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ひとり親・経済困窮・予期せぬ妊娠…課題を抱える人にセーフティーネットと自立支援策を。企業が社会にできること【アクセンチュア×フローレンス駒崎対談】

ひとり親・経済困窮・予期せぬ妊娠…課題を抱える人にセーフティーネットと自立支援策を。企業が社会にできること【アクセンチュア×フローレンス駒崎対談】

#赤ちゃん縁組 #CSR

毎年11月は児童虐待防止推進月間です。フローレンスは2016年から、予期せぬ妊娠で悩む女性のため「にんしん相談」を行ってきました。これは「赤ちゃん縁組」という事業の一環で、相談者は24時間365日、LINEを使い匿名で相談できます。

「にんしん相談」の利便性を高めているのが、今年4月から始めたチャットボット相談員「エナガさん」です。LINEで友だち登録をし、トーク画面に表示される「お金のこと」「妊娠のこと」といった複数の項目を選択するだけで、相談者はいつでも、どこでも最低限の情報をすぐに得ることができます。

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LINEチャットボット相談員「エナガさん」

「エナガさん」の運営をプロボノで支えてくださっているのが、世界最大級の総合コンサルティング企業 アクセンチュアです。同社は社会貢献への意識が高く、企業市民活動の取り組みの1つである「Skills to succeed(スキルによる発展)」というグローバル統一テーマに基づき「貧困層経済的自立支援プログラム」といった独自の活動を推進。Skills to Suceedでは、約10年の間に全世界で約300万人、日本においても約10万人にスキル習得サポートをプロボノ活動等を通じて行ってきた実績があります。

フローレンスが今年進めた「新型コロナこども緊急支援プロジェクト」でも、225人の社員の方が約192万円の寄付をしてくださいました。

アプローチの仕方は異なりますが、アクセンチュアとフローレンスに共通するのが、経済的に苦しい人を支援し、自立に向けたサポートをしたいとのビジョンです。

アクセンチュアでの社会貢献活動をリードする海老原城一さん(コーポレート・シチズンシップ日本統括)、立石英司さん(貧困層自立支援プログラム責任者)、佐藤加奈子さん(同プログラムチームリーダー)とフローレンス代表理事の駒崎と藤田(赤ちゃん縁組マネージャー)が、社会貢献への思いやお互いの活動、今後取り組みたいと思う活動について話し合いました。

新型コロナウイルスの感染を防ぐため、対談はオンラインにて実施。

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チャットボットで深夜・休日を問わず、匿名で妊娠不安の相談ができる

駒崎:お話をする前に、弊会が進める「赤ちゃん縁組」をプロボノで支援くださったこと、新型コロナこども緊急支援プロジェクトに多額の寄付をくださいましたことをあらためてお礼申し上げます。

海老原さん私からも、本日は対談をする場を設けてくださったことに感謝いたします。駒崎さんとは、以前に政府の委員会に出席した際にお話ししたことがありましたね。フローレンスさんの事業理念に共感し、プロボノ支援と寄付をさせていただきました。社会課題に向き合い、支援活動を継続して来られた実績をお持ちですから、これからも協力をしながら活動をしていきたいと思っています。

駒崎:ありがとうございます。御社のサポートのおかげで弊会の課題が解決され、「エナガさん」をリリースでき、より相談しやすい環境を整えることができました。

赤ちゃん縁組が直面していた悩みについては、マネージャーの藤田よりご説明させていただきます。

藤田:本日はお集まりくださり、ありがとうございます。エナガさんではサポートをしてくださり、心より感謝しています。

にんしん相談では、連絡手段が電話かメールしかなく、電話離れが叫ばれる若い世代にとって使い勝手が良いとはいえませんでした。

また弊会はNPOで予算も人員も限りがあり、相談者からの連絡に対してタイムリーな対応ができないケースもありました。たとえば行政への同行支援中に寄せられた相談へのお返事は保留せざるをえず、相談者の不安を高めてしまいかねません。相談者からは「深夜・休日・時間帯を問わず、匿名で相談したい」とのニーズが強く、連絡手段やスタッフの人数から見ても対応に苦慮していました。

佐藤さんたちからチャットボット機能についてのお話を伺ったときには、「これはまさに弊会が求めているサービスだ!」と感じたことを覚えています。チャットボットであればスタッフが即時対応できなくても、必要最低限の回答を自動的に送信してくれます。少ないスタッフでも多くの相談をお受けできるので、私たちにとってもメリットがあります。

世界で300万人を超える人にスキル支援を実施

駒崎:今年は新型コロナウイルスで学校が休校となり、若い世代を中心に性のトラブルにあうケースが増えています。実際に赤ちゃん縁組でも相談数は増え、直近では妊娠にまつわる相談が月に230件寄せられています。

今回のプロボノ支援の背景には、御社が進めてこられた「企業市民活動」があると思います。実際にご一緒してみて、社員の方の高い熱量を感じました。「企業市民活動」とはどのような活動なのかをお聞かせいただけますでしょうか。

海老原さん:企業市民活動とは、社会の一員として「自分は社会のために何ができるか」と考える社員が自発的に行う活動のことをいいます。

英語では「コーポレート・シチズンシップ」と呼び、当社では「資産の提供により社会貢献をする責任」、自社の知識や技術・社員などの資産を提供・活用することにより社会的責任を果たすことと定義しています。

企業市民活動の特徴には、「Skills to Succeed」(スキルによる発展)があります。弊社はコンサルティング企業ですから、受益者と関わる中で就業や起業に必要なスキルを身につけていただきたいとの思いがあります。

2015年には、「2020年度までに300万を超える人々に対して、就職や起業に必要なスキル習得のための支援を提供する」という目標を掲げましたが、期限に先立って約360万人に対してスキル
習得のサポートを実施しました。

「Skills to Succeed」のサポート対象には、経済的に苦しい方も含まれます。2018年には、貧困や生活困窮の状態にある方々に低利・無担保で少額の融資を行い、これらの方がスキルを身に着けて生活困窮から脱却する機会を提供するマイクロファイナンス機関である「グラミン日本」の設立に協力しました。

公的支援網から漏れてしまう人を救うセーフティネットを作る

駒崎:全世界で300万人を超える人にスキル習得の教育支援を行なうなんて、本当に素晴らしいです。「Skills to Succeed」の一環として、特に経済的に困っている方へのサポートである「貧困層経済的自立支援プログラム」を推進してこられました。こちらの詳細もお伺いさせてください。

立石さん日本には生活保護のように、経済的に厳しい状況に陥った方向けのセーフティネットがあります。一方で、同じように生活が苦しくても公的支援から漏れてしまうケースが多数存在することが確認されています。

そもそも、既存の支援網から外れてしまった方々は公共から完全に捕捉されているわけではありません。どうやって手を差し伸べるべき方を発見し、どのようなご支援を行い、自立をご支援できるか。それを考えるのが貧困層経済的自立支援プログラムの目的です。

他方、現実的には支援対象を拡大するための十分な税収があるわけでもないですし、公共としても割ける人員には限りがあります。
そのため、新しい時代の新しいセーフティネットを考え、持続可能な形にしていくためには、公共やフローレンスさんのように社会課題に取り組むNPOさんと協働する必要があると考えています。

当社では「ヒューマン + マシーン」といって、人が機械の力を使って困難な業務をサポートするとの考えがあります。新たなセーフティネット構築のためには、「ヒューマン + ヒューマン + マシーン」のように、ビジョンを同じくした「人」同士の繋がりが重要と考えています。すでにたくさんの支援実績をお持ちのフローレンスさんとご一緒できて、心から感謝しています。

ひとり親は厳しい経済状況に置かれやすい

駒崎:これまで、日常的に困っている方の生活支援を行う中で、サポートする側のリソースは確実に足りていないと感じてきました。ですので、この度はアクセンチュアさんが力を貸してくれて心強かったです。御社が社会貢献活動を弊会と行おうとされた理由には何があったのでしょうか?

佐藤さん大きな理由は、2つあります。まず1つ目は、フローレンスさんが各活動を事業化されている点です。どんなに良い支援活動をされていても経済困窮の方々への本当の支援には持続性の観点が重要だと考えています。

もうひとつは、ひとり親世帯の支援を行なっている点です。どの層が一番経済的に厳しいかをリサーチした結果、日本ではとりわけひとり親の貧困率が高いことがわかりました。フローレンスさんではひとり親への支援を行なっているので、ぜひご一緒したいと思いました。

当初はこども宅食事業でフローレンスさんと繋がったのですが、私どものアセットであるチャットボットは赤ちゃん縁組事業でよりニーズがあるのでは、とご紹介頂き、藤田さんとのお打合せで課題感を伺い、活用いただける可能性を確信しました。

駒崎:御社のテクノロジーや課題解決力の高さには本当に助かっています。弊会へのご協力以外にされているご活動はございますか?

海老原さんグローバル人材や、STEM人材(※)の育成ですね。10年前には教室で講義をする形で教育をするしかありませんでしたが、現在ではカリキュラムの一部をオンラインで実施しています。

また、教育系では先行していますが、今後は他の領域も含めて弊社が単体で貢献するのではなく、様々な担い手と連携して統合的にサービスが届くように仕組み化することを目指しています。具体的には、サービス供給側であるNPOと受け手である学校などの現場をマッチングするプラットフォーム作りを進めていきます。

たとえばNPO団体Aは小学校向けの、 Bは中学校向けの支援プログラムを作っているとします。この場合、ユーザーである学校の先生はどのNPOがどんなプログラムを提供しているのかを検索するのは大変です。利便性の高さのため、NPOとサービスが一覧でわかる資料を作成しました。

(※)「Science」(科学)、「Technology」(技術)、「Engineering 」(工学)、「Mathematics」(数学)の頭文字を取った造語。これらの分野を子どもたち学習することで、情報社会に求められる人材を育てようとする教育のこと。

駒崎:各NPOにはそれぞれビジョンがあって、特定の分野に特化していくことが多いです。未就学児向けのサービスを提供する団体が、急に大学生を支援するようなケースは稀ですからね。様々な専門性を持つNPO同士が横の繋がりを持つことで、お互いを補いあうことができるため、マッチングはありがたいです。現在の教育から福祉に広まると嬉しいですね。

企業は社会のために何ができるかを考える存在でありたい

駒崎:対談の最後に、皆さまが今後やってみたいと思う活動をお教えください。

海老原さんせっかくですので、3人それぞれのビジョンを伝えましょう。

個人としても、会社としても取り組みたいのが「Responsible Business(レスポンシブル・ビジネス)」です。企業が顧客、従業員、地域社会など様々なステークホルダーとの関わりの中で、自社のビジネスや社会貢献活動など、全ての活動を通じて社会にどう貢献できるかを考え実践することを指します。

今回のフローレンスさんとのコラボは、これに近いですね。スキル提供や育成にとどまらず、テクノロジーを通じて特定の領域が抱える課題に直接リーチする。大きく言うと、貧困率や失業率を下げたりすることが該当します。

立石さん私は新たな時代の新たなセーフティネットの構築をご支援したいです。新たな時代・デジタル時代の新たなセーフティネットは、個々の様々な方々の状
況に合わせ、公共やNPOの方々とが、意識せずともバトンをつなぐように協力し、適切なタイミングで、一生を通じた様々なサービス・ご支援を提供することで、受益者の自立支援に繋げていくようなモデルの構築
をご支援していきたいと考えています。

アクセンチュアのミッションは、変革を提供することです。支援する側も、支援される側の方々も、今、非常に厳しい状況です。新しい時代にあわせた変革を皆さまのような方々と一緒にご支援していきたいと考えています。

佐藤さんにんしん相談では、エナガさんへ問い合わせをする方の大半が経済困窮にあります。ご相談者の方の妊娠に関わる問題が解決された後、その方たちがその後どうやって生きていくのか。自立支援を含めたスキームを藤田さんと話しているところです。

駒崎:本日はありがとうございました。御社の社会貢献に向ける情熱の強さをあらためて感じました。これからもよろしくお願いします。


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