12月は寄付月間です。
フローレンスは、皆さんからいただくご寄付を原資に、ひとり親支援とこどもの貧困防止、こどもの虐待や親子の孤立防止、障害児家庭支援など、日本のこども・子育ての領域で総合的な活動を行っている認定NPO法人です。
歯止めの聞かない少子高齢化、「子育て罰」と揶揄される厳しい子育て環境、障害児や家庭への足りない支援、日々流れてくるこどもの虐待の痛ましいニュース……こんな日本を変えたいと、想いを同じくしてご寄付くださる皆さんに、フローレンスの活動をお伝えする「寄付者限定メールニュース」を月に1回お送りしています。
2024年の寄付月間は、「寄付者限定メールニュース」の特集記事の一部を抜粋・編集してシリーズでお届けします!
保育園130年の歴史が変わる「こども誰でも通園制度」とは
核家族化が進む現代では、近くに頼れる親戚や知り合いがなく、孤独な育児に悩む家庭が増えています。2022年に、フローレンスが全国の未就学児の保護者2,000人に対して行ったアンケート調査では、保育園や幼稚園に預けていない家庭のほうが、子育てで孤独を感じやすいことが分かりました。孤独な子育ては虐待につながるリスクがあると言われています。
しかし、現在の保育制度では、一定の就労要件などを満たしていないと、希望しても保育園に定期的に預けることはできません。
フローレンスの保育園で一時保育を利用されたご家庭からは、こんな悲痛な声も寄せられています。
1歳と2歳の娘、5歳の息子がいます。夫は平日深夜まで仕事です。去年は就労していなかったので保育園に入れられず、1日中3人をひとりで見ておりましたが、気が狂いそうで、窓から飛び降りたい日が何日もありました。
保育園を、すべての親子にとってのセーフティーネットに
フローレンスは、運営する保育園で、辛い孤独な子育てに苦しむ親子を定期的なお預かりで支える一方で、アンケート結果を記者会見で発表して社会課題として提起するとともに、希望するすべての親子がニーズにあわせて保育園を利用できるよう、「みんなの保育園」構想を国に提言してきました。
2023年6月、状況は大きく前進します。国が「異次元の少子化対策」として、「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設を表明し、2023年7月からは国のモデル事業がスタートしたのです。
今号では、このモデル事業の実施事業者として定期的なお預かりを受け入れた「おうち保育園なかの大和」で園長を務める北中と事務局スタッフ磯崎のインタビューをお届けします。
フローレンス スタッフインタビュー
北中菜津子
おうち保育園なかの大和 園長(※2024年3月時点)
中野区にある大和町は、都心に近い場所にありながら、地域交流が盛んな住宅街。自治体とも良好な関係を築いてきました。
磯崎雄大
みらいの保育園事業部
保育園事業の事務局スタッフとして運営を支えるとともに、「こども誰でも通園制度」のモデル事業推進および課題提起に尽力。
趣味は茶道。
Q. フローレンスがモデル事業を受託した経緯を教えて下さい。
磯崎
2023年に「こども誰でも通園制度(仮称)」のモデル事業の公募があり、フローレンスのいくつかの園で応募した結果、宮城県仙台市と東京都中野区、東京都渋谷区の3園が選ばれ、同年7月から事業を実施していきました。
フローレンスは、保育園や幼稚園に通っていない未就園児、いわゆる「無園児」に保育を提供する制度の実現を国に訴える一方で、運営する保育園の空き枠を利用して、モデル事業を受託する前から無園児の定期的なお預かりを実践していました。そこで得た知見も活かし、モデル事業をスタートして以降、約半年にわたって親御さんの就労に関わらない定期的なお預かりを実施しました。
こどもの特性を知り家庭に寄り添うには、定期的なお預かりが必要
Q.具体的に、「無園児」のご家庭では、どんな困り事を抱えているのでしょうか?
北中
今の制度では、週に4日以上働かないと保育園に預けることができません。でも、こどもの年齢などに合わせて週1、2日でも働きたいという人もいますし、企業側にもそのようなニーズがあります。
また、専業主婦だったり、育児休業中だったとしても、四六時中こどもと一緒にいて、頼れる人もなくひとりで育児をしなければならない辛さがあります。
Q. お預かりしたお子さんやご家庭の様子はいかがでしたか?
北中
詳細はお伝えできませんが、親御さんにとっては、不定期のお預かりではなく、定期的に長時間お預かりしたことでの安心感は大いにあったと思います。また、わたしたち保育士も、お子さんの成長を実感しながら寄り添う保育をすることができました。
こどもの安全面、健康面へしっかりと配慮するならば、保育の空き枠ごとに複数のお子さんを細切れにお預かりするのは現実的ではありません。今回も、週2日の頻度であり、定期的に利用してもらえたことで、こどもの特性を早く知ることができました。
保育園が、地域の子育て家庭にとってのハブになる
Q. 定期的に預かる仕組みには、どんなよい側面があるのでしょうか?
磯崎
地域活動が盛んだったとしても、自分で地域とのつながりを作るのは難しいものです。わたし自身、保育園に預けずに育休をとっていた時は、しんどい思いをしました。でも、保育園を定期的に利用することで、園のイベント等で出会ったご家族とつながりができる可能性があります。定期的なお預かりが、親子を地域とつなぐ良い制度になりえるのです。
北中
この制度によって、保育園が誰でもこどもを預けられる場所となり、保育園の先生が近所のおばさん、近所のおじさんのような存在、相談できる存在になっていけると良いと思います。都心部においては、特に意義のある事業となるでしょう。
Q.フローレンスの保育園では、日々どんなことに気をつけて保育をしていますか?
北中
フローレンスのおうち保育園では、0歳から2歳までのお子さんを少人数で保育しています。その中で、保護者の支援をとても大切にしています。保護者が心身ともに健康でなければ、家庭内が健全にいきません。子育て歴が浅い中で知らないこともたくさんあるので、保育士を頼りにしてもらって、最善策を一緒に考えていける存在でありたいと思っています。そういう意味でも、0歳から保育園に預けるメリットは大いにあると思います。
これからの「保育園」の可能性
Q.待機児童問題が解消に向かって、保育園のあり方が変わってきていることは、どう受け止めていますか?
磯崎
今、保育園はこどもをお預かりするだけでなく、様々な役割を担える場所になってきています。フローレンスでも、こどもが保育士のリアルな仕事を体験する「こどもインターン」や保育園の場を利用した「保育園こども食堂」、これからパパになる男性が、保育園で育児を体験できる「パパトレ」研修などを行っています。
これからは、保育者たちのプロフェッショナルな部分を活かしつつ、社会のニーズにどうマッチさせていくかが必要です。それらがとても意義のある、社会的な課題に直接的にアプローチできる活動になるだろうと思うと、ワクワクしています。
北中
今、保育園に求められることが増えていますが、それ自体はとても必要なことだなと思っています。なにか新しい親子支援を一から始めるよりも、保育園に新たな機能を加えていくほうが効果的でしょう。その一方で、不適切保育などが報道で大きくとりあげられてしまうことで、保育士の危機管理のあり方が問われるとともに、保育士へのプレッシャーが大きくなっているなとは感じています。
保育士は、肉体も精神も使う重労働ですが、職業としてそれに見合う社会的評価が得られていません。保育を取り巻く環境が変わっていく中で、保育園や保育士に求められていることの比重が大きくなっているので、労働条件の改善や、余裕をもって前向きに保育ができる環境づくりなども同時に進めていきたいと思います。
(インタビューここまで)
待機児童数が増え続けていた2010年、フローレンスは定員20人以下の小規模な「おうち保育園」を開園しました。このモデルが「小規模認可保育所」として国の補助事業となり、事業者も増え、2019年時点では全国で4,200箇所に急増、待機児童問題解消に大きな役目を果たしました。
また、保育ソーシャルワーカーを増員し、保育の現場で困りごとや育児に不安を抱えている家庭を早期に発見し、必要な支援につなげる役割を果たしてきました。
その後、待機児童数は急速に減り続け、2023年にはピーク時の約1割にまで減っています。
フローレンスは運営する保育園を「こどもと親のための包括的福祉拠点」として捉え、在園児はもちろん地域の親子の笑顔のためにも様々な機能を備えていきたいと考え、活動していくとともに、新たな制度がよりよいものになるよう引き続き提言をおこなっていきます。
このような活動を継続して行うことができるのは、寄付者の皆さんのご支援があるからです。引き続きフローレンスの活動の応援・ご支援をよろしくお願いします。
フローレンスの活動に賛同してご寄付くださった方の声
虐待されて命を落としてしまうニュースなど見たりしたら悲しくなります。保育園、学校、近所の方などが、おかしい!と思ったらすぐに保護して安全な心休まる場所を提供してほしいです。
こどもが産まれ、3歳になり今は保育園に行っていますが、子育ては24時間、お母さんも共倒れしては大変です。少しでも息抜きや周りに助けを求められる環境があればと思います。
今は経済的に大変な家庭も多いかと思うので、こどもたちも毎日栄養を摂ってほしいですし、寄付を色々な事に役立ててほしいです。
わたしは30代の2歳と0歳の娘の母親です。夫の仕事の関係で、長女を保育園に預けることができない日は、二人の育児に奮闘しています。我が子は可愛いし、わたしの宝物です。しかし、二人が泣き止まず、手が付けれずどうしようもない時、心に闇を抱える瞬間があります。
虐待は、理性があるから抑えられているものであって、誰でもやりかねない」とわたしは思います。どんなにこどもたちが可愛く愛おしくても、手が出てしまいそうになることがある。一瞬の衝動的な大人の理性が効かない瞬間で、虐待は起きるんだと思います。
そして、新生児の遺棄に関して。もうこれ以上この世になにも罪のないこどもたちが辛い思いをしないよう、そして、なんらかの問題を抱えて自分たちのこどもを持てないご夫婦の希望になるように、わたしはこの気持ちを寄附金に変えることにしました。どうぞ、有益に使っていただけると幸いです。何卒よろしくお願いいたします。
わたしにも4歳の子どもがいますが、保育園等周りの力をたくさん借りながらなんとか子育てしてます。虐待はもちろんいけないことですが周りに頼れずに追い込まれてしまう方もいるのではないかと最近思うようになりました。少ない金額で申し訳ないのですがこどもたちやご家族が安心して生活できるような社会になって欲しいです。