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「社会全体で医療的ケア児家庭を支える」 障害福祉サービス等報酬で前向きな改定が行われました!

「社会全体で医療的ケア児家庭を支える」 障害福祉サービス等報酬で前向きな改定が行われました!

#障害児・医療的ケア児家庭支援 #政策立案・政策提言 #ソーシャルアクション

令和6年度以降の障害福祉サービスの報酬が決定し、医療的ケア児を中心としたご家庭への支援が大きく拡充されました!

厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の基本的な方向性について」

フローレンスは2014年に日本で初めて医療的ケア児を専門に長時間お預かりする「障害児保育園ヘレン」を立ち上げ、障害児保育・家庭支援事業に取り組んできました。

以来、事業を通じて医療的ケア児家庭の声を聞きながら、全国医療的ケア児者支援協議会や「永田町こども未来会議」のメンバーとともに厚生労働省やこども家庭庁へ提言しており、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定で提言内容が実現しました。

今回は、改定のなかでも特に医療的ケア児家庭を取り巻く環境の改善につながる点を4つ紹介します。

ポイント①:通所施設でも医療的ケア児を長時間預かれるように!保護者の就労につながることを期待

医療的ケア児家庭を取り巻く大きな課題の一つが、「保護者が働きたくても働けないこと」です。

一般的に、保護者が就労する場合にはこどもは保育所に通います。しかし、胃ろうや呼吸器などのデバイスを24時間装着している医療的ケア児や重い障害のある重症心身障害児の通える保育園というのは非常に稀です。

そうしたお子さんが通うのが児童発達支援・放課後等デイサービス(通称:障害児通所支援)ですが、障害児通所支援では保護者の仕事終わりまで長時間の預かりはできませんでした障害児通所支援の役割は「療育」であり、保育園のような「就労支援」ではないためです。数時間程度の療育・発達支援が終わったら、その後こどもを預かってもらえる場所がなく、就労をしたくてもその選択をすることができませんでした。
※個々の発達の状態や特性に合わせて、現在の困りごとを解決したり、将来を見据え自立や社会参画に向けてサポートすること

しかし、今回の報酬改定によって、障害児通所施設(児童発達支援、放課後等デイサービス)の役割として「預かりニーズへの対応」が明記されました。それによって、利用児童本人の療育・発達支援だけではなく、就労など家庭全体のニーズに応じた「預かり」が可能になり、それに応じた事業者の収入も確保しやすくなります。

「障害のある子を育てる親でも、キャリアを諦めず働き続けられる」社会に向けて、少しずつ環境が整備されてきています。

ポイント②:障害児通所施設の定員が緩和され、「預け先が見つからない」問題が一歩改善へ!

障害児を預かる児童発達支援事業所や放課後等デイサービスですが、すべての障害児を受け入れるためには全く数が足りていません。

その要因の一つは、「定員5名の壁」と言われる問題です。

実は、障害児通所支援施設で重い障害のある子(重症心身障害児)を受け入れる場合、定員を5名にしたときが基本報酬が一番高く設定されており、それ以上の人数を受け入れると報酬が下がる仕組みになっています。この仕組みがあることにより、本来であればより多くのこどもを受け入れられる施設でも、利用人数を5人以内に調整してしまう場合があります。専門性の高いスタッフが揃い、設備や配置的に5人よりも多くお子さんを預かれるキャパシティがある場合でも、預かり定員を5人にする制度上のインセンティブがあるのは、とてももったいないことでした。

報酬設定の制約を解消し、子どもたちの受け入れ先を増やせるようにしてほしい!と提言を続けた結果、今回の報酬改定によって「定員7名まで」増やしても基本報酬が下がらない仕組みになりました

1つの施設で受け入れ定員を増やしやすくなったことにより、「こどもの預け先が見つからない」問題が一歩改善に向かいます!

ポイント③:荷物が多くケアも必要な医療的ケア児の送迎に補助がつき、一歩前進!

医療的ケア児を育てる家族を悩ませるもう一つの問題が、「こどもの預け先が遠すぎる問題」です。

障害の重い子を預ける施設の数は限られているため、運良く預け先が見つかったとしても、家から遠い施設を利用せざるを得ない場合があります。一方で、都市部では車を持っていないご家庭も多く、また就労をしているご家庭の場合、朝と夜に遠い距離を毎日送迎することは現実的ではありません。
そのため施設側としては、ご家庭までの送迎を実施したいのですが、そこに立ちはだかるのがコストの問題です

送迎距離が長ければ長いほどガソリン代がかかりますし、医療的ケア児の場合、ドライバーの他にお子さんのケアをする看護師の同乗が必要なためさらにコストが増えます。しかし国の補助額はそもそもの額が少ない上に、距離に応じた加算もなく、施設から遠い距離に住む医療的ケア児を送迎しようとすれば、ほとんど事業者の持ち出しになってしまいます。そのため利用できるご家庭のエリアを限定」せざるを得ない施設も多く、家から遠いことを理由に施設を利用できないご家庭もたくさんいるのです。

しかし、今回の報酬改定によって、送迎コストに対する国からの補助が厚くなりました!

まだ補助額に改善の余地はありますが、今後、施設の負担が減り、距離が遠いご家庭でも、障害児通所支援を利用できるようになる第一歩につながることを期待しています。

ポイント④:居宅と通所の療育、どちらかしか選べない問題が改善!

医療的ケア児や、重症心身障害児を育てる家庭の課題として、「家か施設のどちらかでしか療育を受けられない問題」もあります。

「居宅訪問型児童発達支援」は、家で療育が受けられて、「通所型児童発達支援」は、地域にある施設で療育が受けられます。

訪問保育の様子

医療的ケア児や重症心身障害児は、外出による疲れで容態が悪化することもあるので、自宅で療育を受けられるのはとても良いことです。一方で、地域の施設で療育を受ける通所型児童発達支援では、同じ年代の子と交流し、幅広い遊びや刺激に触れられるメリットがあります。

どちらも使えたらいいのに、これまでは、居宅訪問型と通所型を同時に使うことは原則認められていませんでした。容態を優先するか、こどもの育ちを取るか…というトレードオフを迫られていたんです。

そのルールが、今回緩和されて、両方の支援を組み合わせて使うことができるようになりました!

療育を受けたいご家庭がお子さんの体調の波に合わせて、使う支援を選ぶことができる環境に一歩近づきました!

さいごに

この他にも、

・医療的ケア児の入浴支援(家で保護者だけで対応することはとても大変だったので、意義ある改定です)
・オンラインでの相談援助の推進(移動が大変な医療的ケア児親子にとって助かります!)
・きょうだいも相談援助等の対象であることを明確化

など、こどもの療育・発達支援だけでなく、家庭全体に対する支援が強化されました!

社会全体で医療的ケア児家庭を支えていく、という想いがこもった報酬改定でした。

重度障害・医療的ケア児家庭を支援するための制度や施策は、まだまだ改善が必要です。引き続き医療的ケア児家庭の声を聞きながら、他の事業者とともに提言活動に取り組んでいきます。


フローレンスのこうしたソーシャルアクションや政策提言活動は、皆さんからのご寄付によって支えられています。

いつも応援してくださる寄付者の皆さん、参加・協働してくださっている多くの皆さんに心から御礼申し上げます。

引き続きご支援・応援をよろしくお願いします。


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