フローレンスが東京都中野区より委託を受け、2021年4月より実施している保育ソーシャルワーク事業が、この春5年目を迎えました!
保育園では、発達がゆっくりなお子さんへの個別対応や、子育てに困り感を抱えている保護者への対応など、親子にまつわるさまざまなサポートが必要とされる場面が日常的にありますが、「この対応で良いのだろうか」と現場で先生方が悩むことも少なくありません。
悩みや不安を抱えながら、お子さんや保護者の多様化、複雑化するさまざまな課題に対応している保育園の先生方を支援し、親子が抱える困り感の早期解決につなげるために、東京都中野区で保育ソーシャルワーク事業が実施されています。フローレンスは、この事業の受託事業者として、中野区内の約114園の保育園を対象に、発達・養育課題の相談を受けて専門的な知見に基づく助言を行ってきました。
中野区の保育ソーシャルワーク事業についてはこちらもご覧ください。

中野区の「保育ソーシャルワーク事業」とは
中野区で行っている保育ソーシャルワーク事業では、2種類の相談支援を提供しています。一つは、発達上の課題等により、個別の配慮が必要なお子さんに対して園で実践できる援助について助言を行う「発達相談」。もう一つは、困り感を抱えている保育園利用家庭に対して、園が必要な支援を行うために、養育支援の観点から課題の整理と対応の仕方について助言を行う「養育相談」です。
各保育園からの相談依頼を受けて、相談内容に応じて訪問、オンライン、電話のいずれかの方法で相談を実施しています。
発達と養育の両輪だからこそできた相談
中野区では2021年度から実施が始まったこちらの事業ですが、これまでの発達相談・養育相談の累計相談合計件数は736件、2024年度の単年度でも利用実績は295件に上りました。
発達相談に寄せられる相談内容としては、「気持ちを切り替えることができず癇癪を起こしてしまい、集団から外れてしまう」、「ことばの理解がゆっくりなため指示理解が難しく、一人だけ違うことをしたり集団から遅れてしまう」、「他者への興味が希薄で集団になじみにくい」など、集団での保育を行っていく上で園の先生たちが対応に悩むお子さんに対して、どのような関わり方をすべきなのかというものが多く寄せられます。
また、養育相談に寄せられる相談内容としては、「保護者の気分に波がある」、「保護者がこどもに対していつも大きな声で指示している」、「家族関係がよくないようで、保護者やこどもに影響が出ている様子があるが実態がわからない」など、こどもの養育環境が気になるご家庭に園としてどのように関わるべきかについてです。
発達相談・養育相談を同じ事業で実施していることで、スムーズな連携ができた結果、より多面的に園の困り感に寄り添い、その先の親子の困り感・課題感の深刻化を防ぐための具体的な手立てを提案できたケースもありました。
例えば、他の児童に対して乱暴な言動が目立つお子さんについて発達相談を実施する中で、家庭環境に関する課題が明らかになってきました。具体的には、登降園時に保護者が疲れた様子で強い口調で声をかけている姿が何度か見られ、園の先生方も「気になってはいるけれど、保護者にどのように接したり、支援につなげていいものなのか分からない」という状況でした。
その後、養育相談のソーシャルワーカーも園を訪問し、当該家庭の状況について先生と整理を行いました。養育相談では、保育士から保護者への声掛けの方法や、案内できる相談窓口などについてソーシャルワーカーから保育園に提案し、保育園として保護者とどのように関わっていくべきかの方針を立てることができました。
中野区の保育ソーシャルワーク事業では、発達相談・養育相談の両面からアプローチすることで、保育園が抱えるさまざまな悩みごとに対して、より細やかにサポートをすることができています。
今年度中野区が実施した事業の満足度調査において、回答いただいた保育園のおよそ96%に「満足」「概ね満足」とご回答いただきました。
実際にいただいたアンケート結果の一部をご紹介します。
こどもの姿に合わせたわかりやすく的確な助言でその後の保育に活かすことができた。今行っている援助方法についても肯定していただけ保育者の向上的な取り組みにつながった。
いろいろとアドバイスをいただき、感謝しています。アドバイスが直接、保育に活かされています。どこにも相談できずに園が孤立しているように感じていましたが、相談内容を真剣に聞いてくれるところがあるだけで、救われた思いになりました。
毎回、こどもの姿を細かく観察してくださり、カンファレンスではこどもの行動についてとても丁寧に解説してくださいました。アドバイスも非常にわかりやすく各クラス担任も「すごく腑に落ちた」と口々に話しています。満足、というより「大変満足」で、心から感謝の思いです。いつでも相談できる場があるということが、職員皆の気持ちの拠り所にもなっていると感じます。これからもぜひ利用させていただきたいです。
子育て事情の多様化に伴い、保育園の多機能化やさまざまなニーズに合わせた保育の提供など、社会が保育園に求める期待は年々高くなっています。一方でその多様なニーズに応えようとするあまり、保育園がお子さんやご家庭の対応に苦慮し、孤立化してしまうケースも少なくありません。
フローレンスでは、保育園を支援することがひいてはこどもやご家庭の支援にもつながると信じ、自治体や関係機関と連携をとりながら、今後も保育ソーシャルワークの実践を続けていきたいと考えています。
「保育ソーシャルワーク」導入をお考えの自治体のご担当者の方へ。保育ソーシャルワークの導入を検討されている場合は下記よりメールにてご連絡ください。 sw-mirai@florence.or.jp フローレンスにおける保育ソーシャルワークの経験をもとに、ご相談に応じます。 |
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フローレンスは、今後も保育現場を自分たちの手で運営しながら、そこから日々受け取る親子や園スタッフの生の声や、培った事業ノウハウを社会に広げ、日本のこどもを取り巻く環境を改善していくために、さまざまなアクションを行っていきます。
ぜひ、今後ともフローレンスの活動を応援いただきますよう、よろしくお願いいたします。