虐待を受けて育った人も、安心して子育てできる社会へ
わたしたちフローレンスは、長年親子に寄り添う中で、こどもの頃に虐待などのつらい経験を持った親たちが、人一倍の葛藤を抱えながら必死に育児に向き合う姿を見てきました。
最新の研究では、被虐待経験のある親はそれ以外の親と比べて、我が子に虐待をしてしまう割合が高いことが示されていますが、この「虐待の世代間連鎖」は当事者個人ではなく社会の問題だと考えています。
フローレンスは、「どのような経験を持った人でも、周囲に頼りながら安心して子育てできる社会」を目指すことで、「虐待の世代間連鎖」をわたしたちの代で終わらせるべく、活動をしています。
皆さんの声を集めています。ぜひアンケートにご協力ください。
| 本プロジェクトでは、被虐待経験のある方の育児困難について明らかにすることを目的とし、皆さんの声を集めるアンケートを行っています。 子育てや過去の辛い経験の中で感じている孤独、周りには打ち明けづらい思いなどがありましたら、下記アンケートフォームにお寄せください。 |
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わたしたちが向き合う課題
これまで、被虐待経験のある親の困難は、国内での調査が不足しており、社会の中で十分に認識されてきませんでした。そのためほとんど施策が打たれておらず、多くの方が人知れずつらい思いを抱えています。わたしたちは、被虐待経験のある親が直面する困難について、以下の3つの仮説を立てています。
1. 身体や心が過剰に反応してしまう「しんどさ」
激しい泣き声や反抗的な態度など、こども特有の行動に直面したとき、人一倍強いストレスを感じてしまう。これは、過去の恐怖がフラッシュバックし、脳が過剰に反応してしまうためであり、本人の性格の問題ではない。
2. 「お手本」がない中での手探りの育児
多くの人は自分の育った環境をモデルに親としての振る舞いを学ぶため、手探りの育児を強いられ消耗したり、そのまま無意識に自身の親の振る舞いを真似てしまったりする。
3. 「助けて」と言えずに孤立しやすい
過去の経験から「人に頼ること」に不安を感じたり、周囲に悩みを打ち明けづらかったりすることで、一人で抱え込んでしまい孤立を深める傾向がある。

数字で見る、被虐待経験者の現在地
- 「こどもを虐待(身体的・心理的虐待、またはネグレクト)してしまう傾向」が、ACEスコア※「0」の親に比べ、スコア「3」以上の親は約2倍。
※ACEスコア:18歳までに経験した虐待や家庭内の不和など、心身に悪影響を及ぼす「逆境体験」を指標化したもの。合計点が高いほど、将来の健康リスクや生活上の困難につながる可能性が高いとされている。

- ACEスコア「0」の親に比べ、スコア「3」以上の親は、「育児ストレス」を抱える割合が約1.8倍、「育児の援助・助言者なし」の割合が約2.6倍。

- ACEスコア「0」の親に比べ、スコア「4」以上の親は、「悩みや心理的な問題があっても、頼れる人がいなかった」割合が約2.7倍(約3人に1人)、「家事・育児・介護のため、人手が必要なときに頼れる人がいなかった」割合が約2.4倍(約4人に1人)。

このようにこれまでの調査からも、被虐待経験のある親はそうでない親に比べて虐待リスクが高く、かつ心理的に極めて孤立しやすい――つまり、虐待の世代間連鎖が生じやすい実態が明らかになっています。
しかし「なぜ、被虐待経験のある親は孤立しやすいのか」について、具体的なハードル(心理的・経済的・時間的障壁)の正体はまだ十分には明らかになっていません。また、勇気を出してつながった先で支援の質のミスマッチが起こっているなど「本当に必要なケアを受けられているのか」についても、実態は不透明なままです。
わたしたちは調査を通じて、被虐待経験のある親が支援にたどり着けない「トラウマゆえのハードル」を可視化します。その上で、どのような形態の支援が求められているのか、そして、トラウマ・インフォームド・ケア(トラウマの視点を持った支援)の必要性を明らかにしていきます。
政策提言・アクション
「虐待の世代間連鎖」をゼロにするために、わたしたちは、「被虐待経験のある親の孤立」の実態を明らかにし、この問題が社会課題として議論され、必要な支援に適切につながれるような仕組みをつくるため、活動を行っていきます。
| 2024年5月 | 逆境的小児期体験(ACE)研究の専門家・三谷はるよ先生(大阪大学准教授)を迎え、勉強会を開催 |
|---|---|
| 2025年5月 | Policy Fundの「山本正喜ポリシー基金」に採択――「虐待の世代間連鎖をゼロ」に!ACEサバイバーに関する政策提言を本格化 |
| 2025年6月 | 「こどもまんなか実行計画2025」(こども版骨太)に「逆境的小児期体験(ACE)」に関する項目が盛り込まれる |
| 2026年2月 | 実態調査実施【現在実施中】 子育て中の親1000人を対象とした大規模アンケート調査を開始 |
| 2026年 | 記者会見・メディア公開(予定) 調査結果をもとに、厚生労働省・こども家庭庁への提言およびメディアを通じた世論への働きかけを行う |
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メッセージ
代表理事 赤坂緑

「虐待の世代間連鎖」を断ち切るために
フローレンスは、親子の支援を行う中で、子育てに人一倍の困難を抱える方の背景には、「自身が虐待を受けた経験」を持つケースが少なくないことを実感してきました。こどもの泣き声に敏感で感情が抑えられない、頼れる親族や知人がおらず孤立した子育てが深まっていく…。それは決して本人のせいではありません。頼れるはずの場所で傷ついてきた過去が、誰かに助けを求めることを難しくさせているのです。
わたしたちは、虐待を個人の問題にしません。社会の無理解や自己責任論という壁を壊し、どのような背景があっても、誰もが安心して「助けて」と周囲に頼れる社会をつくりたいと考えています。
このプロジェクトで、実態調査を行い、当事者の声をエビデンスとして国や自治体へ届け、必要な支援を形にしていきます。「虐待の世代間連鎖」を断ち切るために、応援をよろしくお願いいたします。
協力団体・個人
●株式会社PoliPoli『Policy Fund』

●一般社団法人Onara

●大阪大学大学院人間科学研究科 准教授 三谷はるよ
●Multicultural Study of Trauma Recovery (MiStory) consortium 理事 キタ幸子