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日本版DBS記事アイキャッチ画像 成立間近の「日本版DBS」を徹底解説!フローレンスの政策提言がついに実現へ #STOP子どもの性被害

成立間近の「日本版DBS」を徹底解説!フローレンスの政策提言がついに実現へ #STOP子どもの性被害

#日本版DBS #政策立案・政策提言

ついに、こどもたちを性被害から守る「日本版DBS」が閣議決定

こどもたちを卑劣な性犯罪から守りたいーー。

多くの保護者や教育者の強い願いも虚しく、保育・教育現場で起きる痛ましい事件や事案は後を絶ちません。施設型・訪問型双方で保育事業を展開するフローレンスにとって、こどもたちを狙った性加害は断じて許すことのできない犯罪であり、事業者として常に危機感を抱いてきました。

我々はこどもたちの生活の場に性犯罪者たちを立ち入らせない方法について、以前から調査・提言を続けてきました。
フローレンス会長の駒崎弘樹は、2017年の4月に自身のブログで次のように綴っています。

「たとえ 1000人に1人でも、(保育士の中に)性犯罪者がいた場合、
こどもの人生に与える負の影響は計り知れません。
999のケースで『疑われるのは気持ちの良いものじゃない』と
保育士やボランティアの方々に不快感を与えたとしても、
1つのケースを見つけられ、こどもの人生を救えたら、どちらを優先すべきでしょうか。
僕は後者だと思います」

そこで、同記事の中で提言を行ったのが、「日本版DBS」(こどもたちを性被害から守るため、こどもと接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか確認する制度)の導入の必要性でした。
この制度導入によって、こどもたちだけではなく、保育・教育現場で働く善意の大人たちをも守ることができる、駒崎は当時からそのように主張してきました。

DBSとは、英国内務省が管轄する「Disclosure and Barring Service(ディスクロージャー・アンド・バーリング・サービス)」(前歴開示および前歴者就業制限機構)の略で、仕組みとしては、個人の犯罪履歴などのデータベースを管理、さまざまな職業に就く際に必要な証明書を発行する、というものです。
この英国の仕組みをモデルとした「日本版DBS」法案の導入に向けた議論が進み、2024年3月19日、ついに閣議決定されました!

「日本版DBS」の概要と小児性犯罪の実態

日本版DBSとは

「日本版DBS」法案(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案)とは、学校、保育園等及び認定を受けた学童保育、学習塾等に対し、児童への性暴力を防止するための措置を講じることを義務付ける制度です。

児童への性暴力を防止するための措置とは、次の4つです。

1.教員等の研修
2.児童等との面談/児童等が相談を行いやすくするための措置(相談体制)
3.児童への性暴力の発生が疑われる場合の調査、被害児童の保護・支援
4.特定性犯罪前科の有無の確認

特に4について、性犯罪前科があるとき、教育、保育等の業務に従事させない等の措置を講じなければならないと決められています。

この法案が成立すれば、性犯罪を起こしたらこどもに接する職業に就きづらくなり、性犯罪の抑止力に繋がります。

子どもに忍び寄る手のイメージ

民間の教育・保育等事業者も対象に

日本版DBSは、学校や保育園だけでなく、塾や学童保育、ベビーシッターなど、民間の教育・保育等の事業者も対象となります。民間事業者は義務の対象事業者と同等の措置を実施する体制が確保されているものとして「認定」を受けた場合に、学校、保育園等と同等の義務を負うことになります。
民間事業者は「認定」ではありますが、認定事業者が公表されるため、利用者(保護者等)に選択してもらいやすくなります。認定を取得していない事業者は利用してもらえなくなる可能性が高いので、多くの事業者が認定取得を目指すと考えられます。

日本版DBSについて説明スライド
対象とする事業
【考え方】事業の性質が、以下の要件を満たすものを対象範囲とする。
①支配性(こどもを指導するなどし、非対称の力関係がある中で支配的・優位的立場に立つこと)
②継続性(時間単位のものを含めてこどもと生活を共にするなどして、こどもに対して継続的に密接な人間関係を持つこと)
③閉鎖性(親等の監視が届かない状況の下で預かり、養護等するものであり、他者の目に触れにくい状況を作り出すことが容易であること)
【対象事業の例】
保育園、学校は義務
塾、学童保育、ベビーシッターは認定
対象外の例はキャンプのボランティア

日本版DBS、なぜ必要?小児性犯罪の実態

12歳以下のこどもに対する性犯罪は年間約1,000件(※1)。なんと1日に2件以上起きている計算です。
しかし、小児性犯罪はその被害が「明るみに出にくい」犯罪です。被害に遭った幼いこどもは自分が何をされたか自覚しづらく、問題行為が周囲に発覚しにくい現状があります。また被害を自覚したとしても、周囲への相談や被害の訴えをためらってしまうケースも多いと考えられます。
年間1,000件は氷山の一角。実態としてはそれを遥かに上回る被害が想定されます。

日本版DBSについて説明スライド
12歳以下のこどもに対する性犯罪は年間約1,000件
実態としてはそれを遥かに上回る被害が想定される
・性被害に遭った時に、すぐにそのことを「被害」だと認識できたか。「いいえ」52%
・性被害について警察に相談したことがあるか。「いいえ」84%

そして性犯罪は、加害者の7〜8割が顔見知りであるとの調査結果があります。特にこどもは、親族や、教師・コーチ、施設職員等、身近な人物からの被害を受けることが多いとされます。

日本版DBSについて説明スライド
小児性被害の危険は身近に潜んでいる
・性犯罪の加害者との関係「顔見知り」7から8割
・公立の幼稚園、小中高校で性犯罪・性暴力等により懲戒処分等を受けた者教員は、令和4年度は年間242人


こどもが本来安心して過ごせるはずの場所である、学校、保育園はもちろんのこと、学童保育、スポーツクラブ、学習塾、ベビーシッターなどが卑劣な犯罪の舞台となるケースが少なくないのです(※2)。
公立の小中高校に限っても、年間200名以上の教員がわいせつ行為により処分を受けています(※3) 。

(※1) 警察庁『平成30年の刑法犯に関する統計資料』(令和元年8月):https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/H30/h30keihouhantoukeisiryou.pdf
(※2)内閣府『性犯罪・性暴力対策の強化の方針』(令和2年6月):https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/sakutei-suisin/kaigi34/pdf/s1-5.pdf
(※3)文部科学省『令和3年度公立学校教職員の人事行政状況調査について』(令和5年1月):https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1411820_00006.htm

「日本版DBS」の必要性を訴え続けてきたフローレンスの政策提言活動の歩み

わたしたちフローレンスは国内のこども・子育ての社会課題解決に取り組む認定NPO法人として、この課題にいち早く取り組み、2017年から日本版DBSの制度創設を提言してきました。

これまでのフローレンスのDBS提言活動について時系列にまとめた図

2020年6月、ベビーシッターの連続わいせつ事件を受けソーシャルアクション開始

「性犯罪者規制」(=日本版DBS)の必要性が世の中に広まるきっかけになったのは、2020年6月にベビーシッターのマッチングサービスに登録していたシッターが、小児わいせつの疑いで逮捕された事件です。被害者は5〜11歳の男児計20人、被害があった期間は2015年からの4年4カ月間にわたりました。

フローレンスではこの事件を受けて再度、こどもたちを性被害に遭わせない仕組みづくりが必要と訴えました。この時の「#保育教育現場の性犯罪をゼロに」との訴えは大きな反響を呼びました。

2020年7月に行った記者会見では、性犯罪者を教育現場に立ち入らせない制度として、「日本版DBS」創設の必要性を改めて主張しました。
この会見の3日後には森法務大臣(当時)に、そして2020年7月末には橋本内閣府特命担当大臣(当時)に「日本版DBS」創設を求める要望書と21,000筆以上集まった署名をお渡ししました。

橋本聖子内閣府特命担当大臣(当時)に「日本版DBS」創出を求め、要望書と署名を渡して直接陳情した写真

こども家庭庁の目玉施策として、「日本版DBS」制度化への議論が加速

「日本版DBS」制度化へ向けたアクションが実を結び始めたのは2022年6月のことでした。
岸田内閣のもと閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2022」に、「教育・保育施設等において働く際に性犯罪歴等についての証明を求める仕組み(日本版DBS)の導入」(骨太p. 13)が明記されました。
そして同年8月、令和5年度(2023年度)こども家庭庁の予算概算要求に「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組み(日本版DBS)の導入に向けた検討【新規】」が加わりました。これによって2023年4月に新設されるこども家庭庁において、「日本版DBS」は重要な施策であることが位置づけられたのです。

対象をこどもと関わるすべての仕事へ!署名を集め大臣へ提出

日本版DBSの導入に向けた検討が大詰めを迎えていた2023年8月、国は日本版DBSの対象施設を保育園・学校などに限定しようとしているという報道がなされました。民間の塾やスポーツクラブなどの習い事などでもこどもの性被害が起きているのに、これではこどもたちを真に性犯罪から守ることができません。

そこでフローレンスは、8月10日に緊急署名活動をChange.orgで開始。
なんと8万筆超の署名が集まり、9月1日、こども家庭庁の小倉こども政策担当大臣へ署名を提出。日本版DBSの対象を塾や習い事、無償ボランティアも含めた「こどもと関わる仕事すべて」とすることを強く要望しました。

小倉こども政策担当大臣へ署名を提出

日本版DBS導入を求める声

署名に参加してくださった方を対象に日本版DBS導入に向けた思いをアンケート形式で伺ったところ、8月25日からの6日間で448件もの声が寄せられました。

わたしが幼い頃性被害を受けた加害者は塾講師でした。親にもなかなか言えず、異常であることからも目を逸らし、長く苦しむことになりました。こどもと関わるすべての大人は、大人として責任を持ってこどもの健全な育成にあたるべきです。職業選択の自由以前に、もっと大事なことではないでしょうか。こどもを守れるのは、大人しかいません。

日本版DBSの導入により不適切な人をこどもに関わらせない!という面もありますが、無実の人に疑惑の目を向けずに済むというメリットもあると思います。
前科のある人(再犯の確率も高い)の職業の自由より、罪のない人の職業選択の自由を保証して欲しいです。何より、こどもの安心安全より優先されるものってなんですか?

加害者の職業選択の自由とこどもの人権や未来を天秤にかけないでください。

幼いこどもは守るべき存在。親だけでなく、社会で守るべき存在。

フローレンスのソーシャルアクションにご協力くださった皆さんのお力もあり、日本にもようやくDBS制度が導入されようとしています。
ただこどもを性犯罪に遭わせない社会づくり、そしてこどもと接する現場で働く善意の大人たちを守る仕組みづくりは始まったばかり。これからもフローレンスは、真にこどもを守る制度となるよう、国の動きを注視し、政策提言を続けていきます。

 フローレンスについて

こどもたちのために、日本を変える。フローレンスは未来を担うこどもたちを社会で育むために、事業開発、政策提言、文化創造の3つの軸で、社会課題解決と価値創造をおこなう国内最大規模のNPOです。

日本初の訪問型・共済型病児保育事業団体として2004年に設立し、ひとり親支援とこどもの貧困防止、こどもの虐待や親子の孤立防止、障害児家庭支援など、日本のこども・子育ての領域で総合的な活動をおこなっています。

待機児童問題解決のための「おうち保育園」モデルが、2015年度に「小規模認可保育所」として国策化されたほか、障害児に専門的に長時間保育を提供する日本初の「フローレンスの障害児保育・支援」や、子どもの虐待問題解決のため「フローレンスのにんしん相談・赤ちゃん縁組」、子どもの貧困を解決する「こども宅食」などの取り組みを全国で加速しています。

たくさんの仲間と共に、社会に「新しいあたりまえ」をつくるNPO法人です。

フローレンスの団体概要・受賞歴・書籍

フローレンスの沿革

社会を変えるソーシャルアクション・政策提言活動を皆さんとともに

日本のこども・子育ての課題を支援事業と政策提言によって解決するフローレンスは、これからも親子・子育てのリアルを政治や社会に届けていきます。日本版DBSだけでなく、こどもたちや子育ての環境に「新しいあたりまえ」をつくるためのソーシャルアクションを続けます。
フローレンスのこうした社会的アクションや政策提言活動は、皆さんからのご寄付によって支えられています。

※フローレンスは児童福祉支援活動の分野において東京都で最も早く「認定」を受けた認定NPO法人のひとつです。フローレンスへのご寄付は寄付金控除の対象となります。


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