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児童家庭支援センターから派遣された専門職も親子の支援に伴走~赤坂すずかけ保育園こども食堂CIRCLE~

児童家庭支援センターから派遣された専門職も親子の支援に伴走~赤坂すずかけ保育園こども食堂CIRCLE~

福岡市の中心地にありながら、自然が豊かな場所にある「赤坂すずかけ保育園 こども食堂CIRCLE」は近隣の古民家で活動しています。

ここでは、毎週水曜日の15時半から19時まで約100名規模でこども食堂とフードパントリーを開催しています。その活動を支えるのは、保育園のスタッフ、近隣のボランティアのほか、児童家庭支援センターから派遣されたソーシャルワーカーや心理士などの専門職の皆さんです。

「育児に困り感のある家庭を支援したい」と現場に出向き、こどもや保護者の方に気軽に声をかけ、悩みや困りごとを普段の会話の中で引き出す「アウトリーチ型」の支援を行っている赤坂すずかけ保育園の取り組みを、園長の田代さんに伺いました。

株式会社スプラウト 赤坂すずかけ保育園 こども食堂CIRCLE 田代 あや さん

株式会社スプラウト 赤坂すずかけ保育園 こども食堂CIRCLE 田代 あや さん

小規模保育園の近隣の古民家で毎週100名規模でこども食堂とフードパントリーを開催。地域の児童家庭支援センターからのソーシャルワーカー・心理士の派遣や福岡市と連携し、行政支援の窓口としてのこども食堂の役割を担う。

育児に困り感のある家庭を支援したい~流動性の高い地域で食をきっかけに寄り添う

事業担当 山﨑

活動を始められたきっかけを教えてください。

(フローレンス「保育園こども食堂」事業担当)

田代さん

保育園で日々お子さんや保護者の方と接している中で、「育児に困り感のある家庭」が年々増えていることを実感していました。わたしたちの保育園がある福岡市中央区は、家庭の流動性も比較的高い地域でもあります。卒園や転園、引っ越しで家庭とのつながりが限られてしまう中、もっと緩やかに地域の方とつながり、長く関係性を保つことができる仕組みが必要だと考え、「こども食堂」という形で地域の居場所づくりをスタートしました。ちょうど「古民家を譲り受けないか?」というお話をいただいたことも、活動を始める後押しとなりました。

事業担当 山﨑

具体的に、どのようなお困り感を抱えた家庭へのサポートを想定されていたのでしょうか?

田代さん

ひとり親家庭や、核家族化で祖父母のサポートが得られないご家庭、「孤育て」の状況になりやすい家庭が増えている感じがします。困難がある家庭や、地域に頼る場所の少ない転居世帯など、周囲に「助けを求めにくい」状況の方々にこそ、気軽に食事ができて会話ができるこども食堂の場所が必要だと考えました。

児童家庭支援センターとの連携から広がる支援体制

事業担当 山﨑

行政や専門機関との連携も積極的に進めているそうですね?

田代さん

2024年6〜7月から、毎週のこども食堂開催に合わせて児童家庭支援センター(以下:児家セン)から派遣されたソーシャルワーカーと心理士の計2名が来てくれています。児家センの専門職がわたしたちのこども食堂に出向く「アウトリーチ型」の支援として、こどもや保護者の方に気軽に声をかけ、悩みや困りごとを普段の会話の中で引き出す感じで対応されていますね。

事業担当 山﨑

児家センと連携することになったきっかけを教えてください。

田代さん

赤坂すずかけ保育園と児家センは近所に立地していて、保育の業務の中で定期的にコミュニケーションなどを取っていました。今後、何かしら連携できればいいなと思っていました。そうした中で、児家センから、こども食堂に「スタッフを派遣できないか?」という打診がありました。

事業担当 山﨑

児家センが赤坂すずかけ保育園こども食堂CIRCLEにスタッフを派遣したいと考えた理由は、何かあったのでしょうか?

田代さん

わたしたちのこども食堂は週に一度の頻度で開催しており、利用家庭も比較的多いです。そこで試験的な取り組みとしてご家庭とつながるには適切な規模だと考えたのでしょう。児家センとしても、地域の家庭に児家セン側からアウトリーチして関わっていくということを、より重視されていた時期でもありました。

事業担当 山﨑

そうだったんですね!その児家センとの連携が継続していく中で、福岡市との連携につながったそうですね。

田代さん

はい。児家センとの連携が半年ほど順調に進む中で、2024年12月から福岡市と合同のケース会議を定期開催するようになりました。福岡市とは要支援家庭の紹介や支援方針の共有を通じ、市全体でこども食堂を“情報ハブ”として活用する体制が整いつつあります。

事業担当 山﨑

実際に支援につながった印象的な事例を教えていただけますか?

田代さん

普段から親子でこども食堂を利用していたご家庭なんですが、母親の育児負担が高いと見受けられ、特にケアをしていた利用者がいました。定期的にこども食堂でコミュニケーションを取る中で、ある日の食堂の利用時にソーシャルワーカーさんから自治体の育児支援制度の利用を提案してもらいました。最初はさほど乗り気ではなかったようなんですが、提案から少し時間が経ってから、この育児支援の制度を利用することになりました。結果として母親の心理的な余裕が生まれ、こどもたちの表情や家庭内の雰囲気が明るく変化しました。

事業担当 山﨑

こども食堂で利用者とのコミュニケーションの中で分かった課題もあったと伺いました。

田代さん

はい。行政の窓口にはなかなか出向きにくい家庭でも、こども食堂には「ごはんを食べに行く」感覚で来てくださいます。その中で、学校で不登校傾向にあるAくんのことや、母子家庭でヤングケアラーの問題を抱えるご家庭などを把握し、児童家庭支援センターや区役所の子育て相談課へ自然な流れでつなげることができました。また、要支援家庭はさまざまな要因が絡んでいることがほとんどだと思います。そうしたこどもや家庭と一時的な関わりではなく、定期的に関われるからこそ、課題がより見えてくることがあります。

近隣の小学校や自治体とともに行う見守り活動

事業担当 山﨑

近隣の小学校や福岡市とも連携してこどもの見守りをされているんですよね。少し詳しく教えてください。

田代さん

こども食堂にほぼ毎回来ている子なんですが、複数の気になる事柄があり小学校でも気にかけている児童でした。その子が通う小学校の先生方(教頭、担任、養護教諭、スクールソーシャルワーカー)と、博多区子育て相談課、わたしたち食堂スタッフでケース会議を実施しています。学校での様子やこども食堂での様子やサポート状況を情報共有し、家庭訪問や支援のタイミングをすり合わせながら見守りを続けています。

事業担当 山﨑

こども食堂の場にソーシャルワーカー・心理士さんがいるメリットは何でしょう?

田代さん

“壁がない”ところかなと思います。わたしはこども食堂の食事準備などで、ゆっくりと会話できない場面もあります。ソーシャルワーカー・心理士さんの2名がいることで、こどもも保護者もゆっくり会話・相談できる雰囲気があると思います。お互いに気軽に名前で呼び合い、日常会話の延長で悩みを打ち明けられる。「相談に行く」ではなく「食事をしに行く・遊びに行く」感覚で専門職と触れ合える場は、従来にはないシームレスな支援の入口を生んでいて、そこがメリットだと感じています。

事業担当 山﨑

こども食堂の運営は、保育園のスタッフだけでなくボランティアさんなども巻き込んで活動されているのでしょうか?

田代さん

そうですね。近所の方がボランティアとして関わってくれたり、学生や近隣企業の方とも一緒に活動しています。ボードゲームが好きなボランティアスタッフがいて、ボードゲームができるスペースもこども食堂内に設けてます。ゲームは利用者同士の会話のきっかけになるのでとてもありがたいです。また、SOSこどもの村ジャパンさんとも連携して、里親レスパイトのほかに、ショートステイ事業をご紹介しています。ボランティアや近隣企業の皆さんなど多様なネットワークで活動を行っています。

事業担当 山﨑

最後に、今後の展望と地域へのメッセージをお願いします。

田代さん

今後は、こども食堂を地域のプラットフォームへとより発展させ、子育て支援などコミュニティ拠点を目指します。行政・専門機関との連携をさらに深化させ、“安心してつながれる”場を創り続けていきたいと思います。


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