6月20日は「父の日」ですね。
子どものころ、「お父さんありがとう」と書いた手作りの肩たたき券をプレゼントした記憶が蘇ります。家族のために仕事を頑張っているお父さんに感謝する日ーーこの認識に、とくに何の疑問も持っていませんでした。
それから時は経ち、家族のあり方は多様化してきています。
例えば、1980年から2017年の間に日本の共働き世帯数は約2倍に。並行して、いわゆる「専業主婦のお母さん」世帯は半減しています。(厚生労働省 男女共同参画白書 平成30年版より)
昭和から平成初期にかけてテンプレート化された「お父さんはモーレツ社員・お母さんは家事育児」という形が変わってきています。
お父さんは”仕事を頑張って”さえいれば感謝される存在なのだろうか?
「父の日」をきっかけに、令和のパパ像とは?をフローレンスのスタッフが語り合ってみました。
<左上から時計回り>
こうへい:代表室所属。1児(1歳)の父。実体験をもとにした「パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!」を5月に上梓。
いわお:みんなで社会変革事業部 広報チーム所属。1児(小2)の母。司会担当。
あまさく:障害児保育事業部所属。1児(6歳)の父。父になった事をきっかけにフローレンスへ転職。
わらび:代表室 WEBチーム所属。2児(中2・小5)の母。アウトソースも賢く活用する、母さん10年選手。
きくちん:働き方革命事業部 システムチーム所属。1児(2歳)の父。プライベート時間は全て育児に捧げている。
ごう:働き方革命事業部 迎える育む部所属。家庭を持つことはまだピンと来ていないが、この日は先輩たちの話を聞きにきた。
変わる父像…でも”週1シフト”のお父さん!?
いわお:昭和のテンプレートから、令和の家族のあり方ってはっきりと変わってきていますよね。「こんな父でありたいな」というイメージはお持ちですか?
あまさく:私は、子どもが生まれて待機児童になったことがきっかけでフローレンスを知って転職をしてきたんです。新卒から勤めていた会社を辞めてNPO法人に転職するって言ったとき、50代、60代の世代の上司は「本気か!?」って……「結婚して子供も生まれたのにNPOに転職?正気か?」と言われまして。その世代では特に、父親は「稼ぐ」とか「大黒柱」という役割が強くあるんだなと感じましたね。
私自身は「父」「母」という属性では捉えていなくて、「家族」という、子どもの成長を支える1つのチームだと考えています。
ごう:実家は共働きです。父は警察官だったんですけど、比率多めに家事をやっていました。父母どちらも家事をすることが普通っていう感じですね。やれるほうがやるみたいなスタンス。
今は結婚もしていませんし、まだ父親になるイメージを全く持てていないんですが、皆さんのお話を聞いて気持ちが変わるかもしれません!
きくちん:私の父は完全に大黒柱型でした。母は専業主婦で、4人兄弟を母が面倒を見て父は稼いでくる典型的な。なので無意識にそういう家庭をイメージしていたかもしれません。
でも、私の妻が「子どもが生まれても絶対に仕事は続けたい」というタイプで。そこで今では、家事・育児も50/50で持ち合うことを理想にしています。同じような仕事(※お二人ともエンジニア関連職)をしているから、業務量や負担がイメージがしやすいのもあります。
いわお:パートナーさんの「働きたい」気持ちを尊重されてるんですね!
わらびさんは、「こういうお父さんになってほしい」といったお話はパートナーさんとされたことはありましたか?
わらび:「あなた当事者だよ」ということは言い続けたかな…。
例えば、産後の復職にあたって、いわゆる「保活」を私が一人でやっていて、夫はひとごと状態だった時に話しましたね。子育てにおける当事者意識を持てる機会が少なかったとも言えるかも。
いわお:当事者意識、持ててますか?
こうへい:僕、新米パパなのでまだまだ…(笑)。
男性の育休取得率は7.4%しかない現状では、子どもが生まれてからの育児・家事、それこそ保活なんかも、父親が仕事している間に母親がやるしかない状況なんですよね。
新オープンの居酒屋に例えると。
母親はオープニングスタッフとして仕組みや段取り、それこそ包丁からゴミ箱まで設置場所も全て整える。そこに「週に1回」みたいなシフトで父親がアルバイトとして入ってくる。
もちろん頑張って働こうとするんだけど、自分なりのやり方でやってみたところを、母親サイドからすれば「そうじゃない!」と。父親からすれば「怒られるならもうやらない」となる。そういう悲劇が起こっているんじゃないかな。
わらび:確かにそういう側面はある。だからこちらも反省して、いちいち口出しするんじゃなくて任せようと。仕事でも同じですよね、チームメンバーに細かく指示しないじゃないですか。まあちょこちょこ、「この片付け誰がやるんだっけ?」とか言いますけど(笑)。
ごう:お父さん、たいへんだなぁ(笑)。
こうへい:家庭・家族は本来2人で作り上げていくものですよね。オープニン グスタッフである母には「アルバイトにも任せて下さいよ」と、不本意ながらもアルバイトスタッフである父には「ちょっと怒られたからってヘソを曲げないで」と言いたい。双方が変わればお店が良くなるという話。
男性育休、取得率は上がるのか? 制度よりも風土の問題
いわお:居酒屋さんを例にお話いただきましたが、「家族」というプロジェクトを立ち上げるときに、主に父親が家事・育児にコミットできないのはなぜでしょう?
こうへい:もうそれは「アルバイト」でしかシフトに入れないからですよ。つまり、日本人男性は世界で一番長く働いている。だから、妻と一緒にオープニングスタッフになりたかったのにそうできない事情があるし、「育休を取りたい」と申し出たところで、「お前なめてんのか」って言われて取らせてもらえないし、そういうくびきの中で生きているから、家庭進出したくてもできないという悩みを抱えてる人は多いと思いますよね。
いわお:先日、育児・介護休業法が改正されたところです。事業者側に義務づけられる項目もあったりして、男性が育休を取得しやすいよう仕組みが変わりました。フローレンスのパパスタッフは、代表含めて育休取得率100%ですが、社会全体ではいかがでしょう?
きくちん:前職では育休という名目で休みを取った人はいなかったと思います。「子どもが産まれて妻一人では大変なので」など、説明すれば突き返されはしなかったでしょうけど、実際に制度を利用した人がいない状況では言い出しにくいですよね。
いわお:人事部門のごうさん、一般的に「男性も育休取れますよ、取りましょう」といった社内への呼びかけは、経営層の温度感や関心度に左右されるものでしょうか?
ごう:世代的なものが大きいんじゃないでしょうか。男性も育休を取ることが特別じゃなくなれば、取得する人は増えると思いますよ。今はまだ目立ってしまう企業もあるのが残念です。
いわお:メディアの報道を見ても、男性は会社や仕事を大切にすべし、育児は母がやるもの、というシニア世代の声が紹介されていました。一方で30代くらいになると「本音としてはぜひ育休を取りたい。でも会社でとてもじゃないがそれを言い出せない。」という声が増えるんですよ。
こうへい:父も、「家庭進出したい」という気持ちはあるんです。
後に続く仲間のために ”ファーストペンギン世代”だからできること
いわお:昭和から平成初期の、猛烈に仕事をする父が良しとされた時代から、平成後期にその価値観がひっくり返るような大きな出来事がいくつもあり、令和に入るとコロナ禍で家族とか父の役割といったものが変わってきましたね。父である当事者ができることって何でしょう?
こうへい:まず父は「責任を自覚せよ」と。会社組織に対する責任よりも、家庭に対する責任を取ろうという話です。会社に代わりなどいくらでもいるんです、だけど家族とその子どもにはいないわけだから、どっちが大切かって比べる話ではないんですよ。
特にこれから、”人生100年時代”って言われてる中で、組織に対して忠誠を誓ってその結果何が残るの?っていう話でもあると思う。父が家庭にコミットしなかった・できなかったことで母が孤独に陥って、回り回って子どもに手を上げてしまうケースもあるでしょう。もっと自分たち自身の幸せっていうのを考えて行動することが結果的に社会全体の幸福度を押し上げると思います。
それから、「勇気を出そう」ってことですよね。
僕の本にも書いたんだけど、ノルウェーは1993年ぐらいまでは、男性の育休取得率はたったの3%だった。今は80%ぐらいになってます。どうやってこれだけ育児休業取得率が伸びたかっていうと、勇気あるお父さんたちが「この制度使うわ」ってちょっとずつちょっとずつ取っていった。
そうすると、周囲にいる人たちが「自分たちも取っていいんだ」と取り始めて。それが雪だるま式に増えていき、気が付くと80%にもなっていた。一番最初に、例え組織から嫌な顔されたり、煙たがられるようなことがあったとしても、「俺がやるのだ!」っていう”ファーストペンギン”が必要なんです。
ファーストペンギンとは:
群れで暮らすペンギンの集団のうち、魚を求めて敵がいるかもしれない海に飛び込む最初の1匹のこと。転じて、リスクを恐れず先陣を切って行動を起こす人を指す。
わらび:こうへいさんや私ぐらいの世代だと、もう管理職についてる人たちって結構いますよね。そういう人たちが「男性も育休取れる雰囲気作り」に一役買うべきなんじゃないかな。「育休取りたいんです」って相談されたときに、「は?」って言わないとか。
こうへい:そうそう。
わらび:組織のスタイルもさまざまだし、(育休希望を)うまく上に上げられないとか、中間管理職なりの苦しみはあると思います。その中で、希望を受け止めて、組織に通せるよう尽力する。そういう雰囲気作りも、私たち世代にできることですよね。これから父になる人や、新米お父さ んだけが当事者として頑張らなきゃいけないのはちょっと違うかなって思う。
いわお:元・当事者が後進ペンギンたちのために道を拡げる。
わらび:そうそう。元・当事者。私の夫みたいに、妻にめっちゃ怒られながらも家庭進出を実現してきた父、そろそろ増えてるはずですよ。
「父の家庭進出」を後押しできる社会でありたい
いわお:一方で父の家庭進出のために社会ができることは何でしょう?「父、家庭進出しよう!」という流れが世の中的にできてきているがゆえに、プレッシャーを感じてしまうお父さんもいるかもしれません。
こうへい:さっきも言ったけど日本男性の労働時間は10年前から変わらず、世界一長いまま。「家庭進出しましょう、家事・育児しましょう」に頭では共感しかなくても、物理的に残りわずかしかない時間を家事・育児に充てることになる。もう無理ですって言いたくもなります。
なので、定時で帰ってちゃんと子育てしたい男性を後押ししてくれる社会であって欲しい。
また、女性の社会進出の一方でまだまだ母の自己責任論が根強い。保育園やベビーシッターに預けることに後ろめたさを感じるお母さんも多いですよね。社会みんなで子育てしていく雰囲気と制度と、政治はそこに対してちゃんと投資をしてくれと思います。安心して社会で育てられる環境を整備して欲しいですね。
わらび:第三者に頼っていいと思う。家庭内で抱え込まないで。
うちの場合は隔週で食事の作り置きサービスをお願いするようになって、夫も私もすごくハッピーになりました。「なんだ、この投資早くやれば良かったね」って。フローレンスの病児保育もそうだし、頼れるところは頼って、いろんな力借りればいいと思うよ、ちょっとお金も出て行っちゃうけど。
今日からできる「父の家庭進出」 まずはコミュニケーションの時間を
いわお:組織の風土や社会は一朝一夕には変えられませんが、パパの家庭進出のために「今日からできること」はありますか?
あまさく:育児仲間を身の回りで増やすことをおすすめします!
私の場合はフローレンス内のパパコミュニティで、『妻にこんなこと言われたんですけど』とか『家電何使ってます?』とか、ちょっとしたことを話せる相手がいること。それで心を保っています(笑)。
いわお:こうあって欲しい・こうありたい”父”のイメージはご家庭それぞれだと思います。そういったことを話し合えるような、家庭内のコミュニケーションで工夫していることはありますか?
あまさく:誕生日や記念日に夫婦2人でとか、月に1度子どももいっしょにとか、外食して、現状や近い将来の話をする機会を意識的に設けています。
きくちん:ちょうど子どもがイヤイヤ期で、親が会話すると「パパうるさーい」って言われてしまう(笑)。平日はドタバタしてて話せないから、「じゃ、これはちょっと後で、夜起きてたら話そう」ってとりあえず一言かけて、時間を確保するのが今唯一できてることです。
わらび:私は子どもに対しても夫に対しても言ってることはあんまり変わってないかな。とにかく当事者だと言い続けてます。家庭がスムーズに回るようにするチームのメンバーであって、誰が上とか下とかないから、みんながやれることをやるんですよって。
ごう:育ってきた環境がそうだったし、僕も共働き家庭を持つイメージを持っています。
「家族になろう」という選択をした以上は、「夫・父だから」「妻・母だから」を基準にするのではなく、チームのメンバーとして家事育児を担うことが当たり前という感覚が、これからはさらに広がっていくんじゃないかな。
いかがでしたでしょうか?
今年の父の日、
「お父さん、いつもありがとう」に続けて、話したいことを伝えてみるのもよし。
「お母さんも子どもたちも、いつもありがとうね」と返すのもよし。
あなたのおうちの”父”は、家族にとってどんな存在ですか?