News

アクション最前線

2023/04/05

職種を超えたチームワークで実現していたインクルーシブ保育の現場【視察レポート】

    


『すべての家族に子育てのよろこびを
すべてのこどもに“その子らしさ”を』

このようなビジョンを掲げて保育事業を展開しているNPO法人があります。それが、おれんじハウスです。

小規模保育園のほか、在宅での子育て支援や養育支援、子どものための訪問看護、医療的ケアが必要な子どものご家庭の支援に取り組まれています。

2021年9月に施行された医療的ケア児支援法に伴い、医療的ケア児の認可保育園での受け入れも徐々に進んできました。一方で、実際に受け入れたことのある園はまだ少なく、一日の過ごし方や親御さんとのやりとり、スタッフ同士の連携の仕方などにおいて現場のスタッフにとっては疑問や不安な点も。

フローレンスの保育園でもインクルーシブ保育を実現すべく、保育園園長や看護師などスタッフ一同でおれんじハウスの保育園を見学させていただきました。

ーさまざまな個性や年齢の枠組みにとらわれず、
その子の姿や成長をありのまま受け止め、持っている力を十分に引き出すー

今回視察に伺ったおれんじハウス中葛西保育園では、19名のうち6名の医療的ケア児を預かっています。

医療的ケアの内容は様々で、経管栄養や吸引が必要なお子さん、他の子どもたちと一緒に散歩ができる子もいれば、重症心身障害児のお子さんもいます。保育士に加え、看護師、児童指導員が配置されており、それぞれの専門知識を生かした丁寧なコミュニケーションによって安心・安全な保育が展開されていました

視察当日は快晴だったので散歩に同行させていただきました。お子さん16名に保育士5名、看護師2名、児童指導員1名が同行していましたが、園長先生に教えてもらうまでは違う職種の方だということにまったく気づかず!保育士と同じくらい、看護師や児童指導員も保育に関わっています。日々の保育を通じてお互いの理解が深まりチームワークの醸成にも繋がるため、おれんじハウスで重視しているポイントとのことです。多種多様な職種のスタッフのチームワークで子どもたちと向き合っている姿が実現されています

公園では、医療的ケアが必要なお子さん、重症心身障害児のお子さんも変わりなく過ごします。みんなでベンチに座りお茶を飲み、遊具で遊んでいました。今日はたまたまポニーが公園に来ていたため、みんなで近寄って触れたり、記念撮影をしたり…「ちょっと怖い~」なんて言う子もいました。

 

園児たちはそのまま散歩を続け、私たちは一足早く園に戻り保育室を見学させていただきました。

おれんじハウスの保育室は、医療的ケア児と健常児で明確に区切られたスペースはなく、子どもたちが自由に行き来して交流できるように作られています。ふと、好奇心旺盛な健常児が医療的ケア児の医療器具などに触れたがるのではないか、と思いそのときの対応について質問してみました。

「そのときは、『この子の大事なものだから触らずに見ていてね』と何度も伝えています。ただし、すべてのものを触れてはだめと言ってしまうのではなく、空になったアルコール綿の箱など、触って良いものを渡して子どもの関心の芽も大切にする工夫をしています」

危険が伴うからといって交流を制限してしまうのではなく、安全を担保しながら子ども同士の自然な関わりを促す保育の工夫をされているのがわかります。


(保育室でインクルーシブ保育の話を聞いている様子)

また、インクルーシブ保育を実践していることで子どもたちにも変化が見られたというお話も伺いました。

医療的ケアのある子どもたちは大人とのやりとりよりも、子ども同士の刺激で成長する子が多いです。また、子どもには偏見がありません。お友だちのケアをお手伝いしたがったり積極的に話しかけたりと、思いやりの気持ちが芽生えているのがわかります」

一方で、こういった保育のあり方を実現するためには、看護と保育の連携も欠かせません。医療的ケアのある子どもを健常児と積極的に交流させたい気持ちもあれば、命の安全も守らなければならない。このそれぞれの立場の想いを、日々のコミュニケーションのみならず、しっかりと時間をとって伝え、受け止め、そして保育の形にしていることがわかりました。

「医療的ケア児も健常児と変わらない保育を実現したい、そういった保育者の前のめりな姿勢があってこそ難しい局面でも前に進むことができる」という言葉がとても印象的でした。

最後に理事長の中陳さんから。

「国や市が医療的ケア児に関する制度を作り始めました。我々としても、医療的ケア児の居場所を看護師チームと連携することで作ることができました。今後も地域で課題解消できるように動いていきたいと思っています」

今回の視察を経て、健常の子も医療的ケアが必要な子も、それぞれの個性そして交流を大事に保育をしていることがわかりました。そして、その根幹にはメンバー同士の支え合いがあり、一緒に育んでいくことが重要だと確信しました。

フローレンスでも、医療的ケア児を含むインクルーシブ保育を実現し、あらたな保育のあり方をつくっていきたいと思います。

お忙しい中見学をさせていただき、本当にありがとうございました!

おれんじハウス公式HPはこちら:https://orangebaby.org/index.php


フローレンスの保育園では、23年度の入園を引き続き募集しています。入園を検討されている方向けの園見学は各園にて随時受け付け中です。




フローレンスでは、社会問題や働き方など、これからもさまざまなコンテンツを発信していきます。
ぜひ、SNSもフォローしてください!
もしかしたら、SNSでしか見れない情報もあるかも!?気になるアイコンをタップ!


  • twitter
  • instagram
  • LINE@
  • facebook
  • youtube