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楽しさから始まるこどもたちの未来。インクルーシブ・テックで広がる「ごちゃまぜがあたりまえの社会」

楽しさから始まるこどもたちの未来。インクルーシブ・テックで広がる「ごちゃまぜがあたりまえの社会」

インクルーシブ・テックは、障害による課題を乗り越え、誰もが参画できる社会の実現をサポートするテクノロジーです。フローレンスでは、障害のあるこどもたちにインクルーシブ・テックに触れてもらう機会として、eスポーツイベントに取り組んでいます。この記事では、インクルーシブ・テックや、2025年8月6日(水)に開催する「パラeスポーツ・フェスタ2025」などについて紹介します。

障害のあるこどもたちを取り巻く環境

障害の程度や状態は、こどもによってさまざまです。身体を動かせないこどもの中には、感情や考えていることを周囲に伝える手段が限られていたり、コミュニケーションが取りにくかったりするケースもあります。そのため「こどもとコミュニケーションを充実させたい」「考えていることや好きなものをもっと知れたら」といった気持ちを抱える家族や支援者も少なくありません。

一方、現在の社会には、多種多様なセンサーやスイッチなどの電子機器、ITを活用したゲーム・玩具があふれています。一昔前には考えられなかったような、スマホで遊ぶこどもの姿も一般的なものとなりました。

フローレンスでは、こういったテクノロジーを活用することで、障害のあるこどもたちの「やってみたい」という気持ちを引き出し、可能性を広げられるのではないかと考え、「インクルーシブ・テック」と名付けました。このインクルーシブ・テックを普及させるため、専門家や企業の協力を得ながら、さまざまな取り組みを進めています。

インクルーシブ・テックって何を使うの?何ができるの?

障害の程度・状態によって、身体の動かせる箇所や力には、大きな個人差があります。そのため、インクルーシブ・テックを導入するには、それぞれにあった入力デバイスやコントローラーなどを使うことが重要です。お子さんに適したインクルーシブ・テックを活用できれば、周囲とのコミュニケーション・意思疎通がスムーズになるだけでなく、パソコンやゲームの操作をできるようになるケースもあります

例えば、フローレンスの事業を利用している方の中には、わずかな力でも押せるスイッチやレバー、視線をマウスのように用いる視線入力などを、日常生活に取り入れているご家庭もあります。こういったインクルーシブ・テックを活用することで、一見、外部からは分かりにくい気持ちやアイデアを、周囲に理解しやすく示してもらっています。なかには、身体にあわせたスイッチでパソコンを動かし、絵を描くことを楽しんでいるお子さんもいます。

医療的なケアのあるお子さんが、指先のわずかな力で入力できるデバイスでパソコンを操作し、絵を描くことを楽しんでいる様子
指先のわずかな力で入力できるデバイスでパソコンを操作

また、学校生活にインクルーシブ・テックを活かしている事例も。
フローレンスが運営する、医療的ケア児・障害児のためのシッターサービス「医療的ケアシッター ナンシー」を利用する小学校6年生のお子さんは、ご自宅で視線入力や棒状のスイッチを使ってゲームを楽しんでいます。このお子さんは学校でも自身に合ったスイッチで、周囲とのコミュニケーションに役立てているそうです。

このように、身体で表現することが難しくても、テクノロジーによってたくさんの「できた」「伝えられた」が生まれます。フローレンスは保育や家庭支援の現場で、お子さんの可能性が花開く、たくさんの瞬間を目の当たりにしてきました。

好きなことや得意なことに取り組むことが、こどもたちの自信と成長につながります。さらに将来的には、障害のあるお子さんの世界を広げ、パソコンを使った就労など、社会参画にもつながる可能性もあると考えています。

パラeスポーツ・フェスタはインクルーシブ・テックと出会うきっかけ

ただ、いきなり学校での勉強や将来仕事に就くために、インクルーシブ・テックを活用しようといっても、ハードルが高まるばかりです。そのためまずは、「楽しい」という気持ちを入口に、インクルーシブ・テックに親しみ、活用を続けてもらうことを目指そうと考えました。そこで注目したのが「eスポーツ」です。

医療的なケアのあるお子さんがインクルーシブ・テックを使ってゲームを楽しんでいる様子

フローレンスではインクルーシブ・テックに触れる機会として、2022年からeスポーツのイベントを開催しています。このようなイベントの開催は、単純にゲームで遊ぶことや競い合うことが目的ではありません。ゲームの楽しさをきっかけに、インクルーシブ・テックを試してみようと感じてもらったり、デバイスに慣れてもらうことを重視しています。

2024年には「パラeスポーツ・フェスタ」を初開催しました。会場では多くのお子さんに、自分に合うインクルーシブ・テックを使って、さまざまなゲームで楽しんでもらいました。なかには初めてゲームに触れられたと喜ぶお子さんもおり、参加者からは大きな反響がありました。

イベント担当者の岑鮎美は「こどもたちの可能性の広がりを感じてもらえた。こどもも大人も一緒に笑顔になってくれた点がなによりうれしい」と振り返ります。

「パラeスポーツ・フェスタ」イベント担当者の岑さん

イベント担当者・岑

イベントの運営には多くの作業療法士や企業ボランティアの皆さんにもご協力いただきました。作業療法士はインクルーシブ・テックとこどもたちをつなぐ重要な役割です。機器を使いやすいようにフィッティングしてくれたり、使い方をアドバイスしてくれたりします。

また、企業ボランティアの方には、ゲーム設定のサポートやこどもたちと一緒にゲームを楽しんでもらう役割をお願いしました。なかには障害のあるお子さんと関わったことがない方もいましたが、一緒に遊んでもらうことで、こどもたちは「障害児」「医療的ケア児」とひとくくりにできるものではなく、一人一人表現の仕方や得意なことも違うということを理解してもらえたように感じています。

第1回のイベントでは多くのご家族に楽しんでいただいた一方で、課題も浮き彫りになりました。ご家族からは、「家では何から始めていいか分からない」「機器が高価で手が出しにくい」などといった率直なご意見をいただきました。このような声にお応えするため、2025年はバージョンアップした内容で開催したいと考えています。

パラeスポーツ・フェスタ2025

フローレンスは8月6日、2回目となる「パラeスポーツ・フェスタ2025~インクルーシブ・テックで遊ぼう!~」を開催します。

2回目の開催となる今回は、イベント後の家庭への導入につながるように、スマートフォン、タブレットやおもちゃを使った遊びや、専門家による相談サポートを充実させています。 昨年参加されたご家族も、「どんな遊び方があるのか知りたい」「何から始めてよいか分からない」といったご家族も大歓迎です。テクノロジーに初めて触れるご家庭にもやさしい内容で、作業療法士がデバイス選びをサポートします。

2回目の開催に向け、岑は「障害のあるお子さんやご家族、さらにはボランティアも含め全員が何か気づきを得られる機会にしたい」と意気込みます。さらに、障害の有無にかかわらずゲームで交流するこどもたちの姿はフローレンスが目指す、社会の理想像にもつながります。

「ごちゃまぜがあたりまえの社会」を目指して

障害のある人もない人も一緒にゲームを楽しんでいる様子

昨年のパラeスポーツ・フェスタの様子です。大人もこどもも、障害の有無に関わらず、混ざりあって同じゲームで対戦しています。専門家の力を借りて、インクルーシブ・テックをこどもたちと結びつけることができれば、障害がもたらす壁を越えて、同じように交流することが、少しずつ可能になっていきます。

素敵な光景だと思いませんか?フローレンスではこのように、障害の有無に関係なく関わりあう「ごちゃまぜがあたりまえの社会」を理想としています

「ごちゃまぜがあたりまえの社会」を一緒につくりませんか?

障害児の可能性を広げるインクルーシブ・テック。「楽しそう」「もっと知りたい」。そんなふうに感じていただけたら、とてもうれしいです。
ただ、インクルーシブ・テックの普及はまだまだ道半ば。取り組みを持続可能なものにしていくには、多くの仲間が必要で、行政や企業の協力も欠かせません。
もしも「自分にも何かできることがあるかも」と思っていただけたなら、寄付というかたちでの応援も受け付けています。これからも、誰もが自然に周囲と関わりあえる「ごちゃまぜがあたりまえの社会」を目指していきます。
あたたかいご協力をいただけましたら幸いです。


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