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【開催報告】なぜ今、保育園を通じた地域の見守り体制が求められているのか ― 約250名が参加した勉強会レポート ―

【開催報告】なぜ今、保育園を通じた地域の見守り体制が求められているのか ― 約250名が参加した勉強会レポート ―

「園に通う、支援が必要かもしれない家庭にできる限りのことをしたい。でも、どう声をかけたらいいのか、どこにつないだらいいのかわからない…」
「最近、保護者の様子が気になる。でも、“気のせいかもしれない”と思うと踏み込めない…」

保育の現場からは、日々そんな声が聞こえてきます。
フローレンスでは、中野区や自社保育園、医療的ケア児保育、病児保育などの現場で、こうした声に日々向き合ってきました。

中野区の取組についてはこちらでもご紹介しております。

近年、児童虐待、養育困難、孤立した子育てなど、家庭が抱える課題は複雑化しています。保育園は、お子さんや保護者の小さな変化に日常的に気づける場所である一方、保育現場だけで家庭支援を担うには限界があります。だからこそ今、保育園・専門職・行政が連携しながら、地域で家庭を支える仕組みづくりが求められています。

そうした背景から、2026年3月、フローレンスは保育園を通じた地域の見守り体制をテーマに、自治体・保育関係者向けの全国オンライン勉強会を開催しました。

今、なぜ保育園を通じた地域の見守りや家庭支援が求められているのか。

本勉強会では、こども家庭センターを中心とした国の政策動向も踏まえながら、専門職が園に関わり伴走してきた自治体の先行事例をもとに、その背景や必要性について考えました。当日は全国各地から250名近くの方にご参加いただき、保育園を通じた地域の見守り体制について、多くの関心が寄せられました。

本記事では、登壇自治体の取り組みや参加者の声をもとに、本勉強会の内容をダイジェストでご紹介します。

勉強会概要

●タイトル:
なぜ今、保育園を通じた地域の見守り体制が求められているのか ― 現場の思いと実践から学ぶ ―

●主催:
認定NPO法人フローレンス 支援を広げる事業部 保育ソーシャルワークチーム

●内容:
01.本勉強会の趣旨・保育園が抱えている実態について(認定NPO法人フローレンス)
02.専門職が園と伴走し続ける支援のかたち(静岡市 幼児教育センター)
03.園での対応をともに考える研修と伴走支援(広島県教育委員会 学びの変革推進部 乳幼児教育支援センター)
04.こども家庭センターと保育所等の連携による見守り支援体制の構築に向けて(こども家庭庁 虐待防止対策課)

保育園は家庭を見守る「最前線」

近年、保育園はお子さんを預かる場にとどまらず、家庭の困りごとに日常的に向き合う場となっています。

一方で、「これは支援につなぐべきなのか」「どこまで踏み込んでよいのか」「気になるけれど、どう関わればよいかわからない」と悩みながら対応しているケースも少なくありません。

特に、明らかな課題感や緊急性があるわけではないものの、「少し気になる」「対応に迷う」と感じる家庭については、相談や支援につながりにくい実態があります。

日々の関わりの中で保護者やお子さんの小さな変化に気づいていても、保育士や園だけで悩みを抱えてしまうことも少なくありません。

こうした状況を背景に、保育士だけに負担を集中させるのではなく、専門職や行政と連携しながら家庭を支える仕組みづくりを模索する動きが、各地で少しずつ始まっています。

本勉強会は

  • 保育園を、地域の見守りや家庭支援の中でどのように位置づけていくか
  • 保育士だけに負担を集中させず、専門職や行政とどのように連携できるか
  • 保育園が困った時に、無理なく相談し合える関係性や体制をどうつくるか

といった視点をもとに、先行自治体の実践から学ぶ機会となりました。

各地で始まっている保育園を支える実践

まず、先行事例として、2つの自治体から取り組みを発表していただきました。

■静岡市:専門職が園と伴走し続ける支援のかたち

まず、静岡市幼児教育センターの青島さん、静岡市立高松こども園渥美園長先生より「保育ソーシャルワーカー活用事業」についてお話いただきました。

静岡市では、保育ソーシャルワーカーが週に一度市内のこども園を巡回し、園と日常的に関わる取り組みを行っています。事業導入にあたっての、一番最初のきっかけは「ソーシャルワーカーを導入してほしい」という現場からの声でした。

特徴的なのは、スクールソーシャルワーカーとの兼務体制により、就学前から学齢期まで切れ目のない支援を目指している点です。

事業を通した園の変化

若手保育者の中でも、保護者を一方的に変えようとするのではなく、保護者や家庭の背景にも目を向けながら支えていきたいという意識が生まれてきています。

園長のわたし自身が一番支えられています。関係機関へのつなぎ方や、どこまで共有してよいのか悩むことも多い中で、具体的に相談できる存在がいることを心強く感じています。

また、「何か問題があってから専門職が関わるのではなく、日頃から保育士と専門職が顔の見える関係をつくること」や、「専門職の関わりによって、保護者だけでなく、保育者自身も支えられていること」についても語られました。

■広島県:園での対応をともに考える研修と伴走支援

次に、広島県教育委員会 学びの変革推進部 乳幼児教育支援センターから坂谷さん、保育ソーシャルワーカーの酒井さんにお話いただきました。

広島県では、お子さんや保護者の課題に園で組織的に対応できるようになることを目指し、「保育ソーシャルワーカー派遣事業」に加え、園職員向けの「『気になる』家庭への関わり研修会」を実施しています。

県内23市町を対象に保育ソーシャルワーカー派遣事業を行う中で、全市町の児童福祉の主管課にヒアリングを行ったところ、各市町内での連携やフローが異なっていた為、保育所が児童相談所等に報告を行っても、どう対応してもらえるかが見えないと報告しにくい事がわかりました。

そうした中で始まったのが、園職員向けの研修事業でした。

研修では、親子関係だけを個別に捉えるのではなく、親子の行動の背景を理解する視点を重視し、ロールプレイやディスカッションを取り入れながら、現場で実践しやすい形が工夫されています。

実際に参加した園からは、「保護者への見方が変わった」「背景を想像できるようになった」といった声も多く寄せられているとのことでした。

また、研修を通じて、受講園からも依頼が寄せられるようになり、地域ごとの実情に合わせた取り組みが少しずつ広がり始めていることが語られました。

研修の中で大切にしていること

他の園の話を聞くことで、自分たちの実践や体制のあり方に何らかの気づきを得てもらうことも大事にしています。

気になる家庭への支援が、園任せになってしまうこともあります。だからこそ、園だけで抱え込まず、自治体も含めて一緒に考える仲間を増やしていきたいと考えています。

■こども家庭庁:こども家庭センターと保育所等の連携による見守り支援体制の構築に向けて

こども家庭庁からは、こども家庭センターの役割や保育施策の動向も交えながら、こども家庭センターと保育所等の連携による見守り支援体制の構築に向けた考えについてお話いただきました。

こども家庭センターでは、母子保健と児童福祉の両機能が一体となって、より早い段階で家庭の困りごとに気づき、相談に応じ、必要な支援につないでいくことが重視されています。

保育園に期待する役割

保育園ならではの強みは、

●保護者と日常的に関わる中で、家庭の小さな変化や困りごとに気づきやすい

●保護者と同じ目線で関係性を築きやすい

ことです。

保育園は「こどもを預かる場」としての役割だけでなく、「子育て家庭の支援者」や「地域の支援拠点」として、

●早い段階で家庭の変化に気づき、必要な支援につないでいく

●そのためにこども家庭センターとの連携を充実させていく

ことが期待されています。

最後に、「保護者から見た時に、保育所とこども家庭センターがそれぞれどのような役割を担うのかを理解でき、安心して相談できることが重要になる」というメッセージも共有されました。

保育園だけで家庭支援を抱え込むのではなく、気づいたことを関係機関とも共有しながら、保育施設・行政・関係機関が役割分担をしつつ協働して支援していくことの重要性についても触れられました。

参加者の声と今後の課題

自治体職員から

実際に導入している自治体の事例を聞くことができ、大変参考になりました。

園長にかかる負担感が大きく、保育ソーシャルワーカーが仲介に入ってくれることはとても心強いと感じました。

必要性は感じる一方で、人材確保や予算化、庁内調整などの難しさも感じています

保育園外の専門職が保育士と連携することで、支援につながらないケースを減らせるのではと期待しています。

保育施設関係者から

保育ソーシャルワーカーが立ち上がったきっかけや想いを知ることができ、とても参考になりました。

保育士だけでは解決が難しいケースも増えており、専門職と連携できることは心強いと感じました。

本当にこれでいいのか迷う場面が多くあります。もし県や市に支援の仕組みができたら、ぜひ利用したいと思いました。

必要性への共感は広がりつつある一方で、人材確保や庁内連携、予算化など、各地域での実装に向けた課題も見えてきています。

取組事例集を発行しました

フローレンスでは、各地の実践をまとめた「保育園を通じた見守り体制に関する取組事例集」を発行しました。

本事例集は、自治体や児童家庭支援センター、教育委員会等、こどもや子育て家庭を取り巻く支援に関わる皆さんへのヒアリングや勉強会を通じて、各地域で大切に積み重ねられてきた取り組みを形にしたものです。

勉強会では限られた時間の中でお伝えしきれなかった、各地の取り組みの背景や検討過程、現場での工夫などを掲載しています。

保育園を通じた家庭支援や、地域の見守り体制づくりについて、実践事例を知る資料として、ぜひご覧ください。


フローレンスでは今後も、各地域の実践や現状の調査、知見の共有に取り組んでいきます。

「気になるご家庭がいるけれど、どのように関わればいいか悩んでいる」
「どこに相談したらいいかわからない」
といった声は、決して一部の地域や一部の園だけのものではありません。

保育園を通じた家庭支援や見守り体制について、「似たような取り組みをしている」「現場でこうした困りごとがある」など、皆さんの地域での実践や課題感などありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

各地域の皆さんから寄せられた声をもとに、今後の保育ソーシャルワークのあり方の検討に活かしていきたいと考えています。

■お問い合わせ
支援を広げる事業部 保育ソーシャルワーク事務局
sw-mirai@florence.or.jp

※本勉強会は、こども家庭庁「令和7年度見守り体制強化促進のための広報啓発事業」の助成を受け実施しました。


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