フローレンスでは、活動を応援してくださる寄付者の皆さんに、最新の活動をお伝えする「寄付者限定メールニュース」を月に1回お送りしています。今回は、2月に配信したメールニュースから「フローレンスの障害者雇用の取り組み」の記事の一部をご紹介します。
フローレンスでは、障害は「社会の側にある」というスタンスであることから、「障碍」「障がい」といった表記を使わず、「障害」と記しています。 |
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フローレンスは2014年に障害児保育園ヘレンを開設。障害のあるこどもを預かる保育にも早くから取り組む中で、「障害のあるこどもたちが、職業に就く未来をあたりまえに想像できる社会」を目指してきました。また、障害者雇用においても、「法定雇用率を達成するためではなく、フローレンスらしい障害者雇用を実現したい」との思いから、2017年から本格的な取り組みを開始しました。
現在では、20代前半を中心に、10名の発達障害・知的障害・身体障害のメンバーからなるチーム(通称:オペレーションズ)がフローレンスの欠かせないスタッフとして活躍しています。
この7年半の試行錯誤をまとめた書籍、『障害者雇用の「困った」を解決! 発達障害・知的障害のある社員を活かすサポートブック』が、2024年11月に出版されました。
今回は、本書の共著者である和田のインタビューをお届けします。
和田 直美(わだ なおみ)

IT系企業で15年間マーケティング業務に従事した後、2022年11月にフローレンスへ入職。企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)の資格を持つ。
フローレンスの障害者雇用チームの運営ノウハウをまとめた共著『「困った」を解決! 発達障害・知的障害のある社員を活かすサポートブック(秀和システム)』がある。
できるところを伸ばす、できないところがあれば、できるところを切り分けていく
Q. オペレーションズは総務業務と、各事業部からの社内アウトソーシング担当として、フローレンスに欠かせないスタッフとして活躍していますが、和田さんは業務をどのように分担し、支援しているのでしょうか。
和田
仕事でキャリアを築こうとしたときに、仕事の幅を広げてマルチタスクで色々なことができるようになることを目指す人が多いかと思いますが、オペレーションズのメンバーは、特性によっては「できる」ことと「できない」ことの差が大きい場合があるので、このやり方ではうまくいきません。
そこで、業務を細かく切り出すことで、メンバーそれぞれの「得意なこと」にフォーカスして仕事をしてもらい、チームで補い合いながら作業を進めてもらっています。
Q. 仕事の振り分けはどのようにしていますか?
和田
大まかに分けると、コミュニケーションや臨機応変さに長けているメンバーと、細かな作業を得意とするメンバーとがいます。苦手なところも、まったくできないわけではなくて、例えば、10段階でいえば2ぐらいはできたりしますので、2できたところを3にしていく努力もするようにしています。
障害者雇用による仕事の振り分けはマンネリ化しがちで、同じ作業ばかりでは本人も飽きてしまうし、成長することもできません。少しずつチャレンジをさせることを心がけていくうちに、8くらいまでできるようになった、ということもあります。仕事を依頼する時には、その人の成長を期待して、次のステップにつながることを意識しています。

Q. オペレーションズのメンバーは、受付で電話対応もしてるんですよね。
和田
障害者雇用のスタッフが電話対応をしているというと、とても驚かれる方が多いのですが、マニュアルをわかりやすくして、電話対応の中でも、できる範囲はどこかを見極めて練習したら、全員が電話に出られるようになりました。できたらそれが自信になって、次のステップに進んで行けますよね。受付は、今では人気の業務の一つにもなっています。
無理はしない。でも、チャレンジはする

Q. オペレーションズチーム運営のポイントの③に、「無理はしない。チャレンジはする」とありますが、メンバーの方から新しいことに挑戦したいとの声があがるのですか?
和田
わたしとメンバーの1対1の面談を3週間に1度実施して、そこで仕事の希望を聞いています。わたし自身、みんなにいろんな仕事にチャレンジしてほしいという気持ちがありますので、希望する方面の新しい仕事を振ることもありますし、やっていて楽しそうだなという雰囲気を見て、勧めることもあります。
どうしてもできないという場合には無理強いさせませんが、「不安だけどやってみようかな」という気持ちならば、やることを選択してもらいます。やってみてできれば、成功体験に繋がって、仕事が楽しくなりますからね。
Q. オペレーションズでは、各事業部からの仕事の依頼も受けていますね。
和田
オペレーションズのメンバーに仕事をしていて何が一番嬉しいか聞くと、みんな「ありがとう」と言ってもらえるのが嬉しいと答えるんです。フローレンスのスタッフは必ず「ありがとう」と言ってくれるので、ますます仕事をやりたくなる。とても好循環だと思います。わたしはできるだけサポートに入らないようにして、仕事の受注から納品や報告までメンバーが事業部のスタッフとやり取りをして、直接「ありがとう」と言ってもらえるようにしています。

和田
わたしが本を書いたのは、障害があっても転職できるようになってほしいという思いがあったから。メンバーがいろんな仕事をやりたいと思えるように、これからもサポートしていきます。また、障害者雇用をはじめたいと考えている企業さん向けに、フローレンスの障害者雇用を見ていただく視察や見学も行っています。お問い合わせをお待ちしています。
(後半はこちら)

フローレンスの障害者雇用をサポートをしてきた和田は、「障害がある人は、たとえ能力があっても、職場環境や人間関係がマッチしないと転職は難しい。本を出すことで、フローレンスの障害者雇用ノウハウを1社でも多くの企業に広めて、障害があっても働きやすい会社を増やしたい、どこに転職しても働きやすくすることで、もっと障害者が前向きに転職しやすい世の中にしたいという想いがありました。」と語っています。
『障害者雇用の「困った」を解決! 発達障害・知的障害のある社員を活かすサポートブック』の出版報告会を12月に開催しました。


フローレンスが障害者雇用に積極的に取り組み、書籍の出版ができたのは、団体を支えてくださっている寄付者の皆さんの応援があったからこそです。すべてのこどもたちが希望とともに生きられる社会の実現に向けて、引き続きご支援をよろしくお願いします。

『障害者雇用の「困った」を解決! 発達障害・知的障害のある社員を活かすサポートブック』は書店、Amazonからもご購入いただけます。書籍の売上はフローレンスの活動に使われます。