フローレンスは2026年10月、スタッフが業務で生成AIを使うための組織のルール「生成AIガイドライン」を改定しました。2025年に初めて定めてから、技術や制度の変化に合わせて見直しを重ねてきました。
この記事では、フローレンスの生成AIガイドラインの考え方と、安全に活用するための取り組みについてお伝えします。
フローレンスの生成AIガイドラインとは
生成AIを業務で安全に活用するための基本的な考え方と、具体的な行動の基準を定めたものです。
対象は、正職員に限らず、契約職員や業務委託、インターンなど、フローレンスの情報を扱うすべての人です。単体の生成AIサービスだけでなく、日常的に使っている業務システムに組み込まれたAI機能も対象にしています。
中身は大きく分けて、
- どのツールを使ってよいか
- どんな情報を入力してよいか
- 生成AIが出力したものをどう扱うか
- 判断に迷ったときにどうするか
の4つです。
目指しているのは、一人ひとりが生成AIの利便性とリスクの両方を理解し、自分で判断できる状態です。
今回の改定で変わったこと
これまでは使えるツールや入力できる情報を絞り込むことで安全性を確保してきました。今回の改定では、安全に使えるかどうかを判断する条件を明確にし、活用できる範囲を広げています。
情報の取り扱いの安全性を判断する条件を8つに明文化し、その条件を全て満たすことを確認できたツールを業務で使えるものとしました。これにより、使えるツールの種類も広がっています。
ツールは、8つの条件を確認して選んでいます
| 1 | 目的外利用の禁止 | 入力した情報を、AIの学習をはじめ、サービスの提供以外の目的に使わないこと |
|---|---|---|
| 2 | 第三者提供・再委託の管理 | 入力した情報を、無断で他の会社などに渡さないこと |
| 3 | 安全管理措置 | データの暗号化、情報にアクセスできる人の制限などの安全管理がとられていること |
| 4 | 個人データの保存期間と削除 | 預けた情報の保管期間が示され、契約の終了時や、こちらが求めたときに削除されること |
| 5 | 漏えい時の通知義務 | 万が一情報が漏れたときに、速やかに知らせてもらえること |
| 6 | 監査・確認への協力 | こちらからの質問や確認に応じ、監査の記録を提供してもらえること |
| 7 | 処理場所の透明性 | 事業者の所在国と、情報が処理される国が公表されていること |
| 8 | 国外のデータ保護状況の定期確認 | 国外の提供先が日本と同等の水準で情報を守っているかを定期的に確認でき、問題があれば情報を渡すことをやめられること |
ツールの設定画面の表示だけで判断するのではなく、事業者の契約書や利用規約、プライバシーポリシーといった取り決めの中で約束されていることを確認しています。
運用の体制
ガイドラインの策定と運用は、事業部横断のプロジェクトが担っています。システムを担当する部署に加え、広報、人事、代表室など、多様な所属のスタッフが参加し、多角的に検討を推進しています。ガイドラインの策定と運用にあたっては、次のような運用をしています。
契約書や規約を、自分たちで確認する
全社で使うツールとして認定する際には、プロジェクトのメンバーが契約書や利用規約などを読み込み、8つの条件を満たしているかを一つずつ確かめています。
弁護士に相談しながら決める
生成AIをめぐる法的な整理には、まだ定まっていない部分があります。判断に迷う点は、その都度専門家に相談しながら決めています
経営会議で全社周知と決裁を行う
ガイドラインの更新はプロジェクトだけで完結させず、経営会議での承認を経て全社に共有しています。
研修を受けた人が使う
スタッフ向けの情報セキュリティ研修に生成AIの安全な利用に関する内容を組み込み、研修の受講完了を生成AIを使う際の前提としています。
なお、生成AIが出力したものを、そのまま使うことはありません。内容を確かめ、最終的な判断をするのは人である、という原則をガイドラインに定めています。
国のガイドラインを踏まえています
8つの条件は、国が示している考え方を踏まえて設計しました。
総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」(第1.2版、2026年3月)は、AIを開発する事業者だけでなく、AIを業務で利用する組織も対象としています。フローレンスのガイドラインも、その考え方を取り入れています。
あわせて、デジタル庁の「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」(第2.0版、2026年6月)も参照しました。こちらは行政機関に向けたもので、フローレンスに直接適用されるものではありませんが、公的に整理された考え方として参考にしています。
これまでの運用の中で生まれている変化
事務局業務では次のような変化が生まれています。
国会審議のリサーチ
政策提言に重要となる国会での発言の調査にAIを取り入れました。数時間から半日かかっていた作業が数分で終わるようになり、日々のモニタリングもできるようになりました。
報道チェック
フローレンスの取り組む課題や事業に関連するニュースを毎日確認する業務が、1日45分ほどから15分ほどに短縮されました。月におよそ10時間の短縮となっています。
アンケートの分析
イベントのアンケート(属性別に7種類、設問も異なる)をまとめる作業が、およそ21時間から9時間に短縮されました。これまで工数の都合でできなかった、アンケートを横断した分析もできるようになりました。
資料作成の標準化
組織のデザインや表現のルールをAIに取り込み、プレゼン資料などが高い品質で仕上がるようにしました。作り手による品質のばらつきを抑え、作成の時間も短くなっています。
会議の議事録作成
会議の音声データから議事録をつくる作業にAIを取り入れました。決まったこと、次のアクション、残った論点を同じ形式で整理した草案ができあがり、担当者は内容の確認に集中できるようになっています。
今回の改定でAIを活用できる範囲が広がり、保育や支援の現場、そしてそれを支える事務局で、できることがさらに増えていきます。生まれた余力を、新しい挑戦に向けていきます。
今後について
AIの技術や制度は、今も変わり続けています。ガイドラインもそれに合わせて継続的に見直し、安全に使える状態を保ちながら、活用を広げていきます。
フローレンスが生成AIをどう捉え、何のために活用していくのか。組織としての考え方や、ここに至るまでの経緯についても、今後お伝えしていきます。




