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こどもだけじゃない!大人にも役立つ「シチズンシップ」

こどもだけじゃない!大人にも役立つ「シチズンシップ」

先日、大阪府富田林市で開催された「2024とんだばやし人権フェア」にて、映画「こどもかいぎ」が上映されました。映画のテーマである「サークルタイム」を通じて育まれる対話の力について、実際に保育現場で実践するフローレンスの保育園園長が登壇し、お話ししました。

※サークルタイムとは、園児と保育者が輪(サークル)になって話し合う時間のこと。保育者がファシリテーターとなりますが、全員で集まることもあれば、年齢ごとに行うこともあります。結論が出ない日があったり、すぐに終わる日があったりと、細かいルールは設けずに進めていくのが特徴です。

講演では、サークルタイムをまだ取り入れていない保育園や幼稚園でも、すぐに実践できるポイントを紹介しました。その中で見えてきたのが、この対話の場はこどもたちだけでなく、社内会議や地域の町内会など、大人同士のコミュニティにも応用できるということ。

今回は、大人こそ学ぶ価値がある「シチズンシップ」について講演でお話した内容をご紹介します!

認定NPO法人フローレンス「みんなのみらいをつくる保育園東雲」園長 白鳥 智洋

認定NPO法人フローレンス「みんなのみらいをつくる保育園東雲」園長 白鳥 智洋

専門学校卒業後、幼稚園で7年、病院内保育園で2年勤務。他業種も経験後、「みんなの未来をつくることに自ら参加し、貢献し、そして楽しむ心を育む」を保育理念に掲げ、サークルタイムの実践を行う「みんなのみらいをつくる保育園東雲」開園のタイミングでフローレンスに入社。翌年度から同園副園長に就任、その後小規模保育所である「おうち保育園」園長を3年経験。2024年度から現職。「シチズンシップ保育」の推進担当も担う。

シチズンシップ保育とは?

フローレンスの保育園では、「みんなの未来をつくることに自ら参加し、貢献し、そして楽しむ心を育む」ことを保育理念に掲げ、「シチズンシップ保育」を実践しています。

「シチズンシップ」とは?
「一人ひとりが社会の一員として、よりよい社会の実現のために、積極的に多様な人々と協働して課題解決する」資質、能力のこと

未知の課題に溢れているこれからの社会を生きるこどもたち。社会の一員としてこのような資質、能力を発揮できるよう、自分で考え、他者と協働する経験をたくさん積んでほしいという願いを込めて、日々の保育を実践しています。

保育現場ではこどもにフォーカスしていますが、シチズンシップの内容は大人同士の関わりにも通じています。

特に「協働して課題解決する」という考え方があることで、「誰かが決めてくれるだろう」「私には関係ない」「あの人の意見はおかしい」という受け身の姿勢ではなくなります。チームの一人ひとりが意見を出し合い、お互いを尊重し合いながら、より良い解決方法を導き出せるようになります。

「最後まで発言しない子」にも意見がある

映画「こどもかいぎ」では、こどもと保育者が輪になって意見を交わす「サークルタイム」を題材に、こどもならではの自由な発想と真剣にぶつかり合うありのままの姿を描きながら、対話を重ねることでこどもたちが成長していく様子が描かれていました。

フローレンスの保育園「みんなのみらいをつくる保育園東雲」でも、「サークルタイム」を実施しています。どんな質問にも即座に手を挙げる積極的な子もいれば、友達の意見に耳を傾けながら最後まで発言しない子もいます。どちらが良いということはありませんが、「最後まで発言しない子にも意見がある」ことは忘れてはいけません。
大人同士のコミュニティにも常にリーダーシップを発揮する人、ムードメーカー、観察しながら的確な意見を言う人、さまざまなタイプの人がいますよね。

職員会議でもそういった場面がありました。積極的に発言するスタッフもいれば、自分からは発言をしないスタッフもいます。「あなたはどう思っているの?」と聞くと、とても良い意見を言ってくれるので、「どんどん言ってくれたらいいのに!」と言うと、いやいや~といった感じで恥ずかしそうにするのです。

それぞれの性格もあるので、発言することを強制することはしませんが、聞かなければその「とても良い意見」はスルーされ、チームが良くなるきっかけを逃すことになってしまいます。また、片方の意見ばかりが採用されるチームは決まった人の意見が反映されるため、バランスの悪い状態になってしまいます。

そのため、控えめで自分からは発言しない人の意見も逃さないように、「全員の意見をテーブル上に出す」アプローチが大切です。

会議の行き先はファシリテーターで決まる

全員の意見をテーブル上に出すための最重要人物は、ファシリテーターです。

司会とファシリテーターの違いを簡単に解説します。

司会
会議などを滞りなく進めることがその役割です。 議論の内容や最終的な合意を得られるかどうかは司会の責任とは言えません

ファシリテーター
参加者から意見を引き出し、議論を円滑に進め、最終的に合意を得る役割が求められます。

サークルタイムでは、保育者が常にファシリテーターとなって進行していきます。例えば、話が途切れない子がいたら「ちょっと他の子の意見を聞いてみようか」と、全体を見ながら話し合いを進めていきます。
時に、全く違う方向に進むこともありますが、そのまま続けるのか軌道修正をするのかはファシリテーターが判断します。
想定していたゴールにならない場合もありますが、サークルタイムには台本が無いので、それも今のこどもたちには必要な対話の時間であると考えています。

大人の会議でも、活発な意見の場となるか、ただ時間がすぎるだけの会議となるかは、その場を取り仕切るファシリテーター次第ということです。

もう一つ大事なポイントがあります。

それは「表情や仕草をよく見ること」です。保育園ではいつも一緒に過ごしているわけですから、何か思ってる表情やモジモジした仕草が見られると何か言いそうだなと、保育者はすぐに気づきます。
自分から手は挙げませんが、「〇〇ちゃん、どう?」と聞くと意見を言ってくれます。みんなの前で自分の意見を言うことはとても勇気がいること、勇気を振り絞って発言する経験がその子を成長させてくれます。

心理的安全性があることで見られる変化

「心理的安全性」という言葉を知っていますか?

心理的安全性とは、自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態のこと。
対話を積み重ねることで、消極的な人も発言することに慣れ、自ら発言する機会が増えていきます。
それは、安心して意見を言える環境であることが保証されているから。

サークルタイムを実施する際の基本として「どんな意見も否定しない」「自分の意見と友達の意見が違うことは当たり前」という考え方を大切にしています。

勇気を振り絞って発言したのに、みんなの前で否定されてしまったら、発言できなくなってしまいますよね。

この基本があることで、心理的安全性が保たれ、活発な意見交換ができるようになります。
サークルタイムはこどもたちの意見や気持ちを表出する場ですが、大人の会議の場でも有効です。

大人こそ学ぶ価値がある「シチズンシップ」

今回の「2024とんだばやし人権フェア」での講演の参加者からこんな質問がありました。

参加者

わたしは教育関係の仕事を40年やってきて、今は町内会の司会をやることが多いんです。その話し合いの中で、意見の強い方が2人ほどいるんです。いつもその方たちの意見がそのまま決定してしまって、なかなか参加してくれている皆さんの意見を取り入れることが出来ていません。今回のサークルタイムのお話をお聞きして、活かせそうだなと思いながらも難しさも感じています。何か良い方法はありますか?

町内会ですから、これまでの関係性もあると思いますし、言いづらさもなんとなく想像出来ます。質問してくださった方はその状況が良い状態ではないから声を挙げてくれたのだと思います。

この場合は、司会者としてではなく「ファシリテーターとして役割を持つ」ことが大事なポイントです。これまでの関係性もあると思いますが、何度もお伝えしている通り、声を挙げていない人の意見にも耳を傾けることは、とても大事なことです。

このような場では、みんなの意見を取り入れることで、活発な意見が交わされ、チームの状況も良くなっていきます。
その場をコントロールする立場として、強い意見に流されず、勇気を出してファシリテーターを頑張ってほしいと思います。

自分の意見があるように、他者にも意見があります。その意見が一致しないのはあたりまえで、考え方も人それぞれです。

それぞれ違うことは分かっているのに、うまくいかずに悩むこともありますよね。

そんな時に「自分は自分、他者は他者、違うことは当たり前」と思い出してください。
その考え方が根底にあることで、お互い違うことを認め、その一歩先に踏み出すことができるのです。

今回の講演では、「サークルタイム」での大切なポイントが、大人同士の関わりにも有効であることをお伝えしました。

皆さんも職場やさまざまなコミュニティで「大人のシチズンシップ」の考え方を取り入れてみてくださいね!

講演のご依頼等のお問い合わせは、フォームより受け付けております

大人こそ学ぶ価値があるシチズンシップを知りたい方、ぜひ講演のご依頼は、お問い合わせフォームよりお受けしております。


フローレンスの保育園は新入園児を募集中です!

シチズンシップ保育を実践し、こどもたちとの対話の機会を日々大切にしている、みんなのみらいをつくる保育園は新入園児を募集中です。入園を検討されている方向けに各園で保育所体験や園見学も実施しています。 「参加してみたい!」という方はぜひ各園にお問い合わせください。

みんなのみらいをつくる保育園

0-5歳児のこどもたちのための認可保育所です。園名には、「”みんなのみらいをつくる人”に育ってほしい」という願いが込められています。(東京都 江東区/渋谷区)


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