平素より弊会の運営に対し多大なるご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
2025年11月12日付で公表いたしました「補助金交付要綱等に関するご指摘と対応」に関し、その後の調査で判明した事実、および行政(渋谷区)より受領した検討結果を踏まえた対応方針を、下記の通りご報告申し上げます。
1. 対象施設の概要
弊会は2017年、東京都渋谷区に複合保育施設「おやこ基地シブヤ」を開設いたしました。同施設は、認可保育所、障害児施設(当時)、病児保育室、小児科(※1)を併設しており、認可保育所の整備に際しては国の「保育所等整備交付金」および東京都の補助金を受給しております。建設費用のうち、公的補助金を超える部分については、金融機関からの借入金により充当いたしました。
(※1)病児保育室および小児科は医療法人社団マーガレットによる運営。
2. 指摘内容と是正措置の報告
2025年11月、渋谷区からの指摘に基づき確認したところ、上記借入に際し、本件建物に対して、渋谷区の承諾の範囲を逸脱して、普通抵当権ではなく根抵当権として設定していたことが判明いたしました。これに対し、以下の通り速やかに是正措置を完了しております。
- 2025年11月19日:当該根抵当権に関連する借入金残債を全額一括返済
- 同日:法務局へ根抵当権抹消登記を申請
- 2025年12月16日:登記簿上の抹消反映を確認
- 2026年1月9日:渋谷区へ一次報告書の提出
3. 事実関係の調査実施概要および影響範囲の確認
本件事案の発覚後、速やかに是正措置を講じるとともに、事態の重大性に鑑み、外部弁護士の助言のもと、以下の通り網羅的な事実確認および影響範囲の調査を実施いたしました。
調査対象および方法:
1. 関連資料の精査
2017年当時の稟議書、金融機関との金銭消費貸借契約書・登記関連書類、および渋谷区との協議に関する各種記録の確認。
2. 関係者へのヒアリング
当時の実務担当者、金融機関との交渉担当者、および決裁権限者に対する聞き取り調査
3. 他運営施設における担保設定の確認
本件建物以外の担保(抵当権・根抵当権)設定有無の確認。
調査結果:
上記の調査の結果、本件(おやこ基地シブヤにおける根抵当権の誤設定)の発生経緯と原因を特定いたしました(後述「4. 発生原因の分析」をご参照ください)。また、本件建物以外での担保の設定がないことを確認しております。なお、本件建物において、「根抵当権」の設定以外に関しても補助金・助成金等の申請手続きに不備がないかを継続して調査中です。
4. 発生原因の分析
本件事案が発生した背景として、以下の5点を特定いたしました。
1. 渋谷区承諾範囲の誤認および補助金財産処分ルールの不知
- 承諾された「抵当権設定」につき、承諾範囲に根抵当権が含まれるものとして誤認されたまま社内での手続きが進行した。
- 補助金で建設した財産に根抵当権を設定することが、補助金財産処分ルールとの関係で問題となり得るとの認識が、社内関係者間で十分に形成されていなかった。
2. 内部共有体制の不備
- 資金調達・金融機関交渉と、社内関係者間でのやり取りは「抵当権設定」という表現では共有されていた一方、最終的に実行される担保の種別や規制上の意味までは十分に共有されていなかった。
3.専門家関与の範囲の限定
- 顧問弁護士への相談は、自治体からの承諾取得の手続きに限定されており、担保の種別や補助金との適合性の精査を依頼していなかった。
4.記録・管理体制の不備
- 金融機関との交渉記録が文書として残存しておらず、意思決定の経緯が事後的に検証できない状態となっていた。
- 担保設定に関する社内決裁フローが不明確であり、契約の承認も実質的な内容確認を伴わない形式的なものとなっていた。
5.当時の組織構造的課題(※2)
- 急激な事業拡大に伴い、個別の法的リスク確認が担当者個人の裁量に依存し、部門横断的な統制(財務・法務・事業の相互チェック)が機能していなかった。
(※2) なお、弊会では2018年以降、内部統制強化を進めております。これらの施策の実効性については、改めて再発防止策のなかで検証して参ります。
※調査を踏まえた最終報告については、具体的な再発防止策と共に改めて後日渋谷区に報告予定となっております。
5. 渋谷区による検討結果
本件検討結果報告書の全文は、渋谷区のウェブサイトにて公開されております。
同報告書においては、当時の状況等を総合的に勘案し、以下の見解が示されております。
- 根抵当権設定については、直ちに違法状態と断定することはできない。
- 法人が利益を得る意図があったとは認められない。
- 法人の経営状況からみて担保権(根抵当権)が実行されるリスクはほぼ認められない。
- 渋谷区が当初求めていた区民サービスに停滞や後退を招くような過度のリスクが生じていたとは言い難い。
- これらを踏まえ、本件に関して補助金の返還は要しない。
- ただし、補助金制度の趣旨を踏まえて再発防止に努めるべきであり、別途文書による行政指導を行う可能性がある。
弊会といたしましては、「直ちに違法状態と断定することはできない」「補助金の返還は要しない」との見解をいただいたものの、行政から得た承諾の範囲を逸脱した手続きが行われた事実は極めて重く受け止めております。報告書にてご指摘いただいた「補助金制度の趣旨を踏まえた再発防止」の必要性を痛感しており、本件を組織的な課題と捉え、以下の通り再発防止策を実行してまいります。
6. 今後の再発防止策 策定に向けて
判明した原因に基づき、以下の再発防止策を策定し、実施してまいります。
- 公的資金関連事業の法務監査体制の確立
- 資金調達時における情報共有ルールの明確化
- 行政との承諾手続きの適正化
- 専門家関与の範囲・タイミングの見直し
- ガバナンス・内部統制の継続的強化
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改めて、本件のような事態を招いたことを代表理事として深くお詫び申し上げます。
当時は社会課題解決のスピードを優先するあまり、コンプライアンス意識や手続きの慎重さが十分ではなく組織としての課題があったと認識しております。
現在、「おやこ基地シブヤ」プロジェクトの振り返りとともに、外部弁護士の提言に基づく具体的な再発防止策を策定中です。内容については、後日改めて報告いたします。
社会課題をスピードをもって解決することは変わらず大切にしながらも、さまざまな意見やリスク検討を決しておろそかにせず、内部統制・ガバナンスを強化する体制づくりに努めてまいります。
2026年3月27日
認定NPO法人フローレンス
代表理事 赤坂 緑

