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アクション最前線

2022/05/06

#母の日 に問い直す「日本の母のあたりまえ」。子育ては”母親だけ”が背負うもの?

 


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無言の圧力、「母ならこれくらいあたりまえ」

「お母さん、いつもありがとう。」

母の日には、普段なかなか面と向かって伝えられない感謝の気持ちを伝える方も多いと思います。

しかし今日は敢えて、お母さんを労う気持ちと共に、皆さんにちょっと立ち止まって考えていただきたいことがあります。

母親は子どもや夫のために自己犠牲を厭わず尽くすのが美徳である、というあたりまえが、この国にはないでしょうか?

私たちフローレンスは、2004年に日本初の訪問型病児保育事業で団体を設立した時から、日本の母を追い詰める「母ならあたりまえ」とされる社会からの期待役割を問い直し、数々のあたらしい事業と価値観を提案してきました。

たとえば今とは違い、2004年フローレンスの団体設立時は結婚や出産を機に仕事を辞める女性もまだまだ多い時代。ましてや「子どもが熱を出して保育園に預けられない時は、母親が仕事を休んで看病するのが”あたりまえ”」でした。

しかし、小さな子どもは何度も風邪をひいたり熱を出したりしながらゆっくりと身体をつくっていくものです。

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子どもの病気は突然やってきて、共働きの子育て家庭やひとり親の家庭の日常を直撃します。保育園は37.5℃以上の熱があるお子さんを預かれないため、仕事を休んで看病しなければならない期間が長くなると親の就労継続が困難になる事例も。

『お子さんが病気で大変な時だからこそ、お母さんは誰かに頼っていい。

子どもは、親だけが育てるのではなく、社会全体ではぐくみたい。』

フローレンスは、設立当初からこうしたメッセージと共に、これまで10万件も親子に病児保育を提供してきました。

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フローレンスの病児保育

フローレンスは、母親だけが育児を担い、父親の長時間労働が奨励される高度成長期の古い価値観を捨て、地域社会みんなで子どもを育み、見守っていく仕組みをあたりまえにしていきたいと考えます。

病児保育事業のほかにも、私たちが「日本のお母さん」に課せられてきたあたりまえを問い直し、新しいあたりまえを提案してきた事例をいくつかご紹介します。


障害児を産んだら、母親は仕事を辞めて24時間看護があたりまえ?

■障害児家庭支援事業

新生児医療の発達により救える小さな命が増えるとともに、たんの吸引や経管栄養など、医療的なケアを必要とする「医療的ケア児」の数は2万人を超え、今なお増加傾向にあります。

こうした重度心身障害児や医療的ケア児が生まれた場合、多くは母親が仕事を辞めて、介護をする生活を選択するご家庭がほとんどでした。お母さんは、休息する時間もなく片時もお子さんから離れられない生活が続き、社会から孤立していきます。

医療的ケア児や重度障害のある子どもが入園できる保育園は、極度に不足しているからです。

しかし、「お母さんだけが介護と育児を負うのではなく、たくさんの専門家とチームで育めばいい。重い障害があっても、お友達と遊んだり学んだりする子どもの権利を守りたい」とフローレンスは考えました。

障害児保育園ヘレンで医療的ケア児と先生が遊ぶ様子

 

フローレンスは、日本初の事業モデルである障害児保育園ヘレンの開園を皮切りに「障害児家庭支援事業」を2014年から運営しています。

医療的ケア児に保育を提供する「障害児保育園ヘレン」「障害児訪問保育アニー」のほか、障害児家庭を看護師が訪問してサポートする「医療的ケアシッター ナンシー」、2021年度には障害の有無にかかわらず子ども達が遊べる地域交流の場「インクルーシブひろば  ベル」と、障害児家庭の声を聞きながら多様な支援モデルを広げています。


専業主婦なんだから、育児はひとりでするのがあたりまえ?

■認可保育園運営事業

”保育園落ちた日本死ね!”が話題となった2016年より以前から、育児と仕事を両立させたい母たちの前に高い壁となっていた「待機児童問題」。フローレンスがマンションの一室ではじめた小さな保育園「おうち保育園」モデルが2015年に国策化され、全国に小規模認可保育所が広がったことも奏功し、令和になると国内の待機児童数もずいぶん減ってきました。

一方で、育児鬱やワンオペ育児が背景となった子どもの虐待や、保育園にも幼稚園にも通っていない「無園児」が社会から孤立してネグレクトや就学前リスクを抱えやすいといった社会課題は、年々深刻になっています。
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フローレンスは、2023年度国が創設を予定している「こども家庭庁」への政策提言項目として、保育園を地域の子育て家庭のセーフティネットとして開いていく「みんなの保育園」の実現を強く訴えています。

具体的には、「(保育は本来家庭ですべきものなのに)親(母親)が就労や傷病のため保育できない”保育に欠ける”状態だから保育を提供する」という従来の福祉の”あたりまえ”を、一新したいと考えます。

つまり、子どもは日本の未来を担う大切な存在だからこそ、「母親が働いている、働いていないにかかわらず、全ての子どもは保育を受けることができる」という制度をつくっていきたいのです。

どのような家庭環境にあっても子どもには等しく社会から投資され、親が自己責任に追い詰められたりしない社会を実現したいです。

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双子や三つ子、母親が苦労して育てるのはあたりまえ?

■多胎児家庭支援事業

「双子や三つ子の育児が大変なのはあたりまえ、嫌なら分かった段階で堕ろせたのでは」

これは、実際にSNSで多胎児家庭に投げつけられた誹謗中傷です。また、

「双子ちゃん可愛いね、一度の出産で二人も産まれてママは幸せ者ね」といった悪気のない言葉であっても、世間からのイメージと壮絶な実生活との落差に、もやもやする多胎児育児中の方が多いといいます。

100人に1人の母親が双子や三つ子などの多胎児を出産している日本ですが、複数の乳幼児を実質的にワンオペ育児せざるを得ない多胎児家庭が少なくありません

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社会からの理解も不十分で、数年前までは「双子用ベビーカー」はバスの乗車を断られたり、実質的に公共交通機関の利用が困難である実態さえあったのです。

フローレンスは、2019年からこうした多胎児家庭を取り巻く課題解決のため、実態調査を通じた課題の可視化や政策提言に取り組むとともに、今年4月には、多胎児家庭に寄り添う新規事業「ふたご助っ人くじ」も立ち上げました。

同時に泣いている時は、二人とも抱っこしたい。
二人分の食事やお風呂は時間に追われる。
他のきょうだいに向き合う時間もほしい。

心身が壊れる危険と隣合わせでワンオペ育児に耐え続けるお母さん像ではなく、私たちは実際に多胎児を育てるお母さんが、当事者としてあたりまえに感じる気持ちを大切にしたいと考えます。

「ふたご助っ人くじ」は、多胎児育児に奮闘中のご家庭に保育のプロが駆けつけ、保護者に伴走し心身の重荷を軽減する、多胎児家庭専門の訪問サポートサービスです。

ふたご助っ人くじ サービスサイト

なお、双子用ベビーカーについては、フローレンスの2年ごしのアクションが実り、「双子用ベビーカー(二人乗りベビーカー)の折りたたまないままでの乗車」が、都内民間バス会社全線で解禁されることが決定しました。
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また、東京都内の自治体で多胎児家庭向けのタクシー利用料助成や、ヘルパー事業の拡充などの政策提言を進め、実現に至っています。


子どもは血が繋がっているのが、あたりまえ? 
予期せぬ妊娠は、母親のせい?

■赤ちゃん縁組事業

「赤ちゃんは、お母さんがお腹を痛めて産んでこそ、可愛さもひとしおというもの。」

さすがにここまで古い感覚をお持ちの方はいないかもしれませんが、それでも「血の繋がり」が家族だという価値観が日本ではまだまだ一般的です。

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不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は約5.5組に1組と言われる一方で、特別養子縁組の選択肢が治療現場で情報提供される場面はまだ少ないと言われます。※国立社会保障・人口問題研究所2015年調査より

アメリカでは年間5万組にのぼる特別養子縁組ですが、日本では約700組(2020年度司法統計年報より)です。

また、性暴力や心身疾患といった様々な背景から予期せぬ妊娠をした女性に対しても、女性を咎めるような風潮を反映するかのように、緊急避妊薬や様々な選択肢を提示する情報公開とサポートが圧倒的に足りていません。なにより、妊娠は女性ひとりでできるものではないのに、多くの予期せぬ妊娠において実母が独りきりで追い詰められるケースが少なくありません。

自宅や公園のトイレなどで赤ちゃんを産み、そのまま遺棄してしまう事件には胸が詰まります。

妊婦さんお腹

フローレンスは、2016年に「赤ちゃん縁組事業」を始めました。

妊娠期から相談先のない妊婦さんを無料でサポートしています。「産みの親」である妊婦さんに寄り添い、丁寧なカウンセリングを続け、養子として「育ての親」に託すという結論に至った場合に養親を希望する夫婦に繋げています。

2021年度は、約1000件ものにんしん相談に対応し、10人の赤ちゃんが新しいお母さん、お父さんと家族になりました。

自分で育てたいと希望する実母さんにも、継続的なサポートをおこなっています。

血の繋がりがあってもなくても、予期せぬ妊娠であっても、一人ひとりの命と人生の選択を尊重する国でありたいと考えます。

フローレンスの赤ちゃん縁組


日本のお母さんの「脱・あたりまえ」を実現するのは、一人ひとりです

■日本の「女性」が負ってきた性別役割

新しい事業モデルの開発や制度改革よりも、もっと簡単に日本のお母さんのあたりまえを変えていけるアクションは、実は日常の言動に隠れています。

保護者会への参加や保育園からの急な呼び出し、お母さんばかりが都合をつけていませんか?

PTA会員はほとんどがお母さんで、会長はお父さんだったりしませんか?

あなたの実家に帰省した時に、妻とあなたの母親だけが立ち働いていないでしょうか?

例えば、フローレンスの運営する保育園では、ごっこ遊びで、お母さん役の子どもはお料理をつくり、お人形のお世話をするといったことを「あたりまえのこと」だというコミュニケーションはしません。

昨今はどの会社でも絶滅したかもしれませんが、もちろんフローレンス社内で飲み会があっても、代表の駒崎にお酌をしたり男性社員に料理を取り分ける女性社員もいません。(駒崎が好きで皆にお酌をしてまわることはしょっちゅうですが!)

男性社員は100%育児休業を取得し、小さいお子さんを子育て中の男性社員の多くが時短勤務で働いています。

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母の日に「お母さん、今日だけはお料理もお掃除も休んでいいよ。」なんて言っていませんか?

父の日には、同じように「お父さん、いつも長時間会社で働いてくれてありがとう」なんて言わなくていい社会を作りたいですね。

フローレンスは、日本の子育てに「新しいあたりまえ」をつくっていく事業と政策提言、ソーシャルアクションをこれからもおこなっていきます。

しかし、社会の意識や文化をアップデートしていくことは到底フローレンス一団体でできるはずもなく、それはほかでもない私たち一人ひとりのミッションです。

母の日には、「日本の母のあたりまえ」を見直そう。

「日本のお母さんの脱・あたりまえ」をフローレンスと共に推進してくださるかたは、ぜひ記事のシェアやご支援・参加をお願いします。

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書いた人:岡水 恵弥


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