2021/10/20
認定NPO法人フローレンスで働いてわかった寄付のこと
2021年7月にフローレンスに入社して、「寄付広報」という仕事をしている澤田です。
寄付広報は、フローレンスの活動についてご報告したり、フローレンスが取り組む社会課題を広く皆さんに知っていただくことで、社会を変える仲間を広げていく仕事です。これまで寄付をする側だった私が、寄付への参加を皆さんにご案内する側になり、まず考えたのが「寄付ってなんだろう?」ということでした。
私にとっての寄付、フローレンスにとっての寄付、フローレンスに寄付してくださる方にとっての寄付。入社して3ヶ月で、見えてきたことをご紹介したいと思います。
災害大国日本で育ってきた寄付文化
子どものころであれば、「寄付」と聞いてぱっと思いつくのは「募金箱」かもしれません。私にとっても、寄付といえば募金箱に、お小遣いから10円、奮発して100円入れたことがあったかな、という程度でした。
転機となったのは、1995年の阪神淡路大震災です。
ボランティアに多くの人が駆けつけ、現地に行けない人は少しでも力になりたいと、物資や寄付で支援している人の姿をニュースなどで目にして、こんな支援の仕方があるのかと、意識が大きく変わりましたし、当時苦学生ではありましたが、私も少額の寄付をしました。
世の中も、この震災を機に、ボランティアに行く人、寄付をする人が増えたといいます。このとき、全国から集まった義援金は総額で戦後最多の約1800億円だったそうです。(内閣府「阪神・淡路大震災の総括・検証に係る調査」より)
2011年の東日本大震災では、さらに多くの人が支援のために現地入りし、物資を送り、寄付をしました。実際に私のまわりだけでも、何らかの支援活動をした人が多くいます。この年、寄付総額は1兆円を超え、その後も個人寄付総額、金銭寄付者率ともに高い傾向が続いています。
(日本ファンドレイジング協会 HPより:https://jfra.jp/research)
ただ、東日本大震災では、いくつもの問題点が明らかになりました。せっかく善意で送られた物資が、被災地に届かない。あるいは、よかれと思って同梱した食料が、配布されるまでに腐ってしまって処分に困ってしまった。雑多な支援物資が同梱された箱が次々に届いて、仕訳け作業に多くの手間がかかってしまい、受け入れ自体を止めることになってしまった。そんなエピソードが次々と被災地から流れてきました。
また、自治体行政は多額の寄付金を受け取っても年度予算にないお金であるため積み立てるほかなく、すぐに必要な現場で使うことができなかったという事例もあったようです。
いくつかの教訓を得て、今、災害時の物資支援リテラシーとでもいうようなものが出来上がりつつあります。個人で少量の荷物を被災地に直接送らない、大量に送る場合には、現場のニーズを確かめてから。実際に送る際には、一つの箱に一種類、箱の中身を書いたラベルを箱の四方に貼って一目で分かるようにする。
「受け取り側が、必要なものを、必要なだけ、仕訳しやすく」。こういったことが大前提と考えると、個人で物資を送るのは控えたほうが無難だということが分かります。
例えば、私たちフローレンスでは、2020年の新型コロナウイルスこども緊急支援プロジェクトを緊急企画する際、先駆けて全国の子育て家庭、医療的ケア児家庭、ひとり親家庭などにアンケートを実施しました。コロナ禍のニーズはそれぞれのご家庭の環境によって違うと考えたからです。
結果、それぞれの属性ごとにニーズにマッチした支援活動を迅速に行うことができました。
もし、あなたが災害時や緊急時に、ぜひ困っている方の力になりたいと感じた場合は、どうしたらよいと思いますか?
自分が物資を送れなくても、現地に駆けつけて泥かきなどの活動ができなくても、被災地者を直接支援する「しくみ」を持つ団体があれば、その団体に寄付をすることで、被災者のメンタルをケアしたり、生活物資を支援したりといった自分の望む活動を支援することができます。「寄付」は、誰かに「自分の想いと支援を託す」ことだと思うのです。
寄付の力で社会を変える「しくみ」をつくる
今、日本の子どもの7人に1人が相対的貧困状態にあります。だからといって、私自身がその子どもたち一人一人にお金を渡したり、ご飯を届けたりすることはできません。虐待で苦しむ子どもが昨年、過去最高の20万人を超えました。ですが、虐待されているすべての子どもを引き取って育てることもできません。たとえ一人の子を養子として育てたとしても、すべての子どもを守ることは不可能です。
子どもたちを貧困から救いだすにも、虐待から守るにも、「しくみ」が必要です。
フローレンスは、社会課題を解決するための「しくみ」を作っている団体です。例えば、ロビイング活動などで制度を作るよう国に働き掛けることにも取り組んでいます。
待機児童問題が大きな社会問題となっていた2015年、解決のためにマンションの一室から開設した「おうち保育園」がモデルとなり、「小規模認可保育所」が制度化されたこともありました。
最近では、胃ろうやたんの吸引などが日中必要となる障害児「医療的ケア児」とその家族への支援拡充を6年に渡り訴えてきた活動が実り、2021年6月「医療的ケア児支援法」が成立しています。
フローレンスに入社して分かったこと、それは、社会課題を解決するには「しくみ」が必要であること。その「しくみ」を作るには、同じ想いを託してくれる多くの寄付者さんの力が必要だということです。
話はそれますが、私は入社してから毎朝、寄付をしてくれた方がアンケートに書いてくださった言葉すべてに目を通してから仕事に取り掛かるようにしています。どんなきっかけで、どんな想いでフローレンスに寄付をしてくれているのかを知りたいと思ったからです。
「年金暮らしなので少額ですが、社会をよくする役に立てれば」
「同じひとり親として、困ってる人を少しでも助けたくて」
「障害児が健やかに生活できる社会づくりに少しでも貢献したいから」
「私の夢は、日本の仕組み価値観を変えさせ、シングルマザーのご家庭の皆さんが不安のない未来、そして未来の可能性を十分に感じられる環境を手に入れられる環境を作ることです。その実現に一歩近付くために、もっと知るために、今回寄付を決意しました」
「虐待されて育ったけれど、周りの人が助けてくれた。だから、今度は自分が誰かを助けたくて」
寄付者の皆さんの寄せてくださる言葉に、毎朝、胸を熱くしています。
入社まもなく、このアンケートに「活動してくれてありがとう」と言ってくださる方がとても多いことに気づきました。
自分では様々な事情で直接活動できないけれど、心を痛めている社会課題の解決のために、あるいは自分の興味関心のある分野で具体的な活動をしている団体に寄付をすることで、社会を良くしたい。
多くの方がフローレンスに「寄付」という形で「想いを託す」行動を起こしていることを知りました。 フローレンスの寄付者数は2004年の設立からのべ約20,000人にもなるそうです。
フローレンスは、寄付者さんの力があるからこそ、前に前に進むことができています。だから、フローレンスにとって寄付者の皆さんは、一緒に課題に向かって同じ船に乗って進む「クルー」なんだと、入社してすぐに教えられました。
フローレンス号には、「クルー」となって、一緒にスタッフとして働いたり、寄付を通じてともに行動したり、フローレンスの活動を社会に広めたりしてくれる人が必要です。
私のフローレンスでの仕事は、「クルー」を増やして、社会をより良くすること。そのために、日本の社会で何が問題になっているのか、フローレンスはそれに対してどんな活動をしているのか、これからどんな社会を皆さんと作っていきたいのか。
できるだけ、分かりやすく発信していきたいと思います。
フローレンスの活動に興味を持ってくださった方が、私たちの仲間(クルー)になってくださることを願っています。
フローレンスは「親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決する」というミッションのもと、社会をより良くするいくつもの活動を行っています。詳しくは本コーポレートサイトや各事業サイトをご覧ください。
書いた人:澤田澄江
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