社会問題への解を事業として生み出し、それを全国に広げていくーーそんなフローレンスの社会問題解決のためのアプローチに、情報発信やプレスリリースの活用は欠かせません。
そんなわれわれの心強い味方のひとつが、株式会社 PR TIMESが提供する『社会貢献団体を対象とするプレスリリース配信サービス無償提供プロジェクト』です。
このプロジェクトは、プレスリリース配信サービスの国内シェアNo.1であり、21,000社以上が利用する、PR TIMESのプレスリリース配信サービスを、条件を満たした非営利団体が無償で利用できるというもの。
フローレンスでも、Amazon Payでの寄付決済導入やおやこ基地シブヤの開園案内など、さまざまな場面で活用しています。
なぜPR TIMESが非営利団体の情報発信の支援をしているのか、そこにはどんなビジョンがあるのか、フローレンス代表理事の駒崎が、株式会社 PR TIMES代表取締役社長の山口拓己さんに伺いました。
株式会社PR TIMES 代表取締役社長 山口拓己(やまぐち たくみ)
1974年、愛知県豊橋市出身。東京理科大学を卒業後、山一証券に入社。アビームコンサルティング等を経て2006年に株式会社ベクトルに入社、取締役CFOに就任。2007年にプレスリリース配信サービス「PR TIMES」を立ち上げ、株式会社PR TIMES代表取締役社長に就任(現職)。売上高は事業開始以来10期連続で25%超の成長を続け、2016年3月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場。PR TIMESの利用企業社数は2017年11月に20,000社を突破、国内上場企業の30%以上が利用。
NPOにとって情報発信は大切な要、しかしPR予算はほとんどない
駒崎:山口さん、PR TIMESの『社会貢献団体を対象とするプレスリリース配信サービス無償提供プロジェクト』での支援をいただき、ありがとうございます!
私たちは保育や福祉の事業を回す一方で、「ここに社会課題があるよ」と発信して、多くの人に知ってもらうことも活動の大事な軸になっています。
ただ広報や広告宣伝費にほとんどお金をかけられず、自前の発信に頼っていた現状でしたので……強力なツールで応援していただけて感謝しています。
山口社長(以下、「山口」):私も子育て中の親ですので、フローレンスさんの障害児保育事業などさまざまな取り組みを知ってビジョンに共感していました。こうしてPR TIMESの事業を通じてフローレンスさんのお役にたてるなら、嬉しいです。
情報発信の目的は、全国に広げること
駒崎:ありがとうございます!障害児の課題を情報のプロである山口さんに知っていただけているのは心強いです。
重い障害や医療的なケアが必要な子ども達は、保育を受けることができず、親御さんは24時間つきっきりで介護をされています。
でも、障害のある子どもも、障害のない子どもとまったく変わらず、親以外の大人やお友達と関わることで「遊びたい」「やってみたい」という意欲がより芽生えます。保育が提供できれば、親御さんは働くことも選択できます。それをまずは東京23区であたりまえにしていきたいと思っているんですね。
東京で成功モデルができれば、そのうち真似したいという自治体や事業者が出てくるはずなので、ノウハウを提供して全国にスケールしていきたいんです。
実際、札幌にお住まいの医療的ケア児のお母さんがフローレンスのモデルを参考に、当事者として起業された例がありました。
山口:オープンなところがいいですね。ビジネスだとフランチャイズや競争となってしまうところですが、輪の拡げ方がいいなと思います。
駒崎:自分たち一団体では救える人数に限りがあります。自分たちの規模を拡大するというよりは、多くの親子を救うためにモデルづくりをやっている団体なんですね。モデルを作ってひろげると、救える人数が桁違いになります。
例えば、フローレンスの「おうち保育園」という乳幼児向けの小さな保育園は、待機児童問題を解決するモデルとして、アパートの一室を改装して開園しました。
これなら地価の高い都心で新たに土地を探す必要はなく、最も待機児童問題の深刻な0~2歳の子どもが待機している状況をスピーディに解消していけますよね、と国の「子ども・子育て委員会」で提案し、それが国策化されて現在は「小規模認可保育事業」となりました。
今では、全国に小規模認可保育所は3500園に増えました。フローレンス自身が運営する小規模認可保育所はたった17園ですから、モデルがうまく広がるとこんなに成果があるんですよ。
横のつながりを持って協働することで生まれるインパクト、地方から
山口:最近始められた「こども宅食」も、ふるさと納税の仕組みを使っていて画期的なモデルだなと感じました。全国で同じような事例が広がることをイメージされているんでしょうか。
駒崎:そうなんです、運営資金はふるさと納税で集めるので寄付者にはほとんど損がありません。
また、この事業は、文京区とそれぞれ強みを持った企業やNPO団体が協働チームでソーシャルワークを行うトライアルモデルです。支援を必要としている人は役所の窓口で待っていても来ないので、食品の宅配やLINEでいつでも繋がれる状態を作っておく。SOSが出しやすい仕組みづくりの実験ですね。
文京区でしっかりモデル化できれば、他の自治体も同じように地域の企業やNPOと支援チームを作れるのではないかと思います。
山口:私たちもPR TIMESで地方発のニュースの発信に力を入れているのですが、やはり地元の関係者がつながって情報発信をすることで、世の中が変わるきっかけを作れるんじゃないかと思うからなんです。
昨年、茨城県つくば市と「つくば市のベンチャー企業に対してPR支援を行う」ことを目的に連携する取り組みを始めました。スタートアップの企業を支援するチームとして、行政、民間金融機関と我々が組んで、それぞれの得意分野で支援するというものです。
私たちは情報を流通させるプロとしての役割を担っています。
ローカルビジネスや自治体など、地方からどんどん情報が発信され、メディアや生活者へと情報が届くと、きっと中央集権的だった情報の流れがもっとほどけて、全国で情報の交差が起こるんじゃないかと。ローカル発信の情報をきっかけに、横のつながりが生まれるほど、新しいビジネスや新しい価値も生まれるでしょうね。
「脱プレスリリース」ではなく「超プレスリリース」
駒崎:可能性を感じるお話ですね。PR TIMESさんといえば、プレスリリースやニュースのWEB配信で業界シェアナンバーワンでいらっしゃいますよね、創業から長いのですか?
山口:まる10年です。2016年に上場しました。起業してからはあっという間でしたけど、10年というと一区切りですよね。
駒崎:私も起業が2004年から14年なので、その「あっという間だったけど改めて振り返ると感慨深いな」っていう感じはわかります。
病児保育の事業がスタートでしたが、親子に関わる社会問題が次々と見えるようになり、「病気の子、障害の子はお母さんが仕事を辞めて見るのがあたりまえ」とか、「血縁=家族」とか、まことしやかに言われてきた「これまでのあたりまえ」を、「あたらしいあたりまえ」に変えるために無我夢中で事業を立ち上げてきた十数年でした。
山口:素晴らしいですね。
「あたらしいあたりまえ」といえば、PR TIMESも、従来広告やPR業界で第一に掲げられていた「クライアントファースト」というあたりまえを超えていくためにスタートしたサービスです。
従来の報道向け資料としてのプレスリリースではなく、「パブリックファースト」に立って、社会が望む方法を一番に考えながら、企業とメディアのリレーションを構築することをサービスにしました。
プレスリリースというベースは変えなくても、その情報をもっと開かれたものにできると思ったんです。1つの情報でさまざまな受け手に色々な使い方を提供できるほうが、情報価値が高いですよね。
「脱プレスリリース」ではなく「超プレスリリース」を目指しました。
駒崎:なるほど。広報業界の常識を変えたんですね!
情報には確かに10数年前まではくっきりと階層がありましたよね。企業がプレスリリースを発信して、それを報道やマスコミ各社が受け取って、それを一般大衆用に提供するという構造が。
だけど、近年どんどん情報発信の垣根はなくなっていってて、今やYouTubeやTwitterなどの個人発信の情報からマスコミがネタを探すというような状況ですもんね。
パブリックファーストのプレスリリース、日本で初めてのアプローチで、今やそれがあたりまえになった事例ですね。
山口:ありがとうございます。フローレンスさんは、10数年でこれだけたくさんの事業を立ち上げられている。
私などは新しいことをしようとすると、社内リソースでどうやって予算を立てて人を配置しようか……?と唸ってしまうんですが、フローレンスさんのように課題を解決していく方法を社内に閉じずに考えていこうと思います。
駒崎:私たちも、民間企業や他団体の皆さん、行政、寄付者の皆さん、情報を受け取って「いいね!」やシェアをしてくれるたくさんの皆さんと共に、まだ見ぬ「あたらしいあたりまえ」を現実にするために、頑張っていきます。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
(了)
利用企業数は21,000社、民間上場企業の3割が利用しているプレスリリース配信サービス「PR TIMES」は、広報担当なら誰もが利用したいと切望するサービスでありながら、フローレンスにはもちろん月額の利用料金を払える予算はなく……これまで高嶺の花でした。
しかし、PR TIMESの本無償提供プロジェクトを適用していただき、フローレンスでも利用できるように。これまで自社媒体での発信しか武器がありませんでしたが、強力な広報ツールが加わったことになります。
これまでプレスリリースの発信は年間数本でしたが、2017年には11本のリリース発信をし、多くの方に活動を知っていただく機会を得ました。
山口社長、PR TIMESのスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。これからも、サポーターの思いを活動に込めて、皆さんと一緒に社会変革を進めていきたいと思います。
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