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誰にとっても豊かな社会のカギは“つながり”の力。NPO・大学・企業が語る障害児家庭への支援(後編)

誰にとっても豊かな社会のカギは“つながり”の力。NPO・大学・企業が語る障害児家庭への支援(後編)

#CSR #障害児・医療的ケア児家庭支援

異なる業界で協働する過程そのものが、「まさにダイバーシティだと思った」——。

フローレンスは毎年、障害児家庭が“つながる”ための家族交流会を開催しています。これは「支援の情報を知る機会がない」「お出かけをすることさえ難しい」といった声をきっかけにしたもので、社会から孤立しがちな重症心身障害児や医療的ケア児の家庭に交流の場を提供することを目的としています。

2025年度は、筑波大で社会福祉学を研究する大村さん、EY JapanでDE&Iに取り組む梅田さんが新たに参画。企画段階から試行錯誤し一緒に会を作り上げました。

「誰もが違いを受け入れられる社会」への共通の思いを語り合った前編。後編では、その第一歩となる家族交流会での印象深い2つの“つながり”と、NPO・大学・企業のコラボレーションがもたらした価値に迫ります。

話を聞いた人|大村 美保 さん

話を聞いた人|大村 美保 さん

筑波大学助教。障害のある人がメインストリームでその人らしく生きる社会の実現を目指して研究している。

話を聞いた人|梅田 惠 さん

話を聞いた人|梅田 惠 さん

企業の広報や人事分野で経験を積み、ダイバーシティやインクルージョンに取り組むようになった。現在はEY Japanで障害者雇用や次世代の育成に取り組んでいる。

話を聞いた人|安野 早紀子

話を聞いた人|安野 早紀子

フローレンスの職員として家族交流会の開催を担当した。フローレンスでは医療的ケアシッター ナンシーの運営に取り組んでいる。

家族交流会で見えた“つながり”の力

──2025年9月に開催した家族交流会について伺っていきます。実際に開催してどんな印象を受けましたか?

大村さん

昨年の状況を聞いてイメージしていたんですが、実際はそれをはるかに超える、すごく素敵な集まりでした。きょうだいやお父さんを含め、ご一家で参加している方が多かったのも印象的でしたね。

大村さん

というのも、こういったイベントだとお母さんがお子さんを連れていくパターンが多いんです。それが今回は、「パパタイム」(「保護者交流カフェ」での父親同士の交流タイム)やきょうだいで楽しめる企画もあったので、家族みんなが集うことができていました。

家族交流会の催し:保護者交流カフェ

皆さんにリラックスして過ごしてほしいという思いから、日本オラクルのボランティアさんがカフェコーナーを設置してくれました。手作りの装飾で会議室が癒しの空間に早変わり。逗子や葉山など海辺の素敵なカフェで仕入れたコーヒーや焼き菓子も提供されました。

隣に座ったご家庭とコーヒーを片手に自然と会話が始まります。福祉サービス・制度の話から、日々の過ごし方まで幅広いテーマで自由にお話しされていました。なかには、普段なかなか相談しにくい内容をポロッとこぼされた方も。

──「パパタイム」では、お父さん同士がかなり長い時間話し込む姿が印象的でした。

安野

30分くらいの予定だったんですが、結構長くお話しされていましたね。お父さんからの感想には「職場の人にも、保育園の保護者にも、会社の同僚にも話せない。障害のある我が子のことを話すだけでもスッキリした」という声がありました。ありのままを話せることが、ある種のケアになるのかなと感じました。

梅田さん

それぞれのご家庭で苦労話なんかを、役立てばとお話してくれていましたよね。交流会ではみな障害のあるこどもをケアしているという共通点があり、心理的安全性も高くて、いろんな話題が出てきたんじゃないかなと感じました。

大村さん

参加してくれたご家族は、お父さんも積極的にケアに参加しているように感じました。“伝統的”な役割分担の場合、ケアはお母さん、お父さんは経済的に支えるといった形になりがちですが、お父さんが医療的ケアも含めて、さまざまな家事も分担してるからこその愚痴だったり、相談したいことだったりしたのかなと思います。

大村さん

今まであまり議論されてきませんでしたが、お父さんへのサポートや支援も必要であることが示されたのではないでしょうか。多分、参加してくださったお父さんたちは“子育て最先端”だと思うんですよね。医療的ケア児や重症心身障害のお子さんのいるご家庭へのサポートをきっかけに、今後、社会全体に広まっていくとすごくいいなと思います。

──障害のある筑波大学の学生さんとご家族が話し込む姿も印象的でした。

大村さん

今回、筑波大に在籍する障害のある学生にも参加してもらいました。偶然、同じ障害のあるお子さんのいるお父さんが、進学やこれまでの学校生活について熱心に話を聞いてくれました。

大村さん

学生たちは「自分が特別に優秀だから進学できたのではなく、さまざまなサポートを受けるなかで偶然、進学までたどり着いた」と話していて、つまり“誰にでも可能性がある”ということを伝えてくれました

大村さん

また、後で感想を聞いたところ「これまでの経験が誰かの希望や勇気につながったらうれしい。自分の人生を振り返る機会にもなった」と話していました。この企画は梅田さんの激押しで実施できたんですよね。

家族交流会の催し:先輩への質問コーナー

筑波大に通う障害のある大学生にご家族から質問ができるコーナーを用意しました。お子さんの進学や将来について熱心に質問するお父さんの姿が印象的でした。自身の体験を伝えた学生からも好評でした。

梅田さん

学生に参加してもらうことで、交流会を大学で開く意義が深まると感じたんです。企業で勤務しているので、障害のある人との接点も“就労”がポイントになります。インターンシップなども行うのですが、日本だと障害のある大学生は全体の約1.5%ほどで、アメリカなど20%程度いる国とは大きな差があります。本人だけでなく親御さんが諦めてしまうようなケースが多いのではないかという問題意識があったんです。

梅田さん

そこで今回、大学でイベントをやることで、まだお子さんは小さくてイメージがわかなかったとしても、進学する自分のこどもの姿を想像してもらうことに意味があると感じました。また、学生さんにご自身の体験を話してもらうことで、経験が次世代につながっていく良さもあると思うので、皆さんにご協力いただけて良かったです。

“つながり”の力はここにも。異なるセクターが協働する意義

──今回、NPO・大学・企業が協働したことでの気づきはありましたか?

梅田さん

企業はつい効率や生産性を求めがちですが、今回、企画から一緒に考えて改めて「そういうことだけじゃないよね」と再確認できました。会場を決めて日にちが決まれば簡単にいくものと思っていましたが、実際にはたくさんの話し合いが必要でした。

梅田さん

お互いの常識には違いがあって、それを一つひとつ話し合いで解決していくプロセスがあり、これがまさにダイバーシティだと感じました。また、企業の力でこういう活動をもっと応援できれば、もっと輪が広がるだろうし、参加できる人も関わる人も増えて、少しずつインクルーシブな社会に近づくんじゃないかと希望が持てました。

大村さん

大学でこのような企画ができて、すごく嬉しく思っています。というのも、学術が誰のためにあるのかといえば、その先の社会や人々の幸せのためにあると思っているからです。人々の幸せに貢献できることを垣間見られる素敵な機会でした。こうした取り組みの積み重ねで、社会の意識を少しずつ変えていきたいです。

安野

今回の家族会の催しは、企業と大学にご支援いただいたたからこそできたものばかりだなと振り返っています。カフェの空間づくり、きょうだいも楽しめるネイルや、アロマを使ったサシェ作りなど、誰にとっても嬉しい遊び心とホスピタリティあふれる企画アイデアをいただきました。また、大学で開催したことで、少し先をいく先輩のお話が聞けたこともとても貴重な機会になったと思います。

安野

フローレンスが最初に障害児保育園ヘレン(障害児・医療的ケア児を専門に長時間お預かりする保育園)を作ってから10年以上が経ちました。まずは“専門性が求められた”10年だったと振り返っています。

安野

もちろんお子さんを安全にお預かりする場所や当事者同士だけで話せる場所は大切で、これからも必要なものだと思います。しかし、同時に“壁を壊す”営みも大事なのではないかと、次の10年に向けて話しています。

安野

今回の家族交流会でも発見がありました。ボールプールなどの遊具を用意した「室内公園」のお部屋がガラス張りになっていて、たまたま通りがかったご家族から一緒に遊べるかお声がけがあったんです。

想定外のご要望で泣く泣くお断りすることになったのですが、とても印象的な出来事でした。これまで「どうやったらインクルーシブにできるだろう?」と考えることが多かったのですが、純粋に遊びたいから一緒に遊ぶ、その中でつながりを作っていくということも目指していきたいなと思いました。

安野

もちろん、フローレンスだけでは叶えることが難しいので、今回のようにいろんな立場の方の視点を、企画の段階からご一緒できることにすごく意義があると感じています。

「自分ができることを持ち寄る」 今日からできる豊かな社会への一歩

──最後に、この記事を読んでいる方に向けて、メッセージをお願いします。

大村さん

少し関心を持っていただくだけで、全然見え方が違ってくると思います。何か特別なことをするということではなくて、身近なところで考えていただけると嬉しいです。

例えば、電車で移動しているときや、街の中を歩いている場面などで、障害のある人と出会ったり、間接的に何か応援できそうといった機会はあるはずなので、ぜひ関心を持ってほしいです。

大村さん

また、誰しもが支援を受ける側になる可能性があります。生物的・心理的・社会的な条件が重なって、生きるのがすごく難しくなるということは、誰にでも発生しうるので、そういった状況に置かれた人について考えるきっかけにしてもらえると嬉しいです。

梅田さん

今回の家族交流会で、改めてボランティアとは何か考えさせられました。立派なことをしなくちゃいけないとか、時間を使わなくちゃいけないという風に考えがちで、とくに働いていると、忙しくてできないということが多いかなと思います。

梅田さん

でも、コーヒーをお出しするとか、ネイルをするとか、身近なことでも喜んでもらえるんだと改めて感じました。なので、ぜひちょっとした15分とか20分でも、使える時間があれば、その人たちのことを考えるとか、調べるとかしてみることから始めてみてください。

梅田さん

街で出会った時に、目を背けるのではなくて、見てもらって、大変そうだったらちょっと声をかける。自分からアクションしていただけると良いのではないでしょうか。ちょっと勇気がいることでも、何かやってみれば視野が広がると思います。

安野

今回の記事をきっかけに日常生活のなかで、気づくことが増えるとうれしいですね。さらに何かできることに踏み出してみていただけたら、みんながごちゃまぜで暮らせる、豊かな社会に向かっていけるのではないでしょうか。

安野

今回の家族交流会で、自分ができることを持ち寄るということが、実はすごいパワーがあることだと実感しました。あまりハードル高く考えず、ぜひ一歩踏み出して、みんなで豊かな社会をつくっていきましょう!


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