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アクション最前線

2023/05/31

#赤ちゃん遺棄をゼロに 日本初!フローレンスが未受診妊婦を支援する「無料産院」事業をスタート ~全国化を目指し、第一弾として京都・第二足立病院と提携~

   


フローレンスは赤ちゃんの遺棄などの悲しい事件を防ぐため、新たに「無料産院」事業を開始、全国化を目指します。第一弾の提携先病院として第二足立病院(京都市 理事長:畑山博)と提携し、2023年6月1日から「健診・出産費用が払えない経済的に困難を抱えた未受診妊婦」に対する支援を開始いたします。

2023年5月31日、厚生労働省にて本件についての記者会見を開催し、発表させていただきました。

記者会見では、フローレンス会長 駒崎のほか、医療法人財団足立病院理事長の畑山博氏、第二足立病院 看護師長の永井利枝氏も登壇し、たくさんの記者の皆さんにお集まりいただきました。

当日の記者会見の様子

(YouTube動画は5月31日 21時公開予定)

赤ちゃんの遺棄・虐待事件が絶えない背景には、予期せぬ妊娠をしてしまったり、経済的・精神的な不安から医療機関を受診できずに出産を迎えてしまうなど、社会的に孤立している妊婦が支援を受けられていないことが要因と考えられます。

「無料産院」事業では、経済的・精神的に不安や困難を抱え医療機関を受診できず悩んでいる妊婦に対し、にんしん相談を受け付けるとともに、妊婦健診・出産費用をフローレンスが代わりに支払い、医療機関を受診してもらいやすくすることで、母子ともに危険な状態で出産に至ることを防ぎます。また、受診をきっかけに行政の支援につなげることで、赤ちゃん遺棄(虐待死)を防止します。提携先病院として京都の第二足立病院が決定したことを皮切りに、今後も提携先の医療機関を募り、全国化を目指していきます。

赤ちゃん遺棄の実態 

厚生労働省による2020年度のデータによると、日本では年間32人、2週間に1人以上の割合で、0歳児が虐待死で亡くなっています。児童虐待死(遺棄を含む)で最も多いのが0歳児で、生後0日が20%、0日以外の0歳児が33%、合わせて53%にものぼります。

その背景には、予期せぬ妊娠を誰にも相談できず、不安や孤独の中で一人で出産を迎えてしまい、追い詰められた末に産まれたばかりの赤ちゃんを遺棄してしまう妊婦の存在があります。

フローレンスでは、赤ちゃん遺棄をゼロにするために、2016年より、予期せぬ妊娠に悩む女性に対応する「フローレンスのにんしん相談」と「赤ちゃん縁組事業」をスタートし、これまでの7年間で、4000人以上の妊婦の相談支援を行ってきました。また、相談支援を行って出産を迎えた実母さんがご自身で赤ちゃんを育てられないという場合は、特別養子縁組により、生まれた赤ちゃんが家庭で育っていけるように支援してきました。

また、かねてより「妊婦の受診・出産費用の無償化」を政府に提言してきています。

しかし、現実は厳しく、0歳児の虐待死は後を絶ちません。

赤ちゃんの遺棄をゼロにするにはどうすればいいのか。
私たちが「にんしん相談」に対応する中で、分かってきたことがあります。

①経済的に貧困状態にあり病院を受診できない、②病院を受診すること自体に不安がある、③予期せぬ妊娠について自分からSOSを出すことが難しい、といった理由で妊婦健診未受診のまま、出産が迫り、対応が遅れてしまうケースが多いということです。

【にんしん相談 相談者の声】

<受診への経済的ハードル>

・お金も保険証もなく、病院に行けない。お腹も大きくなってきて不安。

・つわりの症状などもなく、気づいた時には中絶できる時期を過ぎていた。お金がなく病院にも行けていない。

・産みたい気持ちはあるが、パートナーの収入も少なく、自分自身の仕事が決まらず経済的に産めない。中絶するにもどこの病院に行けばいいのか。費用も一括で払えない。怖い。辛い。

・無職でお金がなく、妊娠中であるため仕事も断られてしまう。誰からの援助も受けられない。このままだと今現在の生活すら維持できない。

未受診妊婦は妊婦自身とお腹にいる赤ちゃんの医学的管理ができないため、母子ともに健康上大きなリスクを負います。妊娠週数や感染症や合併症の情報など、妊婦や赤ちゃんの状況がわからない中では、受け入れる病院側も緊急帝王切開や出産後の赤ちゃんの緊急治療など様々な想定が必要となり、こういった対応ができる病院も限られているのが現状です。

フローレンスのにんしん相談に限らず、厚生労働省の「子ども虐待による死亡事件等の検証結果等について(第10-18次報告)」のデータでも、0日児死亡ケースの中で「未受診」の割合が87%にものぼっています。また、妊婦健診を受診しない理由として、経済的理由を挙げる人が約4割という調査結果もあります。

行政窓口で交付される母子手帳には、多くの場合、妊婦健診の経済的負担を軽減するクーポンなどの補助がありますが、母子手帳は病院で妊娠確定の診断を受けなければ受け取ることができません。妊娠確定のための初回受診料が払えないと、行政支援のスタートラインにもたどり着けないのです。

そこで、フローレンスは2022年10月より、にんしん相談に相談した妊婦への経済的支援として、妊婦健診の初回受診料をフローレンスが代わりに支払う「初回受診料支援」を実施しています。反響は大きく、5ヵ月間で165件の相談が寄せられました。

また、この「初回受診料支援」に取り組む中で、初回受診料を支援するだけでは不足している部分も見えてきました。

・前年度は収入があり公的支援(助産制度など)の対象にならない

・公的支援が適用されるまでの審査には時間がかかるため、その間に出産を迎えてしまう など

こうした今ある制度の狭間に落ち、悩んでいる未受診妊婦の支援を行うため、このたびフローレンスでは「無料産院」事業を開始することといたしました。

赤ちゃん遺棄ゼロを目指す「無料産院」事業について

「無料産院」事業では、経済的・精神的に不安や困難を抱え医療機関を受診できず悩んでいる未受診妊婦に対し、にんしん相談を受け付けるとともに、病院と提携して妊婦健診・出産費用をフローレンスが代わりに支払い、医療機関を受診してもらうことで母子ともに危険な状態で出産に至ることを防ぎます。また、受診をきっかけに行政の支援につなげることで、赤ちゃん遺棄を防止します。第二足立病院を第一弾提携先として、2023年6月1日から「健診・出産費用が払えない経済的に困難を抱えた未受診妊婦」に対する支援を開始いたします。

京都市にある第二足立病院は昭和27年に開業し、これまで25,000人以上の赤ちゃんが誕生している地域に根づいた産婦人科病院です。分娩数や手術数の実績も多く、それに対応できる経験豊富な産婦人科医師や助産師・看護師らが在籍。様々な問題を抱えながら妊娠された方の不安に共に向き合い、必要時は地域の保健センター等とも連携し、長年母子の支援に取り組んできた病院です。

フローレンスと病院が提携することにより、病院からも経済的な不安のある妊婦に対して相談を呼びかけることで、医療機関を訪れるハードルが下がります。また、受診をきっかけにフローレンスがソーシャルワークの機能を担い、行政への連携をスムーズに行い、行政の制度を使った様々な支援につなげることが可能になります。

また、この事業は、未受診妊婦が経済面での心配なく出産できる場所を増やすことも目的としています。最初の提携先として、第二足立病院と事業を開始しますが、今後も提携医療機関を募り、今年度中に10院を目標に全国化を目指していきます。

本事業は寄付などを原資として行っていきます。

フローレンス 赤ちゃん縁組事業部 石原 綾乃のコメント

経済的困難を抱えている場合、「特定妊婦」として、さまざまな支援が受けられます。その制度を利用すればいいじゃないか、と思われるかもしれません。

しかし、「特定妊婦」として登録されるには、多くのステップがあります。

予期せぬ妊娠に直面し、病院に行かなくてはいけないことは分かっていてもお金がない。相談できる人も周りにいない。自分の困りごとを行政のどこに相談していいのかもわからない。誰かを頼る最初の一歩を踏み出すことができない女性たちが少なくないのです。

また、行政では妊娠が分かってからでないと母子手帳や受診券の発行ができないので、一番最初の受診料の補助はできません。私たちは「お金の心配はしなくていいから、まずは病院に行こう」と伝えられることを強みとし、行政や病院にスムーズにつなげる支援をしてきました。

赤ちゃんの遺棄のニュースを耳にするたびに、私たちは「どうしたら相談に来てもらえるのだろう」と思います。

たまたま何らかの相談に繋がった人は自分自身も赤ちゃんも大切にする道を見つけることができ、残念ながらそういった機会がなかったがために追い込まれて全く別の人生を歩むことになってしまう人がいる。

そこには相談できたか、できなかったかの違いしかありません。

始めから赤ちゃんを捨てようと思っている人はいない、だから相談に来てほしいと願っています。

相談してくれるということは一歩進めるということ。

予期せぬ妊娠に悩む女性たちが、その一歩を踏み出せるように、誰かに頼ってもいいんだと思えるように、今回の取り組みで、病院でも「まず相談においで」と呼びかけてくれることが予期せぬ妊娠に悩む女性たちのハードルを減らすことになればと願っています。

医療法人財団足立病院 理事長 畑山 博 氏のコメント

足立病院は、京都で120年以上、産婦人科を中心に、婦人科、小児科、生殖医療センターのほか、グループ団体のあだち福祉会では保育園も運営するなど、女性の一生を応援する病院をめざし診療にあたってきました。

近年は、家庭福祉により大きな観点から貢献するために、京都の困窮家庭に食事を届ける『京都こども宅食プロジェクト』をフローレンス・京都市と共に立ち上げるなど、母と子のしあわせを守る社会活動にも力を入れています。

今回、このフローレンスの「無料産院」事業に協力することで、より多くの親子の命を救っていきたいと考えています。

第二足立病院 看護師長 永井 利枝氏のコメント

「妊娠出産は病気でないから別に大丈夫」という方もおられますが、新しい命を10か月育んでいくわけですから母体には当然負荷がかかります。高血圧や貧血等がおこることもあります。まして貧困により厳しい状況で生活されておられるとさらにそのリスクは高まります。母体のリスクは当然胎児の発育や健康状態に大きく影響します。妊婦健診は、正常な妊娠経過であるか異常はないかチェックし、異常があれば早期に対応するためにも重要なのです。

従って、このような妊婦健診を貧困等の理由で、受診されない、または未受診のまま出産されることは母児の命にかかわることであります。フローレンスの皆様とタッグを組み、貧困で苦しむ妊婦様をまずは金銭的に支援する今回の取り組みの意義は大きいと考えております。

悩んで相談できず、人知れず出産し、赤ちゃんを遺棄してしまうという、母も子にとっても悲劇が起きないようにフローレンスの活動を知って頂きたいし、フローレンスのスタッフとともに、1人でも多く困難な状況におられる方に向き合い、安全に幸せに出産していただけたらと願っております。

私たちの提言

このたび、フローレンスは新しく「無料産院」事業を開始することにいたしました。

まずは、この取り組みを、今まさに困っている妊婦さんにぜひ知っていただきたいと思っています。予期せぬ妊娠をしてしまったが、誰にも相談できず不安や孤独を抱えて困窮している妊婦さん、お金がなくても絶望しないでほしい。まずはフローレンスの「にんしん相談」にぜひ相談してください。病院に行くお金が無くても私たちがなんとかします。LINEでも相談をすることができます。あなたの秘密は守ります。匿名で、無料で相談できます。あなたとお腹の赤ちゃんにとって一番いい方法を一緒に考えましょう。

また、この「無料産院」事業は、明日、6月1日から京都の第二足立病院さんと開始することになりましたが、今後は提携先の医療機関を増やし、全国の妊婦さんと赤ちゃんの命を救えるよう全国に広げていくことを目指します。この取組にご賛同いただける分娩施設を持つ医療機関を今年度中に10院を目標に、全国から募集します。ご賛同いただける医療機関の方、ぜひ弊会にご連絡ください。

最後に、政府にも改めて提言をさせていただきます。

フローレンスは、かねてより「妊婦の受診・出産費用無償化」を訴えてきました。「妊婦の受診・出産費用の無償化」は、現在の日本のこどもの虐待死のうち一番多い赤ちゃんの遺棄を防ぐことにもつながる、ということをぜひ認識していただきたいと思います。こうしている間にも2週間に1件、赤ちゃんの虐待死が起きています。制度実現を待っていたら、また何人もの赤ちゃんの命が亡くなってしまう。それを防ぐために、フローレンスはこの「無料産院」事業を独自で開始することにいたしました。しかし本来であれば、これは国が行うべき政策です。政府は早急に「妊婦の受診・出産費用の無償化」を実現し、誰もが安心して妊娠・出産できる社会となるよう改めて提言いたします。


ソーシャルアクション・政策提言は皆さんのご支援で運営しています

コロナ禍を経て親子を取り巻く課題はさらに複雑化し、孤立が深まる中、その課題はより周囲から見えにくく、支援が届きにくいのが現状です。

フローレンスは、支援現場を自分たちの手で運営しながら、そこから日々得られる親子の生の声や、事業ノウハウを社会に広げ、国や地域の制度に具体的施策を提言をすることで、日本の子どもを取り巻く環境、綱渡りを強いられているハードな子育て環境を、アップデートしていきます。

今回の記者会見の実施や「にんしん相談」事業、このたび新たに開始する「無料産院」事業についても全て皆さんからの寄付により実現しています。

いつも応援してくださる寄付者の皆さん、参加・協働してくださっている多くの皆さんに心から御礼申し上げます。

日本中のすべての親子の笑顔のために、フローレンスはこれからも皆さんと共に「新しいあたりまえ」を形にしていきます。




フローレンスでは、社会問題や働き方など、これからもさまざまなコンテンツを発信していきます。
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