DX×障害者スタッフ活躍の取り組みが「JAPAN HR DX AWARDS FINAL」で優秀賞受賞!!
フローレンスでは、障害者雇用と、デジタル技術を用いた障害者活躍のための取り組みを7年継続してきました。このほどこの取り組みが、「JAPAN HR DX AWARDS 2024」(JAPAN HR DX AWARDS実行委員会主催)において優秀賞を受賞しました!
JAPAN HR DX AWARDSは、デジタル技術やAIを活用し、変化に対応し続ける柔軟かつ強固な組織づくりに取り組む企業・団体を表彰するアワードです。
去る2月20日、東京渋谷のSHIDAXカルチャーホールにおいて最終プレゼンと授賞式が開かれました。フローレンスを代表して、スタッフの和田直美が登壇。「障害者雇用の課題を解決して、全社員にやさしいDX」と題したプレゼンを行いました。


授賞式では「多様性の促進とインクルーシブな組織づくり」部門で優秀賞をいただくことができました。この受賞を記念して、フローレンスが取り組んできた障害者雇用が、DXの視点からどのように進んできたのかをご紹介します。
誰もが仕事で成果を出せる社会を、わたしたちからつくろう

フローレンスでは、2014年に開園した「障害児保育園ヘレン」を出発点に10年間、障害児・医療的ケア児とそのご家族への支援を続けてきました。しかしこども時代だけでなく、その後、特別支援学校を卒業したあとも、誰もが自由な選択肢を持てる社会をつくることが、わたしたちの最終目標である!そんな思いから、障害者雇用と新しい活躍のしくみづくりを2018年7月にスタートしました。
以来7年間、特別支援学校から入社した社員たちのチーム、通称「オペレーションズ」が、組織の中で日々活躍しています。「オペレーションズ」メンバーは現在9名。今年の4月にも1名新卒スタッフを迎え、総勢10名の大きなチームになります。
彼らの仕事はフローレンスの総務業務に加え、組織内の各事業部から依頼された請負型の業務があります。案件は毎日発生する上に数も多く、急な対応や臨機応変な対応も求められます。障害のあるスタッフには対応が難しいのでは?そんな風に思われるかもしれません。
そこで白羽の矢が立ったのがデジタルツールでした。フローレンスはソーシャルセクターでありながら、デジタル活用に積極的なことが強みです。例えば、病児保育で突然のSOSに誰がどのように駆けつけるか、バラバラの園や施設で働くスタッフにどのように通知を届けるか……。多くの課題に当たる度に、新しいツールを使って試行錯誤を続けてきました。ついには孤独孤立対策として、生成AIを活用した相談サービス「おやこよりそいチャット」まで開発してしまったほどです。
だから自分の「得意」を活かせる組織づくりにも「絶対にデジタルが役に立つ」という確信がありました。まさに十人十色の「オペレーションズ」スタッフが、それぞれの得意を生かして、あたりまえに成果を出せるしくみづくりへの挑戦が始まったのです。
「仕事がない」「仕事を選べない」「コミュニケーションが難しい」3大課題にデジタルツールで挑んだ7年間
それでは、ここからは「どうやって」「どんな成果を出したのか」を具体的に解説していきます!
障害のあるスタッフが仕事をしていく上での三大課題があります。しかし3点それぞれに、解決が得意なデジタルツールが後押ししてくれました。
障害のあるスタッフが直面する三大課題
①担当できる仕事がない
②得意を生かせる仕事を選べない
③コミュニケーションを取ることが苦手で質問ができない
①担当できる仕事がない→「kintone」アプリの活用
障害のあるスタッフに任せられる仕事がない。それでは障害者雇用は形骸化してしまいます。フローレンスではおよそ30以上の事業、サービスがあり、それを800名のスタッフで担当しています。特に保育園ではお子さんの安全が一番の優先事項。事務仕事は「その後」になってしまいがちです。
そこで登場したのがkintoneの業務アプリ。各事業、サービスの現場から溢れている業務をまずは集約し、見える化しました。集まった業務の多くは経理処理業務や事務局への申請業務、ファイリングや封入・郵送作業……。運営業務を優先させる日々の中でスタックしがちな作業がズラリ!
このkintoneアプリを通じて全社じゅうから集まった業務を、「オペレーションズ」が分担。「社内請負人」として持つことができるようにしました。


天野祐作
依頼の多くは事務作業ですが、最近はオペレーションズに頼れる!と全社が理解しているので、仕事の幅が増えてきました。社内研修用の動画の編集作業を手伝ったり、園のお子さんたちの工作キットを下ごしらえしたり……。
特に保育園で先生たちが残業でこなしてきた作業を請け負えることは、先生たちの負担軽減になるので、組織全体として嬉しいことですよね
(オペレーションズチーム マネージャー)
②得意を生かせる仕事が選べない→「Teachme Biz」で完全マニュアル化
「得意」と「苦手」の振り幅が大きい傾向にある「オペレーションズ」スタッフ。いくら仕事の依頼がきても、整理整頓が苦手なスタッフがずっとファイリングを続ける……そんな状態では業務が苦しいものになってしまいます。
そこで大事にしたのは、「すべての業務が誰にでもできる」しくみを整えることでした。それがTeachme Bizを活用した「直感的に使える業務マニュアル集」でした。「オペレーションズ」の業務を支援するスタッフ、和田直美はこのマニュアルのつくり方に徹底してこだわりました。和田は「企業在籍型職場適応援助者」、いわゆるジョブコーチとしてオペレーションズの業務を支援しています。
ジョブコーチ・和田のマニュアルづくりのマニュアル!
- 一つ一つの手順に画像をつける
- 文字数を最小限に、端的に
- 「ちなみにここで◯◯の場合は~~」など工程のスピンアウトは禁止!
- ページの上から下まで読めば作業を完了できるよう、一気通貫にする
- いきなり完璧を目指さない。1回つくって運用して、カスタマイズしていく
- つまづきポイントを発見次第、すぐに修正
- OKな例とNGな例も必ず画像付きで例示

和田直美
Teachme Bizはクラウド型のマニュアル作成ツールで、専門の知識などなくても更新が簡単なので、障害のあるスタッフにとっても、操作がしやすいんです。画像に付けるキャプションは文字数制限があるので、自然と読みやすいものになる点も、オペレーションズに向けたマニュアルとしてぴったりでした。
今はメンバー自身がこのマニュアルを自主的にカスタマイズしてくれるまでに使いこなせています
(オペレーションズサポート担当)
③コミュニケーションが難しい→「Chatwork」で全社員と趣味を通じた交流を生む
障害のあるスタッフの中には、人とのコミュニケーションが苦手、業務上のコミュニケーションに過度な緊張をしてしまう人もいます。この緊張をほぐすきっかけになったのが、「会話」と「遊び」でした。

フローレンスでは、社内の業務用チャットとして「Chatwork」を導入しています。この「Chatwork」では、業務外の話や趣味の話でスタッフが個人的にグループチャットをつくってもOK!というルールがあります。アイドルが好き、サッカーが好き、こどもの教育相談、「西武線沿線住人」のグループまで出現し、盛んなコミュニケーションが交わされています。このグループチャットにも当然オペレーションズメンバーが任意で入っていて、ランチタイムや休憩時間にはプライベートな会話で盛り上がってます。
作業を依頼する人もされる人も、仕事を離れたフラットな状態を知っていて、みんなと「はじめまして」ではないからこそ、いざ業務になってもスムーズなコミュニケーションが取りやすくなります。
ここまでは「デジタル活用」のお話、ではその結果、どうなったでしょう?
①仕事がない→「kintone」アプリの活用→組織全体で5,200時間の業務時間創出→管理職の残業時間、経理の差し戻し作業が激減!
「kintone」を通じて社内じゅうから集めた業務を時間に換算したところ、2024年の年間で合計5,200時間という膨大な時間になりました。算出された5,200時間を、現場ではお子さんたちの保育環境改善のために活かせたり、事務局では残業時間を削減した上、新しい挑戦やコミュニケーションの時間に使えたりと、組織を強くしなやかに成長させてくれました。
杉本かをり
ベルでは館内の掃除や季節の装飾などのお手伝いをお願いしています。ベルにはさまざまな親子が遊びにきますので、利用者の立場から思いついたことを積極的に発信してくれます。それがベルの環境改善につながることも多いので助かっています
(品川区で運営している遊び場「インクルーシブひろば ベル」施設長)
②仕事が選べない→「Teachme Biz」で完全マニュアル化→約3,000件の業務をマニュアル化→「オペレーションズ」業務依頼数が年間100件超え!
現在約3,000種類の業務が、Teachme Biz上ですべて画像付きのマニュアルになっています。このマニュアルのおかげでチームが持てる仕事が増え、ますます依頼も増えるという良い循環が生まれています。「オペレーションズ」の業務受注数は増加を続けており2025年2月現在で毎月行っている定常業務は81件、定常でない単発業務の作業依頼は年間100件超となっています。
「例えば経理担当者の頭を毎月悩ませる経理申請のミス。これはオペレーションズがまとめて受け持つことでミスを大幅に減らすことができています。やり方の決まっている作業をミスなくこなすことは、彼らの得意技。毎月末、各担当者の経理申請ミスを差し戻す作業でパンク状態だった経理チームからは、大幅に業務が削減されたという喜びの声が上がっています」とマネージャーの天野は言います。
清水奈緒子
毎月園で発生する売上申請作業に時間を取られていました。オペレーションズにお願いできるようになったことで運営業務にかけられる時間が生まれました!依頼するにあたってのマニュアル作成も、こちらは簡単な手書きの手順書をお渡しするのみで、マニュアル反映までオペレーションズが請け負ってくれて、本当にありがたいです
(保育園事業の運営担当スタッフ)
このマニュアルの出現で助かったのはオペレーションズチームだけではありません。経理申請作業のやり方や、「どこに何があるのか」を知りたいのは全社員の願いだったのです。マニュアルは今や全社員が日々アクセスし、誰かに聞かなくても、「知りたいときにすぐ」情報を取り出せる理想のインフラとなりました。
そうしたいい循環を生み出した好例として、「『Teachme Biz Award 2023」では、ダイバーシティ推進賞をいただきました!

③コミュニケーションが難しい→「Chatwork」で全社員と趣味を通じた交流を生む→緊張&ストレス減でなんと7年間離職者0人!
好きなことを通じて会話が自然に生まれる「Chatwork」では、今日も盛んにコミュニケーションが生まれています。
福村真央
推し活メンバーはみんなアイドルが大好きで、月に一度自分のプレイリストを作ってそれをみんなで見る『鑑賞会』を開いています!鑑賞会メンバーとは、一緒に仕事をしたことがない人でも、社内や休憩中に推し活の話で盛り上がっています
(「オペレーションズ」メンバー&推し活スレッドメンバー)

広報スタッフの高橋麻美は「真央ちゃんとは、仕事こそ一緒にしていないけれど、周りの人に『広報のことだったら麻美さんに聞いたらいいよ』と声をかけてくれているようで。そのおかげでオペレーションズチームからも話しかけてもらえてすごく嬉しいです」と話します。
中澤謙太
月に1度、仕事が終わった後に集まってみんなでボードゲームをしています。フットサルのグループでは休日に集まってゲームをすることも。あとはこの試合観戦したよ!という情報交換もできて楽しいです
(「オペレーションズ」メンバー&ボードゲーム・フットサルスレッドメンバー)
お互いのオフの顔や個人的な興味を知っているからこそ、いざ業務になっても心理的ハードルを低くして関わることができるようになっていました。「はじめまして」の緊張や対人ストレスが軽減されていることは、「オペレーションズ」の創設以来、離職者が0人という結果にも現れています。
noteや書籍を通じて、「障害者が輝くのがあたりまえ」を社会にシェア
あたりまえのことですが、障害者雇用は、雇用率を達成することだけが目的ではありません。どんな立場にいるスタッフでも、所属する組織の中で自分の得意を活かせること、そしてその得意が必要とされること。この風土を整えるのはしくみであり、社会のありようです。
だからこそフローレンスが続けてきたこの7年間の実践を、フローレンスだけの財産ではなく、社会に還元すべきものと考えています。「オペレーションズ」の業務支援を続けてきたスタッフが、業務シーン別の具体的な支援方法を書籍やnoteで公開しています。
▼書籍
『障害者雇用の「困った」を解決! 発達障害・知的障害のある社員を活かすサポートブック』
▼「オペレーションズ」チームも登壇した出版記念イベントの様子はこちら


▼note
とりくみの当初は、「障害のあるスタッフのために」としくみを整え、受け止め合う文化を一歩ずつ醸成してきました。しかしその努力は、誰もが能力を発揮できたり、仕事を分担し合えたりといった副産物を超えて、社員一人一人が「次の誰か」のことを想像しながら仕事をするという、かけがえのない習慣を得ることにもつながっていました。
こうした取り組みを知っていただくこと、評価していただくことは、ダイバーシティ&インクルージョンのマインドが社会に広がる力になります。もしこのニュースに共感していただいた方の拡散、ぜひぜひよろしくお願いいたします!
オペレーションズチームの運営については、見学や講演も承っています。詳細については下記へお問い合わせください。