前記事(「『フローレンスの園長研修』をのぞき見!』」)でご紹介したフローレンスの研修ラインナップの数々・・・。
それらの研修が現在のカタチになるまでには、様々な経緯がありました。今回は、私たちフローレンスの園長研修の歴史を紐解いてみたいと思います!
◇ご回答いただくと、『フローレンスの研修プログラムと研修資料サンプル』を進呈します!
保育現場で多くの園で課題として挙げているコミュニケーション系の研修サンプルです。ぜひご参考にしていただけますと幸いです。
まさかわたしが園長に?
フローレンスの保育園は2010年、東京都江東区にあるマンションの一室で産声を挙げました。
深刻化する「待機児童問題」解決の一つの策として、一般のマンションを改造し0~2歳のお子さんをごく少人数お預かりする「小規模保育所」を立ち上げたのです。
「働きたいのに子どもを保育園に預けられず、キャリアを諦めていた親御さん」や「どこでもいいから、と質や安全の保証がままならない認可外の施設に預けられていたお子さん」たちに安全安心な保育の場所を届けたい。当初はそんな思いで、スタッフ一同、必死に保育園を運営してきました。
そのバタバタの中で、保育士のキャリアアップを顧みることもなく、運営に奔走する実情。また小規模保育所という小さなチームにおいては、保育者同士が十分にコミュニケーションを取れていたこともあり、フラットな関係性のまま日々が過ぎていきました。
そんな起ち上げ期を経て、2015年。私たちの保育所が、全国初の「小規模認可保育所」として国に認められることになりました。
児童福祉法に定められた基準を満たし、国から認可されると、国・行政から様々な補助を受けられるため、親御さんにとっても経済的な負担軽減など、プラスになることばかりなのですが、その中で私たちが直面した壁は「各園に認可保育園の基準を満たす園長を置く」ということ。
保育園を運営する上で「マネジメント職」が必要なのは至極当然なのですが、キャリアもある程度同じようなスタッフの中から、園長を任命するということは、それまでのフラットな立場から上下関係を作ることでもあり、現場は混乱しました。
「わたしに園長なんて無理です」
「これまで一緒に頑張ってきたあの先生から指示を受ける立場になるなんて・・・。」
「子どもが好きで保育をやりたくて入ってきた。マネジメントをやりたいわけじゃない!」
私たちの想定以上に、現場からの反発は大きく、事態を受け止めきれない園が続出しました。
しかしじっくりと時間をかけて歩み寄る時間はありませんでした。とにかく誰か園長になってもらい、その人に「認可園運営に最低限必要な知識」を身に着けてもらうことが不可欠・・・。
そこで私たちは、園長事務業務や、アレルギー対応などのリスクマネジメント、経理財務など、園長として業務を進める上で必須となる内容を、「とにかく知ってもらう」ことから始めました。
それらは決して綿密に計画されたものではなく、「場当たり」的なものばかり。1つ1つの研修に無我夢中で対応している中で痛感したのは、「体系立てて育成することの大切さ」でした。
「今は目の前の研修を実施しているけれど、すぐにでも育成の土壌を作らなければ・・・」
私たちは行動を始めました。
「園長職を配置するための研修」から「園長育成のための研修」へ
認可園移行期間中の2014年、私たちは体系的な園長育成を推進するために社内PJを立ち上げました。
当時のフローレンスには園長育成のためのノウハウはほぼない状態。
何から手をつけて良いものか途方にくれていた私たちを助けてくれたのは、以前フローレンスにインターン生として関わってくれていた「人材育成のプロ」でした。
「フローレンスを知り尽くす」研修企画のプロが、一般的なマネジメント研修に終始するのではなく、フローレンスのビジョンや保育理念に寄り添った内容を考えてくれました。それを「保育の現場を知り尽くす」講師が、わかりやすく語り、丁寧に園長と向き合い、フィードバックを行う。これらの過程で得た気づきをベースにどんどんと内容を改良していったのです。
園長たちには、以下のメッセージとともに、次のようなゴール設定で最初の1年を進めました。
『園長になることは、決して「保育を手放す」ことではない。園児全員を保育するスタッフや保護者含めて子どもたちに関わる全てを見守る存在になって欲しい!』
・園長の職務内容の明確化を行い、それを園長全員が理解している
・「スキル」「知識」を身につけることの必要性を理解している
・課題に直面したときに「他力本願にならず」自分でその解決に向けた行動を起こせる
園運営に必要となる事務的な研修を進める中でも、このようなスタンスを園長に持っておいてほしい、という思いで、ときには「課題」にも取り組んでもらいました。結果、少しずつですが「自己研鑽の姿勢」が醸成されていったのです。
力強い外部人材の助けを借りつつ、私たちも園長たちに想いを届け続けました。
認可園移行に向けて、何より先生たちが楽しく働ける保育園の実現に向けて、私たちは足繁く保育園に通い、日々の保育での課題や、もやもやなどをヒアリングし対話を重ねました。
また、園といわゆる本部機能との情報共有の場として「園長会」を園長研修と隔月で実施。
事務連絡一つであってもその背景やそれを実施してもらうことの意義などをセットで伝え、納得感を高めました。
少しずつ、少しずつ進めた「学ぶ意欲の醸成」
2015年、小規模認可保育所として新たなスタートを切ったフローレンスの「おうち保育園」。
管理職として必要な知識・スキルを得るための「講義型」の園長研修と、園長自身が関心をもっているテーマに対してともに学び、情報交換を行う「自主運営型」の園長会。
この2つを交互に実施することで、主体的に学ぶ風土が整いはじめました。
(2015年のおもなテーマ)
・こどもの人権
・経費、勤怠管理、労務管理
・社内システムを使った支払い売上管理
・メンタルヘルス
・評価面談
・コミュニケーション
・ファシリテーション(園長会を自主運営するための助けとしての学び)
「学び」を継続される仕組みが醸成される中、私たちは次のステップとして園長自身に「考える力」を養ってもらうための取り組みを始めました。
折しも主任を各園に設置しようとしていたタイミングであり、これを機に園長自身の役割や求められるスキルを、今一度俯瞰して考えてもらったのです。
2016年、各園に主任が任命されました。まだまだ園長育成の道は半ばですが、今度は主任の役割に応じて、園長が少しずつ自分の業務を切り出し主任に任せていく必要が生じます。
利き脳、EQ(心の知能指数)といった自身の性格、感性、コミュニケーションの傾向をはかるテストも実施し、「自分を知り園運営や人材育成に活用する」ことに挑戦してもらいました。
(2016年のおもなテーマ)
・労務管理
・利き脳/EQを活用したチームビルディング
・メンタルヘルス
・ハラスメント
・リスクマネジメント
・質問力強化
・問題力解決
コンテンツのバリエーションも増えたこともあり、「このスキルが日々の園運営・保育の中でどのように活用できるか」を直感的にイメージしてもらうため、実際の保育園で起こった出来事をベースにケーススタディを用意。
「あれ、これってうちの保育園のこと?」
「うちのところでは起こってないけれど、こういうリスクも考えられるのか・・・」
既知の情報を共有し、未知の情報をキャッチする、研修がそういった場になることで、より自分ごととして学びをとらえられるようになった時期でした。
そして2017年、私たちは新たな局面を迎えます。
認可保育園の設立と研修内製化への舵切り
2017年。私たちは「みんなのみらいをつくる保育園」を都内に2園立ち上げました。子どもたちの気持ちを大切に、子どもたちがつくりあげていく保育園。
海外の教育方法の一つである「シチズンシップ教育」を保育の現場に落とし込み、「シチズンシップ保育」と銘打って、それまでにない保育園の姿を目指すようになりました。
新しい視点の保育の中で、子どもたちとどのように関わっていくのがよいのか、その中で保育者同士、どのような関係性を築けばよいのか・・・。
誰も正解を持っていない、誰も教えてくれない・・・。
であれば、私たち自身が解を導きださなければいけない・・・。
2014年から3年かけて外部の研修企画のプロ、講師と作り上げてきた園長育成の文化は、新しい保育園づくりの中で徐々に「内製化」に向けて動き出しました。
ちょうどその頃、フローレンス全社の中にも新しい流れが起こりました。
それまで各事業部でバラバラに行っていた採用・育成を一つにまとめ、より全社的な視点から効果的な採用活動と、「やりがいをもっていきいきと働き続けてもらう」ための施策を専門で考える「迎える育む」チームの発足でした。
採用・育成の専門スタッフが生まれたことで、園長研修、そして新たに始めた主任研修をフローレンスオリジナルのものとして編成し、作り上げることに弾みがつきました。
これまで実施してきた園長研修のフィードバックを参考に、実際に保育園に足を運び、園の様子を見たり先生から話を聞いたりするなかで、得られた事例をケーススタディとしてアウトプット、より新しく、より現場に根付いた研修として組み立てました。
とはいえ、まだまだ走り出したばかりの新しい部署。しかも育成担当の中には、中途採用で入社したばかりのメンバーもおり、本当の意味で現場を知っている、園長たちの想いを知っているとは言い難い状態でした。
そこで、それまでお世話になった「研修のプロ」に力強いフォローを受けつつ、少しずつ内製できるものは進めていき、テーマによっては、思い切って外部講師にお任せすることに。
その後2018年、2019年と研修を改良させていく中で、「すべてを内製化する」ことが正解ではないと気づきました。
例えば、「人事評価」、「財務」などはフローレンスの内部事情を踏まえて、フローレンスメンバーが伝えたほうが腹落ちするけれど、「コミュニケーション」や「PDCA」の話は外部の方から伝えてもらったほうが、客観的に納得性が高まるなど。
(2017~2019年までのおもなテーマ)
・メンタルヘルス
・リスクマネジメント
・リーダーシップ
・問題発見、解決
・評価
・人材育成
・お金の側面から考える園運営
・コミュニケーション
すべてを無理に内製化させるのではなく、必要な領域で外部の方のお力を借りながら、ベストなタイミングで園長が知りたい内容を実施すること。
それが、この5年間で、私たちがたどり着いたいまのところの「解」です。
そして今 私たちは、これまでの歴史を整理し、より「実践型」の研修を実施することに取り組んでいます。すでに「育成の土壌」は育まれ、園長たちはより良い園運営に向けて自律自走し始めています。
貴園の園長・リーダー育成の実態を教えて下さい!
最後に、改めてお願いです。
私たちは、保育業界で働く人たちの幸せを願っています。
「いかに前向きに受講してもらうか、どんなステップで定着させていくか、現場での活用の難しさをどうフォローするか・・・」そんな事も含めて、私たちがこれまで歩んできた園長育成のノウハウが、他園の先生方の幸せにつながるなら、こんな嬉しい事はありません。
その中で、園長のパワーアップはもちろん、次世代リーダーの発掘、育成に向けてもお役に立てそうなことがあるのではないかとも感じています。
私たちの想像が確信に変わり、具体的に先生方のお力になる日を夢見ていますが、まずは私たちが自園に対して行ってきたように「現場の声を知る」ところから始めたいと考えています。
ぜひ貴園の園長育成のご状況や、園運営のお困りごとをお聞かせ下さい、アンケートに答えてくださる方はこちらから。皆さまからのお声をお待ちしています!
◇ご回答いただくと、『フローレンスの研修プログラムと研修資料サンプル』を進呈します!
保育現場で多くの園で課題として挙げているコミュニケーション系の研修サンプルです。ぜひご参考にしていただけますと幸いです。(所要時間5分~)
お問合せ先
muka-hagu@florence.or.jp
フローレンスの園長研修ストーリー連載中!
PART1:「保育業界を元気にしたい!園長の成長に関わりたい!」アンケート調査ご協力のお願い
PART2:のぞき見!フローレンスの園長研修
PART3:私たちの挑戦 保育リーダー育成プロジェクト 立ち上げストーリー(当記事)
※当記事に掲載の写真は2019年以前に撮影したものです。
書いた人:瓦らうら珠子