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【2024年の活動振り返り】20周年のその先へ――寄付者さんとともに、今よりも1ミリでも良い世界を創るために

#寄付

2024年、フローレンスは創立20周年を迎えました

2024年は、フローレンスにとって一つの節目の年になりました。江東区の小さな仮店舗の一室で、たった4人で立ち上げたNPOが、20周年を迎えたのです。

20年前、病児保育があたりまえではなかった社会、待機児童問題の解決の糸口が見いだせていなかった社会、 障害児を保育するという考えすらなかった社会……。

フローレンスは、一歩ずつ、時にはもがきながら前に進み、新しい事業を次々と作り、それを広めることで、そんな社会を確実に変えてきました。

それらの活動を支えてくださったのは、フローレンスを応援してくださる寄付者の皆さんです。一人一人の「こんな社会になったらいいのに」という願いが、大きな力となって、社会にたくさんの新しい価値観、「新しいあたりまえ」を生み出してきました。

2024年12月、寄付者の皆さんに感謝を込めて「フローレンス20周年記念 限定報告会」を開催しました。当日はフローレンスとともに社会を変えてきた、寄付者さんをはじめとする「仲間たち」が登壇してくださり、想いを一つにしました。

20周年の、その先へ

フローレンスは、「こどもたちが希望とともに生きられる社会」を創るために、日々活動をしています。そのような未来を目指して、フローレンスが2024年に寄付者の皆さんと一緒に取り組んできた事業とその成果をご報告します。

1.すべてのこどもたちへ、心おどる体験を――「こども冒険バンク」事業スタート

近年、こども時代にさまざまな事情で「できない」が重なると、自己肯定感が下がってしまうことが明らかになり、こどもの「体験の格差」が問題視されています。

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン「子どもの『体験格差』実態調査最終報告書(2023)より作成

フローレンスでは、このようなこどもの「体験格差」の解消を目指して、さまざまな事情により体験が不足しがちな家庭と、体験を提供する企業がつながるプラットフォーム「こども冒険バンク」を2024年8月に開始しました。

すでに20社以上の企業さんにご協力いただき、一緒にプログラムを作り上げています。また、「体験」のプログラムに参加した親子からは「普段なら余裕がなくてできない体験をこどもと一緒にすることができた」といった声が寄せられています。

たった一度の体験でも人生が変わることはあります。こどもたちの描く未来の夢が大きく広がるように、体験提供の輪を広げる活動をつづけていきます。

2.誰にも言えない予期せぬ妊娠。安心して赤ちゃんを産める場所をつくる――フローレンスの「無料産院」事業

予期せぬ妊娠を誰にも相談できずひとり孤独に出産し、赤ちゃんを遺棄する悲しい事件があとを絶ちません。

写真はイメージです

フローレンスは、経済的困窮や社会的孤立などさまざまな困難で医療機関を受診できずに苦しむ妊婦に対し、妊婦健診・出産費用をフローレンスが代わりに支払い、安心して医療機関を受診してもらう取り組みを2023年6月に開始。事業開始から1年半で17組の尊い命を救うことができました。

赤ちゃん遺棄の背景にある課題を多くの人に知っていただくことも、解決の一つの糸口となります。「赤ちゃんの遺棄・虐待をゼロに」するために、誰もが安心して出産できる仕組みが作れるよう、今後も提携病院を全国に増やしながら、支援を広げていくことを目指しています。

3.ついに制度化!こどもたちを性被害から守る仕組み――「日本版DBS」法(こども性暴力防止法)

日本の12歳以下のこどもに対する性犯罪は年間約1,000件(*)。なんと1日に2件以上起きている計算です。しかし、小児性犯罪はその被害が「明るみに出にくい」犯罪です。被害に遭った幼いこどもは自分が何をされたか自覚しづらく、問題行為が周囲に発覚しにくい現状があり、この数字は氷山の一角ともいわれています。

* (出典:警察庁『平成30年の刑法犯に関する統計資料』(令和元年8月))

⼀般社団法⼈Spring「性被害の実態調査アンケート」(2020年)

こどもたちを卑劣な性犯罪から守りたいーー。

そんな思いから2017年にフローレンス会長の駒崎が、こどもを性被害から守るしくみ「日本版DBS」の創設を提言してから7年、フローレンスは提言活動などに尽力してきました。そして、2024年6月、ついに「こども性暴力防止法」として成立したのです。

法の成立は非常に喜ばしいことですが、まだ課題は残っています。フローレンスは引き続き、この法律がより実行力のあるものとなるよう提言活動を続けていきます。

4.保育園を、すべての親子にとってのセーフティーネットに―「こども誰でも通園制度」

「1歳と2歳の娘、5歳の息子がいます。夫は平日深夜まで仕事です。去年は就労していなかったので保育園に入れられず、1日中3人をひとりで見ておりましたが、気が狂いそうで、窓から飛び降りたい日が何日もありました。」

フローレンスの保育園で一時保育を利用されたあるご家庭からの声です。核家族化が進む現代では、近くに頼れる親戚や知り合いがなく、孤独な育児に悩む家庭が増えています。

定期的な保育サービスを利用していない家庭における保育所等の定期利用ニーズに関する調査(2022年)

そのような中、2023年に国が、親が働いていなくても未就学のこどもを保育所等に預けられるようにする新たな制度、「こども誰でも通園制度」の創設を表明しました。

「みんなの保育園構想」を掲げ、「保育園をすべての親子にとっての新しいセーフティーネットに」と考えてきたフローレンスにとって大きな一歩となりました。制度化に先駆けて、フローレンスでは国のモデル事業を受託し、2026年の本格実施に向けてよりよい制度となるよう提言活動を行っています。

フローレンスは、保育園が地域の子育て支援のハブとなっていくために、保育園の多機能化を訴えています。自らも事業者として実践しながら、多機能化の1つの取り組みとして全国に「保育園こども食堂」を拡げる中間支援活動も実施しています。今後も引き続き、保育園が地域でどのような役割を果たしていけるのかを、主体となって探っていきます。

5.「支えてくれる人がいる」「ひとりじゃない」そう思えることが、明日を生きる力になる――能登半島被災地支援

フローレンスを継続的に支援してくださる寄付者さんの支えで実現できていることの一つに、被災地支援があります。

2024年の元日に能登半島を襲った地震は大きな被害をもたらしました。フローレンスと、フローレンスが連携するこども宅食応援団は、被災地域の民間団体などの関係者から被災状況および必要な支援に関する情報収集などを行い、義援物資の寄贈を決定。震災から1ヶ月後の2月に、物資を提供くださった企業と、全国各地の約20のこども宅食応援団加盟団体からの協力を得て、約23,000個の義援物資の寄贈を実現しました。

また、3月には企業から新品の乳児・幼児用のオムツ 780パックを寄贈いただき、能登半島地震で被害の大きかった輪島市の他、石川県の6団体にお届けしました。

さらに11月には、能登半島で暮らすこどもたちのためにクリスマスの特別配送を行っています。プレゼントを届けたご家庭からは、感謝の声が届いています。

息子がいつもより早く起きて、 プレゼントを笑顔で開けている姿を見て、 わたしたちも嬉しい気持ちになりました。 素敵なプレゼントをありがとうございました。 大切に使います。

被災地ではまだ仮設住宅で多くの人が不自由な暮らしを強いられています。フローレンスは今後も被災地の声に耳を傾け、できる限りの支援を続けていきます。

6.新しい支援のかたち――ハイブリッドソーシャルワーク

現在、日本のこどもの約9人に1人が相対的貧困状態にあるとされています。さらにひとり親家庭では、2人に1人が相対的貧困状態だといわれています。

しかし、公的な福祉サービスは、行政の窓口での申請など、特定の場所まで行かないと支援を受けられないことが多く、支援を受けることができるようになるまでに数多くの物理的・心理的なハードルが存在しているため、困りごとを抱えた家庭の困窮や孤立に支援が届けにくいことが課題となっています。

フローレンスは、この相談のハードルを下げるため、AIやSNSによる「デジタル相談」と専門の相談員が行う「対面支援」を組み合わせた新しい支援の形、「ハイブリッドソーシャルワーク」による子育て支援事業を推進しています。

その実践例として取り組んでいる「おやこよりそいチャット」では、SNSでのコミュニケーションを活用して、ゆるやかに雑談・相談を続けながら、自然な流れで親子が本当に必要としている情報提供・支援へつなげています。

また、自治体や地域団体と連携して、有資格の相談員による対面での支援も組み合わせて行うことによって、「デジタル」と「リアル」それぞれの強みを活かした支援でご家庭を見守ることができます。

2024年11月には、「休日・夜間問わず、話を聞いてほしい」というニーズにお答えし、傾聴型の生成AIを開発し、生成AIと専門職スタッフによるハイブリッド型子育てSNS相談「いまきくイヌAI(あい)ちゃん」のサービスを開始しました。

今後もハイブリッドソーシャルワークによる支援を全国に届けていくことで、子育て家庭の“孤立”をなくし「誰もが支援を受けて子育てをすることが、あたりまえ」の社会を目指します。

7.寄付者さんとともに、今よりも1ミリでも良い世界を創るために――フローレンス代表理事 赤坂緑

最後に、フローレンス代表理事の赤坂が2024年を振り返って寄付者の皆さんに向けたメッセージをご紹介します。

フローレンスは訪問型の病児保育に始まり、こどもや親子にかかわる看過できない社会課題を解決しようと、20年間ひたすらに進んできました。

そのすべてがうまくいったわけでも、解決しきれたわけでもありません。それでも、当事者の叫びや願いに共感し、寄付してくださる皆さんがいたからこそ、ここまでやってこられたということを強く感じています。わたしたちフローレンスの「どうにかしたい」という想いだけでは、物事を動かすことは到底できませんでした。

誰かのために役立ててほしいと自分のお金を託してくださる、寄付という行為は本当にすごいものだと思います。わたしたちフローレンスは、寄付者の皆さん一人一人、一つ一つの想いや願いを受け止めながらここまで歩んでこられました。

こどもたちに直接支援を届けるのはもちろん、「日本版DBS」法、「こども誰でも通園制度」のような政策提言活動はお金を生むものではありませんので、寄付がなければできないことです。寄付者の皆さんと一緒に制度を創ることができたと強く感じています。

今のこどもたちの世代に、次のこどもたちの世代に、大人として自信をもって今の社会を手渡せるかと自問した時に、「とてもできない」という率直な思いがあります。わたしたちは、すべての課題の解決の主体になれるわけではありません。手が届かない課題も山ほどあります。

それでも、今よりも1ミリでも良い社会を実現していくために、時代の変化・社会の変化にしなやかに応じながら自分たちができることをやっていきたい。今よりも、ちょっとでも良い社会を次の世代に手渡していきたい。そのためにできることはわたしたちでやっていこう。フローレンスは、未来の世代を見つめて活動をしています。

次の世代に心躍る未来を手渡していけるように、新たな事業を生み出して社会課題の解決を進めながら、社会のいろんな方たちと協働し、手をつなぎ合って、より良い社会を作っていきいたいと思っています。

寄付者の皆さん、一緒に社会を変えていきましょう。引き続き応援・ご支援をよろしくお願いします。


日本のこどもたちのために社会を変える活動に、寄付であなたも参加しませんか?

フローレンスの活動は、一日50円からのご寄付で応援していただけます。寄付者さんには活動を報告する限定のメールニュースを毎月お届けする他、寄付者さん限定のイベントへご招待します。ぜひご検討ください。

フローレンスは東京都により「認定NPO法人」として認定された団体であるため、フローレンスへ寄付いただくと、寄付者自身が税制上の優遇措置(寄付金控除)を受けることができます。

個人の場合は、最大で寄付金額の約50%が戻ってきます。控除の仕組みや手順をご確認のうえ、お手続きください。


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