フローレンスは、この度、11月19日に閣議決定した18歳以下への10万円相当の給付に導入する所得制限について、迅速な支給のため児童手当の仕組みを利用する、支給対象は夫婦のうち収入の多い方で判定される、また、経済対策として住民税非課税の世帯を対象に、1世帯10万円の支給がされることに関する緊急提言を行います。
今回の提言は、「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチームとして、認定NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ、シングルペアレント101、北明美福井県立大学名誉教授とともに作り上げました。
提言「18歳以下への10万円」と「住民税非課税の世帯への10万円」がノーセーフティネットひとり親にも届くようにしてください
11月19日に閣議決定した18歳以下への10万円相当の給付に導入する所得制限について、迅速な支給のため児童手当の仕組みを利用すること、支給対象は夫婦のうち収入の多い方で判定されることが発表されました。また、経済対策として住民税非課税の世帯を対象に、1世帯10万円の支給がされることも発表されました。この2つの政策に関して、経済的に困窮する別居中・離婚前の実質的なひとり親(ノーセーフティネットひとり親)家庭でも受け取れるよう、以下の対応を国・自治体に求めます。
1.18歳以下への10万円相当の給付について
・児童手当の仕組みを利用すると、支援を必要とする家庭に十分に届かない恐れがあります。2020年9月に私たちが実施した別居中・離婚前のひとり親家庭262世帯への調査にて、18.1%が児童と同居しているにも関わらず、児童手当を受け取れていないことを把握しています。
・彼らは別居中・離婚前で、子どもと同居していながら児童手当をはじめとしたセーフティネットを剥奪され、精神的、経済的、社会的に追い詰められた状況にいるひとり親家庭です。
・対象者の98%は母子家庭で、7割以上が相手からのDVを経験しており、かつ就労年収200万未満。過半数が行政等の専門機関、職場や友人に状況を打ち明けられていない状況でした。
・そこで、児童手当の仕組みを利用する場合は、ノーセーフティネットひとり親であっても給付が受け取れるよう、事務連絡「児童手当における同居優先事例及び DV 事例に係る事務処理について」(令和3年2月26日)に則り、児童手当における同居親優先の原則をあらためて徹底し、各市町村にて積極的に運用されるよう、再周知をお願いいたします。
・16歳以上の子どもについては、親が別居中の場合、両方の親から申請がされる可能性がありますが、所得が多い方や世帯主を優先するのではなく、子どもと同居している親からの申請を優先して認めるよう、注意喚起をお願いします。また、別居親の所得が不支給の理由にならないよう、同居親優先の原則をこちらでも徹底してください。
・別居中の夫婦が別の自治体に住んでいる場合は、必要な自治体間の連携を確実に行ってください。その際、配偶者のDVから逃げているケースもありますので、本人に無断で配偶者に居場所を伝えないように厳重に配慮してください。
・さらに、私たちの調査では、対象家庭の多くが「児童手当の受給者変更手続きについて知らない・よくわかっていない」ということがわかっています。そのため、今回の給付についても、迅速に進むほど、多くのノーセーフティネットひとり親家庭が知らないうちに、対象から漏れてしまうことが予想されます。そこで、国・自治体主導にて児童手当の受給者変更が可能であることの周知をわかりやすく行うと同時に、受給者変更が今回の10万円支給に間に合わない場合にも遡及措置が可能になるよう、柔軟な対応をお願いします。
・たとえば、下記のように、DV避難者だけでなく、離婚を前提に子どもを連れて別居することを余儀なくされている方に向けて以下を広報し、給付してください。
配偶者等によるDVから避難している方および離婚を前提に子どもを連れて別居している方へ
本給付金は原則として、9月分の児童手当受給者に支払われます。ただし、要件(DV被害や離婚協議中であること等に関する証明書類等があり、配偶者と生計を異にしている等)を満たしている場合には、避難中や当該別居中の保護者に支給先を切り替えられる場合があります。取り急ぎ9月分受給者への支給を中止する必要がありますので、該当の可能性がある方は至急子ども・子育て課にご連絡ください。
・国は上記の措置が可能であること、およびその周知の徹底を自治体にお伝えください。
2.住民税非課税の世帯への1世帯10万円支給について
・住民税非課税の世帯となるためには、世帯全員が非課税の条件にあてはまることが条件となっているため、例えば別居中・離婚前の妻と子どもの2人暮らしだが別居中の夫の収入が多いために非課税の対象とならない世帯(ノーセーフティネットひとり親世帯)が対象外となってしまいます。
・そこで、コロナの影響を受けてますます困窮する、ノーセーフティネットひとり親にも住民税非課税の世
帯への1世帯10万円支給が受け取れるよう、児童手当と同等の同居親優先の原則を採用し、別居親を除いた世帯構成員が非課税の条件にあてはまれば、住民税非課税世帯と同等の状態にあるとみなして、支給対象に加えるように例外対応を追加してください。
・そのうえで、別居中・離婚前の家庭でも手続きを行えば対象になれることの周知と、手続きが間に合わない場合にも遡及措置が可能になるよう、対応をお願いします。
3.最後に
今回はスピードを優先しての判断であることは理解しますが、こうした制度の間にいる親子の問題を解決するため、将来的には給付金を世帯単位ではなく個人単位で支給されるよう、要望します。
賛同人
プロサッカー選手、ひとり親支援プロジェクト「#ひとり親をみんなで支えよう」発起人 長友佑都
「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチームについて
「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチームは、フローレンスがプロジェクト事務局を務めるプロサッカー選手・長友佑都さんとのひとり親支援プロジェクト「ひとり親をみんなで支えよう」で緊急支援を行った対象者のうち、パートナーと別居中・離婚前でご自身が子どもと同居しており、実質的にひとり親状態にある家庭の全国実態調査を実施。
その結果、児童手当さえ受け取ることができない厳しい状況に陥っている「ノーセーフティネットひとり親家庭」の存在が明らかになりました。それを受けて、2020年11月11日、「ノーセーフティネットひとり親家庭を救え!」と題した記者会見を厚生労働省にて開催し、調査結果を発表いたしました。