コロナ禍で影響をうける子育て家庭
緊急事態宣言の延長が発令されました。さわやかな5月、晴天の休日にあっても、出かけることもままなりません。
長引くコロナ禍に出口が見えない不安を感じる人、やり場のない苛立ちを感じる人、あるいはポジティブに楽しんでいる人、ストレスフルな情勢を転換するために何ができるか考えている人、様々な方がいるでしょう。
先日、こどもの日に「もう十分頑張っている子どもたちに、これ以上負荷をかけ、リスクを増やすことはしたくありません」というメッセージを発信しました。
こどもの日に引き続き、母の日に考えてみたい、今の日本の「お母さん」の環境。
なぜなら、子どもがリスクを高めているという問題は、当然親御さんが追い詰められていることと地続きだからです。
4月5日グテーレス国連事務総長らが声明を発表しました。
新型コロナウイルス感染症による危機下において女性に対する暴力が急増していることに関し、各国への重点的な対応を要請する内容と共に、コロナ禍で女性の環境が著しく悪化しているのは、「経済、健康、無償ケア労働、暴力」の4つの領域だと明らかにしています。※内閣府男女共同参画局資料より
コロナ不況で大きな影響を受けている飲食業や接客業などの対面サービス業の多くを担っているのは、日本の場合女性の非正規雇用者でした。休業要請や、解雇によって職を失うことにより女性の貧困化が進んでいます。
また、急な保育園の登園自粛や、習い事、塾、部活動などの休止など、子どもの環境変化へのケアに追われる一方、自宅でのテレワークと家事育児のバランスが取りにくくなっている声も聞かれます。
ストレスが重なる環境下でパートナーが自宅にいる時間が増えたことも関係してか、DV被害件数も増えています。
内閣府の研究会の発表によると、コロナで外出自粛などが要請され始めた去年4月から今年2月までに、全国の相談センターに寄せられたDVの相談件数は17万5693件で、前年に比べておよそ1.5倍に増加。緊急事態宣言中にパートナーが家にいて、暴力が激しくなったなどの相談が寄せられているという。
4月に警視庁が発表した2020年3月の自殺者数は1925人で、去年の同時期に比べて167人増。
自殺者のうち女性は655人で、約3割も増加しており、これは昨年6月から10カ月連続で前年を上回るものだそうです。コロナ禍が、女性の暮らしを直撃し、経済的にも精神的にも追い詰めています。子育て家庭においては、その影響は子どもに及ぶことは言うまでもありません。
なかでも、最もリスクの高い母子家庭
多くの非正規雇用を日本では女性が担っていることにも表れるように、日本では女性の賃金が男性の7割以下で、母子家庭になった場合子育てをしながら生活をすることが非常に困難なラインとなります。
コロナ禍で、フローレンスには電話やメールでの相談が増えました。
「シングルマザーです。仕事を失いました。借金もあってこどもと今日死ぬか、明日死ぬか。食べるものにも困っています、助けて下さい。」
大げさではなく、こんな声が相次いでいます。
お母さん一人が、がんばらなくていい
フローレンスは、コロナ禍においてシングルマザー・母子家庭の支援を強化しています。
「こども宅食」は、経済的に困窮している子育て家庭へ定期的に食品や日用品などを届ける仕組みですが、利用家庭の多くが母子家庭を中心としたひとり親家庭です。お届けをきっかけにしてご家庭とのつながりを作りさらに必要な支援につなげていくための取り組みで、コロナ禍にも非常に有効な支援モデルとして、全国に拡大しています。
また、フローレンスでは、ひとり親家庭の命綱である「就労」を支えるため、訪問型病児保育でのサポートを2008年から提供しています。新型コロナウイルス感染症が拡大した昨年は、病児保育での支援に加え、食品や日用品の配送などを実施し、全国のひとり親家庭のべ2,400世帯以上に支援を届けました。
また、サッカー・長友佑都選手とのクラウドファンディングで募った約5,000万円の寄付を原資としたひとり親支援プロジェクト「#ひとり親をみんなで支えよう」では、スタートしてからおよそ1年間にわたり、国内のシングルマザーに支援を届けてきました。
DV相談、食料支援、相談支援、就労支援といった様々な側面から親御さんと子どもたちをサポートしています。
日本のお母さんの声に、伴走した17年
フローレンスは2004年、日本初の訪問型病児保育事業「フローレンスの病児保育」スタートをきっかけに団体を設立しました。
当時は、既にバブル崩壊後の大不況の中、共働きの家庭が一般化していった時期でした。それなのに「結婚して子どもができたら、母親は仕事を辞めて家庭に専念する」「父は一家の稼ぎを一手にひきうけ長時間労働」という考え方を引きずったままだったため、見えない機能不全を起こし始めていました。
つまり、仕事、子育て、介護、家事、地域貢献・・これら全てを「母親」が背負うかっこうとなったのです。
フローレンスは団体設立から17年間、日本のお母さんの育児に伴走してきました。
どの事業も、「重い障害のある我が子を受け入れてくれる保育園が一園もないんです」といった、たった一人のお母さんの声からスタートしたものばかりです。
日本の親御さん、子どもたちをひとりにしません
フローレンスは障害児保育や病児保育などの緊急サポート保育の現場、ソーシャルワークの現場を運営しています。
現場で目の前の親子の笑顔をサポートするだけでなく、社会の古いあたりまえを変えていくため、世論と政治情勢にあわせた迅速な政策提言が欠かせません。
親御さんや子どもたちの「今」を支えるため、フローレンスは子育て家庭へのサポートを継続していきたいと考えます。
日本のお母さんは、十分がんばっています。
もちろん、お父さんも、子どもたちも、若者も、シニアの方も、みんなコロナ禍で十分がんばっています。
政治家の皆さんも刻々と変化する情報を正確に分析しながら、正解と前例のない局面で判断を実行していくことは、非常に難易度が高く、奮闘されています。
こうした情勢の中、国内のがんばっている仲間同士が支え合う機運も高まっていると私たちは感じています。
以下は、フローレンスに寄せられる寄付者の方からのコメントです。
『以前より活動に共感し、何か応援できたらと考えていました。障害児・医療的ケア児の保育事業やひとり親家庭への支援事業など、本来なら国が行うべき福祉事業をNPO団体が寄付を募りながら運営しなければならない状況をとても歯がゆく思っています。』
『私もいつかシングルマザーになるかもしれません。そのときに誰かの寄付で励みになったり、心の余裕を持てたり、子供に優しくできたりしたら良いなと思い、支援させていただきました。』
今年の母の日は、お母さんに感謝を伝えるとともに、母親一人が負担を背負って孤立しない社会につくるためには、どうしたらよいか?考えてみませんか。
未来への希望の気持ちを託す選択肢として、ぜひ引き続きフローレンスの活動を応援してください。