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外国ルーツの親子を「見えない存在」にしない! 言語の壁を超えて親子につながるフローレンスの挑戦

外国ルーツの親子を「見えない存在」にしない! 言語の壁を超えて親子につながるフローレンスの挑戦

#ハイブリッドソーシャルワーク

日本には1万9千人以上の「見えない」外国ルーツの子どもたちがいる

 

内閣府の推計によると、全国の3〜5歳児(約300万人)のうち、保育園にも幼稚園にも通わない「無就園児」は3%に当たる9.5万人(18年4月)。親が日本国籍と比べて、両親のどちらかが外国籍の場合では、無就園の可能性が 1.5 倍高い。

北里大学「社会的不利や健康・発達の問題が3、4歳で 保育園・幼稚園等に通っていないことと関連 ―約4万人を対象とした全国調査の分析からー」(2019年3月27日報道発表資料) https://www.kitasato.ac.jp/jp/albums/abm.php?f=abm00023983.pdf&n=%E7%A4%BE%E4%BC%9

日本に住む義務教育相当年齢の外国ルーツの子ども12万4049人のうち、15.8%に当たる1万9654人が、国公私立校や外国人学校などに在籍していない無就学の可能性がある。

日本経済新聞 2019年9月27日「外国籍児1万9千人が不就学か 文科省、初の全国調査https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50308100X20C19A9CR8000/

日本に住む外国ルーツの子どもたちの中には、保育園・幼稚園・学校に通っておらず、所在すらわかっていない子どもたちがいます。

法務省の統計によると2022年6月末時点の在留外国人数は296万人で前年度と比較して7.3%増となっており、その人口は年々増加傾向にあります。また、日本国内で親元で暮らす全ての子どもの6.9%は外国ルーツの親と暮らしているという研究結果もあります。(髙谷幸他 (2013)「2005年国勢調査に見る外国人の教育」、岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要第35号(2013.3)、p64)

今後も日本で暮らす外国ルーツの子どもたちが増加することが予想され、多様なルーツを持つ親子が安心して子育てができる支援体制の構築が求められています

この状況に対して、私たちフローレンスとしてできることはないか。 これが『外国ルーツ家庭のための無料チャット相談 Global Oyako Chat』立ち上げのきっかけでした

保育園に入るまでには、たくさんの壁が

そもそも何が外国ルーツの親子の入園のハードルになっているのでしょうか。
私たちは日本で子育てをする外国ルーツの保護者にインタビューを行いました。そこで分かってきたのが外国ルーツの親子が直面するさまざまな壁でした。

▼外国ルーツの親子の声

・保育園と幼稚園のちがいがわからない。入園書類が日本語で書かれていて理解するのが難しい。

・保育園の利用を希望したが、妻が無職だったので入園できないと言われた。

・宗教食対応を保育園に相談したが、対応できないと言われて入園をあきらめた。

・子どもが年中のときに来日。入園時の子どもの日本語レベルはほぼゼロ。子どもが保育園に馴染めず、登園拒否になってしまい、退園せざるをえなかった。

保育園・幼稚園への入園は、外国ルーツの子どもたちが日本語や日本文化に触れる機会になります。また、保護者が子育てで困ったときに相談できる先を増やすことにもつながります。

小学生になってから、いきなり日本語での勉強をスタートさせることのハードルの高さは想像に難くありません。

保育園入園に関わらず、言語・文化・制度の壁に日々格闘している外国ルーツの親子につながり、伴走することでその壁を少しでも低くしたい。

私たちはこれまで取り組んできたデジタルソーシャルワーク事業※1を外国ルーツの親子にももっと使いやすく、安心して相談できる場にできないかと考えました。

※1フローレンスは、LINEなどのSNSでつながり続け、さまざまな環境にある親子に対面とオンラインの両輪で伴走する相談支援=デジタルソーシャルワークのモデル事業を2021年に立ち上げました。デジタルソーシャルワークは、社会福祉士などの専門資格を持つ相談員が、子育て世帯に対してオンラインで継続的にやりとりを行います。雑談・相談を受けながらゆるやかにつながり、情報提供、行政や他機関・団体と連携して地域の支援につなげています。

言葉の壁を超えて

外国ルーツの保護者にヒアリングをした際に、

「困っていても、自分の言語で相談できる場所が少ない」

「難しい内容だと日本語よりも自分の母語で相談できると安心できる」

というお話を伺いました。

しかし、フローレンスに所属しているデジタルソーシャルワーカーの中で、外国語で相談対応ができるスタッフはごく一部でした。

外国語で対応が出来るスタッフを複数人配置するのは、現実的ではない…… 機械翻訳の精度が飛躍的に上がっているとはいえ、ミスコミュニケーションが起きることは防ぎたい……

そんなときに私たちの取り組みに協力してくださったのが、多言語コンタクトセンター(コールセンター)や翻訳サービス等、様々な多言語ソリューションでビジネス展開されている株式会社テリロジーサービスウエア様でした。

デジタルソーシャルワーカーと株式会社テリロジーサービスウエア様の翻訳スタッフがサイボウズ社の「kintone※2」でやり取りを行い、相談対応を進める体制を構築しました。

今回の事業では、kintone上に「翻訳アプリ」を作成し、外国語で相談を受けたデジタルソーシャルワーカーがkintoneに文書を入力すると自動的に翻訳スタッフに通知され、kintone上で翻訳文書のやり取りを行える仕組みを整えました。このことにより、「日本語」⇔「外国語」の翻訳にかかる時間が短縮され、利用者とのタイムリーなやり取りが実現しました。

※2kintoneはサイボウズ社が提供するクラウドサービスで、データの入力、集計、共有、ステークホルダーとのコミュニケーションを1つのアプリで行うことができます。

結果として、デジタルソーシャルワーカーが平日9-18時に日本語を含め14言語で利用者にお返事できる仕組みが実現しました。

<Global Oyako Chatサービス概要>

外国ルーツ家庭の相談に対応する際には、言語面のハードルをクリアするだけでなく、在留資格をはじめとする法律面や制度面の専門性も必要となります。そのため、今回の取り組みでは相談支援アドバイザーとして、長年外国人支援領域で活動されている特定非営利活動法人CINGA様およびNPO法人青少年自立援助センターYSC・グローバルスクール(minc事業)様に相談支援アドバイザーとして事業運営や利用者対応のサポートをしていただきました。

さらに、サービスをスタートするにあたり、デジタルソーシャルワーカーを対象に外国ルーツの親子が置かれている現状や、在留資格など制度面で知っておくべきことについて研修を行い、外国ルーツの親子の状況に寄り添った支援ができるように準備を進めました。

加えて、フローレンスでは、運営しているおうち保育園などで外国ルーツ家庭と接する機会があるスタッフも多いことから、フローレンスの全スタッフを対象にした外国ルーツの親子をテーマにした研修も実施しました。

研修の内容は、以下の記事で詳しくご紹介しています。

これらの研修に参加したメンバーからは、以下のような感想をもらいました。 研修を通じて、相談を担当するスタッフだけではなく、組織全体として外国ルーツの親子の置かれている現状への関心度が高まり、それぞれのスタッフが日々の利用者との関わりを振り返る機会になったと感じています。

難民として最近来日した方、在留資格がない方など、生活の基盤が不安定な中、妊娠、子育てをしている利用者も

今回の取り組みでは、保育園入園に関するご相談だけではなく、日本での生活全般に関するお悩みをたくさん寄せていただきました。 相談対応を進める中で、

妊婦健診などの医療にアクセスし、安心して出産できること

来日して衣・食・住、就職など安心して暮らせる生活の基盤が整うこと

病気になったり、生活に困ったら使える制度があること

など、日本で暮らす私たちがあたりまえに使っている制度やサポートが、外国ルーツの親子にとってはあたりまえでない現状を目の当たりにしました

また、そのような制度やサポートがあっても、うまく周知されていなかったり、言語の壁で利用しにくかったりと、既存の制度やサポートを利用するまでのハードルがたくさんあることが利用者の相談から明らかになりました。

保育園や幼稚園に通っていない「無園児」の問題は、入園に向けた制度や手続きの煩雑さだけが問題ではなく、日本で暮らす外国ルーツの親子が利用できる制度やサポートがまだまだ少ないことも要因になっていることがわかりました。その結果、保育園に通える状況にない外国ルーツの親子がたくさん存在しており、「外国ルーツの無園児」の割合が日本人の子どもと比較して高いという結果となっているのではないでしょうか。

今回は2022年11月~2023年3月までの期間限定の取り組みでしたが、外国ルーツの親子を対象とした相談体制の必要性を十分に理解することができました。今後、自治体や他の支援団体と連携した支援を実施することも視野に入れ、私たちに何ができるのかを考えたいと思います。

現在、フローレンスでは、外国ルーツの親子だけでなく、ひとり親や経済的に厳しい子育て世帯など、社会的に孤立しやすい、支援につながりにくい世帯に対する支援を強化しています。

このような活動はみなさんからの寄付で支えられています。 デジタルソーシャルワークも、ご寄付がなければ続けることはできません。ぜひ、応援をよろしくお願いします。


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