アニメや漫画、映画などに、大きく心を揺さぶられたことはありませんか?
例えば、戦争映画で市井の人々の厳しい暮らしを見て、平凡な日常のありがたさを噛みしめた。過酷な戦場の描写に、世界の平和を願った。あるいは、虐待の描写を目にして、こどもたちを守りたいと強く思った。そんな経験が、あなたにもあるのではないでしょうか。
このようにメディアがきっかけで心を動かされて、社会課題解決の一助になりたいと思い、フローレンスにご寄付をくださる方がいます。今回は、大人気アニメ『ダンダダン』(MBS毎日放送)を観てご寄付くださった方をご紹介します。
『ダンダダン』とはどんなアニメなのか
『ダンダダン』は、強い霊力をもつ女子高生と、ある出来事がきっかけで特異能力を宿したオカルトマニアの男子高生が繰り広げる、青春ラブコメ要素たっぷりで、笑える下ネタもちょこちょこありの、やっぱり猫は何をしても可愛いと思っちゃう、オカルティック怪奇バトル……と、情報量が多くてよくわからないという方は、ぜひアニメをご堪能ください。
さて、今回ご寄付につながったのは、11月に放映された第7話「優しい世界へ」です。ひとり親家庭のつましくもあたたかな生活と、ふりかかる苦難と悲哀を、わずか数分のうちに描き出し、涙なしには見られない名作と広く話題になりました。
まずお伝えしたいのは、作品で描かれたひとり親の生活が、今の日本で現実のものとしてあるということです。「『自分は〇〇ではなかったらよかったのに』という言葉がなくなって、一人ひとりの権利が尊重される社会を目指したい」と語る大束さんの力強いインタビューをぜひご一読ください。
大束 美加さん
医療機器メーカー勤務。
現在、第1子の育児休暇中ながら、グロービス経営大学院で学びを深めている。
『ダンダダン』第7話を観て、ひとり親の貧困をこの社会からなくしたいと強く思ったのがきっかけでフローレンスにご寄付くださった。
第7話で描かれたひとり親の世界
――この度はフローレンスにご寄付をくださりありがとうございます。アニメ『ダンダダン』第7話がきっかけとのことですが、まずはこの回を観て、どのような印象を持たれたのか教えてください。
大束さん
第1話からずっと観てきて、(コメディやバトルシーンの多かったところ)突然あの第7話だったので衝撃を受けました。ひとりでこどもを育てるために、あんな風にずっと仕事を頑張らなければならない状況なのか、養育費が振り込まれていないのかな、安くて手間のかからないカレーばかり食べてるのかなと。
大束さん
今の日本は、離婚や死別などで、専業主婦だった女性がひとり親となって働こうと思っても、キャリアがないと稼げる仕事につきにくい社会構造になっていますよね。ひとりでは貧困から抜け出せなくて、でもなんとかしようとして仕事を掛け持ちして必死に働いている。アニメの中で親子が引き離されてしまったときに、この社会をこのままにしておいてもよいのかという気持ちが湧きました。
誰もが自分らしく生きられる社会にしたい
――アニメを観て沸き起こった気持ちを、フローレンスへの寄付につなげてくださったのはなぜでしょうか?
大束さん
このアニメを観て、「ひとり親がこどもと向き合う時間をとりながら働ける環境が必要」と考えたときに、フローレンスのひとり親支援がぴったりだと思ったからです。
フローレンスの活動については、グロービス経営大学院の「ソーシャル・ベンチャー・マネジメント」という授業で、フローレンス会長の駒崎さんが事例として紹介されていたこともあり、以前から知っていました。
フローレンスは、寄付を募ってひとり親を支援するだけでなく、より大きなインパクトを生み出すために、制度や社会のしくみを変えるパワーのある団体だというのが決め手になりました。
――元々、ご自身のなかに社会を変えたいという思いはあったのでしょうか?
大束さん
性格的に、問題だと感じたら見過ごせない、というのはありますね。今の日本は、社会的に少数者とされる方が、痛みを強いられる社会になっていると思うんです。誰もが自分らしく生きられる社会にしたい、という気持ちは根っこにあります。
――いわゆる社会的弱者と呼ばれる方々に思いを寄せるようになったのはなぜでしょうか。
大束さん
大きく2つあって、1つは同性婚が認められていない問題、もう1つは病気で不自由な生活を強いられている方々の存在です。
同性婚については、ちょうどわたしが婚姻届を出した頃に、SNSで同性愛者の方が「大好きな人と家族になれない」とつぶやいていたんです。婚姻届があたりまえのように男女のフォーマットになっている(注:婚姻届は通常「夫になる人」「妻になる人」と記載がある)ことに、気持ち悪さや違和感を覚えて、色々と考えるきっかけになりました。
わたしの場合、夫が偶然男性で、自分はたまたま異性が好きだっただけだと気づいて、それでマジョリティに入った人が生きやすい社会というのはどうなのか?と思ったんです。
――病気で不自由な生活を強いられている方々の存在が、どのようにして気持ちに変化を起こしたのかについても、差し支えなければ教えてください。
大束さん
仕事の関係で、自分が望んだわけではないのにオストメイトとなった人(さまざまな病気や事故などにより、お腹に排泄のための「ストーマ(人工肛門・人工膀胱)」を造設した人)が、周りから理解を得られずに生活がしづらい状況を目にしています。それで、病気が理由でやりたいことができない社会への違和感が生まれました。
変化を恐れるよりも、ひとりでも多くの人が幸せになったほうがいい
――社会課題を扱ったアニメや映画などは他にもあると思いますが、なぜ『ダンダダン』だったのでしょうか?
大束さん
自分が親になったことが大きいのかもしれませんね。あの母親のキャラクターに感情移入してしまいました。それと、わたしが4歳から6歳の時に親が一時的に離婚していて、あの母親の忙しなさが体感として残っていて、イメージしやすかったのかもしれません。
これまで、ひとり親の問題についてそれほど深く考えたことはなかったのですが、介護などの理由でキャリアを絶たれて非正規雇用で苦労されている方や、そもそもキャリアの土台を得ることができずにいる方の苦労は見聞きしてきました。また、X(旧ツイッター)で駒崎さんのつぶやきを見ていると関連した情報も流れてくるので、当事者の声を知ることができました。
目指すのは、一人ひとりの権利が尊重される社会
――ひとり親の問題について、基本的な知識があったうえで、ご自身の体験と重なるところもあって心に響いたのでしょうね。グロービス経営大学院で学ばれているとのことですが、最後にどんな社会を目指したいか教えてください。
大束さん
より良い社会を目指そうとすると、おのずと変化を伴います。でも、人は変化を恐れるものですよね。だからこそ、「変化を恐れるよりも、ひとりでも多くの人が幸せになったほうがいいよね」とあたりまえに考えられる人が増えて、それが社会全体の共通認識になったらいいなと思っています。
理想は、「〇〇ではなかったらよかったのに」という言葉がなくなることです。ひとり親じゃなかったらよかった、オストメイトでなかったらよかった、同性愛者じゃなかったらよかった、そういったものがなくなって、一人ひとりの権利が尊重される社会を目指したいです。そのためにも、当事者だけでなく、代弁する人たちのパワーがもっと強くなるといいですね。グロービスを卒業したら、自分の中の一つの区切りとして、6年後ぐらいには具体的に行動したいと思っています。
(インタビューここまで)
ひとり親家庭、特に母子家庭の貧困問題は非常に深刻です。母子家庭の約半数が、年間就労収入200万円未満(厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果」)で生活しており、就業している母親の約4割が、収入の不安定な非正規の仕事に就いています。
フローレンスは2004年に創業し、日本初の「訪問型・共済型病児保育」事業をスタート。これまでに業界最多となる累計13万件以上のお預かりを実施してきました。2008年には「寄付によるひとり親支援プラン」をスタートし、病児保育を通してひとり親家庭が安心して働ける環境を提供し、就労、そして家計の安定を支援しています。
フローレンス「寄付によるひとり親支援プラン」利用者の声
こどもが病気になるたびに、仕事どうしよう、熱下がるかなとずっと考えながら寝れずに朝を迎えます。仕事を休める日なら良いのですがどうしても行かなければならない日、また続けて流行病になった時の不安。その時に考える事はお金の事。娘が辛い時に素直に考えてあげれない自分への苛立ち。そして自分は病気をもらわない、もらっても薬漬けにしてでもという思い。常にそのプレッシャーに駆られています……。病児保育は高いのに、この様な寄付によるプランを知り涙が出る思いです。本当にお金だけでなく、精神的にも救われます。ありがとうございます。
フローレンスのひとり親支援も皆さんからのご寄付に支えられています。一日50円からのご寄付をぜひご検討ください。