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こどもが学校に行けないとき、親もひとりで抱えなくていい~不登校の親たちと人事が語る、仕事・孤独・職場とのつながり~

こどもが学校に行けないとき、親もひとりで抱えなくていい~不登校の親たちと人事が語る、仕事・孤独・職場とのつながり~

#不登校 #カルチャー

一番つらかったのは、行けるのか、行けないのか分からない時期でした。
まだ小学3年生。ひとりで留守番させるわけにもいかず、「仕事どうしよう」という問題も同時にやってきました————。

こどもの不登校を経験したフローレンススタッフ・わらびは、当時をそう振り返ります。

9月。夏休みが終わり、学校が再開しました。

その一方で、「朝、こどもが起きられない」「玄関から先に進めない」「休む日が続いている」――そんな状況に、いままさに直面しているご家庭もあるのではないでしょうか。

こどものことが心配なのはもちろんですが、不登校や行きしぶりが始まったとき、大きく生活が揺さぶられるのは親も同じです。

今日の仕事をどうするか。明日も休むことになったらどうするか。この状態はいつまで続くのか。自分の対応が悪かったのではないか。

こどものことで頭がいっぱいになる一方で、親自身のしんどさは後回しになりがちです。

今回は、「こどもが学校に行けなくなったとき、親自身には何が起きるのか」「親が仕事を続けながら、ひとりで抱え込まないために、本人や周囲、職場にできることは何か」をテーマに、こどもの不登校を経験した3人のスタッフが語り合いました。

話すかどうか、誰にどこまで話すかは、それぞれが決めていい。でも、「自分ひとりで何とかしなければ」と抱え続けなくてもいい。

そんな選択肢を、3人の経験から一緒に考えてみたいと思います。

今回話した3人

かず

かず

フローレンス歴11年。人事を担当しながら、「不登校イシュープロジェクト」のプロジェクトリーダーも務める。

わらび

わらび

フローレンス歴14年。ウェブサイト関連の業務を担当。社内の不登校の「親の会」に参加。

おかぴ

おかぴ

フローレンス歴5年。政策提言や事業開発を担当。「不登校イシュープロジェクト」メンバー。

行けるのか、行けないのか分からない。その時期がいちばんきつかった

かず

今日は、こどもが学校に行けなくなったとき、親の側にはどんなことが起きるのか。そして、ひとりで抱え込まないために何ができるのかを、みんなの経験から話してみたいと思っています。
まず、それぞれ簡単に自己紹介からお願いします。

わらび

大学生と高校生がいて、2人とも不登校を経験しています。

上の子は小学3年生で不登校になり、オルタナティブスクールを経て、公立中学校に戻りました。

下の子は小学1年生くらいから行きしぶりがあって、本格的に不登校になったのが小学4年生。小5の12月からフリースクールに通い、中学3年生までほとんど学校には行かず、高校から定時制に進学して、今は毎日楽しく通っています。

おかぴ

こどもが3人いて、高校生、中学生、小学校高学年です。

真ん中の子が小学3年生の3学期から小学6年生まで不登校で、フリースクールを利用していました。今年4月に公立中学校へ進学してからは毎日通っています。

かず

中学生のこどもがいて、小学2年生から不登校が続いています。今は居場所支援やスクールカウンセラーとの面談、ホームスクーリングのような形を組み合わせながら過ごしています。

では、最初に聞きたいのが、こどもの不登校に直面して、どんなことが一番しんどかったかです。

わらび

上の子のときに一番きつかったのは、実は「学校に行かない」と決まった後ではなく、その前でした。

体調が悪い日が続いている。でも本人は学校に行きたい、行かなきゃいけないと思っている。原因も分からない。

病院に相談して、学校への嫌な気持ちが体調に出ているらしいと分かり始めたころが一番しんどかったです。

「学校に行かない」と本人がはっきり言ってからは、逆に腹が据わったんですよね。行かない前提で生活を組み立てればいい。

それより、「今日は行くのか、行かないのか」が分からない時期がつらかった。

まだ小学3年生でしたから、ひとりで留守番させるわけにもいかない。「仕事どうしよう」という問題も同時にやってきました。

おかぴ

わたしも、どこまで続くのか分からないしんどさはずっとありましたが、一番苦しかったのは不登校が始まった初期です。

最初は「喉が痛い」と言って一週間休んだんです。体調不良だと思っていましたが、熱もないまま続いて、「これは何か違う」と気づきました。

夫は「なんで行かないんだ」と、見たことがないくらい怒っていて。でも、息子が玄関から先へ進めない姿を見たとき、父親に叱られる怖さ以上に、学校に行くことの方がつらいんだ、とわたしには見えたんです。

「体育だけ行く」「給食だけ行く」と本人が言うから連れて行く。でも学校の前まで来ると、家まで走って帰ってしまう。それを3往復したこともありました。

当時の息子は、行きたい気持ちと行きたくない気持ちの間で葛藤しており、本当につらそうで暴れることも多く、親子で満身創痍の状態でした。

不登校が日常になってからも、親の気持ちが落ち着くとは限りません。ふとした場面で、それまで「あたりまえ」だと思っていた光景との違いを突きつけられることもあります。

おかぴ

忘れられないのは学芸会です。

不登校がもう日常になっていたはずなのに、きょうだいの学芸会を見に行ったら、涙が止まらなくなって。

「なんでここに息子はいないんだろう」って。

自分にとって「普通」だった光景が普通ではなくなったこと。そして、何もできない無力感が、ただ苦しくて、悔しかったです。

かず

「普通」という言葉は大きいですね。

フローレンスで働いていると、いろんな親子のあり方や生き方があって、それぞれ違っていいということを、仕事を通じて日々考えているつもりなんです。

でも、自分のこどものことになると、「学校に通っている姿を見たい」とか、「みんなと同じように過ごしてほしい」という気持ちが、自分の中にもあることに気づかされる。

わらび

分かります。

上の子が中学校で運動会に参加している姿を見たとき、「わたしはこれが見たかったんだ」と思ったんです。

でも、それはわたしのエゴなんですよね。

本人は不登校の時期も、その時期なりに楽しんでいたはずだから。

「ひとりじゃない」と思えた。人と話すことで、見える選択肢が増えた

かず

そんな先の見えない時期を、どうやってやり過ごしてきましたか。役に立ったものや、人とのつながりはありましたか?

おかぴ

わたしの場合は、スクールカウンセラーがひとつのきっかけでした。

「夜に『明日行く?』と聞かない」「朝に『今日行く?』と聞かない」といったアドバイスをもらったりしました。学校とのコミュニケーションにも入ってくれて、担任の先生の対応も変わっていきました。

わらび

わたしは、同じ立場の保護者と知り合って、「分かる、分かる」と言い合えたことが、すごく支えになりました。ひとりじゃないと思えるんですよね。

おかぴ

わたしも、早い段階からわらびさんに相談したり、周りにしんどいことを吐き出したりしていましたし、ママ友や地域の人にも話していましたね。

不登校になって比較的早い時期にたまたま話した人が、実は不登校の親だったんです。その人が、「自分はこどもを引っ張って学校に連れて行こうとして、こどもを深く傷つけてしまった。無理に学校へ行かせなくていいんだって、もっと早く誰かに教えてほしかった」と泣きながら話してくれて。

それを聞いて、こういう経験はもっと人に話した方がいいのかもしれない、と思いました。

自分が話すことで楽になることもあるし、それを聞いた誰かが楽になることもある。

わらび

先の選択肢を知っているだけでも違うと思います。

不登校になると、「このままずっと学校に行けないのかな」「この先どうなるんだろう」って、親はすごく先まで不安になるんですよね。

でも、世の中にはいろいろな学校や学び方があるし、居場所は学校だけではない。「今の状態だけで、この子の先が全部決まるわけじゃない」と思えるだけで、少し気持ちが違ってくる。

そういう選択肢や視点って、自分ひとりで調べているだけではなかなか見えなくて、人と話す中で得られることも多いんですよね。

誰かに話すことで得られたのは、共感だけではありませんでした。ひとりでは見つけにくかった選択肢や、先の見通しも、人とのつながりから少しずつ見えてきたと3人は振り返ります。そして、その「話せる相手」は職場にもいました。

「辞めなくてよかった」。仕事とのつながりを切らないために

わらび

忘れられないことがあります。当時の上司に「実はこどもがこうなっちゃって……」と話したら、わたしが自分のしんどさを自覚するより先に、「しんどいね、大変だよね」と涙ぐんだんです。

「あ、この人はわたしの問題を他人事じゃなく、自分ごととして受け止めてくれているんだ」と感じました。

だから、「この先、仕事で迷惑をかけてしまう時期があっても、この人となら、どう調整しながら働き続けるかを一緒に探せる」と思えたんです。

かず

職場で事情を話すとき、相手が最初にどう受け止めてくれるかは、その後の働きやすさにもつながりますよね。

わらび

そうですね。

もちろん、「みんなもっと自己開示しましょう」という話ではないと思います。でも、相談されたときに、一度相手の立場に自分を置いてみる。それは、受け止める側にできることのひとつだと思います。

職場で気持ちを受け止めてもらえた安心は、具体的に「どう働き続けるか」を考えることにもつながっていきました。

かず

当時は、今ほど在宅勤務が一般的でなく、使える制度も多くはありませんでした。わらびさんは時給制に切り替えたりしながら、働き続ける方法を模索していましたよね。

わらび

そうですね。ひとりで就業規則を一生懸命読んでも、「じゃあ自分の場合はどうできるんだろう」というところまでは分からなかったんですよね。

そこで人事に、「今ある制度の中で、わたしにできることを教えてほしい」と相談してみました。

実際の選択肢の知恵はもちろんですが、一緒に解決策を探せると思えたこと自体が、働き続ける安心感になりました。

人事と一緒に働き方の選択肢を探し、仕事とのつながりを切らずにいられたこと。そのことは、親にとってどんな意味を持ったのでしょうか。

かず

不登校の時期、みなさんにとって仕事はどんな存在でしたか?

わらび

わたしは、まず「辞めなくてよかった」と思っています。
オルタナティブスクールなど学校以外の選択肢にはお金がかかる場合もあります。収入があったから、「行きたい場所があるなら行っていいよ」と、こどもに選択肢を示すことができました。

一時的に働き方を変えて、収入が下がっても、仕事を辞めずにつないでいたから、状況が落ち着けばフルタイムに戻ることもできた。0か100かじゃなくて、仕事とのつながりを切らずにいられるということが、とても大事でした。

それと、仕事って「自分を保つ時間」でもあるんですよね。

全員

本当にそう!

わらび

こどものことから離れる時間がある。それは精神衛生上もすごく大きかったです。

おかぴ

わたしも、本当に働いていてよかったと思います。

仕事をしている間は仕事に集中できる。「仕事が精神安定剤になる」という面は確実にありました。

でも、それって親のためだけじゃなくて、こどもにとっても必要だったと思うんです。

親がそばにいると、「学校を休んでいるのにゲームしていていいのかな」「動画を見ていていいのかな」って、こどもなりに後ろめたさを感じることもある。

親と少し離れて、一人で気楽に過ごせる時間も大事だったんじゃないかなと思います。

かず

人事の立場からも、それは大事な視点だと思います。

本人の勇気だけに頼らない。職場からできること

3人の経験から見えてきたのは、仕事を続けるために本人が工夫するだけではなく、職場の側にもできることがある、ということでした。ここからは、人事や組織にできることへと話が広がっていきます。

かず

不登校は、起き方や家庭の状況が本当に多様で、制度だけではカバーしきれない部分があります。

だからこそ、「この制度に当てはまる・当てはまらない」だけで終わらせず、働き続ける糸がプツンと切れないように、対話しながらつないでいく。そこには経営や人事の役割があると思っています。

わらび

会社側から見ても、会社とは関係のない外的な要因で社員が辞めてしまうのは、大きな損失ですよね。

「こういうことも相談していいんですよ」という窓口が開いているだけでも、社員へのメッセージになると思います。

かず

フローレンスには当事者の有志が集まる「親の会」がありますが、当事者同士がつながれるコミュニティを会社側がつくるという方法もある。

おかぴ

そう思います。

自発的にコミュニティができるのを待たなくても、育休復帰の人たちを集めて座談会をするように、不登校のこどもを持つ親たちがつながれる場を、人事側がつくってもいい。そういう場は、会社側にとっても、当事者が何に困り、どんな制度を必要としているのかを知る機会になります。

信頼関係がまだ十分でなくても、「会社が用意した場なら参加してみようかな」と思える人もいるかもしれません。

その時には分からない。あとから見えてくることがある

最後に、いま不登校や行きしぶりのさなかにいる親子へ、それぞれが伝えたいことを語ってもらいました。

かず

最後に、今しんどい親子に伝えたいことがあるとしたら、何でしょうか。

おかぴ

フリースクールにいた時期には、中学生に混ざって宿泊学習に行くなど、普通に学校へ通っていたら、親の方が心配してさせていなかったかもしれない経験もしました。

そして今、息子は中学校に通っています。

正直、不登校だったころには、こんな日が来るとは思っていませんでした。

先日、学級通信で、息子が「優しい人ランキング」のトップに選ばれていました。もともと優しい子ではあるんですが、自分自身がすごく傷ついた経験があるから、「誰にも傷ついてほしくない」「自分も誰かを傷つけたくない」という思いが、あの子の優しさの背景にあるのかもしれないなと思いました。

いろんな成長の仕方がある中で、この子はこの道をたどったんだなと、思っています。

わらび

下の子は、中学生の間、家でずっとゲームをしている時期がありました。親としては、「この人大丈夫かな、ずっとゲームしていて…」と思っていました。

でも、たまたま歴史上の人物をキャラクター化したゲームにハマり、歴史に興味を持つようになって「自分はいろんなことをまだ知らないかもしれない。高校に行って勉強したい」と言い出しました。

高校に入った今は「学ぶことがおもしろい。一回も授業を逃したくない」と言っています。

中学校には2週間しか行けなかったのに、です。

大人から見れば、「この子はいったい何をしているんだろう」と思う時間でも、本人の中では何かが動いているかもしれない。
それは、その時には分からないんですよね。後から振り返って初めて分かることもあります。

だから、今この瞬間の姿だけでその子のこれからを決めつけなくていいということ、多様な選択肢があることは、知っていてほしいです。

かず

我が家の息子は、5年がかりで一歩ずつ前に進んできて、なんとか相性の良い居場所に行けるようになりました。

変わらない毎日がずっと続くのかな、と思う日もありました。それでも「今日もご飯を食べてくれたな」、「じっくり睡眠をとってくれたな」と、小さな「よかったな」を探しながら、過ごしてきました。気づいたら5年たって、振り返ってみると前に進んできた、と今は思えます。

何がこどもにとって前進なのか、どんなペースがよいのか、こどもによって驚くほど違います。

今日話した3人の経験がすべてではありません。職場、地域、親の会、支援機関などをたどりながら、自分たちに近い経験や、自分たちに合う選択肢に巡り合ってほしいな、と願っています。

本日はお二人とも、大切な経験を話してくださり、本当にありがとうございました。

不登校のこどもを支える親が仕事をあきらめずにいられるために、組織には何ができるのか。最後に代表理事の赤坂緑から、組織としての考えをお伝えします。

「親もひとりで抱えなくていい」を、組織の仕組みに――代表理事 赤坂緑

今回の座談会に出てくるような、家庭の事情を話したときに受け止めてくれる人や、相談できる人事、当事者同士のつながり。それらは、フローレンスが長い時間をかけてつくってきた組織文化の一部だと思います。

一方で、「フローレンスだからできる」で終わってしまえば、社会は変わりません。

家庭の困りごとを相談できるかどうかが、本人が勇気を出して自己開示できるか、あるいは偶然「理解のある上司」に出会えるかだけに左右される状態にはしたくありません。

もちろん、家庭の事情を話すかどうか、どこまで話すかは本人が決めることです。話さないことも含めて、その選択は尊重されるべきです。

だからこそ「相談しても不利益にならない」「すべてを説明しなくても働き方を相談できる」という安心を、制度と日常のコミュニケーションの両面からつくれる組織でありたいし、そのような組織が増えるとよいと思っています。最初から完璧な制度を用意する必要はありません。

声を聞き、相談先をつくり、できる調整を一緒に考え、必要に応じて制度を変えていく。その積み重ねによって、こどもの状況が変わったときにも、親が仕事をあきらめずに済む社会に近づけるはずです。

親が支えられることは、その親と一緒に暮らすこどもの安心にもつながります。

「こどもが学校に行けなくなっても、親もひとりで抱えなくていい」。

それを一部の職場だけの特別な文化ではなく、社会のあたりまえにしていきたいと思います。


フローレンスでは、不登校をこども本人だけの課題としてではなく、親の仕事や暮らし、孤立も含めた「親子の課題」として考え、発信を続けています。今回の記事とあわせて、ぜひご覧ください。

◎当事者の親が経験した戸惑いや、「学校に戻すこと」だけをゴールにしない考え方を紹介しました。

◎2026年4月、「不登校イシュープロジェクト」からの提案を受けて、人事が制度を見直しました。「子の看護等休暇」の取得事由に、こどもの不登校や障害、発達支援にともなう通院・付添などのサポートを加え、あわせて中学校卒業までのこどもを養育するスタッフを対象に、「子のサポート休職」を新設しています。


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