准認定ファンドレイザー資格取得までの道のり
こんにちは。認定NPO法人フローレンスの広報・ファンドレイジング担当、えみりーです。
「ファンドレイジング」という言葉、ご存知でしょうか? NPOに関わる人や企業のCSR担当部署の方などにはおなじみですよね。NPOが活動する上で必要となる資金を集めること、それがファンドレイジングです。
でも、ファンドレイザーって何者?
実はこのファンドレイザー、アメリカでは人気職業ランキングの上位にランクインしており、ファンドレイザーの有資格者とそうでない人では年収にして2万ドル(約230万?!)も違うらしいんですよ。
デキるファンドレイザーチーム(イメージ写真)
日本で、ファンドレイザーの資格が創設されたのは2012年。
「認定ファンドレイザー(実務経験3年以上)」「准認定ファンドレイザー(誰でも受験可)」という二段階の資格で、まだまだ歴史が浅いのですが、年々有資格者が増えて今年度国内で1000人を突破したそうです。
そして実は、私もこの夏、晴れて「准認定ファンドレイザー」の資格を取得した1人です。
どうして資格を取ろうと思ったのか
※試験の出題傾向をすぐ知りたい!という人は飛ばしてお進み下さい
私はがフローレンスに広報として入社したのは2年前。
ちょうど仕事に慣れてきた頃「広報もファンドレイジングも似たとこあるから、やってみたら」と言われ、チームメンバーと一緒に法人寄付企業さんや個人の寄付者さんとコミュニケーションをしたり、助成金を申請したり、寄付を募る広報企画を立てたり……ということをやるようになりました。
そんな中で気づいてしまったんですよね。
弊会フローレンスは、国内ではわりと大きめのNPOで「寄付いっぱい集めてそう」と思われがちなんですが
総収益のうち寄付の占める割合は1割もないのです。
助成金・補助金をあわせても2割。マーケティングしてばんばん寄付広告を出してる有力NPO団体さんと比べると、ファンドレイジングは初(うぶ)な感じです。
事業への取材などによる認知獲得から、寄付先候補として問い合わせを受けて……という比較的パッシブな状況から、ちょうど今がもう少しアグレッシブモードに変えるフェーズにあたります。
そして、もうひとつ広報とファンドレイズの業務の中で気づいたのは、「親子の笑顔をさまたげる社会課題を解決する」という、かくも壮大なミッションに対峙し続けるには、外部から有形無形の応援をもっともっと集めていく必要がある、ということ。
フローレンスはいわゆる事業型NPOですが、近年は、障害児保育問題や、子どもの虐待、貧困問題など、当事者に高負担をお願いできない新規事業をいくつも立ち上げていることも、団体の特徴です。
こうした福祉領域のあたらしい事業は、応援してくださる方からの寄付や企業からの支援、助成金も重要な資金源となっています。
ですから、私たちのビジョンや活動に知ってもらうこと、共感し信頼していただくこと、そして寄付をはじめとした応援のアクションを選択してもらうことが、欠かせないのです。
実はこれは考えてみれば、広報の目的と全く同じでした。
NPOの広報とファンドレイジングは表裏一体。だから、広報経験者である私も、ファンドレイジングをしっかり勉強してみよう、と思い立ったのです。
限りなく時間のないワーママが、資格試験に臨む
しかし!
9歳、5歳の子育て中、フルタイム勤務の私が資格試験の勉強をできる時間は実際ほとんどありません。
奇しくも、試験月であった6月は、「東京マラソン2019チャリティ」に関わる広報の仕込み業務に加え、10万人の署名運動「なくそう!子どもの虐待2018プロジェクト」が急転直下で立ち上がったこともあり、我が人生でも類を見ないほどムリゲー的に忙しい日々を過ごしながら、試験日を迎えたのでした。
そんな私から准認定ファンドレイザーの検定試験を直前に控える皆さんにお伝えしたいのは、試験に臨む前にこれだけは押さえておいて!という10ポイントです。
時間がなくても、安心してください。私もそうでしたから。
准認定ファンドレイザー検定試験は、過去問が公表されていませんので、ぜひご参考にしてくださいね。
試験問題の構成と出題範囲について
准認定ファンドレイザー検定試験に臨む方は、必ず「認定ファンドレイザー必修研修テキスト」をお持ちのはずです。
試験問題は、この教科書の中からくまなく出題されます。必修研修で講師の先生が「ここ、試験に出るよ」と言ってたところは、ホントに出ますし、詳細まで理解しているか確認する問題が出ます。
けっこう細かい数字や寄付キャンペーン事例の名称まで、おまえの海馬は生きてるか?!とジャブを打ってきますので、ある程度暗記は必要です。
試験は7割が選択問題で、3割が記述問題。7割が合格ラインだそうです(記述の配点から考えると、選択問題は1問2点くらいの配点で、記述が3~5点の配点ではないかと思います)。
寄付白書2017からも必ず出題されます。書籍を買うのが難しい方は、下記ページのサマリだけでも頭に入れておきましょう。
また、国府関財団法人助成財団センターのウェブサイトから、「日本の助成財団の現状ー概況」というページの情報も要チェック。
第13回検定では助成団体の団体規模や助成金額比についてがっつり出ました。
試験に出る10選、ここだけは落とすな
さあ、ここからは、必修研修テキストの中から、私の独断と偏見で、試験のポイントとなる箇所を紹介します。
目次
1寄付の歴史と寄付市場について
2ファンドレイザーのスキルや行動基準
3NPOの3つの財源と、バランスすることの相乗効果
4ファンドレイジング戦略立案に有効なツール
5組織評価/社会的インパクト評価
6寄付獲得5つのリスクと認定NPO法人
7寄付税制、2つの制度
8寄付マーケティングのツール
9企業との協働
10復習しておくとよいかも!山かけ項目
1寄付の歴史と寄付市場について
ヨーロッパなどの寄付の背景には、宗教文化などをベースに持てる者が持たざる者に施しをする「ノーブレス・オブリージュ」の考えがあります。それと比較して、日本では仲間うちで「助け合い」をする文化が寄付のはじまりです。
古くは聖徳太子の時代から、寄付で地域の課題を解決することは日本であたりまえに根付いていたことでした。
しかし、富国強兵の明治時代に入り、福祉は中央集権化され、寄付文化と地域自治は求心力を失いました。その一方で、社会福祉の先駆者的な個人(日本で初めて孤児院を開いた石井十次や、渋沢栄一から寄付を得て少年の更生施設を開いた留岡幸助など)がファンドレイジングによる社会課題の解決を模索しました。
第二次世界大戦後には、「福祉は行政が行うもの」という考え方が強くなります。バブル期には、企業による芸術・スポーツなどへの支援活動が華やぎました。
そんな中、日本の寄付文化の一大転機となったのが、1995年の阪神淡路大震災です。3ヶ月で100万人のボランティアが現地入りし、後に「ボランティア元年」と呼ばれます。
そういった社会の動きを背景に、1998年にNPO法設立。日本でNPOという法人格が活躍できる素地ができました。2011年には東日本大震災で寄付の意識がより高まり、NPO法改正を経て認定NPO法人が増えるようになりました。
近年、社会課題は細分化・複雑化し、行政で全てカバーするのは限界に達しています。
行政や民間の手が届かない部分を、専門性をもったNPOが事業によって解決するという社会構造がはっきりと明らかになったそのきっかけが、国内の大きな災害だったというのは、イメージもつきやすいのではないでしょうか。
そしてNPOから見ると、社会のニーズに応じていくために、資金調達の重要性がより高まってきたのです。
各国と比較した日本の寄付市場(日本は個人寄付と法人寄付がだいたい同額で、法人が伸びています。各国の金額も要暗記)、寄付者の属性、そしてカテゴリーではふるさと納税が属する「カテゴリー3」が近年の寄付市場拡大に寄与していることを、押さえておくとよいです。
それから、寄付とボランティアの関係も寄付率と寄付額に関係するので、チェケラ!
2ファンドレイザーのスキルや行動基準
実は、国際的なサミットとして、各国のファンドレイジング協会の代表者会議である、International Summitという集まりがあります。
このサミットにて、2006年に「International Statement of Ethical Principlesin Fundraising(ファンドレイジングにおける倫理原則に関する国際声明)」が発表され、世界24カ国が賛同の意を示して承認し、各国がそれに基づいて倫理規定・行動基準を策定しました。
日本では、われらが日本ファンドレイジング協会がこれに賛同し、策定しました。
3NPOの3つの財源と、バランスすることの相乗効果
これ、第13回試験では記述式で出ました!必ず出題されると思います。
NPOには、上の図のようにおおまかに分けて3つの活動原資があります。適切に組み合わせることが大事ですが、それぞれのリスクも把握しておくことが重要です。主なリスクは以下のとおりです。
【事業収入】赤字になりやすい/ビジョンとの不協和音/民間・行政との競合
【補助金・助成金】継続性がない/人件費に使えず使途が制限される/不安定
【寄付・会費】コミュニケーションコストがかかる/支援者データベースなどで寄付者・会員へのコミュニケーション方針を決めないと、支援者不満足を招く/不安定
4ファンドレイジング戦略立案に有効なツール
ファンドレイジング戦略を立てる前に、自団体の強み弱み、寄付の訴求が的確か……などをチェックできるツールがあります。そういったツールについての出題です。
SWOT分析やACTIONフレームワークのほか、ファンドレイジングに活かせる経営資源をチェックする「潜在力チェックリスト」、「マズローの5つの欲求」にあてはめた心理的効果と返礼メニューの検討……などなど、テキストに出てくるものは頭に入れておきましょう。
インフォグラフィックを作るのが超絶ヘタで申し訳ございません……
5組織評価/社会的インパクト評価
2016年、政府から発表された「骨太方針」で、日本史上初めて「社会的インパクト評価」の推進が盛り込まれ、社会的インパクト評価イニシアチブが設立しました。
社会的インパクト評価とは、NPO活動においてアウトプット(結果)にとどまらず、アウトカム(成果)を評価するものです。
ロジックモデルという図を用いて、どんなインプット(資源・リソース)によって、どのような活動をし、それがどのようなアウトプットを生み出して、それが社会に対してどのようなアウトカムをもたらすのか、という事業の価値創造を整理。
それによって組織や団体の説明責任である「説明責任」をステークホルダーに示し、また事業改善に活用していこうという考え方です。
言葉だけだとわかりづらいかもしれません。例えば、就労支援のNPOのロジックモデルを例にとると、以下のようになります。
団体がどれくらいの受益者に、どのような活動を行ったかというアウトプットだけでなく、その先の社会や受益者の変化・効果を見ていくという考え方がとても重要です。
6寄付獲得5つのリスクと認定NPO法人
寄付を獲得するにあたっては、リスク管理も必要です。以下のような例があげられます。
①寄付の強制(強制的に徴収したり、ノルマを設けるなどNG)
②使途の転換(使途を変更する時は、支援者に合意をもらうことが必要です)
③成功報酬付きのファンドレイジングなど
④不適切な相手からの寄付(反社会的勢力や不正な裏金からの寄付など)
⑤個人情報の流出(寄付者管理システムだけでなく、うっかり他の寄付者について口外してしまうなども)
また、認定NPO法人の認定基準もおさらいしておきましょう。
7寄付税制について
寄付する人にとってのメリットにもなる、寄付税制について。法制度の話でとっつきにくいので、楽しく一問一答形式で見ていくのがおすすめです!
8寄付マーケティングのツール
寄付マーケティングを多角的に行うためのツールがいくつもファンドレイザー講座テキストに紹介されています。混乱しないよう、理解しておきましょう。実務でも即使えるものばかりです!
ちなみに、准認定ファンドレイザーの資格を取得すると、これらのツールのフォーマットがもらえますよ。
主なものとしては、寄付者がどのように団体に対してコミットを強めていくかの段階を表したドナーピラミッド。
金銭での寄付者に限らず、ボランティアやスタッフ、会員など、団体を応援してくれる関係者を整理するためのステークホルダーピラミッド。
また、どういった相手にどういったアプローチを実施してくかを整理するためのファンドレイジングマトリックスなどがあります。
9企業との協働
以前は、PRの側面が強かった企業の社会貢献活動ですが、2011年にアメリカの経営学者マイケル・ポーターがCSV(Creating Shared Value)を提唱し、広まってきています。
いわゆるCSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)は、社会的価値のために、企業がお金や人員などのリソースを割くという考え方が主でした。
それに対してCSVは「共通価値の創造」などと訳されますが、企業にとっての利益や経済的価値と、非営利団体などが目指す社会的価値を同時に実現することを目指す考え方です。
CSVの概念を取り入れた事例は数多くありますが、大まかには、単純な寄付やボランティアに限らない協働事例が増えてきていると捉えるとよいのではないでしょうか。
ちなみにフローレンスでも、年々企業からのお問い合わせは増え続け、協働先も広がっています。
テキストでは、企業が社会貢献活動を行う時にどのような方法があるか、5つ手法が挙げられています。しっかり覚えておきましょう。
◎コーズ・プロモーション
社会的課題の解決(コーズ)の認知拡大や、そのための資金・ボランティア獲得のために、企業が資金提供や物資の提供を行う社会貢献活動。
フローレンスの事例:合同会社西友さんのレジ募金による病児保育ひとり親家庭支援など。
◎コーズ・リレーテッド・マーケティング
商品などの売上の一部を社会問題の解決に対して寄付する手法。キャンペーン期間、特定商品、支援先団体や事業が定められて行われることが多い。
フローレンスの事例:ハンバーガーレストランシェイク シャックさんからの、店舗限定メニューを通した寄付など。
◎ソーシャル・マーケティング
社会福祉や生活環境を改善しようとするキャンペーンの企画や、実行支援を行なうこと。コーズ・プロモーションと異なるのは、対象者の行動を変えるということを重視すること。
◎コーポレート・フィランソロピー
社会問題解決に対して企業が直接関与する活動。企業の目指す社会の姿を定義し、その実現にむけてつながりの強い活動を支援する。
フローレンスの事例:日本オラクルさんからの病児保育ひとり親支援プランへのご寄付など。
◎地域ボランティア
地域に貢献するボランティアに、従業員やスタッフの参加を促すこと。
フローレンスの事例:ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ社会貢献委員会の皆さんなどによる、障害児保育園ヘレンでのボランティア活動など。
さて、だいぶ長くなってきました。ここまで読んで下さったあなたも、一息ついてくださいね。最後は、ここは出題されそう!と思う、筆者の独断と偏見の山かけ項目です。
10復習しておくとよいかも!山かけ項目
■会員制度
NPOの会員制度についてです。フローレンスでは会員制度は団体運営のメインに据えていないため、個人的に完全ノーマーク。第13回試験で出た設問をすべて落としました。
NPOにとっての会員は、寄付者にくらべて継続性が高く、議決権を持つ正会員、議決権を有しない賛助会員などいくつかの分類を設けることもあります。
特定非営利活動法人や社団法人の場合は「議決権」を持ちます。財団法人は議決権会員を設ける必要がありません。
■遺贈・相続
近年遺贈や相続による寄付が増えており、NPO業界でも大きな資金流入となるため注目が集まっています。
だって、日本の年間相続額って50兆ですよ?!世界第二位、一般的な大口寄付の100倍の市場なのです。
遺言書の3つの種類と内容を覚えておくとよいと思います。
例えば、法定相続人がいた場合、民法で定める「遺留分」により、法定相続人の権利が守られています。遺留分が発生した場合の設問など、今後事例が増えることを想定して出題されるのではないでしょうか。
■寄付外部サイトやクラウドファンディングサイト
第13回試験では、サイトの名前が設問に出た記憶が……
試験前に、ざっとテキスト227ページから236ページあたりを読んでおくとよいかも(完全にテキスト任せですみません)。
■フィランソロピスト
日本語で言うと「篤志家」に近い存在。代表的なフィランソロピストとして、マイクロソフト社の共同創業者であるビル・ゲイツ氏、アメリカの著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏、同じく著名投資家であるジョージ・ソロス氏などの名前が挙げられます。
第13回試験では、細かい設問が出ました。テキストのどこかに載っていたのでしょう……(白目)
社会人は時間がない!ギリギリの勉強と、試験受験
時間がない中での私の勉強法は、以下のような感じでした。
土日を一回潰してテキストをざーっとおさらいしながらポイントをノートにまとめていき、自分で問題をつくってレコーダーに録音。
あとは通勤時間を使って、音声で復習できるようにしました。試験直前に再度テキストや資料をチェックして、忘れそうなことは何度か書きなぐってから会場へ。
ギリッギリの合格だったのではないかと思います・・・。
とはいえ、企業で働いていたり、NPOのファンドレイジングにすでに関わっている方であれば、イメージしやすいことばかりですので十分合格できると思います。
なにより、すぐに役立つ知識が身につけられることと、ファンドレイジングが体系的に学べたことが嬉しかったです。
フローレンスでは、資格取得や勉強のための補助があり、社内でもファンドレイザーを目指す仲間が増えてきました。
ファンドレイザーは、「社会のために何か役に立ちたいと思っている人たち」と「社会の課題を解決している人たち」をつなぐ仕事です。
ファンドレイザーの数だけ、もしかしたら社会が変わるスピードも増していくのかもしれません。
これから試験に挑戦する皆さんに、応援を送ります!
この記事が少しでも役に立ったと思われた方は、100円からでも寄付体験を!
フローレンスは希望するすべての子どもが保育を受けられるよう引き続き活動していきます。ぜひ応援をよろしくお願いします。
さらに!ちょうど現在、フローレンスではファンドレイザー(法人営業・マーケティング担当者等経験者も)を募集中。一緒に奥深いファンドレイジングの世界に挑戦してみませんか? 熱い志を持った方、お待ちしております!
※本記事に使われている図のうち、「©日本ファンドレイジング協会」記載のものは、日本ファンドレイジング協会作成のもので、准認定ファンドレイザーがファンドレイジング普及のために利用を許可されており、使わせていただきました。それ以外は筆者作成の図となります。