こんにちは。
フローレンスの保育ソーシャルワークチームのスタッフ・山口です。
今、全国の保育園では、今年度からスタートした「こども誰でも通園制度(仮)」のモデル事業実施の動きが進んでいます。
親の就労状況に関わらずこどもを保育所などに預けることができる新しい制度として事業のあり方が検討されているのですが、一方で、
「今いる在園児だけでも様々な家庭があるのに、保育園が今まで以上に多様な家庭を支えるなんてできるの?」
という保育現場での不安の声も多く寄せられています。
~ 例えば、あなたが働く保育園でこんな悩みはありませんか? ~
フローレンスは、今年度、国の見守り強化事業の広報・啓発事業を実施する法人として、全国の保育園が多機能化し今まで以上に多様な家庭を受け入れていく未来を見据え、全国の事業者で既に取り組まれている事例から学びを深めつつ、多くの方にその工夫や思いを伝えるアクションを推進しています。
今回から全3回に分けて、特に多くの方に知っていただきたい、素敵な保育園の取り組みをご紹介します。
初回となる今回は、視察でお伺いした佐賀県にある「日新こども園」さんのご紹介です。
法人と働くスタッフの思い
園を運営する旭福祉会さんの法人理念と園の思いが、WEBサイトにてこのようにまとめられています。
サイトを訪れた様々な家庭から「うちのこどもも入園できますか?」という問い合わせや見学希望が数多く寄せられているとのこと。
また、HPなどを通して関わる家庭に園の思いを知ってもらえることが、職員にとっても、働きやすく安全な環境を作ることにつながっているそうです。
『断らない』。様々な家庭の受け入れ希望に応える姿勢と取り組み
こうした園の思いについて、中島園長は「親と園は、こどもを育てるための、いわば『両輪』の存在。『一緒に育てましょう』、『わたしたちは見放しませんよ』」という思いでやっています。それが、地域での社会福祉法人の役割だと考えています」と話してくれました。
見学に来られるご家庭の中には、発達面に特徴があって集団保育になじみにくい、あるいは日常的な医療的ケアが必要な場合もあるそうです。また最近では、外国籍のご家庭からの入園希望も多くなってきています。そのたびに園では、見学に来た時点から必要に応じて何度も保護者の方と対話を重ねたり、スタッフ間でのミーティングで入園に向けた調整を重ねて、様々なこどもの受け入れを実現してきました。
ご家庭ごとに必要な対応は様々で、職員も常にノウハウを持っているわけではないため、常に園内で抱え込むのではなく、場合によっては学校、病院や医療機関、教育機関などにも広く連携を求めていくことを普段から行っています。
加えて、入園を希望される家庭以外にも「できる気配りはやる」ということで、様々な取り組みを進めています。
その一つが、外国籍のご家庭向けに発行しているリーフレットです。
見学に来た外国籍のご家庭に対しては、結果的に入園につながらなくても、少しでも日本での暮らしの助けになる情報をその場で提供したり、「困ったことがあったらいつでも相談に来てくれていいよ」とリーフレットをお渡したりしているのだそうです。過去には、ある家庭が(自園ではなく)他の園への入園手続きで、言語の壁で戸惑っている際に、「ここには英語ができるスタッフがいるし、園の手続きは詳しいので」と書類の準備などをサポートしたこともあるそうです。
在園中の外国籍の保護者の方には、英文で別途連絡をしたりして、少しでも家庭と園の相互理解が進むようにと工夫しています。
その他、園の隣の施設を活用した「子育てサロン」を定期的に開催して、地域の子育て家庭との接点を作る取り組みも行っています。(追加料金を支払えば園の給食の提供もあります!)
また今年度は、国の補助金を活用した「保育園こども食堂」の取り組みも行い、申し込みのあった地域の家庭への食支援にも挑戦しています。
多様なこどもの育ちを支える『特別支援チーム』
そんな「日新こども園」には、多様なこどもの育ちを支える「特別支援チーム」と呼ばれる職員間の連携の仕組みがあります。
チームは発達支援にかかわる専門知識を持った保育士がリーダーとなり、クラス担任の他、大学から臨床心理士の先生が参加されています。
チームは週2回、それぞれ通常保育を行っている保育室にいたままで、園内の情報共有ミーティングにオンラインで参加して、その場で気になっているこどもの相談をできる仕組みを取っています。常に専門職と保育について話ができる環境を整えることによって、先生方の心理的にも負担が小さくなっているのだそうです。
そもそも、この特別支援チームを園内で作ろうと思われたのは、かねてから「卒園する時に、小学校との連携が十分でない」という問題意識があったからだそうです。
このチームを編成しての保育を継続していく中で、こども一人一人に必要な支援の姿がより明確になり、小学校などへの引き継ぎにおいてもより具体的で個別の事情にあった情報提供ができるようになったとのことです。
後記 ~お話を聞いて感じたこと
今回、お話を伺った飯盛法人本部長は「特別なことをしているつもりはない。一歩気配りをして、できることを考えるというのを続けてきたと思う。ただ同時に、新しい取り組みには公的な補助がつくわけではないので、つねに経営面では厳しさがある」とも話されていました。
施設の視察とインタビューを通して、こども園を通した家庭の支援においては、自分たちだけで解決しようとするよりも、園の外にも仲間の輪を一つずつ広げ続けていくことが大切なのだと感じました。
こうして、園の外で力になってくれる顔見知りが少しずつ増えていくことで、こども園の抱える不安も少しずつ軽くなるのだとも思いました。
フローレンスは、こちらの日新こども園さんをはじめとした、保育園やこども園で日々親子と向き合う保育従事者の方々のご尽力を心からリスペクトするとともに、こうした日本全国の先進的な保育園の取り組みを学び発信することで、保育園やこども園が今まで以上になくてはならない社会インフラとして進化できるよう、行政への働きかけなどを含め様々なアクションを行っていきます。
私たちの「社会を変える」活動は、ともに社会を変えたいと願い、支援してくださる皆さんのお気持ちとご寄付に支えられています。活動を支援してくれる皆さんの賛同やSNS等での発信も、社会を変えることにつながっています。
ぜひ、今後ともフローレンスの活動を応援いただきますよう、よろしくお願いいたします。