家族で映画を観に行く―。そんなごくありふれた体験が、さまざまな事情で難しいご家庭があります。
長時間席に座っていることが難しい、大きな声が出てしまう、暗い場所では痰の吸引などのケアができない、大きなバギーに乗ったまま鑑賞できる十分なスペースがないといった理由で、障害のあるお子さん、医療的ケアが必要なお子さんのいるご家庭が、映画館に行くのをためらっているのです。
フローレンスは、すべてのこどもたちが、声や音を気にせずに自由に楽しめて、暗い場所が怖い子も、医療的なケアが必要な子も安心して鑑賞できる映画会をしたいという思いから、3月8日 (土) にヒューマントラストシネマ渋谷にて、こどもの体験格差解消を目指す「こども冒険バンク」として初の「障害児おやこ映画祭」を開催しました。
フローレンスの「こども冒険バンク」とは、こどもの体験格差という社会課題解決のため、体験が不足しがちな家庭が、企業が無料で提供した体験コンテンツを自由に選び申し込みができるプラットフォーム事業です。2024年8月に開始し、これまでに27社が体験提供し、レジャー施設やアウトドア体験など累計4,360名分の体験をご家庭に届けています。 |
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フローレンスの仙台地区では医療的ケア児を対象とした映画会の開催経験があるものの、東京での開催は初めてということもあり、実績のある団体さんにアドバイスをいただいて映画館を探すところから始めました。現地に足を運んで検討した結果、劇場がバリアフリーであること、フロアの貸し切りができること、駐車場があることから、ヒューマントラストシネマ渋谷に決定。会場が決まってからは、仙台のスタッフや、医療的ケアシッター ナンシーを担当する障害局のスタッフも巻き込んで細かなオペレーションを検討するなど、数ヶ月前から入念な準備を進めてきました。
今回は、満を持して開催された「障害児おやこ映画祭」当日の様子を広報担当者がレポートします!
13時 スタッフ集合 最終打ち合わせ開始
こども冒険バンクのメンバー、障害局スタッフ、医療的ケアシッター ナンシーの看護師、サポートスタッフが映画館に集合。
非常階段の確認や、非常時の対応手順の確認、トイレの場所や使用方法、昇降機の動作確認、参加者の導線の確認などを行いました。

14時 受付開始
フローレンスの医療的ケアシッター ナンシーを担当している看護師が受付付近で待機する中、ご家族が続々と到着してきました。この日はあいにくの空模様。「よく来たね」「外は寒くなかった?」スタッフが声をかけながら、打ち合わせの手順どおりに館内に案内していきます。

この日の上映作品は『FLY!/フライ!』(配給:東宝東和)。愛らしいカモ一家が約3000キロの大冒険に飛び立つ冒険アニメーション映画で、家族の物語であること、冒険物語であることからスタッフが選びました。
映画の上映を待つ間、お母さんのお膝に乗って、ときおりしがみついてる小さなお子さんの姿が。その隣ではお兄ちゃんがソワソワとしています。お母さんにお話を聞くと、「ふたりとも映画館で映画を観るのは今日が初めてで緊張しているんです」とのこと。「普通の映画館と違って、照明が暗くならないから安心してくださいね」と伝えると、ホッとされたご様子でした。
14時30分 いよいよ上映開始です。
上映前にフローレンスのスタッフが「お子さんが途中で席を立っても問題ありません。気分転換にホールへ出ていただくこともできます。お子さんが映画に反応して声が出たり、笑ったりしても気にしないでください。みんなで楽しく過ごしましょう」と声をかけたことで、皆さんリラックスした様子で映画を観ています。

実は、「こどもが暗いのが苦手なので家族で映画を観に行けない」という声は、意外とよく耳にします。皆さんも、途中でトイレに行きたくなったり、ポップコーンを食べる音が響いてしまったり、喉がイガイガして咳き込んでしまったりして、周りの目が気になったという経験はありませんか?
でも、この映画会なら大丈夫。立ち歩いても声や音がでても、誰も気にとめません。社会は本来、色んな人がいてあたりまえなもの。お互いを認め合える空気に満ちている場所は、誰にとっても居心地がよいはず。この「障害児おやこ映画祭」はまさにそんな空間でした。
さて、物語はいよいよクライマックスへ。こどもたちは大きなスクリーンに映し出されるハラハラドキドキのシーンに釘付けです!


スクリーンを夢中になって観ていたHくんも、色んな表情を見せてくれました。
映画が大好きというお母さんと一緒に参加していた高校生の息子さんは、身を乗り出して笑顔を見せていました。「トイレが近かったりするので、周りが気になってなかなか映画を観に連れて来られない」という話でしたが、この日は立ち歩いても声を出しても大丈夫。親子で寛いだ様子で最後まで映画を楽しんでいました。
16時 上映終了
感動的なラストシーンにちょっぴり涙ぐみつつ会場を見渡すと、満足そうな笑顔があちこちに。それぞれのご家族のペースで帰り支度をしているなか、今日が初めての映画と言っていたお兄ちゃんに「最後は感動したね」と話しかけたところ、「大きい画面で、迫力すごかった! 感動したけど、泣きはしなかったよ。次は映画館でドラえもんを観て、『ドラ泣き』したいな」と話してくれました。
お子さん自身が「次はこうしたいな」と思える機会になったことがとても嬉しく、ふたたびウルッとしながら別のご家庭の元へ。
参加されていたご家族の皆さんにお話を伺いながら、「こども冒険バンク」を共同で開発したサントリーホールディングス株式会社から視察に来られていたCSR推進部の村田さんの言葉が思い出されました。
「障害者や医療的ケア児のお出かけ支援といっても、バリアフリーなどのインフラ整備すればいいということではないんですよね。認知を広げることが大事。まずは、わたしたちのそばで生活して、学び、暮らしている家族がいることを知ってもらう。知識とかではなく、あたりまえに同じ空間にいる。交流するのが目的ではなく、ふと気づいたら隣にいるような、そんな社会になっていくといいですね」
今回の映画会の舞台となったヒューマントラストシネマ渋谷の支配人である中崎さんからは、「普段のオペレーションではご来場いただくこと自体がご負担になってしまうお客様にも一緒にお楽しみいただける上映を実施できたことが非常に意義深く、ご協力いただいた皆様にも大変感謝しております。劇場としてもより多くのお客様にご利用いただけるように今回の経験を活かして精進してまいります」とのメッセージをいただきました。
「障害児おやこ映画祭」のような映画上映が、例えば一つの映画館に 1 日に必ず 1 回はあって、そこに行けばみんなが思い思いに寛いで映画を観られる。それが全国に広がっていったら、もっともっとたくさんの親子が気軽に映画館で映画を楽しめるのではないか、そんなことを考えながら会場を後にしました。
最後に、「障害児おやこ映画祭」に参加してくださったご家族へのアンケートでいただいたコメントを紹介します!
ポップコーンを食べながらみんなで横並びで映画を観た体験は一生忘れられない思い出になりました |
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映画中も自由にお過ごしください、の一言で心に余裕を持って楽しめました |
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初めての映画館体験!家族みんな映画好きなので、全員で大きなスクリーンで観れてとても嬉しかったです。 気候の影響もあり本調子では無かったものの、しっかり目を見開いてよく観ていました! また電源もお借りできるなんて至れり尽くせりでした。 |
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「障害児おやこ映画祭」は、2023年にフローレンスが「こどもの体験格差解消プラットフォームの開発を目指して実施した、渋谷区ふるさと納税を始めとした皆さんからのご寄付やご協力のもと実現することができました。フローレンスを応援してくださった皆さんに、改めてお礼を申し上げます。
「こども冒険バンク」には、現時点で1,220世帯が登録、そのうち障害事由で登録しているご家庭が約150世帯です。フローレンスは、「こども冒険バンク」でこどもたちに体験を提供することを通じて「体験したい」というこどもたちの気持ちを後押しして、あらゆることに挑戦できる未来をつくり、社会全体でこどもたちの成長を見守る優しい社会になることを願っています。
このような新しい事業の創設や継続は、皆さんからのご支援によって支えられています。引き続きフローレンスの応援をよろしくお願いします。
「こども冒険バンク」では、恒常的にご家庭に多様な体験を届けられるように、企業から体験の提供を積極的に受けつけています。
こどもたちの未来を応援したいと考えている企業の皆さん、自社商品やコンテンツを活かした体験をこどもたちに届けませんか?まずは下記の問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
※冒険の提供は法人格であることを利用規約で定義しております (個人の方や任意団体については、対象外となります)
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