新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、フローレンスが2020年4月から実施した「新型コロナこども緊急支援プロジェクト」。
コロナ禍において、その影響を特に強く受けている「経済的に困窮する家庭」「ひとり親家庭」「医療的ケア児者家庭」に向けた支援を継続して実施してきました。
そのうちの「医療的ケア児者家庭」に向けた支援について、不足していた消毒液やマスクが店頭にもある程度戻り、厚生労働省から「医療的ケア児者の人工呼吸器に必要となる衛生用品等の優先配布事業」の方針が発表された状況を受け、支援プロジェクトを終結することにいたしました。これまでの支援実績をご報告いたします。
医療的ケア児者家庭への支援としては、これまでにのべ約5,600家庭へ支援を届けました。また、医療的ケア児の命を繋ぐNICU・こども病院や障害児者の支援施設などへの支援として、のべ55施設に計117,800枚のマスク、40,740枚の医療用ガウンを提供しました。
3月、消毒液やマスクが品薄の状態に。医療的ケア児者家庭へのアンケート調査を実施
2020年3月、政府からの突然の一斉休校要請により、全国の教育・保育施設が休校・休園となりました。あわせてこの時期、全国的に新型コロナウイルス感染症への不安が高まり、マスクや消毒液等の衛生用品が品薄・高騰する状態が続きました。
フローレンスが運営事務局を務める「一般社団法人全国医療的ケア児者支援協議会」では、政府の「一斉休校」要請後、医療的ケア児に対して初の全国調査を行い、医療的ケア児を子育てする家庭ならではの困りごとを可視化しました。
▼結果の詳細はこちらの記事をご覧ください
回答結果からは、「医療的ケア児」親子に特化した困りごとが明らかになりました。
特に、日々の医療的ケアに欠かせない消毒液の不足は深刻で、「どんな支援があったら助かりますか」という設問には、6割以上の親御さんが「マスクやエタノールの提供」と答えました。
自由回答では、「気管切開しているので吸引時に使用する消毒液が必要だが、手に入らない」「このままでは、ネイルアートで使っているエタノールか、ウォッカで代用するしかない気が…」といった声が寄せられていました。
調査結果をもとに、フローレンス及び全国医療的ケア児者支援協議会では、「新型コロナこども緊急支援プロジェクト」として、不足する消毒液やマスクの物資支援を決定しました。
のべ1,710家庭に物品提供で集まった消毒液やマスク等の物資を配送
プロジェクトでは、法人・個人の皆さんから消毒液やアルコール綿、マスクなどの物品提供を募りました。同時に、全国の医療的ケア児者家庭から配送希望を募り、物品のマッチング、配送を順次行いました。
これまでの支援実績として、のべ1,710家庭へ物資支援を届けています。
<支援物資が届いたご家庭からの声>
「この度はご支援ありがとうございます。世界中が困難な状況下にあります。気持ちがふさぐ事も多くある中、皆さまからの温かいお気持ちで、気持ちが和みました。みんなでこの困難を乗り越えていきたいです!本当に感謝いたします。」
「藁にもすがる思いで登録させていただきました。それでも全国から希望が集まったらもらえることなんてないんだろうな、と思っていたら今日マスクが届きました。
うちの子は24時間人工呼吸器管理の状態ですのでマスクや消毒液を買うためにお店に並ぶことが出来ず、今持っているマスクもあと数枚で底をつく状態でした。
今、コロナで閉塞している世の中、自分の気持ちもだいぶ平常心を保つことが難しくなってきています。そんな中、本当に神様からのプレゼントのように思えて、嬉しすぎて涙が出てきました。ありがとうございました。」
のべ3,811家庭に寄付を原資に確保したアルコール綿を配送
物品提供のマッチング以外にも、新型コロナこども緊急支援プロジェクトにいただいた寄付を原資に、日々のケアに欠かせないアルコール綿を確保することができました。こちらも、全国のご家庭からニーズのヒアリングを行い、これまでにのべ3,811家庭に配送を実施しました。
<アルコール綿が届いたご家庭からの声>
「本当に本当にありがとうございます。命に関わる物品なので、命の恩人と言っても過言ではありません。
不安なことが多い時期ですが、あたたかい方がいらっしゃると思うだけで安心です。」
「大変な中、物品の送付誠にありがとうございました。皆様のお気持ちがとても嬉しく、心強く、このような厳しい中でもサバイバルする張り合いになりました。深く感謝申し上げます。」
「この度は、アルコール綿の寄付をありがとうございました。何より、お互いに大変な中でのこのようなご厚意に、家族一同心が温まりました。沢山の方々に助けていただいているということを忘れず、日々感謝の気持ちを持って過ごして参ります。」
のべ55の医療施設・障害児者支援施設に117,800枚のマスク、40,740枚のガウンを提供
マスク等の衛生用品が枯渇したのは、家庭のみにとどまりませんでした。
常に感染症のリスクを抱えながら私たちの命を支える医療現場でも、マスクや医療用ガウンが枯渇し、医師や看護師がやむを得ず使い捨てのマスクを再利用しているという悲痛な声も聞こえていました。
その中でも、フローレンス及び全国医療的ケア児者支援協議会では、医療的ケア児の命を繋ぐ上で欠かせない医療現場であるNICU(新生児特定集中治療室)やこども病院、障害児者支援施設へ医療物資を提供する活動を行いました。
これまでに、のべ55の医療施設や障害児者支援施設に117,800枚のマスク、40,740枚のガウンを提供しています。
<神奈川県立こども医療センター 豊島医師 コメント>
2月はマスクが枯渇して、残り10枚になり、金庫に入れてみんなで大切に使っていました。
3月は院内感染予防で常時着用になりましたが、NICUスタッフは1人週2枚で、皆マスクを自分で洗って干して再利用しながらNICUで働いていました。
NICUには普段からコロナウィルス感染と同じように命に関わる赤ちゃん達が頑張っています。
NICUスタッフがクラスター(感染者集団)になった場合、赤ちゃん達の命と未来を守ることが難しくなります。
どんな状況でも新しい命は生まれてきます。子どもを大切にしない国に未来はこない。
マスクの寄付はNICUスタッフにコロナウィルス感染予防とともに心折れず頑張ろうという勇気をくださいました。関係者の皆様に感謝しています。
コロナ禍による新しいニーズに対応。「医療的ケアシッター ナンシー」にて理学療法士を派遣する新サービススタート
コロナ禍においては、医療的ケア児のリハビリの機会も奪われました。
フローレンスが提供する「医療的ケアシッター ナンシー」を利用する親御さんからは、「休校が長引き、療育センターも閉鎖されたままとなると、リハビリ面の心配が更に大きくなります。」という声をいただきました。
重度の障害があるお子さんや、医療的ケアを必要とする寝たきりのお子さんは、自力で運動をすることが難しく、普段は療育施設に通い、理学療法士など専門知識を持った人がリハビリを行っています。
しかし、感染症重症化のリスクが高い医療的ケア児と共に気軽に外出できない日々のなか、親御さんのみでリハビリを行う状況が続いていました。
そこでナンシーでは、通常の看護師の訪問とともに、「新型コロナこども緊急支援プロジェクト」に寄せられた寄付を原資に、ご希望がある家庭には理学療法士を派遣してリハビリの時間を作ることにしました。
今回の取り組みで利用者のみなさんから大変好評をいただきましたので、ナンシーでは今後も継続的に理学療法士の派遣を行うことを決定しました。
「コロナ不況」のあおりを受ける親子へ支援を
上記のような大規模かつ長期にわたる支援は、決してフローレンス及び全国医療的ケア児者支援協議会のみでは成しえませんでした。
全国的な品薄状態の中、自分用に購入していた消毒液を譲ってくださった方もたくさんいらっしゃいます。
改めて、本プロジェクトを通じて寄付や物品の提供を行ってくださった個人・法人の皆さんに御礼申し上げます。
また、配送についてはココネット株式会社の協力のもとに実施をいたしました。
医療的ケア児者家庭向けの支援プロジェクトについては、これをもって一度終結となりますが、社会情勢の変化によって支援活動の再始動や新しい支援の実施も検討してまいります。
現在、ある程度日常が戻りつつある一方、未曽有の「コロナ不況」の影響で、経済的に厳しい状況におかれた家庭やひとり親家庭の状況はより深刻化しています。
フローレンスは、子どもと親子領域の総合福祉事業者として、また国内親子領域の課題解決に最前線で取り組む団体として、特に「経済的に困窮する家庭」「ひとり親家庭」を対象に、withコロナ時代の親子を支える活動を継続していきます。
この活動は、フローレンスの活動に共感してくださる法人・個人の皆さんからのご寄付によって支えられています。
ぜひ、引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。