フローレンスの保育園では、「みんなの未来をつくることに自ら参加し、貢献し、そして楽しむ心を育む」ことを保育理念に掲げ、「シチズンシップ保育」を実践しています。
【シチズンシップとは】
「一人ひとりが社会の一員として、よりよい社会の実現のために、積極的に多様な人々と協働して課題解決する」資質、能力のこと
未知の課題に溢れているこれからの社会を生きるこどもたちが、社会の一員としてこのような資質、能力を発揮できるよう、自分で考え、他者と協働する経験をたくさん積んでほしいという願いを込めて、日々の保育を実践しています。
とは言え、保育者によって大切にしていることや実践方法はそれぞれかも知れません。そこで、私たちがこれまで取り組んできたシチズンシップ保育を感覚ではなく言語化し、スタッフの共通理解を進めていくことも大切であると考えています。そこでフローレンスの保育園では、この度シチズンシップ保育の共通理解を深めるためのテキストを改定しました。名付けて「フローレンスのシチズンシップ保育」。この改定をきっかけに、より多くの人に「フローレンスのシチズンシップ保育」を知ってもらいたいと思い、シリーズで保育者向けのテキストを一部ご紹介します。
シチズンシップ保育の5つの基本
シチズンシップ保育では、「5つの基本」を軸にこども自身のもっている力と可能性を育みます。こどもの可能性を信じて関わる前提のもと、5つの基本に基づいた考え方をしていきます。
【シチズンシップ5つの基本】
1.感情を知る・感じる
2.やってみたいはチャンス!
3.小さなことでも自分で決める
4.わたしはわたし、違うことを認め合う
5.対立は当たり前、話し合って解決する
テキスト本編では考え方を意識した、具体的な取り組み、事例について記載していますが、今回ご紹介するのは、シチズンシップ保育5つの基本の4つ目「わたしはわたし、違うことを認め合う」5つ目「対立は当たり前、話し合って解決する」にまつわる保育園での取り組みと、具体的なエピソードです。
シチズンシップ保育5つの基本①「感情を知る・感じる」はこちら
シチズンシップ保育5つの基本②「やってみたいはチャンス!」/③「小さなことでも自分で決める」はこちら
シチズンシップ保育5つの基本 エピソード④わたしはわたし、違うことを認め合う
好きなゲームのキャラクターがプリントされた水着を着ていた子に同じクラスの子が話しかけました。
「ぼく、そのゲーム嫌いなんだよね」
「なんで嫌いなの?」
「最初は好きだったんだけど、難しくて嫌いになっちゃったんだ」
「そうだよね、難しいよね」
以前のこどもたちなら、自分の好きなものに対して「嫌い」と言われたことに悲しんだり怒ったりしていたかもしれません。
しかし、サークルタイムや対話を大事にしてきたことで、「意見が違ってあたりまえ」という感覚が醸成されています。自分の意見を自由に表現して良い、また意見が違ってあたりまえだからこそ、「ぼくは好きだけどあなたはそういう理由で嫌いなんだね。」というところまで会話の広がりを見せています。また相手が嫌いな理由を聞いて共感しているところからも、好きか嫌いかという感情や感覚だけではなく対話が自然と醸成されていることも感じ取ることができます。お互いを知ろうとする姿勢・お互いのありのままを受け入れている様子がよくわかる場面です。
保育園はこどもにとって、家庭の次にひとつの小さな社会です。そしてこの先、生きていく社会では、年齢や性別、国籍や文化の違い、成育環境の違い、考え方の違い、障害の有無、容姿の違いはもちろん、一人ひとり違う多様なこどもや大人が集まっています。
わたしたちは、それぞれの個別特性を尊重し、自分らしくいられるような環境をつくることで、こどもたちが自分と相手それぞれの違いを知り、受け入れ、大切にする気持ちを育んでいきたいと考えています。
そのためには、こども、保育者、保護者一人ひとりが自分を知り、自分を自由に表現し、それをお互いに認め合い、共生することが必要です。違うことはあたりまえで、「興味を持ってお互いを知ること」を楽しめれば、新たな発想が生まれたり、協力することでできることが増えていくのではないでしょうか。乳幼児期に、たくさんの人と関わり、さまざまな多様性と出会い、違いを知り、認めることは、大人になったときもっと多くの多様な人と関わり協働することの基礎となっていきます。
シチズンシップ保育5つの基本 エピソード⑤対立は当たり前、話し合って解決する
乗用玩具が置いてあるこどもたちが大好きな公園があり、その公園に行くとみんなで乗用玩具に乗ることが定番の流れでした。その中でもこどもたちに人気の高い赤い車がありましたが、それは1台しかなく、いつも取り合いになります。
その日も一人の子が乗って遊び始めると交代で遊ぶことができずにいました。なかなか順番が回ってこない子が「ぼくも乗りたい!」とやってきました。独占したい子と貸してほしい子、気持ちがぶつかり合います。保育者はその様子を見守っていました。
すると「順番で使おうよ」「ぐるって走って帰ってきたら使うのはどう?」「いいよ」と、こどもたち同士で話し合い、決めることができていました。友達が遊んでいる間も保育者と別の遊びをしながら待っている姿があり、順番が来ると「貸してくれたね!」と嬉しそうに乗ってドライブをするように楽しむことができたのです。
以前保育者は、間に入って気持ちの代弁をしたり提案を投げかけたりと仲立ちをすることも多くありましたが、保育者は解決者ではなく、こどもの意見や行動を引き出すサポートをする役割と捉え、仲立ちから段階的に「どうしたい?」「どうすればいいかな?」と問いかけることを大切に重ねてきた結果、この日の姿につながりました。
どんなに小さなこどもでも、一人ひとり「想い」があります。自分に想いがあるように、相手にも想いがあります。だからこそ、自分の想いを相手に知ってもらうためにまずは伝える、表現することが大切です。お互いがそれぞれの想いを表現したときに、その想いが違うのはあたりまえのことです。わたしたちは、そんな時に、相手の想いを聞き、その想いを受け止められるようになってほしいと考えています。
一人ひとりの想いが違うからこそ、時には意見のぶつかり合いが起きることもあるでしょう。ぶつかり合いを避けたいと想いがちですが、そうした意見のぶつかり合い・対立は決して悪いことではありません。対立をするということは、自分とは違う価値観を持った相手と一緒に考えているということです。わたしたちは、そんな時こそこどもたち同士で解決に向けて話し合うことを大切にしたいと考えています。それは、自分と違う人と関わり、自分の想いや気持ちを伝え、お互い認め合えて初めて解決できると思うからです。その経験は、多様な人と共生していく力になると信じています。
フローレンスの保育園は新入園児を募集中です!
シチズンシップ保育を実践する、フローレンスの保育園では、新入園児を募集中です。入園を検討されている方向けに各園で保育所体験や園見学も実施しています。 「参加してみたい!」という方はぜひ各園にお問い合わせください。
フローレンスの保育園 各園情報
おうち保育園
0-2歳児のこどもたちのための小規模な保育園です。園名には、「おうちにいるような安心感を感じられ、こどもたちにとっての第2のおうちになりたい」という願いが込められています。
(東京都 江東区/台東区/品川区/豊島区/杉並区/渋谷区/宮城県 仙台市)
みんなのみらいをつくる保育園
0-5歳児のこどもたちのための認可保育所です。園名には、「”みんなのみらいをつくる人”に育ってほしい」という願いが込められています。
(東京都 江東区/渋谷区)