私たちフローレンスでは、この度10年余り取り組んできたリーダー育成のノウハウ・コンテンツを他園に提供する「保育リーダー研修」を実施しています。私たちは、保育業界で働く人たちの幸せを願っています。未就学期は子どもたちにとって非常に重要な時期であることが分かっています。その未就学期に子どもたちの成長の場である保育園で働くスタッフが生き生きと働けるように、私たちのノウハウが役に立つのであれば、喜んで提供したいと考え、園運営に必要なスキルを体系的に学べる研修を構築しました。
「こころの根っこを育てる」という保育理念を掲げていらっしゃる宝塚いろのま園さんも、研修を提供した園の一つ。2021年6月〜2022年1月の間で全6回に渡って保育リーダー研修を実施させていただきました。
今回はその宝塚いろのま園の園長・岡本悠佑さんにインタビューし、なぜフローレンスの研修を選んでいただいたのか、研修受講前後での受講者の変化、保育リーダー像、今後の園運営などについてお伺いしました。
前回の受講者インタビューもご覧ください。
一人ひとりの自分らしさをしっかりと表現できる場所に
ー園についての概要と、大切にしていることなどを教えてください
いろのま園は、兵庫県宝塚市にある企業主導型の小規模園です。
19名の0〜2歳のお子さんが対象で、小規模ながら園庭のある保育園というところが特色の一つです。
保育理念は、「こころの根っこを育てる」を掲げています。
一人ひとりの自分らしさをしっかりと表現できる場所にしていくことによって、非認知能力とも言われますが、子どもたちがこころの根っこをしっかりと育んでいける場所にしていきたいと思っています。
そこで、我々保育スタッフとしては、まず愛情を持って関わることを大切にしています。
小規模だからこそ、一人ひとりのスタッフと子どもたちの距離が近いというところをしっかりと活かしていくということです。
あとは主体的な遊びです。
育児担当制をとり、子どもたち一人ひとりのことをしっかりと担任の先生がみながら、その子たちに合わせた遊びを日々提供しています。
ー「こころの根っこを育てる」というのはすごく素敵な言葉だなと思ったのですが、その言葉に込めた想いをもう少しお聞かせください
大人になってから、何かがしたい!という想いを持ちながら、なかなかそれを実現することが出来ない方々を多く見てきました。
夢を実現するための自分の中にあるエネルギーを生み出しているものって、自分のことを好きだと言えたり、何かに興味を持ってじっくり取り組めたり、友達との関係性を作れるとかいうことであって、英語を話せるとかは枝葉なのかなと感じているんです。
ちいさな頃からそんな人間の根幹を育みたいという想いがあり、「こころの根っこ」という表現にしました。
長く勤務する中で育ってもらう環境を作るために
ーフローレンスの研修に興味を持たれたきっかけは?
メールでアンケートを送っていただき、それにお答えしたのが始まりです。
元々フローレンスについては、自分が通っていた経営大学院でのケース内でソーシャルビジネスをしている団体として出てきたので認識はしていて、ぜひ何か意見交換ができたらと思って調べたという経緯です。
ー数ある研修業者の中からフローレンスを選んでいただいたのは?
一番の理由は、小規模保育の運営実績を沢山持っているというところです。
研修業者さんはもちろんいっぱいあるんですが、小規模保育の事例を沢山持っているという点で、お力をお借りできるのではと考えました。
私自身も、研修講師のお仕事をさせていただくこともあるのですが、保育に特化したことはわからない部分もあり、保育士に対して保育現場での事例を元に研修を提供していただけたらと考えたからです。
ー園運営上、元々お持ちの課題や悩み事などはおありでしたか?
保育士に長く勤務してもらうというところが一つ課題としてありました。
企業主導型小規模園として、そもそも人材を集めることも苦労していますが、そうして苦労して採用した人材をうまくマネジメントし、長く勤務する中で育ってもらう環境を作るためには、マネージャーの研修が必要だとすごく感じていたんです。
マネージャーの関わり方を少しずつ変えていけたらと考え、この研修実施を決めました。
保育の専門性に関する内容に関しては実践と本などでも学べると思うんですが、マネジメントということになると、今まで触れたことがない内容なので、絶対にちゃんと型を学んでから実践に落とし込む必要があると思っていて、それには研修という形が大事なのかなと思っています。
一方、園独自でも、関係性づくりに取り組んでいるところです。
スタッフ同士の対話の場を作るために、月に一回遊びの会議というものをやっています。
カードゲームやボードゲームなどを私が探してきて、みんなでやりながらフラットにコミュニケーションを取るという習慣づけをしているところです。
普段の休憩時も、会話するメンバーが固定化されていたりするので、この遊びの会議によって普段はあまり話すタイミングがない人とも、仕事を離れたコミュニケーションができる点で良い効果が出ているかなと感じています。
今(※)は蔓延防止等重点措置が実施されているので、カードゲームとかは避けているんですが、来月くらいに復活できたらいいなと考えているところです。
(※)インタビュー実施時期:2022年2月
相手のために伝える
ーフローレンスの研修受講後、受講者や園に何か変化はありましたか?
受講前はどちらかというと自分の意思や価値観が強かった方が、周りの意見を聴いたり、相手への配慮がすごく増えてきたなという印象を受けています。
研修内で学んだ、「価値観を分離する」というところなどが意識されているのかなと感じています。
研修開始から4,5ヶ月たったくらいでしょうか。スタッフのミスが続いたことがあったとき、今までは少し強めの口調で言ってしまう傾向があったのですが、「これについては私がやるから、これをやってね」と業務を整理して指示したり、「大丈夫、大丈夫」という励ましの声かけがすごく増えてきたんです。
フィードバックも冷静にできるようになってきた感じですね。もともとやってくれていたことでもあるのですが、明らかに方法が変わりました。
ーリーダーの行動が変わることによって園としての変化はありますか
正直、園としての課題や問題は日々発生しますが、そんなときにマネージャー自身がすごくポジティブな言葉を発してくれるので、すごく助かっています。
もちろん私との間では園での問題や課題の話はしますが、スタッフの皆さんの前ではすごく前向きに「大丈夫、大丈夫」というような言葉を発してくれるのですごく変わってきたなと感じています。
元々仕事に前向きで、成長意欲もある方ですが、最近は更に周りに対して影響を与えるという意識がついてきたのかなと感じています。
自分では、「私は自分のやり方でしかできないと思う」と仰ってはいましたが、自然とやれていたりしています。
スタッフへフィードバックするときに、自分の感情や主観を一旦脇において、相手のために伝えることができるようになってきているので、自分の感情を引きずりにくくなっているのかなと思います。
現状に満足せずに
ー岡本さんが理想とされている保育のリーダー像は?
まず、保育士として自分が成長するという意識を持っているのが一つ、
次に、自分自身の理由だけではなく周囲に対して、園全体としての保育のパフォーマンスを視座を高く見られるという2つです。
自分個人が保育士としてまだまだ成長していきたい、だからこういう遊びを提供してみようとか、遊びの勉強してみようとか、新しい分野を学びに行こう、とするのは周りの保育士に背中を見せるという点でもすごく大事だと思います。
やり方は人によって全然違うと思うので、それこそYouTubeを観ながら勉強しても全然いいと思うんですが、現状に満足しないというところが大切だと考えています。
それにプラスして、個人としてだけではなく”園全体としての保育スキルやパフォーマンスはどうか”と視野を広げ意識を向けられるか、というのがすごく大事だなと思いますね。
ー研修を検討している方々に向けてメッセージをお願いします
恐らく意思決定をされるのは園長やマネージャーだと思いますが、マネジメントスキルは、自分たちが知っている(自分たちで教えられる)からいらない、ではないんです。
第三者の視点で幅広い事例の元にお話をしてくれるのが、ちょっとまた違う伝わり方をしてスタッフたちの成長につながっていきます。
私が直接指導してマネジメントスキルを伝えると、結局園長の命令になりますよね。そうするとスタッフが主体的ではなくマネジメント業務に携わってしまう。
でも、いっぱい経験や事例を持っている第三者(フローレンス)が、「ここが大事ですよ」と言ってくれるので、マネージャーとしても、「園長も言っているし、研修の先生も言っているから、大事なことなんかなぁ、一般的にもそうなんだなあ」と納得して腹落ちしてもらえるのがすごくいいところだと思います。
それに現場で起こりがちな事例も豊富に持っていらっしゃって柔軟に対応してくださいます。
研修と研修の合間で毎回ミーティングをし、受講者の変化を捉えながら内容も変えてくれるというのもすごくありがたかったので、おすすめです!
ー最後に何か一言お願いします
すごく感謝しています。
僕としても課題を抱えていて、どうしようかなと思っていたところだったので、ご縁をいただけたのがすごくありがたかったです。
スタッフの皆さんとの関わり方や、スタッフの学習環境を作っていくということに関して、自分自身もちょっと変わっていかなければいけないなと意識を持つようになりました。本当に感謝しています。
子どもたちと、スタッフの皆さんのことを真摯に想って、日々園運営に取り組まれている岡本園長の姿がとても印象的でした。保育リーダー研修を通じて、園全体で周りの意見を聴いたり、相手への配慮をする雰囲気が高まったという岡本園長。 子どもたちと、スタッフの皆さんのことを真摯に想って、日々園運営に取り組まれている姿がとても印象的でした。
待ったなしの保育現場で日々葛藤し、工夫し、より良い関係性を築く努力をされながら、円滑に保育現場が運営されていくよう尽力されていらっしゃる様子が伝わってきました。
お話をお聞かせいただきありがとうございました。
*宝塚いろのま園について