今通常国会において、非常に重要な法案が与野党の協力のもと、通過しました。それが、改正障害者総合支援法です。
障害者総合支援法は障害児者の生活や自立を助ける、まさに障害児者分野の基本となる法律です。
この法律が改正されたのですが、そこに日本で初めて「医療的ケア児」という言葉が記載されました。
医療的ケア児とは
新生児医療の発達により、未熟児や先天的な疾病を持つ子どもなど、以前なら出産直後に亡くなっていたケースでも助かるようになり、一方で日常的に痰の吸引や経管栄養等の医療的ケアを必要とする「医療的ケア児」が増えています。
医療的ケア児は、医療の発達ともに生まれた、新しいタイプの障害児とも言えます。
医療的ケア児のほとんどは、退院後、主に子の母親によって24時間365日看護されています。
なぜなら、医療的ケアが必要な子どもは、保育園でも幼稚園でも預かってもらえないからです。
医療的ケア児の母親の多くは、就労をあきらめねばなりませんでした。
医療的ケア児たちは、マンツーマンの支援が必要な、重度の障害児です。
しかし、今までの仕組みでは、重症心身障害児(重心児)という、知的にも身体的にも重い障害とは、見なされなかったのです。
重心児認定されれば、マンツーマンの支援に必要な補助金は出ます。しかし、重心児認定されなければ、補助は出ず、よって支援を行うことは事業者にとって「割に合わない」ことになります。
これでは、支援の手が遠のいてしまいます。
医療的ケア児たちは濃密な支援が必要なのにも関わらず、重心児の定義に当てはまらないので、適切な支援が受けられない、という状況下にありました。
障害児保育園ヘレンが法改正のきっかけに
この法律改正のきっかけになったのは、私たちが杉並区で運営する「障害児保育園ヘレン」(以下ヘレン)でした。
私たちは、1人のお母さんからのメールで、初めて、障害を持つ子の受け入れ先が極端に不足している「障害児保育問題」に気が付き、この問題を解決するために、2014年9月に東京都杉並区にヘレンを開園しました。
ヘレンを視察で訪れてくださった議員の方々の働きかけがきっかけで、超党派の国会議員、厚労省・文科省が一堂に顔を揃えて議論する場ができ、今回の法改正につながったのです。
既存の法律を改正し、制度と制度の狭間に落ちてしまっていた医療的ケア児を、しっかりと制度の中に包摂すべく、何度も議論が重ねられました。
その結果、ついに改正障害者総合支援法の中に、医療的ケア児の支援体制の整備が盛り込ました。
これまで法律の中に存在していなかったことで、医療的ケア児とその家族には、なかなか支援の手が届かなかったのですが、ようやく法的にも認められ、自治体は医療的ケア児の支援の努力義務を負うことになりました。
このことは、過酷な状況に置かれていた医療的ケア児とその家族の状況が、好転していく端緒となるという意味で、歴史的な一歩と言って良いでしょう。
私たちは、フローレンスのストラテジーとして、以下を掲げています。
社会問題への「小さな解」を、事業として生み出す
政治や行政と共に「小さな解」を政策にし、全国に拡散する
自らも最良の事業者として、インフラを創造し、最後の一人まで助ける
今回の法改正によって、「障害児保育問題」が解決に向けて大きく前進しました。
私たちは、今回のヘレンのように、「小さな解」を政策にすることで、より多くの親子が笑顔になることを目指しています。
まずは、「小さな解」を生み出して丁寧に育てること。
今後もフローレンスは、親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決するべく、活動を続けてまいります。
今回の法改正の解説記事については、代表理事 駒崎のブログもぜひお読みください。
駒崎 弘樹 公式ブログ「改正障害者総合支援法成立の意義を解説〜歴史上初めて、医療的ケアの文字が入る〜」