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【ピル外来(生理外来)】痛くて寝込み、学校へ行けない――。こどものつらい生理の現状とは?生理を知り、自分らしく過ごせる選択肢を

【ピル外来(生理外来)】痛くて寝込み、学校へ行けない――。こどものつらい生理の現状とは?生理を知り、自分らしく過ごせる選択肢を

学校に行けないほど痛い

しんどくて、部活を頑張れない

試験勉強に集中できない

量が多くて、服を汚してしまった

学校生活で、このような経験をした方もいるのではないでしょうか。

近年、女性のヘルスケアへの関心が高まり、ピルの普及や企業による生理休暇など周囲の環境が整いつつあります。しかし、こどもたちの生理の悩みが社会に届くことは、ほとんどありません。

こどもに生理痛はないのでしょうか。

もちろん、そんなことはありません。初潮を迎え間もないこどもたちは、思春期の体の変化に戸惑い、不安を感じることも少なくありません。

自分の体調や気持ちを言葉にするのが難しい、生理の話をするのが恥ずかしい、痛みは我慢するものと思い込んでいる――。

むしろ大人以上に、孤独に痛みと戦っているお子さんもいるはず。

今年6月、フローレンスのグループ法人である「フローレンスこどもと心クリニック」は、そんなこどもたちの“つらい”にともにたちむかうため、「小学生からのピル外来(生理外来)」を立ち上げました。

この外来は、初潮を迎えたこどもたちが、身近なかかりつけ医に不調を相談し、一緒に治療を考えていける新しい医療の窓口です。

こどもたちが抱える生理の実態と課題とは?

もしも、自分のこどもが生理に悩んでいたら⋯。大人はどのように寄り添えば良いのか考えます。

つらい生理症状、5人に1人が受診が必要な可能性も

製薬会社の調査(※1)によれば、生理痛の経験がある高校生の7割弱が「⽣理痛が学校⽣活に⽀障をきたしたことがある」と回答し、そのうち、96.7%がその症状を「我慢をしたことがある」と回答しました。

その関連調査では、生理・生理痛が原因で、学校生活・日常生活に「不利・不平等」を感じたことがある人は約8割で、

生理による眠気を気のゆるみとして怒られた

部活動の本番でのパフォーマンスに影響が出た

痛みがひどくて学校や仕事を休んだ

メンタルが不安定になり、眠れなくなる

などの声が上がっています。

また国内の女子高生388人を対象にした研究(※2)では、月経痛による婦人科受診の経験がない女子高校生の22.2%が、「受診が望まれる者」として潜在していることが明らかとなった、というデータがあります。

つまり生理痛があるにもかかわらず、病院へ行っていない女子高校生の5人に1人が、受診が必要な健康状態であるというのです。

「学校には行くけれど、横になって休みたくなるほど、授業に影響が出る」

「1日以上寝込み、学校に行けない」


こうした、中程度・重度の月経困難症の症状が毎月あっても、鎮痛剤だけでなんとかやり過ごし、こどもたちは「いつも通りのふり」をして、静かに痛みに耐えているのです。

※1「全国高校生対象「生理に関する実態調査」」より

※2「月経痛による婦人科受診に対する女子高校生と母親の意識」より

もっと早く治療に出会えていれば。こどもの生理痛と母親の後悔

中学2年生からお子さんのつらい生理症状に悩まされた親子の話です。

生理中は痛みで2~3日寝込み、学校をしばしば欠席することがありました。さらに高校生になると症状は悪化し、生理の2日前から痛みが始まるように。「毎月5日間も寝込むことになる」と親子で絶望したそうです。

高校2年生で婦人科にかかり、医師とお子さんの間で症状が共有され、治療方針もお子さんが望む形で決まり、ピルの服用をスタートすることになりました。

最大120日間飲み続けて、生理の回数を減らすことができるピルだったため、毎月5日間も苦しんでいたお子さんにとって、大きな変化でした。

また、生理痛も格段に楽になりました。痛みはゼロではないものの、学校を休まずに普通に生活できるようになったそうです。

「親として娘の生活を振り返ったとき、あんなに痛みでうずくまる日々を過ごさせていたのは正解だったのかと悔やむ気持ちも少なからずあります。あの痛みがなかったら、もっと楽に部活に参加したり、勉強したり、友達と遊びに行ったり、きっとできたと思うんです。」と母親は言います。

記事はこちら:娘の生理痛が「神アイテム」で激変しました ~毎月5日間の苦痛からの卒業~

生理痛で病院に行くって大げさ?――こどもたちの前に立ちはだかる3つの壁

こどもたちは、つらい生理に悩みながらも、なぜ医療とつながれないのでしょうか。

その背景には、大きく分けて3つの壁があるとわたしたちは考えます。

1. 教育の壁 ― 性教育の遅れ

日本は、世界的に見ても性教育の遅れが指摘されています。

学校でピルや生理痛の治療について正しい知識を得る機会が少なく、「生理=自然なことだから我慢するもの」という価値観が更新されないまま残っています。

2. 家庭の壁 ― 話しづらさと我慢の常識

その結果、生理のつらさを家庭で相談すること自体がハードルになります。

こどもにとっては、「恥ずかしい」「たいしたことないと思われそう」という気持ちが壁になり、声を上げづらいのです。

また、親自身も「自分も我慢してきたから」と考えてしまい、ピルへの不安から服用に至らないケースも少なくありません(※3)

知識の不足は、親子間の無言の断絶を生むことにもつながっています。

3. 医療の壁 ― どこに相談すればいいの?

さらに、医療そのものにも課題があります。

こどもが「生理がつらい」と感じても、小児科に行くべきか婦人科に行くべきかわからず、迷ってしまうことが多いのです。

一方で、病院側にも「こどもは診られない」「ピルは処方できない」と診察を断るケースもあり、こどもの生理は医療の網から抜け落ちている現状があります。

※3 外 千夏、葛西 敦子(2020)「月経痛による婦人科受診に対する女子高校生と母親の意識」P.320より 婦人科外来では、女子高校生が月経痛により婦人科を受診した際に、医師からのLEPの推奨に、母親が理解を示さず、女子高校生がLEP(低用量ピル)の内服に至らない事例がある

自分のからだを大事にすること。生理との付き合い方を見つけ、上手にコントロールする

「家庭医外来をやっていて、中高生女子の月経の悩みは多く、相談しないまま大人になる人が多いと感じます。健診で貧血を指摘される、あるいは社会人になって仕事を休むわけにはいかない、と生活に支障が出るようになって初めて受診する女性が多い」と、本外来担当医の栗原先生は言います。

12歳で初潮を迎え50歳まで続くとすると、約40年も生理と付き合い、生涯の生理回数はなんと約450~500回。明治時代は50回ほどだったとされる生理回数と比べると、格段に多くなりました。(※4)

現代の女性は、月経困難症や子宮内膜症などの病気を引き起こさないためにも、生理と向き合い、コントロールしていく方法を見つけることが大切です。

実は医療的にケアする方法は、たくさんあります。

ピルなどのホルモン製剤の他にも、痛み止めや漢方薬など、自分にあった治療方法を見つけていくことができます。

また病院へ行くハードルがあるかもしれませんが、若年女性へのピルの処方においては内診は必須ではないとされています。

学生時代や働き盛り、そして育児――。

楽しみたいこと、頑張りたいことを思う存分できるように。

つらい生理痛や頭痛、気分の波など、少しでも「しんどい」と感じるときは、我慢せずに自分の身体を大切にする。

そして、こどもの頃から自分に合った「ケア」の仕方を身につけ、自分らしく生き生きと生活できるよう生理をコントロールする。

そのために、まずは医療とつながり、医師から十分な知識と治療の選択肢を得ること、またこどもが自分の意思で必要なケアを受けられることが大切だとわたしたちは考えます。

※4 田中ひかる著『生理用品の社会史』より

生理のつらさ、もう我慢しない。文化を変える一歩を、ここから。

フローレンスこどもと心クリニックが目指したいのは、診療の提供だけではありません。

「生理のつらさは我慢するもの」

「こどもはまだ大丈夫」

「ピルは避妊薬」

そんな思い込みを手放し、生理とケアの選択肢を十分に知って、自分の状態に合わせて選んでいく。わたしたちは、そんな新しいあたりまえを、医療を通じてつくりたいと思っています。

今、あなた自身や、あなたのお子さんは、生理とどう向き合っていますか?

この記事が、「そういえば、あなたは生理どう?」と話すきっかけになったらうれしいです。

そしてもし、あなた自身が「我慢していた」経験があるのなら、そのしんどさが次の世代に繰り返されないように。一緒に意識をアップデートしていきませんか。

これからも、わたしたちは、生理のしんどさと医療をつなぐ手段を広げながら、誰もが自分の体を大切にできる社会づくりを進めていきます。

フローレンスは皆さんと一緒に、「生理」について考えていきたいと思います。

「生理」で感じているつらさや実際にあった体験など、生理にまつわるエピソードを下記のご意見・ご感想のフォームから、お寄せください。

ぜひ、あなたの声を聞かせてください。


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