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地域の親子のために「地域になくてはならない保育園」を目指して ~あけぼの保育園のほのぼのパントリー~

地域の親子のために「地域になくてはならない保育園」を目指して ~あけぼの保育園のほのぼのパントリー~

保育園が食をきっかけに地域の親子とつながり、子育て支援に取り組む「保育園こども食堂」。
その活動は、来所型でみんなが集まって食事をする食堂だけではありません。

埼玉県戸田市のあけぼの保育園では、食材などをお配りする「フードパントリー」や、ご家庭に訪問して食材などをお届けする「こども宅食」に取り組んでいます。

園長の上出大和さんに、2年前に活動を始めた時の想いや、活動を続ける中で地域の親子とさらにつながりを作るために市社協と連携したお話などをお伺いしました。


「保育園は、在園児の家庭だけでなく、地域の親子にもできることがある。地域にとってなくてはならない保育園になりたい」
そんな上出さんのあたたかな思いが伝わるインタビュー、ぜひご一読ください。

社会福祉法人 あけぼの会 あけぼの保育園  上出 大和さん

社会福祉法人 あけぼの会 あけぼの保育園   上出 大和さん

埼玉県戸田市にある50年以上の歴史と実績のある地域密着型の保育施設。
社会福祉協議会と連携し「あけぼの保育園のほのぼのパントリー」にてフードパントリーと食品を自宅へ届ける宅食支援を行う。

地域の子育て家庭との接点をつくりたい~食支援事業を開始

事業担当 山﨑

あけぼの保育園で食支援事業を始められたきっかけについて教えてください。

(フローレンス「保育園こども食堂」事業担当)

上出さん

もともとわたしたちは戸田市で約60年にわたり保育を続けてきましたが、コロナ以前から子育て支援センターの運営も行っており、利用者に対してサポートを行っていました。しかしコロナ禍以降、子育て支援センターの利用者が思ったよりも戻ってこず、地域とのつながりが希薄になったという感覚がありました。そこで「もう一度、地域の子育て家庭との接点をつくれないか」と考え、食をフックにした支援として、パントリーや宅食なら実施可能と考えたのが活動を始めるきっかけです。

事業担当 山﨑

地域の親子ともっとつながりを持ち、支援がしたいと考えられたのですね。

上出さん

日本全体で少子化が加速していく中で、保育事業者同士で「選ばれる保育園になるには、どうすれば良いか?」と話すことがあります。僕自身は、あけぼの保育園は「選ばれる、選ばれない」を超えて「地域に無くてはならない保育園」になることを目指しています。

事業担当 山﨑

すごく想いを感じます。もう少し詳しく聞いても良いでしょうか?

上出さん

我々あけぼの保育園は半世紀以上、埼玉県戸田市で保育事業として活動しています。その中で卒園したこどもたちなど、たくさんの家庭に接してきました。この地域や人々に非常に愛着や感謝の思いがあります。これからは、自園のこどもや家庭だけではなく、地域の子育て家庭などにもより積極的に働きかけてつながりを増やしていく。そして、地域の子育て家庭に困り事があればサポートを進んで行っていきたいです。それによって、この戸田市の人々からあけぼの保育園は「この地域になくてはならない」と言ってもらえるようになるのが目指す姿だと考えてます。

事業担当 山﨑

素晴らしいですね!実際に保育園を起点とした活動を始める際、保育スタッフの皆さんとの目線合わせなどでご苦労はありましたか?

上出さん

理念自体は賛同してくれていたものの、保育業務が本業ですから、忙しい中で新しい取り組みに対し「現場運営はどうするのか?」といった不安の声もありました。しかしわたしは「保育士資格は横に置いて、人間としてこどもや家庭に何ができるか」を改めて深く考え、まずは共感してくれた職員から活動をスタートしました。そこから徐々に理解が広がり、現在では多くのスタッフが主体的に関わってくれています。

社会福祉協議会との連携で広がるつながり

事業担当 山﨑

社会福祉協議会(以下、社協)とも連携して活動されていますよね。この連携はどのように始まったのでしょう?

上出さん

活動初年度は自園だけで活動していましたが、活動を振り返った際に「本当に届けるべき人に届いているか?」という課題意識がスタッフ内で生まれました。そこで2年目の活動を始める際に、飛び込みで戸田市社会福祉協議会を訪問し、「こういう食支援をしているので、ぜひ家庭をご紹介いただけませんか?」と相談をしました。その時たまたまご挨拶できた担当の方が快諾してくださり、こども家庭センターともつながることができました。

事業担当 山﨑

社協が前向きに協力してくれたのですね。実際に社協やこども家庭センターから紹介があったご家庭についてはいかがでしたか?

上出さん

緊急的に「3日後に食べるものがない」という相談も増えており、社協からの要請でパントリーの申し込みを受けるケースが増えました。また既存の利用家庭からの口コミで「あけぼの保育園のパントリーが良い」という評判が広がり、支援センター経由での利用申し込みのケースもあります。結果として、この食支援活動でつながった要支援家庭があけぼの保育園に入園し、保育園と保健師さんが連携して見守りを続けられる関係が生まれました。

事業担当 山﨑

実際に社協やこども家庭支援センターとの情報連携はどのように行っていますか?

上出さん

社協さんやこども家庭支援センターを通じて、まずご家庭に食支援活動の情報を提供してもらっています。そうすることで、団体間での個人情報などの共有は不要になります。ご家庭の意思で、この食支援活動に申し込んでもらうようにしています。

支援活動で大切にしていること・工夫していること

事業担当 山﨑

地域の親子への支援活動の中で大事にしていることを詳しく教えてください。

上出さん

一般的にパントリーでは、ご家庭とのコミュニケーションを取りにくいという話を伺います。わたしたちは利用者と関係性を大切にしたいと考え、「一世帯一世帯に丁寧に食支援物品をオーダーメイドで届ける」ことを重視しています。

事業担当 山﨑

なるほど。オーダーメイド支援の具体的な仕組みを教えてください。

上出さん

Googleフォームで各家庭の状況やニーズを伺い、年齢や家族構成に応じた食品や日用品(オムツなど)を選別しています。例えば先月はAさんの家庭は小学生のこどもがいるのでお菓子を追加し、Bさんの家庭には乳幼児がいるので離乳食を梱包するなど、各家族に合わせることで利用者の満足度が高まると思っています。それによって、保育園での相談につながったり、口コミで新たな要支援家庭とつながりやすくなるなどの広がりが生まれていると感じています。

事業担当 山﨑

この活動を続けている中で職員の方々のモチベーションに変化はありましたか?

上出さん

活動を通じて「誰かのためにやっている」という実感が得られ、保育士としての自分たちの仕事の意義や価値を再認識できたように思えます。その結果、職員のやりがいが高まり、「来年はいつからこの活動を始めようか?」という主体的な声が増えています。

事業担当 山﨑

いいですね!その他にパントリーや宅食で梱包する際に工夫されている点はありますか?

上出さん

ハロウィンや季節ごとのポストカードを同封し、子育て支援センターの案内も入れています。これがきっかけで支援センターの利用につながり、パントリー卒業後も続けて通い続けてくださる家庭が生まれています。また手紙など、それぞれのご家庭に向けたメッセージを同封しています。単なる食支援ではなく、利用者への心づかいやつながりを持つことを大事にしています。

事業担当 山﨑

活動を振り返って、特に印象に残ったエピソードはありますか。

上出さん

1月に利用者から「子育てで優しくされる経験をすると、自分も周りに優しくできるようになった」という声をいただきました。まさに優しさの連鎖を感じ、「わたしたちが目指したいことの核心だ」と改めて実感しました。

事業担当 山﨑

最後に、今後挑戦したいことをお聞かせください。

上出さん

今年11月には地域フェスタでワークショップや食堂形式のイベントを計画中です。食堂での利用者同士の交流も実現させ、支援の幅を広げていきたいと考えています。また、戸田市や地域の社会福祉法人同士の横の連携を深め、多世代が共に支え合う仕組みづくりにも取り組みたいと思っています。


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