こども宅食を全国に広げるために立ち上げた「こども宅食応援団」。
設立の立役者は、テーマパークを運営する株式会社オリエンタルランドの出川千恵さんです。
出川さんは、オリエンタルランドからフローレンスにレンタル移籍し半年間働きました。
今日は、この出川さんの激闘の記録を、レンタル移籍を受け入れたフローレンスディレクターの宮崎と、企業間レンタル移籍プラットフォームを提供する株式会社ローンディールで出川さんのメンターを担当した笹原さん。そして、オリエンタルランド人事の阿曽さん、出川さん(フローレンスでのあだ名はチップさん)の4人に聞いていきます。
(聞き手:こども宅食担当・山崎岳)
ベンチャー企業で学べるのは「思いの強さの違い」
阿曽:これまで、大企業への出向を研修として行っていて、強みを強化して帰ってくる人はいました。けれど、自社では出来ないようなチャレンジ、0から何かを産み出すようなチャレンジができる環境はつくれていませんでした。
ベンチャーって社長がキレ者、天才達というイメージを私は持っていたのですが、実際お会いした人たちはもっと親近感があるような方でした。
「ベンチャーと大企業、何が違うのかな?」と考えた時に、私は”思いの強さの違い”だなと思いました。「絶対この世の中に対して、自分が思ういい事を残してやる」みたいな思いの強さです。
大企業への出向とは根本的にそこが違う、と思い社内でプレゼンテーションして、この移籍が実現しました。
レンタル移籍前の出川さんの印象は「笑わない人」
阿曽:人事と管理職のメンバーで部下の育成についてディスカッションをする場があるんです。その時に出川さんと話した時の印象は、けっこうクール。と言うか、たぶんそのミーティング中、1度も笑っていない(笑)
阿曽:淡々と状況を報告されて、「ああ…なんか…ちょっと怖いなぁ」と。それが僕の、行く前の出川さんの印象でした。
一同:(笑)
山崎:チップさんがレンタル移籍に挑戦しようと思った理由を教えてください。
出川:やっぱり、20年間同じ会社で働き続けていて、視野も狭くなっているし、同じ人たちの中で、同じルールで仕事をしているので、困ることもあまりない。
私自身が成長しないと、マネージャーとして部下を育成出来ないんじゃないか?と思っていました。
出川:成長できる場所をぼんやりと探していたときに、人事からレンタル移籍の話を聞いて、「これは面白そうだ」と思って深く考えずに。
ベンチャー企業の友達もいなくて、あまりよく知らなかったんだけど(笑)
山崎:企業のリストはたくさんあったと思うんですけど、あえてフローレンスを選んだ理由は…
出川:悩んでいるときに阿曽さんがひとこと、「出川さんが本当に必要と思う商品を扱うところに行ったらいいんじゃないですか?」と言ったのね。
「そうだそうだ」と思いリストを見返して、フローレンスのビジョンをみて、私自身子どもがいるということもあり「ここしかない!」と思って第一希望にしました。
宮崎:そう、なんといってもチップさんはマネージャーなんですよ。管理職の人が新しいことに挑戦するってすごくハードルが高い。
もう一つは、お子さんがいるって書いてあったのね。やっぱり小さい子どもいたら新しいことをするの、大変なんですよ。「もうちょっとたってからにしようかな」とか、躊躇する。
それでも応募してきて、「今、変わりたいんだ」という思いにあふれていた。この人が変わるところが見たいと思って決めました。
カオスに投入して美しい皮を剥ぎたかった
山崎:笹原さんはメンターの立場から、チップさんがチャレンジをしていく過程をいろいろ見てきたと思うんですが、どう映りましたか?
笹原:最初は、ITの環境や、異文化を楽しんでる節があったので、これはもっと苦労したほうがいいんじゃないかなと思いました。
苦労させようと思ったら、本当に苦しそうになってしまった(笑)
笹原:管理職だし、立候補して未知の世界に飛び込んできたわけだから、そもそもガンガン挑戦する人だと思っていたんですよ。だけど、「あれ、これはおかしいぞ」と思って。会社に行ってヒアリングをしたら、「自分から手を挙げるタイプではない」と言われて。
最初からけっこう無理してたことが後でわかり、支えないといけないことに気づきました。
一同:(笑)
出川:急に自分の息子でもおかしくないような年齢の人たちと仕事をするようになって戸惑ったな。岳くん今いくつだっけ?
山崎:26歳です。
出川:たまたま、前の部署が20代のメンバーが一人もいなかったんです。だから、20代の人と話したの何年振り?みたいな…。最初感じたギャップは、会社のギャップというよりはジェネレーションギャップ(笑)
山崎:そんな異文化交流的な楽しい期間を終えて、辛くなってきたのは?
出川:苦しくなってきたのは、メイン担当としてこども宅食の全国化の推進を任されたとき。
山崎:真理子さんはどうして「こども宅食応援団」の設立をチップさんに任せたんですか?
宮崎:新規事業は、誰も正解がわからないんだよね。混沌とした状況下で、走りながら解を作って、試してみて、戻ってきてまた進む。そういう繰り返し。
壁にぶちあたって、否定されて、思いが通じなくて、でもまた立ち上がるみたいな。そういう体験をすると、これまでのマネジメントでは見えなかったことが見えてくるんじゃないかなと思ったので、それを体験して欲しかった。
笹原:「こども宅食応援団」の設立を任されたのはすごくよかったですよね。私には綺麗な優等生にみえたんですね。
笹原:面談している時も楽しそうにしてるけど、「もっと人間臭くしたい。この美しい皮を剥がしたたどうなるんだろう?」って。カオスに投入したい欲求に駆られた(笑)
山崎:結果、真理子さん、チップさんを泣かせたって聞いたんですけど……。
宮崎:泣かそうと思ってやったわけじゃないけど……(笑)
「今までのやり方ではなくて、新しいことを身につけるために来たんだよね?」って。「今まで通りのことをやってても6ヶ月が無駄なだけ」そういう話をしました。
山崎:きつい……
出川:「研修生として他の会社でスキルを学びたい」という気持ちがあったから、最初は辛くて。例えば真理子さんのマネジメントや面談スキルを学びたい、とかね。
だから「こども宅食」を、私の思いを込めて進めるという業務は、ギャップがあった。
そんな中、メイン担当としてアサインされて、そもそも「こども宅食」とはなんだろう?っていうところに行き詰ったときに、根本の「こども宅食」とは何か?を問われて。
社会福祉という分野の知識不足もあって悩みました。どれくらい足を踏み込んでいいのかもわからなかった。
宮崎:私は「メインの担当だから、自分の考えを持ってもっと主張してくれ」って言ったんです。「自分が一番考え抜いているから、簡単には他の人に言わせないくらいになって」と言いました。
阿曽:移籍中は定期報告を受けているんですが、正直、最初の1~2ヶ月間くらいは、ちょっとこのままで大丈夫かな…って(笑)
でも、人事として何か言うのも興ざめ感もあるし…。変わったのは、佐賀に行きはじめた辺りからですかね?
出川:佐賀に出張して、いろんなNPOや、行政の方達と話したんですね。そうしたら、皆「僕、私が佐賀を変えるんです」とか「佐賀の子どもたちを良くするんです」みたいな話をしている。
オリエンタルランドにいた時は、いち社員が「会社をこう変えたいんだ!」とはなかなか言い出さない。
出川:その思いを毎日毎日聞いていると「なるほど、そういうことなのかな」とぼんやりとした私もわかってきました。
フローレンスの人たちも「社会を変えるんです」って言うじゃない?それはすごくびっくりして…(笑)
山崎:なんか、ちょっと気持ち悪い感じありますね(笑)
出川:日々のニュースも自分事化して「社会を変えなきゃ!」と、朝からそういう会話が職場で飛び交うっていうのがやっぱりカルチャーギャップだった。
岳くんも「僕はこれがやりたいんです、何が何でもやるんだ!」って言って、聞かなかったりするじゃない?(笑)
そこがすごいなぁと。みんな空気を読んで遠慮するし、自分の立場や役割っていうのを考えちゃう。
私は新卒で入って20年いるから、不思議に思わなかったけど、全然違う環境に来て、違う考え方ってあることがわかったのも大きかったな。
マネージャーという役割を捨てた時に出てくる言葉。
笹原:本人は気づいていないと思うけど、大変だった時期はけっこう弱音を吐いてたんだよね。
心の中の辛いところが全部出ていて、デトックス状態。私はそれをただ聞いていて。
で、それが最後の1ヶ月でガラッと変わった。
笹原:すごい人間味が出たんだよね。それまでは、「マネージャーの出川さん」として、美しい言葉を発してたんだけど、まとめようともせず、素直に思ったことが、スパン!スパン!って、心から出てた。
たぶん、フローレンスの人が「自分はこれをやりたい」と言うようなことに感化されたんじゃないかな。
出川:自分がやりたいことを自分で言う、まず自分がメッセージとして伝えるっていうことが重要だっていうことに気づいていなくて。
理論上、組織のビジョンを伝えるのは組織のリーダーとして重要というのは、マネージャー研修で学んでるし、わかってた。
出川:でも、自分の言葉で語っていないし、「これじゃあ伝わってなかったな」と気づけたし、“目標利益達成”ということよりも大事なことがあったと気がつけました。
社員それぞれやりたいことがあるし、それを組織の目標に繋げていくっていうことができたんじゃないかな…っていうことにも気がつきました。
なので、今はそういうメッセージを伝えて、みんなから引き出せるように、と努力している途中です。
宮崎:おおー、素晴らしい!やったね、笹原さん!!!
笹原:もう泣ける…(笑)よかった~…素敵…もう。
阿曽:笑顔を初めて見ました。
宮崎:笑顔を初めて見た……(笑)
阿曽:レンタル移籍終了後、いろいろと報告会の場とかご一緒して、そのときの、出川さんを知る人のコメントとしては「変った」っていう声が…
これからやりたいこと
山崎:メッセージを伝えている、という話があったので、出川さんの将来の夢というか、そういうのをぜひ言葉で語っていただきたいです。
宮崎・笹原:おっ!聞きたい聞きたい。
出川:うーん、私が今やりたいことは、私の周りで働く人たちが楽しく働ける環境づくり。みんなのやりたいことをちゃんと引きだして、そういう環境を作っていきたいと思っています。
あと、あまり今日話せなかったのですが、フローレンスが多様性をとても大切にしているのがすごくいいなと思っています。
出川:人ってやっぱり完璧ではなくて、いろんな個性があってそれをすごく尊重している組織というのが、私はすごく好き。フローレンスのそういう考え方を、オリエンタルランドでも私の周りからどんどん広げていきたい。
一人一人は100点ではないんだけれど、いろんな考え方の人たちがサポートし合って、一人一人がその人なりの夢を実現できる組織を作っていけたらいいな……っと思っています。
出川さんのフローレンスでの挑戦の記録を読んでいただき、ありがとうございました。
こんな異文化すぎる組織の中で一緒に働き、こども宅食応援団を立ち上げた出川さん。
働く場所は違えど、これからも、社会を一緒によくする仲間です。これからもどうぞよろしくお願いします!
最後に、フローレンスでは、多様性に溢れたチームこそ社会を変えることが出来ると信じています。様々な働き方・バックグラウンドのスタッフたちが、みなさんのフローレンスへの参加をお待ちしています。
ぜひ以下の採用情報も御覧ください。
今回、企業間レンタル移籍プラットフォームローンディールを通じて移籍した出川さん。公式WEBマガジン「&ローンディール」でも出川さんの挑戦のストーリーを読むことができます。ぜひご覧ください。
https://andloandeal.jp/n/n7d0861702781