出産直前まで病院に行けない――そんな未受診妊婦を救う「無料産院」に、新たに和歌山の産院が加わりました。社会的に孤立する妊婦とその赤ちゃんの命を守る取り組みが、さらに広がります。
経済的・社会的に困難を抱えた未受診妊婦を支援する「無料産院」事業において、2025年4月より和歌山県和歌山市の「はまだ産婦人科」と新たに提携しました。これにより、「無料産院」事業に賛同する提携病院は全国で5院目、関西エリアでは2院目となります。
フローレンスの「無料産院」事業 19組の出産をサポート
予期せぬ妊娠に直面し、誰にも頼れず孤立してしまった妊婦が、病院に行けないまま出産を迎え、結果として赤ちゃんを遺棄してしまう――こうした悲劇は後を絶ちません。日本では、2週間に1人の赤ちゃんが虐待によって命を落としています。
赤ちゃんの遺棄・虐待事件が絶えない背景には、予期せぬ妊娠をしてしまったり、経済的・精神的な不安から医療機関を受診できずに出産を迎えるなど、社会的に孤立している妊婦が支援を受けられていないことが要因と考えられます。
フローレンスが2023年6月に立ち上げた「無料産院」事業は、経済的・精神的に不安や困難を抱え医療機関を受診できず悩んでいる妊婦を支援する取り組みです。にんしん相談を受け付けるとともに、妊婦健診・出産費用をフローレンスが代わりに支払い、医療機関を受診してもらいやすくすることで、母子ともに危険な状態で出産に至ることを防ぎます。また、受診をきっかけに行政の支援につなげることで、赤ちゃん遺棄(虐待死)を防止します。

これまでの提携病院:
・第二足立病院(京都府京都市)
・まつしま病院(東京都江戸川区)
・いとうレディースケアクリニック(岐阜県北方町)
・操レディスホスピタル(岐阜県岐阜市)
2025年3月までに19人の妊婦を支援し、19人の赤ちゃんの命を守ることができました。
今回、和歌山県和歌山市の「はまだ産婦人科」が「無料産院」の提携病院に加わることで、「健診・出産費用が払えない経済的に困難を抱えた未受診妊婦」へのさらなる支援の輪を広げていきます。

「はまだ産婦人科」との提携の経緯
「はまだ産婦人科」は、1997年12月に和歌山県和歌山市で開業、産科と婦人科を併設する医療機関として、長年地域の女性の健康を支えてきました。理事長の濱田寛子氏は、和歌山県医師会理事として、また子ども虐待審議会と男女共同参画の審議会委員も務めています。
日々の診療で接してきた、予期せぬ妊娠による社会的困窮や心身の不調を抱える女性たちを支援したいと考え、「フローレンスの無料産院」との提携を決定しました。
理事長 濱田寛子氏のコメント

「予期せぬ妊娠に悩み、孤独・孤立に陥ってしまう人が、安心して出産に臨める環境を和歌山の地からも提供したいと考え、提携を決めました。経済的に困難を抱えていて、お腹が大きくなってきたがまだ病院に行けていない、と悩み苦しむ人がもしこの地域にいるのであれば、私たちの「無料産院」に来てもらい、安心安全に出産を迎えられるよう支援したいと強く思っています。」
よりよい支援のため、提携病院と事例を共有
妊婦が抱える状況は一人一人異なります。支援を受ける背景として「経済的困難」だけでなく、「家族からの支援が得られない」「DV被害」など、多様な事情を抱えるケースもありました。さらに、妊娠をきっかけに退職や転居を余儀なくされるなど、生活環境が大きく変化した方が多いことも特徴です。
医療機関や行政とどのように連携すれば、より安心できる環境を提供できるのか──。
フローレンスは「無料産院」事業で提携している医療機関と、よりよい支援のため取り組みの共有を行っています。

今後の展望
今回の提携により、「無料産院」事業は全国で5つの病院と連携することになりました。
今後も同じ志を持つ医療機関との提携を全国に広げ、より多くの未受診妊婦が適切な医療を受けられる環境を整えていきます。
また、出産にかかる経済的負担の軽減を国や自治体に対して継続的に働きかけ、社会全体で命を守る体制の構築を目指していきます。
すべての赤ちゃんが安全に生まれ、健やかに育つ社会を実現するために。
フローレンスはこれからも活動を推進していきます。
フローレンスのこうした活動は、皆さんからのご寄付によって支えられています。いつも応援してくださる寄付者の皆さん、参加・協働してくださっている多くの皆さんに心から御礼申し上げます。引き続きご支援・応援をよろしくお願いします。