ついに全国の通園バス「置き去り防止装置」設置率100%へ
2022年9月5日、静岡県牧之原市の認定こども園で、3歳の女の子が送迎バス内に5時間置き去りにされ、熱中症で亡くなりました。政府はこれまでも「通園バス置き去り死」に対して事務連絡の発出など対策を行ってきましたが、抜本的な対策とはならず、悲劇が繰り返されてきました。
もう二度と痛ましい事件が繰り返されないよう、こどもたちを守る仕組みをつくりたい。
静岡県の事件を受け、フローレンスは通園バスへの「置き去り防止装置」設置義務化と導入支援等を求め、様々な提言活動を展開してきました。
そしてついに、すべての幼稚園・保育園で我々が目指してきた「#もう子どもを置き去りにしない」が実現しようとしています。
先日こども家庭庁は、通園バスに義務付けている「置き去り防止装置(安全装置)」の設置状況が、2024年3月31日時点で100%に達する見込みと明らかにしました。
これにより全国で「通園バス置き去り死」を未然に阻止し、こどもの命が失われる痛ましい事故を防ぐことが可能になります。
ヒューマンエラーを防ぐ仕組みをーーフローレンスが訴えてきた「置き去り防止装置」の必要性
必要なのは、「お願い」ではなく「仕組み」
冒頭で取り上げた静岡県の事件のような、「通園バス置き去り死」は短期間に繰り返し起こっています。前年の2021年7月には、福岡県中間市の保育園で、5歳児が炎天下、送迎バス内に約9時間置き去りにされ、熱中症で亡くなったばかりでした。
厚生労働省は2021年8月、送迎バスを運行する場合、こどもの乗降時の座席や人数の確認を実施すること等、安全管理を徹底するよう求める事務連絡を都道府県に発出しました。
しかし、これは単に「お願いの通知」を出しただけでした。実行力はなく、悲しい事件は再発してしまいました。「気をつけよう」と呼びかけるだけでは防げなかったのです。
大半の保育園・幼稚園は日々懸命に安全管理に取り組んでいますが、人間の注意力には限界があり、ミスは起こり得ます。だからこそ、テクノロジーを活用して、人間のミスを防いでいく必要があるのではないかと我々は考えました。
「置き去り防止装置」設置に向けたフローレンスの提言活動
フローレンス会長の駒崎は、2022年9月の静岡県の事件報道直後、以下のブログを発信。他の保育団体と連携し、議員や官僚の方々に政策提言を始めました。
空になった水筒が我々に問いかけるもの ー政府よ、置き去り防止装置の設置を義務付けせよ
同年9月12日には、衆議院で行われた「園児置き去り事故の再発防止に向けた国対ヒアリング」に出席。内閣府、厚労省らに、通園バス運営事業者に対して「置き去り防止措置」の設置を義務化するとともに、導入のための補助金の創設も重ねて要望しました。
同月14日に行われた、保育所や認定こども園などの団体の関係者との意見交換の場では、会長の駒崎が小倉少子化担当大臣にも直接要望。小倉大臣からは10月中に再発防止策を取りまとめるとの力強い言及がありました。
さらに同月12日、フローレンスは「#もう子どもを置き去りにしない」を合言葉に、「置き去り防止装置」の導入義務化・導入支援等を求める署名活動を開始。たった2週間で全国4万人以上の方から署名が集まりました。
署名ページ「もう子どもを「通園バスで置き去り死」させない。「置き去り防止装置」義務化と導入支援を求めます!」
その後4万超の署名を小倉こども政策担当大臣に直接提出。
小倉大臣からは、以下のようなお話をいただきました。
たった2週間で42,000名を超える方の署名が集まったということは、それだけこどもの命・安全に不安を感じている方が多いということだと思います。大変「大きな声」として、真剣に受け止めたい。
現在行われている関係府省庁会議でも、義務化を含めて幅広く検討している。財政支援についても、しっかり検討していきたい。今後も議論を加速していけるように、スピード感を持って、対応していきたい。
署名提出からわずか一日、2022年9月29日には小倉大臣が「置き去り防止装置」の義務化とバスの改修費用に必要な財政措置等を含め、保育所などへの具体的な支援策をまとめるよう指示したという報道がありました。
その後2023年4月1日から「置き去り防止装置」の義務化と財政支援が開始。そしてついに2024年現在、全国の全ての通園バスに設置されるに至りました。
ヒューマンエラーで、こどもの命が失われるようなことは二度と繰り返さない。
皆さんの強い思いが政府を動かし、全てのバスへ「置き去り防止装置」導入に至ったのは間違いありません。
署名に賛同いただいた皆さん、SNSなどでこの署名活動を多くの方に知らせてくださった皆さん、フローレンスの記事をシェアしてくださった皆さん、寄付など様々なアクションで活動を支えてくださった皆さん。本当にありがとうございました。
「通園バス置き去り防止装置」の提言を行ってきた、代表室マネージャー 米田有希のコメント
2022年の夏に悲しい置き去り事故が発生してから約1年半。ようやく置き去り防止装置の通園バス設置率が100%になるという発表を聞いて安堵しました。今年の夏からは、暑いバス車内に置き去りにされるこどもが1人も出ないことを心から願います。
この度のフローレンスの提言活動を署名等で応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。
亡くなってしまった女の子の父親が、インタビューで「安全装置の義務化はすごくいいことだと思いますが、行政を動かすために千奈は生まれてきたわけではないので、本当に悔しいです。」とおっしゃっていました。苦しい胸のうちがひしひしと伝わってくると同時に、これ以上こんな悲しい事故を起こしてはいけないと思いました。
こどもの命を奪うものは、不注意による事故だったり、虐待だったりします。何かが起きてから動くのがあたりまえになっていますが、どうやって「予防」するかを常々考えて何かが起きる前に政策提言をしていきたいと思います。置き去りに関して言えば、通園バスだけでなく一般車両でも発生しているので、フローレンスは一般車両にも置き去り防止装置の設置が必要と考えて政策提言を進めています。
こどもや親子の笑顔を守るために、これからも政策提言を続けていきますので、引き続き応援よろしくお願いいたします。
社会を変えるソーシャルアクション・政策提言活動を皆さんとともに
日本のこども・子育ての課題を支援事業と政策提言によって解決するフローレンスは、これからも親子・子育てのリアルを政治や社会に届け、こどもたちや子育ての環境に「新しいあたりまえ」をつくるためのソーシャルアクションを続けます。
通園バスだけでなく、こどもたちが通う施設の安全がしっかり守られるよう、提言を行ってまいります。
ぜひ、これからもフローレンスの活動を応援いただきますよう、よろしくお願いいたします。