来る6月18日父の日を目前に、「大企業の男性社員が育休を取得後に不当な扱いをうけ、退職になった」というニュースが話題となっています。
また、先ほど14時に厚生労働省から「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」が発表されました。男性の育児休業取得者の割合は6.16%とのことです。
厚生労働省では、2010年より男性の育児休業取得率を2020年度には13%に上げることを目標に掲げています。
しかし、前回2017年度の数値「男性育休取得率5%」から2018年度はたった1.16%しか改善していないのです・・・。
そんな中、民間企業では三菱UFJ銀行や積水ハウスなど「男性育休を義務化」する動きもでてきました。
自民党内の有志議員の中でも同様の動きが立ち上がっているとのことです。
そこで今回は、男性の育休取得率100%であるフローレンスの、育休を取得したパパ社員の座談会の様子をお届けします。
実は、以下の記事は2016年当時のフローレンススタッフによる座談会です。
育休取得率100%の組織でも、「いっそ、キャリアを諦めればいいんじゃないですかね?」なんてショッキングな発言も出てきますが、「育休を取る」に限らず「育児をする」ことの意味を、考え直すひとつの機会になれば幸いです。
育休、どうやって職場と調整した?
橋本(吉)
まずは簡単に自己紹介と、みなさんがいつ育休を取ったのか、それからその経緯について教えてください。
まずは僕から。今回の進行役の、働き方革命事業部の橋本です。2017年1月に第二子の男の子が生まれて、3ヶ月半育休を取りました。といっても育休期間も少し働いていて、半育休という感じでした。半育休って何?というのは、ブログを読んでいただければと……(笑)
森下
障害児保育園ヘレンマネージャーの森下です。僕が育休取ったのは2014年の3月なんで、もうだいぶ前ですね。ちょうどヘレン(障害児保育園ヘレン荻窪)の開園の半年くらい前ですね。第二子の男の子が生まれて、1ヶ月半取りました。
野口
働き方革命事業部で人事を担当している野口です。産育休を去年の10月から今年の4月まで取って、復帰したばかりです。こんなに早く戻ってくるとは自分でも思っていなかったんですけど、タイミングよく保育園に入れそうで、逆に1歳のときに入れなかったらどうしよう……というドキドキと戦えず(笑)、復帰した感じです。
橋本(吉)
今回は男性育休取得者の座談会なのですが、女性から見てどう?というのもあったほうがいいかなということで野口さんにも参加してもらうことにしました。よろしくお願いします。
山内
ヘレン荻窪で保育をしている山内です。僕は昨年、2016年10月に子どもが生まれて、1ヶ月半近く育休を取りました。子どもはまだ保育園に通っていなくて、家に妻と一緒にいます。男の子です。
橋本(英)
おうち保育園なかの大和園で保育士をしている橋本です。育休中なんですが、取り立てほやほやです。5月の後半から、7月いっぱいまで、2ヶ月と1週間くらい取る予定です。今はとにかく、眠いですね。
野口
生まれたばかりですもんね。
橋本(英)
はい、とにかく眠いです。まあ、覚悟していたとおりなので、予想以上でも以下でもないんですけど、これを、世の中の女性がひとりでやっていると思うと……ぞっとしますね。そういうケース多いじゃないですか。ほんとに。
橋本(吉)
今はどんな風に過ごしてるんですか? 家事育児の役割分担とか。
橋本(英)
出産直後なんで、役割分担はほとんどないです。妻には、おっぱいだけあげて、という感じです。休めるときに休んで、という感じで。僕自身は、ミルクを作ったり掃除したり洗濯したり、全部やってます。退院したのが2日前なので。大変ですね、本当に。赤ちゃんはすごくかわいいですけどね。
橋本(吉)
本当に生まれた直後なのに、座談会に来ていただいてありがとうございます。ちなみに育休を取るに至った経緯はどんな感じですか?
橋本(英)
自然とそうなったというか。安定期に入るくらいに園長に話をして、「この辺りの時期に育休を取りたいんですけど」と。
橋本(吉)
職場からはどんなリアクションだったんですか?
橋本(英)
取ること自体は、全然ウェルカムでした。期間は、いろいろ調整して、2ヶ月くらいにします、ってとこに落ち着きました。
本当はもう少し長く取りたかったという気持ちもあるんですけど……ただ、保育の現場で6月から育休ということになると、4月に入ってきた0歳児の子どもたちは僕の顔を忘れてしまうかも、というところもあって、あまり長い期間は現実的ではないなとも思ってはいました。といっても1ヶ月だと妻が大変だし……という感じで、2ヶ月というところかなと。
橋本(吉)
そうか、子どもとの関係というのもありますもんね。山内さんはどうでした?
山内
妻の妊娠と育休の希望を園長に伝えたのは、けっこう早めの時期でした。そしたら「いいじゃん、育休とりなよ」って言ってくれて。他の皆さんには安定期に入ってから伝えました。
僕自身、もともと子どもが生まれたら育休を取ろうというのは考えてて、妻とも話をしていたんですけど、育休自体はそんなに長く取るつもりはなくて。長く取りたい気持ちもあるけど、長く休めば休むほど収入が減るというのもあって、1ヶ月半くらいのつもりですというのを職場には伝えてました。
橋本(吉)
たしかに、収入は気になりますね。
山内
それから、僕の場合は、里帰り出産だったんです。そこに、僕もお邪魔して。だから1ヶ月くらい、妻の実家で僕も一緒に生活して。
橋本(英)
それはすごい。
山内
出産直後は、僕も病院に寝泊まりしていて。シャワーだけは男性は使えないので、妻の実家にいって、「ちょっとシャワー貸してください」って言って、終わったらまた病院に戻って……夜はナースステーションに子どもを預けたられたので、入院中は部屋で妻と一緒に過ごすというくらいだったんですけど、そういうのができたのはいい経験でした。
森下
すごいね。他にも男の人はいた?
山内
いや、見なかったですね。
野口
きっと周りの妊婦さんは「いいなあ、羨ましい」って思ってたと思います。
山内
それから自宅に帰って、妻と子どもと3人で過ごしました。1ヶ月半のつもりだったけど、少し延ばさせてもらって、結局2ヶ月弱くらいになりました。自宅の生活にも慣れないといけないなということで。
橋本(吉)
森下さんの育休を取ったきっかけは?
森下
それはもう、駒さん(代表駒崎)に言われたってのがありますね。駒さんが、うちの妻が妊娠してるってのを知って……なぜ知ったかというと、フローレンスのバーベキュー大会があって、そこで僕の妻と話して知って。
というか、僕はその前に報告をしてたんだけど、それはすっかり忘れてたみたいで(笑)。「森下さん、奥さん妊娠してるんじゃないですか!」って半ギレっぽい感じで言われて(笑)、「いつ育休取るの?」って言われて、「ああ、僕育休取るんだな」って(笑)。
ヘレンを立ち上げる数ヶ月前で忙しくて、育休を取ってもいいものか?というのはあったんだけど、駒さんがそういう風に言ってくれたので。
育休が家族という関係性にもたらすもの
橋本(吉)
育休を取って、パートナーとの関係はどうなりましたか?
橋本(英)
僕は、妻の妊娠がわかってから、尊敬してます。ずーっと。妻のことを。僕も、妻のつわりがひどい時期とか、夜中の2時とか3時まで妻の背中をさすったりとかしてたんですけど、それをしても対等じゃないというか。こっちは言ってみれば、生活の手を抜けるじゃないですか。
橋本(吉)
たしかに。
橋本(英)
僕も、病院に泊まってたんですよ。陣痛より前に破水が来ちゃって、そのとき職場にいたんですけど、連絡をもらって、園長に「破水した、病院に行かせてほしい」って言って、「人員の調整をするから1,2時間だけ待ってくれ」って言われて、「わかりました」って言って……そこから、陣痛が来なくて、結局次の日に誘発剤を使ったんですけど、そこから、僕も病院にずっと一緒にいて、生まれた直後も、産後1日目の夜から、病室に泊まって。
そんな中で妻が、「一人じゃ無理だ、ありがとう、ありがとう」って言ってくれて。だから、多少は役に立てたのかな……妻がそんな風に感じてくれてたのかなという気はします。
だからやっぱり育休を取ってよかったなと思うし、妻が母になる姿を、ちゃんとリアルタイムで見れたので、よかったなと思ってます。すっごい眠いですけど(笑)。取ってよかったなとは思います。みんな取ればいいのになって思います。
橋本(吉)
みんな取ったほうがいいですよね。
橋本(英)
ですよね。すごい大変じゃないですか。というか、大変なのはこれからなのかな。みなさん、育休を2ヶ月くらい取って、どこが一番きつかったですか?
森下
やっぱり最初かな。3時間おきとかに赤ちゃんが起きるし。
山内
最初だと思います。赤ちゃんが夜起きると、自分も起きるんだけど、妻から「眠そうにされているのは嫌だ」と言われたりして(苦笑)。
ミルクを作ったりもしてたけど、その眠そうにしてる態度が許せなかったみたいで。
野口
そういう時期ってどうしても心が狭くなっちゃうんですよね。
山内
この座談会に来ることになってその話を妻としたら「育休を取ってくれるのはありがたいけど、大変さをちゃんと覚悟しておくのが大事だと思う」と言われました。わかったけど、育休を取る前に言ってほしかった(苦笑)。
まあそれで夫婦仲が悪くなってるわけではないんですけど。もともとの、生まれる前から2人で住んでいて、家事も分担していたので、子どもが生まれたからどう、というのはあまりないですし。
橋本(吉)
お子さんとの関係という意味では、どうでしたか?
森下
上の子と、すごく仲良くなれたと思います。普段から子育てしてるほうだけど、下の子が生まれた直後に「今はこういう状況なんだな」っていうのを、上の子も理解してくれて、父がなぜいるのかもわかってくれるから、より関係が深まったというのはあるかな。
あとは、保育園に毎日送り迎えにいくから、他のお父さんお母さんと仲良くなれたし、そうするとその子どものこともわかってくる。娘からすると「私のパパは他のお父さんお母さんとも仲良くしていて嬉しいな」みたいな感じになってたと思いますね。
山内
自分の家族とはまた違うんですけど、育休から復帰して、親御さんとのコミュニケーションも少し変わったかもしれません。仕事しながら子育てって大変だなっていうのを実感して。子どもが生まれる前は、ちょっと甘いこと言ってたというか。
橋本(吉)
甘いことというと……
山内
親御さんの大変さをわからないで、子どもの気持ちを優先していたというか。そういうのは、大口叩いてたなあって、今になって感じているというのはあるかもしれません。
自分の子どもが保育園に行くようになったら、同じような悩みを自分も持つだろうし、そういう子育ての経験があると、親御さんとのやり取りも変わると思うし、保育者としてできることも違うのかなと思います。
育休は休暇じゃない。子育ては社会への貢献である
橋本(吉)
世の中の男性って、育休で仕事に影響するとか、キャリアの心配もあると思うんですけど、そういうところってどう思います?
森下
案外、人って、いなくてもなんとかなるというのはありますね。その人がどういうポジションにいても。だから、「自分がいなくなったチームが回らない」って心配をしてるんであれば、大丈夫じゃないかなとは思いますね。もちろん事前の準備も必要だとは思いますけど。
だから会社が育休取れって言ってるんであれば、取ったほうがいいかなと。ただそうじゃない会社が多いからね。
橋本(吉)
職場の雰囲気が育休を取れない理由の一位ですからね。
森下
自分が育休を取ることで、組織の中に新しい流れを作るんだ、くらいの気概を持てたらいいですよね。自分が取れば、若手も取りやすくなるんだ、って思って。
橋本(英)
実際は難しいですよね。知り合いの会社では、女性が多い職場なんですけど、産前産後休暇に入るときに、上長面談で「二人目は考えてるのか」って。「考えてるなら、間なくすぐ作ってくれたほうが会社としては嬉しいよ」って言われたらしくて。
一同:ええー!
橋本(英)
女性の取得率も100%ではないじゃないですか。出産を機に会社を辞める人も多いし。ようやくなんとなく、みんな育休取ろうという感じになりつつありますけど、まだ全然、整備されていないところも多い。
野口
理解のない女性のほうが目線は厳しいと思います。男性の上司だと、わからないから「体調とか気遣わないといけないんだろうな」ってなんとなく思うかもしれないけど、女性の上司だと「あんたそこまでやれるでしょ」って、けっこう厳しいようなイメージがありますね。
橋本(英)
男女問わずですが「私はやったのよ!」とか「俺のときはそうだった」とかすごく嫌ですよね。
森下
時代も違うし、価値観も違うよっていうね。
橋本(吉)
そうですね。ただ、若い世代って、育休を取りたいって人も増えてると思うので、だんだんと変わっていくのかなとは思います。急激に、今の管理職の頭の固い人を一気に変えることはできないから、そこはイクボス宣言のムーブメントとかにがんばってほしいですね。
野口
やっぱりじわじわ変えていくしかないですね。例えば四季報とかに、男性育休取得者の数を載せたらいいんじゃないかな。
橋本(吉)
厚労省が男性育休取得者の数を企業に公表させようとしている、というニュースもありましたね。
森下
それは重要だよね。これから就職しようとする人も知りたいだろうし、そういう会社に優秀な学生が集まる、となるかもしれない。
野口
会社も、数字を公表しないといけないとなれば、本気度も変わってくるでしょうね。
山内
経験しないとわからないことも多いじゃないですか。育休取ってみてこんな風に大変だった、とか。そういう経験、体験をするイベントとかを作ればいいんじゃないですかね。きっと、そういう人は、自分の子育てでそういう経験をしてないから、考えも固いのかなというのがあるので、そういう経験をしたら、もしかしたらガラッと変わるかもしれない。
橋本(英)
思い切ってキャリアを諦めればいいんじゃないですか?
野口
妻目線からするとドキッとしますね(笑)
橋本(英)
いまいる会社でのキャリアを、諦めればいいんじゃないですかね。キャリアって、どうとでも作れるじゃないですか、今の時代。フリーランスになる人もいっぱいいるし、働く場所にもとらわれない時代だし。
森下
会社に縛られなくてもいいよね、っていうね。
橋本(英)
はい。副業がOKっていう会社も出てきているし、いま所属している組織でのキャリアだけ、考えないようにすれば、育休も取りやすくなるのかなって。そうすれば、できることは増えるし。終身雇用も崩壊している今、そういうのもいいんじゃないかなって気はします。
橋本(吉)
僕もそう思います。こないだ、サイボウズ式の記事で「社内出世より社会出世を」っていうワードがあって、個人的にすごいいいなと思って。ひとつの会社で長く勤めて身を粉にして尽くすよりも、もっといろいろな、自分の価値を出せるチャネルというか、場所があるかもしれない。そういうのを複合的に使って、社会に価値を出していくっていうのができたらすごいいいなと思います。
僕自身、フローレンスの中で出世したい、と思ってるわけじゃないし、そういう、視点を変えることは大事ですよね。
橋本(英)
女性の目線から、自分のパートナーが育休を取るのはどうですか?もちろん育児はやってほしいでしょうけど、キャリアという意味とか、総合的に考えて。
野口
私は賛成ですけどね。1ヶ月とか2ヶ月くらいなら、キャリアにも影響はないんじゃないかなと思ってて。妻からすると、夫がそこにいてくれるだけで感謝なんですよ。まあ、いてもいなくても、文句は言うと思うんですけど(笑)。でも、本当に、心のなかでは、いてくれるだけで嬉しいと思ってる。赤ちゃんは言葉も理解できないし、「これ、本当に大丈夫なのかな?」というときに「まあ、俺もわかんないけど」っていうスタンスでもいいから、近くにいてくれるだけで、安心感が全然違うので、大賛成ですね。
私の夫は残念ながら育休は取れなかったんですけど……
橋本(英)
それは、会社の風土がそうじゃなかったから?
野口
そうです。有休でもいいから取って、と言ったんですけど、それもだめで……まあ、あとは本人のやる気だと思うんですけどね。
森下
そもそも子育てすることは社会に対しての貢献になっている、という考え方も大事かなと。「仕事をしない」と聞くと、社会からはみ出ちゃってる気もするし、何も貢献してないような気もするんだけど、そうじゃなくて。子育てすることで、子ども達が大きくなれば税金を収めるようになるし、社会を変えるようになるかもしれない。そこに僕は投資しているんだと考えると、気持ちが変わるんじゃないかなと思いますね。
橋本(英)
そうですね。「休暇」じゃないよ、って感じですね。
森下
そもそも育休っていう表現を変えてもいいのかもしれない。「育児勤務」みたいな。育勤(いくきん)。別に僕は休んでるわけじゃないと。でっかい仕事をしてるんだよと。しかも、男性育休に理解のない頭がちがちの固定観念に縛られた組織上層部のオジサンたちがさらに高齢者になったときに支える子達を育ててるわけですから。
橋本(吉)
皆さんの年金を払うんですよと。
森下
そうそう。そういうのがわかれば、オジサンたちも、もうちょっとわかってくれるのかなと思います。
「いまいる会社のキャリアにとらわれずに考える」「子育てを重要な社会への貢献だと考える」
こんな言葉は、出世を諦めた男性の言い訳に聞こえますか?
それとも、これからの世の中を生きていくための新しい視点として心に響きますか?
終身雇用制度が過去のものとなり、副業や会社に所属しない働き方も広まってきている現在では、キャリアというものの考え方自体が、変わってきているとも言えるでしょう。
「育休、取りたいけど、今の会社じゃ取れなそうだしなあ……」
そんな風に思っているあなた、本当にそれでいいんですか?
仕事に、子育てに、どう向き合っていくか、ぜひもう一度考えてみてください。
男性育休取得率100%!
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