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【社会起業のレシピ】vol.24「サービスインしよう(3) ~取材を受ける~」

【社会起業のレシピ】vol.24「サービスインしよう(3) ~取材を受ける~」

#政策立案・政策提言

もっとも怖いのは、間違った記述

プレスリリースをきっかけに、新聞やテレビなどで取り上げてもらえることが決まったら、さあ、取材だ。

慣れていないと、段取りが悪くなりがち。その結果、こちらの意図が記者にきちんと伝わらないといったことも起こりうる。そこで今回は、どうすれば抜かりのない取材対応ができるかについて考えてみよう。

記者からの質問を受ける駒崎
記者からの質問を受ける

僕の経験からいって、取材でいちばん怖いのは間違った内容を書かれてしまうことだ。たとえば、フローレンスで当初あったのは、高い価格だけを載せられてしまうという間違い。弊会の場合、月会費の価格には5000~2万円の振れ幅があり、平均6000円強。にもかかわらず、「価格は2万円」と書かれてしまうと、見る側は「うわぁっ、高い!」となってしまう。それは、こちらにとってはかなりのダメージになってしまう。そうした事態にならないように、取材にあたっては、しっかりとリスクマネジメントをする必要がある。

そこで、おすすめしたいのが、取材用に紙ベースの「資料」を用意しておくこと。取材用に作成してもいいし、パンフレットを資料として使ってもいいだろう。何度か取材を受ける経験を積んだら、以前に掲載された記事も資料に加えておこう

そもそも記者たちは、その領域にくわしいわけではない。なので、耳から聞いただけでは、十分に理解してもらえない可能性もある。また、言葉の間違いも起こりやすい。フローレンスでも、「病児保育」を「病児育児」と間違われてしまうことが何度かあった。資料があれば、そうした間違いが起こりにくくなる。記者にとっても資料があったほうが、記事が書きやすいだろう。資料は、事前に先方に送っておくことをおすすめする。そうすれば、たいていの記者は目を通したうえで取材してくれる。取材時にこちらはゼロから説明する必要がなく、サービスについて、より深いところまで話すことができる。

いい記事の書き手は、とことん優遇せよ

取材後のアフターフォローとしては、いい記事を書いてくれた記者には、その後、優先的に情報提供するといいだろう。たとえば、新しいプレスリリースを出す際には、その前に特別にお知らせする。「今度、○○というサービスを始めます。もし取り上げていただけるようでしたら、ほかのマスコミ各社にプレスリリースを出すのを控えます」という具合にだ。いってみれば、自分から情報をリークしてしまうのである。メディアとのつきあい方は、どことも等しく公平にではなく、このように、自分たちを応援してくれるところと関係を深めていったほうがいい。味方になってくれる記者がいたほうが心強いし、また、そのほうがよりメディアにも取り上げてもらいやすくなる。

一回一回の取材を無駄にしない

また、取材は受けるたびに、次の取材に活かしていく姿勢をぜひとももつようにしよう。一回一回の取材を無駄にしないこと。たとえば、何度か取材を受けるようになると、同じような質問をされることが多くなる。そこで毎回、質問された内容をメモし、それをベースに「想定問答集」のようなものをつくってみる。取材では、それも資料として渡しておけば、均一的な取材対応ができるし、代表ではなく、他の職員でも取材を受けられるようになる。そうすると、取材対応キャパシティも増え、より露出を増やすこともできる。間違った内容が書かれたり、こちらの意図とはズレたかたちで記事にされたりした場合には、ただ相手を怒るだけでなく、自分たちにも非はあるのではないかと反省することが重要なのだ。こちらの言葉足らずが、そうした間違いを引き起こしてしまった可能性だってある。ならば、それをくりかえさないように、次回の取材では何らかの工夫をすればいい。失敗の経験を、取材対応のブラッシュアップに活用していくことを肝に銘じよう。

信頼を「アーカイブ」する

メディアに取り上げてもらった記事や動画は、次回の取材だけでなく、自社のサービスをブランディングするのにもフル活用させてもらう。新聞掲載された事実をウェブページに掲載したり、紙のパンフレットに記事の一部を載せたり、「掲載記事集」をつくってパンフレットにいっしょに挟み込んだりなどして、取材実績を目に見えるかたちにしておくのだ。これは、自分たちへの信頼をアーカイブ(ひとまとめにすること)できるという意味がある。なにせ、新聞やテレビなどに取り上げてもらえると、それだけで信頼してもらいやすくなる。規模の大きなメディアになればなるほど、自分たちの権威づけにもなる。信頼をアーカイブすることで、お客さんやほかのメディアから、「○○新聞が取り上げているのだから、この団体はきちんとしているだろう」と安心してアクセスしてもらえるようになるのだ。そしてそれは、自分たちの成長にもつながっていく。

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