドバイスをもらえるわけでもない中、対応していること自体に不安が大きい。
保育士はこどもの専門であり、大人への対応はかなり難しい。
支援が必要な親子に関わるにはスキルアップの手段と人手が足りない。
このように、現場では不安を抱えながら手探りで親子への支援を行っている状況が見受けられます。
さらに、自治体もまた現場のサポート体制が追いついていないことも多く、研修を実施するためのさまざまな課題があることがわかりました。
『保育園等を通じた地域の見守り体制強化のための勉強会』参加者アンケートより
財源や人手不足などの課題はもちろんありますが、それ以上に保育園などとの理解や協力をどのように得ていくか、必要なノウハウをどのように集めるか、適切な専門家や監修者をどう見つけるかについてなどがあげられました。
研修や支援体制の整備を進める上でのハードルがいくつかあると感じていることが見えてきました。
研修の対象を社外保育園へ
こういった社会背景がある中で、これまでフローレンスでは、社内の保育現場向けに研修や個別のサポートを実施してきましたが、2023年度には、品川区の社外の保育園で「保育ソーシャルワーク研修」を4回実施しました。
「保育ソーシャルワーク研修」とは、強い育児不安など、困り感を抱えているご家庭に対して、保育園としてどのように対応したらよいか、どうすれば必要な支援を届けられるかについてお伝えしている研修です。
今回品川区の保育園で実施した研修内容としては、保育園での実際の支援の流れを具体的にイメージできるように、架空の事例を取り上げて、ストーリー仕立てで紹介しました。
また、「園だけで抱え込まず、外部機関と連携すること」という点にポイントを置くとともに、親子のおかれている状況について、これまでを振り返り、これからのことを十分想像して、支援をこの先につなげていく重要性についてお伝えしました。
受講後のアンケートでは、研修前と後で以下のような変化が見られました。
また、研修を受けた先生方からは、以下のような声がよせられました。
すごく分かりやすく、具体的なイメージが湧きました。ただ、すぐに対応が必要になった場合、まだどんな支援があるのかわかっていないので、園として保護者へ提案できるように情報を知っておきたいと思いました。
この対応でよかったのか、引っかかっていたことが理由も含めてわかり、とてもよかったです。
自分の園の場合どうしたらいいか、その場で疑問に思ったことを直ぐに質問できること、それに対して丁寧にお答えいただいたことで、タイムリーに情報を得ることができて学びになりました。また、色々なケースをお聞きできたことで、もし起きたときのイメージにつながることができました。
当初「園ではじめて要支援家庭をお預かりすることになり、不安感があった。」といった声があった中で、研修を通じて、数回の研修を経て変化が見られることに大変嬉しく思っています。
このように、研修が現場に対して少しでも前向きな影響を与えられたことが、私たちにとっても大きな成果です。
「こんな時どうする?子どもの傷あざ」研修の公開へ
これまでの取り組みを通じて得られた成果を踏まえ、このような研修をより多くの保育士の皆さんのもとに届けたいという想いから、コドモンカレッジに研修動画を掲載することとなりました。
今回は、園児に傷やあざがあったときの対応に関する研修動画を掲載しました。
▼概要
研修タイトル:『こんな時どうする?子どもの傷あざ』
研修内容:
・傷あざを見るときのポイント
・こどもや保護者への具体的な話の聞き方
・記録の残し方
・関係機関への連絡を判断するポイントや連絡をする際の対応について
動画時間:約30分
お子さんに傷やあざがあるのを見つけて「ちょっと気になるな」、「不自然に見えるな」と感じたことがある方もいるのではないでしょうか。
この研修動画では、そんな場面で役立つ、お子さんに傷あざがあったときの具体的な園での対応方法をわかりやすく4つのステップに分けてお伝えしています。
今回の研修動画を多くの保育士の皆さんにご覧いただき、いざというときに落ち着いて対応できるように、皆さんの不安や負担が少しでも和らげられたら嬉しいです。
また、今回フローレンスが提供した動画以外にも『コドモンカレッジ』では日常の業務に活かせる多岐にわたる研修コンテンツが掲載されています。
くわしくは『コドモンカレッジ』のサイトをご覧ください。
今回の取り組みに多大なるご協力をいただいた株式会社コドモンさんには心から感謝を申し上げます。
保育園を支える仕組みづくり
こども誰でも通園制度の開始などにより保育園の多機能化が進み、保育園の先生方が家庭支援に取り組むためのサポートの重要性が増しています。
しかし、現状のサポート体制では、現場での負担が大きく、すべての保育園で十分な支援を行うことは難しいのではないでしょうか。
そのため、現場で活躍する保育士の皆さんが困った時にすぐに視聴できる研修動画など、保育園を支える、柔軟に活用できる仕組みづくりが欠かせません。
フローレンスは、これからも保育園や家庭支援の現場を支え、保育士の皆さんが安心して働ける仕組みづくりを推進してまいります。
このような研修を通じて、保育士の皆さんが安心して現場で親子の支援に向き合える一助となることを願っています。
フローレンスでは、外部の園に向けに対面・オンラインでの研修も実施しています。
支援家庭向けの研修を検討されている場合は下記よりご連絡ください。
支援を広げる事業部 保育ソーシャルワーク事務局
sw-mirai@florence.or.jp
フローレンスにおける保育ソーシャルワークの経験をもとにご相談に応じます。
このような活動は皆さんからの寄付で支えられています。
保育ソーシャルワークも、ご寄付がなければ続けることはできません。
ぜひ、応援をよろしくお願いします。